連続テレビ小説「エール」 （第86回・2020/10/12） 感想

NHK総合・連続テレビ小説『エール』（公式サイト）
第18週『戦場の歌』の 第86回の感想。


※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。

---

音楽慰問のために裕一（窪田正孝）が向かった先は、インド北東部のインパールを攻略する作戦が始まっていたビルマだった。裕一は戦況を聞くために毎日司令部を訪れるが、作戦が予定通りに進んでいないようで、前線に向かう命令がなかなか下りない。一方、音（二階堂ふみ）は、まさ（菊池桃子）の病状が悪化したという浩二（佐久本宝）からの知らせもあり、華（根本真陽）を連れて福島に疎開することにする。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

●原案：林宏司 ●作：吉田照幸 ●演出：吉田照幸（敬称略）

裕一自身の"作曲活動への葛藤と希望"に繋がる大切な岐路

今週の内容は、戦時中に裕一（窪田正孝）が “様々な体験や経験” をして、その後に描かれるであろう戦後になってからの裕一の「僕は音楽が憎い」との葛藤と希望に繋がる大切なエピソードだ。従って、裕一の作曲の才能や、生み出す音楽の力などを、しっかりと丁寧に描いた、まずは月曜日の15分間と言うべきだろう。

暗いトーンの描写、迷わず週末まで続けて描き切って欲しい

意外なのは、最近の朝ドラの中では、描写がかなり暗いと言う点だ。シリアスとか、真面目などとは異なった “暗いトーン” の描写。でも、予告編を見ても、金曜日の終戦までは続けるだろうし、是非とも続けて欲しい。とにかく、今週と来週が、裕一の作曲家人生を大きく左右するシチュエーションだから、じっくりと迷わずに描き切って欲しい。

あとがき

ただ、気になる点もあります。例えば、音（二階堂ふみ）が義母・まさ（菊池桃子）に「ゆっくりされて下さい」と言っていたが、明らかに “サ入れ言葉” の誤用。正しくは、ゆっくりなさって下さい」とか「ごゆっくり（お過ごし下さい）」だと思います。

また、戦時中に、50歳代と思われる音の母・光子（薬師丸ひろ子）とまさが、黒々した黒髪なのも気になります。白髪染め自体は、明治後期より「酸化染毛剤」として存在していましたが、映像的には少し白髪まじりの方がしっくりくるような…

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【これまでの感想】

第1週『初めてのエール』
1 2 3 4 5 土
第2週『運命のかぐや姫』
6 7 8 9 10 土
第3週『いばらの道』
11 12 13 14 15 土
第4週『君はるか』
16 17 18 19 20 土
第5週『愛の協奏曲』
21 22 23 24 25 土
第6週『ふたりの決意』
26 27 28 29 30 土
第7週『夢の新婚生活』
31 32 33 34 35 土
第8週『紺碧（ぺき）の空』
36 37 38 39 40 土
第9週『東京恋物語』
41 42 43 44 45 土
第10週『響きあう夢』
46 47 48 49 50 土
第11週『家族のうた』
51 52 53 54 55 土
第12週『アナザーストーリー ～それぞれの愛のカタチ～』
56 57 58 59 60 土
第13週『スター発掘オーディション』
61 62 63 64 65 土
[再]第1週『初めてのエール』佐藤久志（山崎育三郎）
1 2 3 4 5
[再]第2週『運命のかぐや姫』佐藤久志（山崎育三郎）
6
[再]第2週『運命のかぐや姫』関内吟（松井玲奈）
7 8 9 10
[再]第3週『いばらの道』関内吟（松井玲奈）
11 12
[再]第3週『いばらの道』藤堂清晴（森山直太朗）
13 14 15
[再]第4週『君はるか』藤堂清晴（森山直太朗）
16 17 18
[再]第4週『君はるか』御手洗清太郎（古川雄大）
19 20
[再]第5週『愛の狂騒曲』御手洗清太郎（古川雄大）
21 22 23 24
[再]第5週『愛の狂騒曲』村野鉄男（中村蒼）
24
[再]第6週『ふたりの決意』村野鉄男（中村蒼）
25 26 27 28 29 30
[再]第7週『夢の新婚生活』梶取保（野間口徹）
31 32 33 34 35
[再]第8週『紺碧（ぺき）の空』梶取保（野間口徹）
36
[再]第8週『紺碧（ぺき）の空』古山まさ（菊池桃子）
37 38 39 40
[再]第9週『東京恋物語』古山まさ（菊池桃子）
41 42
[再]第9週『東京恋物語』音の妹・関内 梅（森七菜）
43 44 45
[再]第10週『響きあう夢』音の妹・関内 梅（森七菜）
46 47 48
[再]第10週『響きあう夢』川俣銀行時代の菊池昌子（堀内敬子）
49 50
[再]第11週『家族のうた』川俣銀行時代の菊池昌子（堀内敬子）
51 52
[再]第11週『家族のうた』藤堂先生と結婚後の藤堂昌子（堀内敬子）
53 54
[再]第11週『家族のうた』喫茶バンブーの梶取恵（仲里依紗）
55
[再]第12週『アナザーストーリー ～それぞれの愛のカタチ～』梶取恵（仲里依紗）
56 57 58 59 60
[再]第13週『スター発掘オーディション！』川俣銀行支店長（相島一之）
61 62 63 64 65
いよいよ来週から! 連続テレビ小説「エール」再開SP
第14週『弟子がやって来た！』
66 67 68 69 70 土
第15週『先生のうた』
71 72 73 74 75 土
第16週『不協和音』
76 77 78 79 80 土
第17週『歌の力』
81 82 83 84 85 土
第18週『戦場の歌』

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極主夫道 （第1話・2020/10/11） 感想

日本テレビ系・日曜ドラマ『極主夫道』（公式）
第1話『伝説の極道が家事に命をかける 仁義なきヒューマン任侠コメディ!』、ラテ欄『伝説の元極道が専業主夫に！ 家事に命をかける任侠コメディ開幕』の感想。
なお、原作の漫画、おおのこうすけ「極主夫道」（新潮社）は未読。

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デザイナーとして働く美久（川口春奈）との結婚を機に専業主夫となった元極道‘不死身の龍’こと龍（玉木宏）は、警察官・酒井（古川雄大）も怪しむ風貌ながら毎日の家事にいそしんでいる。龍が抜けた「天雀会」の勢いは衰え、弟分の雅（志尊淳）は龍に復帰を懇願。小学生の娘・向日葵（白鳥玉季）の通学路で交通安全の旗振りをする龍を訪ねるが、そこで遭遇した敵対組織の組長・大城山（橋本じゅん）らに絡まれる。後日、会長・田中（MEGUMI）の家で開かれた婦人会に参加した龍は、天雀会会長・江口（竹中直人）に呼ばれ…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：おおのこうすけ「極主夫道」（漫画）
脚本：宇田学（過去作/99.9 -刑事専門弁護士､4号警備､探偵が早すぎる） 第1話
　　　モラル（過去作/私のおじさん~WATAOJI~､真夏の少年～19452020）
演出：瑠東東一郎（過去作/おっさんずﾗﾌﾞ､浦安鉄筋家族） 第1話
　　　内藤瑛亮（過去作/名もなき復讐者 ZEGEN）
　　　本田隆一（過去作/探偵が早すぎる､ブスだってI LOVE YOU）
音楽：瀬川英史（過去作/勇者ﾖｼﾋｺｼﾘｰｽﾞ､左江内氏､今日から俺は!!､ｴｰﾙ）
主題歌：Da-iCE ｢CITRUS｣ (avex trax)

『ごくせん』『ヤスコとケンジ』の遺伝子を受け継いだ「任侠コメディ × ヒューマンドラマ」が帰って来た!

2018年の秋ドラマとして放送された『今日から俺は!!』以降、日テレの日曜日夜10枠は、丸2年間に亘って相性が良くなかった。だから、今作も過大な期待はせずに見始めた。

しかし、冒頭の数分間でグイグイと引き込まれてしまった。日テレがお得意とする、『ごくせん』（2002年～）や『ヤスコとケンジ』（2008年）の遺伝子を受け継いだ「任侠コメディ× ヒューマンドラマ」の正当な後継ドラマと言った感じだ。

テレ東｢浦安鉄筋家族｣を日テレ｢日曜ドラマ｣仕様に最適化

映像全体の色合いやカット割り、劇伴の使い方は、第1話の演出を担当した瑠東東一郎氏が、2020年夏ドラマとして放送されたテレ東の『浦安鉄筋家族』と、ほぼ同じ。本多力さん、滝藤賢一さん、MIGUMIさんらも『浦安鉄筋家族』と被ってるし！

従って、私自身は原作未読だが、恐らく原作愛好者は「これは違う感」が蔓延したかも？ しかし、原作未読の私は、大好きだった『浦安鉄筋家族』を少し崩して、やればもっと吹っ切れられたのだろうが、「日曜ドラマ枠」仕様に最適化したように見えて、満足感が高かった。

日曜の夜に豪華キャストでコメディを見るのは単純に楽しい

ドラマとしては、各キャラクターがしっかりと作り込まれた上に描写もされている。ストーリー展開も無理が無いし、小ネタの入り具合も心地良いし、日曜日の夜に豪華キャストでコメディを見るのは、単純に楽しかった。そｒにしても、よくもここまで良い感じのキャスティングをしたものだ。

あとがき

『浦安鉄筋家族』もそうでしたが、この手のコメディドラマは、感想を書くのがたいへん難しいです。小ネタを拾ったらキリがありませんし、真面目に物語を追い掛けても楽しさは伝わりませんしね。ですから、今後の感想がどうなるかは別にして、継続視聴は確定です。

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危険なビーナス （第1話/初回31分拡大SP・2020/10/11） 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『危険なビーナス』（公式）
第1話/初回31分拡大SP『異父弟の妻』、ラテ欄『突然現れた美女…欲望渦巻く謎のはじまり』の感想。
なお、原作の小説、東野圭吾「危険なビーナス」（講談社文庫）は未読。

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獣医師・伯朗（妻夫木聡）の前に、異父弟・明人（染谷将太）の妻を名乗る楓（吉高由里子）が現れる。楓は明人が失踪したと言い、失踪に親族が関わっている可能性があると訴える。親族とは、伯朗の父亡き後、母・禎子（斉藤由貴）が嫁いだ矢神家の一族だった。矢神の血を引く明人には総額30億円もの遺産の相続権があり、明人の父である当主・康治（栗原英雄）が危篤状態にある今、遺産を狙う親族には明人を誘拐する動機がある。禎子の死後、矢神家と疎遠になっていた伯朗だが、意を決して楓と共に矢神の屋敷へ向かう。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：東野圭吾「危険なビーナス」（講談社文庫）
脚本：黒岩勉（過去作/僕のﾔﾊﾞｲ妻､ﾓﾝﾃ･ｸﾘｽﾄ伯､ｸﾞﾗﾝﾒｿﾞﾝ東京､ｱﾝｻﾝｸﾞｼﾝﾃﾞﾚﾗ）
演出：佐藤祐市（過去作/WATER BOYS､ﾒｿﾞﾝ･ﾄﾞ･ﾎﾟﾘｽ） 第1話
　　　河野圭太（過去作/僕らは奇跡でできている､4分間のﾏﾘｰｺﾞｰﾙﾄﾞ）
音楽：菅野祐悟（過去作/半分､青い｡､東京ﾀﾗﾚﾊﾞ娘､ｼｬｰﾛｯｸUS,ﾃｾｳｽの船）
主題歌：back number「エメラルド」（ユニバーサルシグマ）

登場人物が多過ぎる上に、人間関係が分かり難い

土曜日放送の『35歳の少女』同様に、事前には出来れば見たくない番宣がどうしても目に入ってしまい、 獣医が、突然現れた「弟の妻」と名乗る “謎の美女” と共に失踪した弟の行方を追っているうちに、30億円もの遺産が絡んだ名家の争いに巻き込まれていくラブサスペンス…であることは知っていた。

それに番宣でも言っていた通りに、これでもかと言う位に登場人物が多い。公式サイトの相関図を見れば、多いどころか、多過ぎる位だ。その上に、結構な俳優陣を揃えている。その上、原作が東野圭吾氏だから、実写ドラマ化が大ハズレすることはないと思うが…

"タラレバ感"が強くて吉高由里子さんが"謎の女"に見えない

とにかく、第1話を見終えて感じたのは、全編の随所に顔を覗かせる “東京タラレバ感” だ。つい先日に『東京タラレバ2020』を観たばかりのお陰もあるが、良くも悪くも、女優・吉高由里子の存在感が強過ぎる。ファンには叱られるかも知れないが、どの役を演じても “タラレバ” だから、当然に「謎の女」に見えるはずが無い。

また、困ったのは、主演の妻夫木聡さんの柔軟な演技力と存在感が裏目に出て、“タラレバ” に飲みこまれてしまった印象が強かったこと。そのために、シリアスな場面でも、“しくじりアラサー” が何かをしでかしてドタバタやりそうな雰囲気が払拭されていないのが、どうもこうも…

より人物関係を分かり易くし本格的ラブサスペンスらしさを

それにしても、今後がどんな展開になるのは大いに気になる。

出来れば、もっと人物関係を分かり易くして、本格的なラブサスペンスらしさを醸し出して欲しい。でなければ、主人公の伯朗（妻夫木聡）が頑張って深刻な顔をしても「ロト7」のCMに見えてしまうし、異父弟・明人（染谷将太）さんが謎めいた表情で映っても『浦安鉄筋家族』の花丸木くんに見えてしまう。

ディーン・フジオカさんが謎解きすれば『シャーロック アントールドストーリーズ』の誉獅子雄に見えてしまう。そして、楓（吉高由里子）が現れれば “しくじりアラサー” のお仕事ドラマに見えてしまうから。

やはり、本作らしさと言うより、出演者の過去に演じた役を想像させないくらいに、他の登場人物たちの個性を活かして描いた方が良いと思う。とにかく、「2時間サスペンスで良かったのでは？」と、ミスキャストが仇にならないように作り込んで欲しい。

あとがき

番宣では、もっとシリアスなサスペンスに、恋バナ要素加えたようなドラマだと思っていたのですが、全く画面からサスペンスならではの緊迫感や緊張感が乏しく、どこか浮ついた感じに違和感を覚えました。また、コミカルな要素も中途半端で…

いっそ、謎めいた女性に翻弄されて行く部分を薄めにして、 主人公が次第に名家の争いに巻き込まれていく過程を中心に描いて、それが上手くいったら恋バナ要素を添える程度の方が、自然に楽しめるような気がしました。しばらく様子見します。

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35歳の少女 （第1話・2020/10/10） 感想

日本テレビ系・土10ドラマ『35歳の少女』（公式）
第1話『25年ぶりに帰ってきた娘は、 35歳の子供だった…。』、ラテ欄『25年ぶりに目覚めた心が10歳のオトナ』の感想。

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1995年に不慮の事故に遭って25年間眠り続け、心は10歳のまま目覚めた望美（柴咲コウ）。35歳の自分の姿や、母・多恵（鈴木保奈美）や父・進次（田中哲司）、妹・愛美（橋本愛）の変わりようにぼうぜんとなる。声は出せないものの、リハビリを経て望美の退院が決まる中、多恵は事故後に離婚して加奈（富田靖子）と再婚した進次や、多恵と不仲で別々に暮らす愛美に昔と変わらない振りをするよう頼む。久しぶりに家族で食卓を囲んでいると、望美の小学校の同級生・結人（坂口健太郎）が来訪する。望美は大人になった結人に戸惑う。
---上記のあらすじは[[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：なし
脚本：遊川和彦（過去作/〇〇妻、家政婦のミタ、女王の教室、同期のサクラ）
演出：猪股隆一（過去作/怪盗 山猫､家売るｵﾝﾅｼﾘｰｽﾞ､ﾆｯﾎﾟﾝﾉﾜｰﾙ） 第1話
　　　明石広人（過去作/過保護のｶﾎｺ､ﾄﾄﾞﾒの接吻､正義のｾ､わたどう）
　　　伊藤彰記（過去作/ﾔ過保護のｶﾎｺ､ﾊｹﾝ占い師ｱﾀﾙ）
音楽：平井真美子（過去作/映画『60歳のラブレター』､ﾊｹﾝ占い師ｱﾀﾙ）
主題歌：King Gnu「三文小説」（ソニー・ミュージックレーベルズ）

冒頭10分間の脚本の構成と演出で序盤から難しいドラマへ

見たくない番宣がどうしても目に入ってしまい、 1995年、不慮の事故で突然長い眠りについた10歳の少女・望美が、25年後の2020年に、心は10歳のまま、身体は35歳となった望美（柴咲コウ）が目を覚ます。ただ、25年前に幸せだった家族は、既にそれぞれの孤独な “今” を生きていた…と言う話であることは知っていた。

まあ、これだけでも、かなり複雑な基本設定なのに、序盤の10分間の脚本の構成と演出が、更に複雑に映像化しているために、複雑であろうなと言う予測を超えて、既に難しいお話で始まった。土曜日の夜に、ここまで序盤から難しいドラマを持って来るとは想定外だった。

第1話は『同期のサクラ』の雰囲気を引き継いでいるような

さて、脚本家は超が付くほど、一般の人たちには “クセ” のある脚本を執筆して来た遊川和彦氏。だから、「遊川ワールド」とも称される個性的な内容であることは当初から織り込み済みだから大して驚かない。第1話を見た限りでは、第1話の感想すら書かずに終わった『同期のサクラ』の雰囲気を引き継いでいるような感じだろうか。

覆い尽くす"きな臭さ"と"修羅場"の連続が只ならぬ雰囲気を

でも、こうして感想を綴っていると言うことは『同期のサクラ』とは明らかに違う点がある。それは、作品全体を覆い尽くす “きな臭さ” と “プチ修羅場” の連続の只ならぬ雰囲気は、過去の遊川ドラマでは見たことのないシュールさで、新鮮味さえ感じてしまった。だから、感想を綴ろうと思ったのだ。記録として…

遊川作品は主人公が変化するか?しないないのか?のほぼ二択

遊川氏脚本の過去の話題作に『家政婦のミタ』や『○○妻』、『女王の教室』があるが、この3作品については、主人公に奇抜な設定を与えると言う共通項と、その主人公が自身が置かれた環境で変化していくのか、していかないのか、のほぼ二択の結末しかないのも共通点。

従って、本作も主人公の望美が周囲に合わせて変化するのか、逆に希美は変化せず周囲が希美の影響を受けて変化していくしかないと思う。ただ、第1話を見た限りでは、本作のどちらの結末を選択するのか判断は出来ない。しかし、どっちかであると思って見れば、意外と単純なドラマとして楽しめる可能性はあると思う。

期待や違和感を"面白そう"と捉えるか"やっぱり"と受け取るかが、継続視聴の分かれ目かも?

で、あとは完全に好みの問題だ。例えば、現在39歳の柴咲コウさんと、現在29歳の坂口健太郎さんが同級生に見えるかどうか。柴咲コウさんの10歳の少女の演技を見ていられるか。現在放送中の『スーツ2／SUIT2』にバリバリのキャリア女性として出演している鈴木保奈美さんが、シルバーヘアになって演技をしていることに違和感がないか。

30年間昏睡状態だった男レナードが、奇跡的に意識を回復し、人間の尊厳についての問いかけを患者と医師の交流を通して美しく描き、主演で病人役のロバート・デ・ニーロの壮絶な熱演と、懸命にレナードを助けるロビン・ウィリアムズの抑えた演技の名作映画『レナードの朝』（1991年日本公開）を、柴咲コウさんと鈴木保奈美も期待した人は、第1話から門前払い。

これらを、“面白そう” と捉えるか、“やっぱり” と受け取るかで、継続視聴の判断が分かれそうだ。

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あとがき

あーだこーだと言ってはみましたが、私自身は第1話で離脱するまでの嫌悪感や違和感はありませんでした。また、「遊川ワールド × 日テレ」だから、やり放題で大化けする可能性は秘めているのも確かだと思います。

でも、描いている内容が殺伐している割に、あれこれ盛り込み過ぎで、本作で作家が何を描きたいのか、私に何を伝えたいのかは見えませんでした。出来るなら、「問題作」や「異色作」と言うより、「意欲作」や「野心作」に見えるようになるのか、少し様子見しようと思います。

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天使にリクエストを～人生最後の願い～（第4話[全5回]・2020/10/10） 感想

NHK・土曜ドラマ『天使にリクエストを～人生最後の願い～』（公式）
第4話[全5回]『つみびと巡礼歌』の感想。

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島田（江口洋介）の活動を知った時恵（板谷由夏）の父・三井（山本學）が、埼玉・秩父の札所巡りをしたいと依頼。この旅に時恵も同行することになる。三井の本当の願いは、聖哉（林田悠作）を失って壊れた島田と時恵の関係を修復させることだった。だが、心に深い傷を負った2人のすれ違いは続く。
---上記のあらすじは[Yahoo！テレビ]より引用---

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原作：なし
脚本：大森寿美男（過去作/55歳からのﾊﾛｰﾗｲﾌ､64(ﾛｸﾖﾝ)､精霊の守り人､なつぞら）
演出：片岡敬司（過去作/ミストレス~女たちの秘密~、みかづき） 第1,2,4話
　　　田中諭（過去作/ぬけまいる、いいね！光源氏くん） 第3話
音楽：河野伸（過去作/おっさんずラブ、恋はつづくよどこまでも）

第4話は、島田自身が "自分の過去と向き合うエピソード"

序盤は、島田（江口洋介）と 亜花里（上白石萌歌）の出会いの物語を描くのかと思いきや、10分過ぎ、「最後の願い」を叶える仕事を島田（江口洋介）に依頼してきた金持ちの老女・佐藤和子（倍賞美津子） の、この台詞から大きく物語の歯車が回り出した。

和子「修悟ちゃんの最後の願いは何だろう？」

そう、島田自身が “自分の過去と向き合うエピソード” を、現在とフラッシュバックを思わせる映像効果を活かした回想シーンを巧みに行き来して描き始めたのだ。

行き詰りそうな胸の中を、すきま風のように吹いて癒しを…

本来は、島田の過去、特に息子・聖哉（林田悠作）の死と元妻・時恵（板谷由夏）との離婚のエピソードは、深く、重苦しく、辛い内容で、見ているこちらも胸が詰まるような内容だ。

なのに、本作ならではのロードムービーのような気軽さや、巡礼の旅の風景や環境音、カントリー＆フォークソング風の劇伴が、行き詰りそうな胸の中をすきま風のように吹いて通って、癒しを運んでくれる。このような実に丁寧過ぎると言っても過言でない描写力こそが、本作の最大の魅力の一つであることは間違いない。

巨木の緑が島田たちを包み込むようなカットはとても印象的

24分頃、「ボケ封じの寺」で時恵の父・三井（山本學）が、こんなことを言った。

三井「忘れたいことも 忘れたくないことも
　　　みんな あの世に持っていけるんだろうな」

ロケ地は、秩父第八番霊場「青泰山　西善寺」で、本堂前庭の埼玉県指定天然記念物、太い幹がコケで覆われたコミネモミジの巨木の緑が美しく、島田たちを包み込むようなカットは、とても印象的だった。あの巨木、調べてみると、樹齢は約600年、幹囲り2.9メートル、樹高9メートルもあるらしい。

大きな自然に包まれると、一人の人間の悩みや苦労など小さく見えたり思えたりするのが不思議だし、本作のこのシーンだけでもそれが見て取れた。

モミジの巨木をみんなで見上げる様子は、私には芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を彷彿させた。地獄に落ちた泥棒の男が、蜘蛛を助けたことがあったために、釈迦が男に手を差し伸べた…と言う話だ。幾重にも伸びた枝が、救いの糸に私には見えた…

義父の"まだらボケ"を初めて知った島田の気持ちが辛過ぎる

35分には、三井が所謂 “まだらボケ” の症状を見せる。個人的な話で恐縮だが、今は亡くなった私の実の両親の “まだらボケ” に最初に気づいた時の衝撃は今でも忘れることは出来ない。親と子の糸が切れて地獄にゆ～っくりと落ちていくような感覚だった。

そんな感覚を初めて感じた島田と、以前から気付いていた時恵にとって、モミジの巨木の下で聞いた「忘れたいことも 忘れたくないことも みんな あの世に持っていけるんだろうな」は違った意味に聞こえたに違いない…

良質なドキュメンタリーと上質なエンターテインメントの融合

良質なドキュメンタリー映画を見ているかのような臨場感や緊迫感や重厚感がありながら、創作された脚本、優れた俳優の演技、的確な演出だからこそ生み出せる上質なエンターテインメントに仕上がっている。そのことをきっちりと証明したのが、この第4話で言うなら45分頃の、ユーミンの「守ってあげたい」の使い方だ。

さり気なく序盤で種を撒いておいて、終盤の見せ場、聞かせ所で、亜花里が歌って、なんと三井の死後の火葬場のシーンに “サビ” を持って来て、見事な美しい花を咲かせると言う展開も、その一つだ。素晴らしいエンターテインメントだ。

あとがき

濃厚で、後味が清らかな気持ちになったラストシーンでした。最終回の予告編、一体どうなるのでしょう？ 出来れば、続編を作れるようなエンディングにして欲しいと願うのですが…

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