日本テレビ系・日曜ドラマ『極主夫道』(公式)
第2話『玉木宏が元極道の専業主夫に!仁義なきスイーツ対決&主婦抗争!』、ラテ欄『仁義なきスイーツ対決!激闘!主婦の抗争が勃発!』の感想。
なお、原作の漫画、おおのこうすけ「極主夫道」(新潮社)は未読。
龍(玉木宏)は、刑務所を出た後にクレープ店を始めた元極道‘剛拳の虎’こと虎二郎(滝藤賢一)と再会。雅(志尊淳)は伝説の極道同士の対峙(たいじ)に息をのむ。そんな中、イベントの出店場所を巡り、田中(MEGUMI)と隣町の婦人会会長・山本(映美くらら)の小競り合いが勃発。やがて龍もよく知る天雀会の会長夫人・雲雀(稲森いずみ)も加わる‘戦い’に発展する。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:おおのこうすけ「極主夫道」(漫画)
脚本:宇田学(過去作/99.9 -刑事専門弁護士、4号警備、探偵が早すぎる) 第1,2話
モラル(過去作/私のおじさん~WATAOJI~、真夏の少年~19452020)
演出:瑠東東一郎(過去作/おっさんずラブ、浦安鉄筋家族) 第1話
内藤瑛亮(過去作/悪霊病棟、仮面同窓会) 第2話
本田隆一(過去作/探偵が早すぎる、ブスだってI LOVE YOU)
音楽:瀬川英史(過去作/勇者ヨシヒコシリーズ、左江内氏、今日から俺は!!、エール)
主題歌:Da-iCE 「CITRUS」 (avex trax)
前回は、必死に漫画の世界観を実写化したいのが伝わった
第1話の演出担当は、『おっさんずラブ』や、あの『浦安鉄筋家族』のチーフ演出だった瑠東東一郎氏が担当していた上に、『浦安鉄筋家族』への出演者も本作に出演しているせいもあって、瑠東氏がお得意の “過剰な映像処理” が随所に挿入され、原作未読の私にとっても、漫画の世界観を実写ドラマ化しようと必死なのが伝わって面白かった。
演出担当の交代で『浦安鉄筋家族』らしさが薄まったが…
しかし、この第2話では演出担当が交代したため、当然のこと瑠東氏がお得意の “過剰な映像処理” が無くなった。そのお蔭で、『浦安鉄筋家族』らしさが薄まった。『浦安鉄筋家族』の大ファンの私としては、このことはある意味で良かったと思っている。その理由は二つある。
『浦安鉄筋家族』らしさが薄まり"ドラマ"らしくなって来た
一つは、類似作品を作る必然性がないこと。
もう一つは、原作の漫画へ寄せようとか近づけようとする演出が少なくなったことで、原作とは切り離して楽しめる「ヒューマン任侠コメディー」のドラマになって来たから。やはり、折角「原作あり」を「実写ドラマ」にするのだから、テレビや映像でしか描けない世界観を新たに創出すべき。
従って、第1回よりも作品のテンションが下がって面白味が薄まったと感じる視聴者はいると思う。でも、原作未読の私であっても、この映像を見れば、本作の原作の実写化が実にハードルの高いものかは容易に想像できる…
毎回違うゲストナレーターをもっと活用して新たな価値観を
これ、知る人は知る配役だろうが、知らない読者さんもいるかも知れないので書いておく。本作のナレーション担当は毎回ゲストで異なる配役になっている。因みに第1話のゲストナレーターは、『メタルギアソリッドシリーズ』、「スティーヴン・セガールの吹き替え」、『ブラック・ジャック』等で大活躍する声優の大塚明夫氏だった。
そしてこの第2話は、『ハイキュー!!』、『銀魂』、『ときめきレストラン』、『金色のコルダ』等の人気声優の日野聡氏だ。
でも、映像で施されている数々のアイデアや工夫で、これ以上を超えるのは相当に難しいから(もちろん、キャストもスタッフもかなり頑張っているのは認めるし、面白いのも確かだが)、ここは一つ、ゲストナレーションをもっと多用しつつ強調して映像を補強したら、新たな価値観や面白味が出て来るような気がする。是非とも、やって欲しい。
あとがき
いろいろ書きましたが、前期の夏の連ドラでシリアスな演技で魅せてくれた出演者たちが、こんなに馬鹿げた奇想天外のドラマを演じていること、そのものも笑えます。
また、果てしなくくだらない内容ですが、日曜日の夜に気楽に楽しめる「最強の主夫が大奮闘して、愛する町内と家族を守ろうとする任侠と家族愛のドタバタ痛快劇」として、悪くないと思います。それにしても、玉木宏さんと稲森いずみさんが吹っ切れた演技で “いい味” を出しており、嬉しいし楽しいです。
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第1話
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TBSテレビ系・日曜劇場『危険なビーナス』(公式)
第2話/21分拡大SP『叔父の復讐』、ラテ欄『違う顔を見せる女…敵か味方か?仕掛けられた罠』の感想。
なお、原作の小説、東野圭吾「危険なビーナス」(講談社文庫)は未読。
伯朗(妻夫木聡)は楓(吉高由里子)に頼まれ前当主・康之介(栗田芳宏)の次男・牧雄(池内万作)との待ち合わせに同行するが、牧雄が近くで倒れているのが見つかる。伯朗を促し矢神家へ向かった楓は、康之介の長女・波恵(戸田恵子)らのアリバイを確認。さらに、波恵らと行動を共にし、牧雄の搬送先の病院で康之介の養子・勇磨(ディーン・フジオカ)と佐代(麻生祐未)と顔を合わせる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:東野圭吾「危険なビーナス」(講談社文庫)
脚本:黒岩勉(過去作/僕のヤバイ妻、モンテ・クリスト伯、グランメゾン東京、アンサングシンデレラ)
演出:佐藤祐市(過去作/WATER BOYS、メゾン・ド・ポリス) 第1,2話
河野圭太(過去作/僕らは奇跡でできている、4分間のマリーゴールド)
音楽:菅野祐悟(過去作/半分、青い。、東京タラレバ娘、シャーロックUS,テセウスの船)
主題歌:back number「エメラルド」(ユニバーサルシグマ)
冒頭にもう少し第1話の「振り返り」を入れた方が…
折角、21分間も拡大放送するのだから、冒頭にもう少し第1話の「振り返り」を入れた方が話を理解し易いと思うのだが。まあ、それはそれとして済んだことだから、次回から工夫して欲しいとお願いベースにしておいて、早速今回の感想だ。
面白いかどうかは別にして、確かに面白味はある
本編の感想の冒頭から、こんな表現をするのはどうかと思うが、面白いかどうかは別にして、話が進む度にいろいろな疑惑や謎が現われて、更に(劇伴による効果が大きいが)適度に煽るし捻じるし、ミステリードラマとしては、面白味はある。面白味はある
だが、いくら疑惑や謎を並び立てても、前回の終盤から今回のラストの直前まで、実質的には状況に変わりがない。確かに、今回のラストで若干はエピソードが前進したが、この程度の前進では、純粋にミステリーを楽しもうと思っている私にとっては、完全に物足りない。
「巻き込まれたけれど頑張る主人公」にしたら?
また、主人公である伯朗(妻夫木聡)の存在理由や必要性が、まだ今ひとつ見えて来ない。もちろん、「正義感が強く真面目な性格だが、美女にはめっぽう弱い」設定だから、楓(吉高由里子)を目の前にしてしまうと、タジタジになってしまうと言うキャラクターだとするなら、頷くしかないのだが。
むしろ、伯朗がいなくて楓が孤軍奮闘して解決していく方が、わかり易いし、面白くなるのでないか…とさえ、感じてしまった。更に考えると、伯朗は第2話になっても、基本的に「本案件へ積極的に関わろうとしていない人」なのだ。主人公なのにミステリーに “非積極的” な登場人物と言うことになる。
とは言え、第1話よりは主人公を押し出す演出になっているため、引き続き「巻き込まれたくないけれど、巻き込まれて頑張る主人公」に仕立て続けるべきだ思う。そうすれば、もっと魅力も増すし、応援したくなる主人公に格上げしていくと思う。
楓が声のトーンを上げると、"タラレバ感"が増すのだ
前回で個人的に大変気になった吉高由里子さんの演技の “タラレバ感” だが、今回の冒頭を見て少し “タラレバ感” が薄まっており、おやおや…と思って気が付いた。
要は、楓(吉高由里子)は伯朗(妻夫木聡)と話す時は、声のトーンを上げて「行方不明の夫を夫のお兄様と探す可愛い女性」になり、その他の人物と話す時は声のトーンを下げて「夫を探す落ち着き、しっかりした大人の女性」を演じているからなのでは…と。
これが、演出家による演技指導なのか、吉高さん自身の演技プランなのか知る由もないが、私は吉高さんは声のトーンを下げた演技の方が年相応に見えると思っているから、是非とも次回から、そちらでお願いしたいと思う。と言うか、本来はミステリーとして「二人のキャラを演じ分ける謎の楓」は魅力的な登場人物になると思う。
でも、吉高さんのファンには叱られるかも知れないが、吉高さんはどちらか一方にしておいた方が、演技や存在感への評価が高まると思うのは私だけだろうか。
あとがき
今回の終盤辺りから、相続人の同士の腹の探り合い、身内間の騙し合いが、前回よりも明瞭になってきて、面白くなってきました。この調子で進めば、徐々にではあるでしょうか、盛り上がる気配も見えてきました。
伯朗の存在感をもっと押し出して、楓の “タラレバ感” が薄まれば、高評価に転ずる視聴者も増えるのではないだろうか。今後に期待します。
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日本テレビ系・土10ドラマ『35歳の少女』(公式)
第2話『25年の月日が流れた現実を現実受け入れようと決意した望美。 しかし、家族はそれぞれに人生の行き詰まりを感じていて…。』、ラテ欄『盗まれた時間と家族を取り戻す方法は…』の感想。
望美(柴咲コウ)は多恵(鈴木保奈美)から大人の振る舞いを求められ、不満を募らせる。広告代理店で働く愛美(橋本愛)は、元恋人の上司・相沢(細田善彦)が後輩の藤子(大友花恋)と結婚を考えていると聞き、動揺。一方、引きこもりで暴れる継子・達也(竜星涼)について悩む進次(田中哲司)は、望美から多恵との不和を尋ねられる。そんな中、結人(坂口健太郎)は恋人代行の依頼を受ける。
---上記のあらすじは[[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:遊川和彦(過去作/〇〇妻、家政婦のミタ、女王の教室、同期のサクラ)
演出:猪股隆一(過去作/怪盗 山猫、家売るオンナシリーズ、ニッポンノワール) 第1,2話
明石広人(過去作/過保護のカホコ、トドメの接吻、正義のセ、わたどう)
伊藤彰記(過去作/ヤ過保護のカホコ、ハケン占い師アタル)
音楽:平井真美子(過去作/映画『60歳のラブレター』、ハケン占い師アタル)
主題歌:King Gnu「三文小説」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
あまり映像を見ないと、本作が描きたことを感じられた
こう言う鑑賞方法が正しいのか分からないが、あまり映像を見ずに音声だけで見ると(おっと、「聞くと」ですね)、本作が描きたことが、第1話より見えて(聞えて)来るようになった。
その理由は、私にとってと限定的にはなるが、望美を演じる柴咲コウさんや子役の演技、それにエキストラの動きの不自然さが気になり過ぎて、内容が頭に入り難いからだ。だから、出来るだけ映像は見ないで音声重視で鑑賞すると、台詞のあちこちから、様々なものが伝わって来たのだ、
あとがき
本作は、主人公の日常をただただ描いているだけに過ぎないドラマだ。ただ、その主人公の “日常” は他の人の “非日常” であると言う、一種のパラドックスになっている。この点を面白いと感じるかどうかが、本作を楽しめるかどうかの分岐点のような気がします。
ついつい演者の違和感が気になるなら、一度、「ながら見」をしてみたらどうだろう? その内、主人公の心や精神が成長すれば、気にならなくなると思うし。まだ、様子見します。
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NHK・土曜ドラマ『天使にリクエストを~人生最後の願い~』(公式)
第5話/最終回 [全5回]『聖母バラッド』の感想。
和子(倍賞美津子)が倒れ、病院に救急搬送される。知らせを聞いて駆け付けた島田(江口洋介)と亜花里(上白石萌歌)、寺本(志尊淳)に対し、和子は人生最後の願いをかなえる「サイレント・エンジェル」の活動を続けるよう約束させる。実は、和子は末期がんに侵されていた。島田は、時恵(板谷由夏)ともう一度やり直すことを誓う一方、余命いくばくもない和子に身寄りがないかを、亜花里と共に調べ始める。やがて、一連の活動の裏に和子自身の‘最後の願い’が隠されていることに気付いた島田と亜花里は、ある人物を訪ねる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:大森寿美男(過去作/55歳からのハローライフ、64(ロクヨン)、精霊の守り人、なつぞら)
演出:片岡敬司(過去作/ミストレス~女たちの秘密~、みかづき) 第1,2,4,最終話
田中諭(過去作/ぬけまいる、いいね!光源氏くん) 第3話
音楽:河野伸(過去作/おっさんずラブ、恋はつづくよどこまでも)
美しい表現がさり気なく入るから、長閑で温和さが滲み出る
9分頃、病床の和子(倍賞美津子)へ寺本(志尊淳)がさり気なく言った、この台詞に本作の “やさしさ” を感じ取った…
寺本「誰もが臆せずに最後の願いを口にできて
僕たちも臆せずに それを聞くことができるような
そういう社会にしたいんです」
「臆せず」と言う単語が二度登場するが、私は「臆せず」と言う単語をあまり口にもしたことがなかったし、ブログで使っても来なかった。
しかし、「堂々と振る舞う」とか「物怖じせずに振る舞う」と言う意味を、そのまま直接使わずに「臆せず」と言う表現は、とても日本人的な美しい日本語の響きと雰囲気のある言葉だなぁと再認識させられた。
寺本のキャラクターにも合っているし、このような美しい表現がさり気なくドラマに入っているから、どこか長閑で温和な雰囲気が作品に滲み出て来るのだ、きっと。
昨年亡くなった実母の「人生最後の願い」について少々…
個人的な話で恐縮だし、そんな話は読みたくない人は、この章をどうぞ飛ばして次の章に進んで頂きたい。
ただ、高津川(西郷輝彦)が島田(江口洋介)と時恵(板谷由夏)が、先に島田と時恵の一人息子である聖哉(林田悠作)が眠っている墓前で時恵の父・三井真吉(山本學)のことを偲んで語るシーンを見て、どうしても書きたくなったから書かせて欲しい。
常連の読者さんなら覚えてくれているかも知れないが、私の実母が昨年の11月上旬に老衰で亡くった。突然だった。実母の「人生最後の願い」は、「家族と住職だけに見送られて、菩提寺の本堂であの世に逝きたい」 と言うことだった。
突然のことだったが、住職に相談すると、「ご自宅で亡くなったのなら、そのままお寺に連れて来て下さい」と言う電話越しのいつもの優しい声だった。そして、納棺の儀の際も住職が読経してく下さり、死装束(しにしょうぞく)の母も何となく嬉しそうな表情に見えた。
そして、亡くなったその日から、通夜、告別式までの数日間、菩提寺の本堂で眠らせて頂いた。数日の中には土日もあったのに、奇跡的にお寺で他の抱擁や葬儀が無かった。お骨になった母が再び本堂に戻り、まるで亡くなってからの母の家は菩提寺の本堂のようだった。私たち遺された家族も、そんな気持ちだった。
これで、母の「人生最後の願い」は叶えてあげられたのかは、私も “あっち” に言って母に聞いてみないと分からない。そして、間もなく一周忌がやってくる。コロナ禍なので都内の菩提寺での集まりは執り行うのは諦めたが、母が大好きだった上野公園の桜の咲く頃には、たくさんのお花を持参してお墓参りをしたい…
寺本を志尊淳さんが演じた必然性が、最後に全部繋がった
さて、本作の感想に戻ろう。最終回の序盤では、町で倒れた和子(倍賞美津子)が病院に救急搬送されるところから始まったが、物語の中心は徐々にスゴ腕の熱血看護師・寺本にシフトして行く。
寺本を派遣している訪問看護ステーション “さくはな” の所長を勤める寺本の母・尚子(羽野晶紀)も登場した。和子が経営していたオモチャ屋「さわや」と、ミニカーのタワーパーキングのオモチャが “一本の糸” のように繋がって行く。そして、母・尚子の「そうよ。佐藤和子さんは あなたのおばあちゃん」の言葉で真実が見えた。
次のような感想を持ってしまうのはどうかと思うが。やはり、本作に於ける志尊淳さんの存在がずっと気になっていたのだ。なぜ、志尊淳さんなのかって。まさか視聴率稼ぎのため? なんて邪推の頭に浮かんだ(そんな愚かな自分が情けない。
しかし、全てが繋がったと言うか、やはり配役を含めて、巧みに脚本が計算されていたと言うことだ。だから、薄っぺらな表現になってしまうが、このドラマは面白いのだ。
仏や菩薩の「慈悲の心」は、誰の心にも宿っている
ファミレスでの和子と尚子のやりとり、マンションの一室での和子の島田への吐露を聞いて、一つの仏教用語が頭をよぎった。それは「慈悲」。
仏や菩薩が世の中の全ての人々の苦を抜き楽を与えたいと言う「抜苦与楽(ばっくよらく)」の心を現わした言葉だ。最近は意味が転じて、自分以外の他者を、慈しみ、情けをかけ、思いやるという意味で使われる「慈悲」。しかし「慈悲」を突き詰めると意外に分かり難い。そこで「慈悲の心=親が我が子を思う気持ち」と捉えたらどうだろう?
我が子が苦しんでいたらその悲しみや苦しみを取り除き、その代わりに喜びや幸せを与えたい。また、我が子の成長を考え甘やかさないよう厳しく接する。そう、仏や菩薩の「慈悲の心」は誰の心にも宿っているのだ。ただ、和子と尚子の母子関係には “亀裂” が入ってしまった。
和子は “亀裂” への反省を「サイレント・エンジェル」の活動に費やした。一方の娘の直子は “亀裂” への怒りを仕事と子育てに注ぎ込んでだ。二人の距離は遠いが、その距離を縮め、接着剤となるのが孫の寺本だった。だから、寺本は若いのに「慈悲の心」のような “やさしさ” を持っていたと言うわけだ。
ホント、どんどん点と点が繋がって行く過程が心地良く、染み込んでいく…
間違うことで過ちを次に活かせる。それが"生きている証し"
36分頃、和子の活動の真意を自分なりに解釈して、活動から離脱するように島田に言いに来たシーンでの、島田の台詞も良かった。
島田「いくつになっても 人は間違えんだよ。
けど その分 人のことを思えるようにもなるんだ。
人のことを思うことが 自分を思うことにもつながるんだよ。
それが この活動を通じて 俺が依頼人から教わったことだ」
義父・真吉(山本學)の死を通して、元妻と再度向き合った島田だからこそ、心の中から自身への “戒め” を込めた言葉に聞こえた。正に、「慈悲の心」ではないだろうか。 自分以外の人のことを思うことが、自分を思うことに繋がる。そして、亡くなって逝く人の思いは、生きている人に受け継がれ、繋がって行く。
このドラマで言えば、祖母から孫へ、息子から両親へ、そして依頼人から島田本人へ。間違うことで過ちを次に活かせる。それこそが、生きる人たちの “生きている証し” であると、本作は説いているように思う。
"芯のある太い音色"と、祖母と孫の"芯のある太い絆"
43分頃、寺本が和子を自分のデイサービスに連れて来て、和子を他己紹介する場面での寺本のこの台詞が実に良かった。
寺本「僕の尊敬する… 大好きなおばあちゃんです」
なんだろう。背筋がゾワッとしたし、全身が震えるような気持ちになった。ミディアムテンポのブルージーなサックスの “芯のある太い音色” と、祖母と孫の “芯のある太い絆” が絶妙にシンクロした見事な演出だ。数々の「人生の最後の願い」を叶えて天国に逝った登場人物たちの回想シーンとも実にマッチしていた。
やはり、ギターやピアノとは違って、主に空気の塊を振動させることによって音を出す気鳴楽器だからこそ、生きて来た証し、呼吸を感じさせる劇伴が本当に寂しくもあり、夢や希望を与えてくれた。
「さすらおう」に「もっと寄り道しようぜ」」のメッセージが…
そして、本作のお約束であり、見所で聞きどころの終盤の登場人物が歌うシーン。誰が何の楽曲を歌うのかと期待していたら、なんと奥田民生さんの「さすらい」を、寺本が楽しそうに歌った。最終回のサブタイトルが『聖母バラッド』だからと言って、幾ら何でも「聖母たちのララバイ」だとは流石に思わなかったが。
敷かれたレールの上をただただ歩いて行くなんてどうなのよ? と言う大人たちを奮起させるような楽曲だ。そして、歌い出しの「さすらおう」と言うのが実にいい。「もっと寄り道しようぜ!」と言う民生さんのメッセージがこの単語に集約されている。
ロードムービーのような「どこまでも続く可能性」も感じるし、「爽やかで肩の力が抜けた、気負わない強さ」も感じる、素晴らしいシーンだった。
あとがき
敢えて、小難しい「慈悲の心」を引用した感想になりましたが、もっと簡単に言うと、本作の素晴らしいのは、「自分のためにやること」と「他人のためにやること」を、しっかりと描き分けたことです。
そこの線引きがしっかりしているから、ただの慈善活動のPRドラマにならずに、「人の死」を真面目に取り扱いながらも、「極上の人生謳歌のエンターテインメント」に仕上がりました、実に、天晴れです。もちろん、続編を期待します。
最後に、14年前の奥田民生さんがアコギを力強く引きながら歌う「さすらい」の動画を皆さんに送ります。一緒に大声で歌いましょう!
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NHK総合・連続テレビ小説『エール』(公式サイト)
第18週『戦場の歌』の 『土曜日版』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
裕一(窪田正孝)は、慰問でビルマ(現ミャンマー)を訪れる。そこは“インパール作戦”が展開される激戦地だった。一方、福島では母・まさ(菊池桃子)が倒れ、弟の浩二(佐久本 宝)から知らせを受けた音(二階堂ふみ)が駆けつけていた。その頃、恩師の藤堂先生(森山直太朗)が前線の駐屯地にいることを知った裕一は、危険を冒し会いにいく。兵士たちと演奏会を開き、音楽で気持ちが一つになった翌朝。部隊を悲劇が襲い…。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
あくまでも「土曜日版」の感想を書こうと思う…
今週の内容については、昨日の金曜日分の感想に「総括」まで書いたから、本編についての感想を「土曜日版」で書くつもりは無い。従って、あくまでも「土曜日版」の感想を書こうと思う。
予想よりも、朝ドラおじさんのナビゲーションが多かった
今週は、 チーフ脚本&演出担当の吉田照幸氏が、普通なら登場人物のモノローグは、アフレコやアテレコで録音して映像に貼り付けるのだが、緊張感を演出するために、裕一(窪田正孝)のモノローグは演じたシーンの直後に録音をして、演技とモノローグが乖離しないような撮影方法を試みたと報道があった。
従って、今週は裕一のモノローグが多かったため、バナナマン日村氏の “ナビゲーション” は少なめになるかと思ったが、意外と裕一のモノローグのシーンはカットされ、その分 “ナビゲーション” が盛り込まれた感じがする。もしかすると、箇条書きだった先週の「土曜日版」より多かったかも知れない。
N「ここで ドラマの中なんですが この人の歌声が聴けますよ」
上の “ナレーション” なんて、正に朝ドラおじさんらしい解説だ。
土曜日版は裕一の苦悩と戦場の過酷さが半分も描けていない
ただ、金曜日の「総括」にも書いた通り、水曜日から金曜日は「15分間×3回=1話」と言うように、メインタイトルも排除して構成し作り込まれたから、ここまで削除部分が多いと、本編から伝わった印象とは、だいぶ違った印象になってしまった。
もちろん「単純なダイジェスト版」として見たり、本編を見ていない視聴者が「見逃しダイジェスト版」として見たりするなら悪いとは思わない。ただ、本編を見た者としては、裕一の苦悩も戦場の過酷さも、この「ダイジェスト版」では半分も描かれていないと思う。
もっとナビゲーションを盛り込んで新たな価値観を付加して
しかし、こう言う見方も出来る。先週が箇条書きだったのに対して、今週はかなり詰め込んだ。それも今後の裕一の、ドラマの方向性を左右するような大切な一週間に詰め込んだ。その結果、裕一のモノローグも多いし、津田健次郎氏のナレーションも多かった。
でも、それらがあったから内容が伝わり易くなったわけで、「ダイジェスト版」でそれらをここまで削除するなら、重厚感や緊張感を犠牲にしても良いから、もっとナビゲーションを盛り込んで、本編と雰囲気は異なっても、「ダイジェスト版」として新たな価値観を付加して、裕一の苦悩と戦場の過酷さを伝えた方が良かったと思う。
あとがき
今週を予告編含めて「15分間」にまとめるのは無理ですね。だからこそ、ナビゲーションに工夫が欲しかったです。と言うか、やはり本編を見てこその「土曜日版」ですよね。
また、かなり足早にエピソードが流れたので、「そりゃあ、山の中で演奏すれば敵に見つかるのは当然だわなぁ」とか、「裕一は最初に自宅に帰って音と華に無事を伝えてから、昌子さんへ報告に行った方が順番として正しいかも…」なんて気づいてしまいました。
次週は、ラジオドラマ「鐘の鳴る丘」と映画「長崎の鐘」の主題歌の話ですね。裕一の心情の変化をどれだけ丁寧に描けるかが勝負になりそうです。
最後に、前回の長文の感想に数々のコメントや、26人もWeb拍手を頂き(投稿時点で)、ありがとうございました。引き続き、自分の感じたままを書いて、本作に “エール” を送るつもりです。
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