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連続テレビ小説「エール」

NHK総合・連続テレビ小説『エール』公式サイト
第13週『スター発掘オーディション!』の 第63回の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


久志(山崎育三郎)は、裕一(窪田正孝)にすすめられた「コロンブス専属新人歌手募集」のオーディションに応募する気満々。トップクラスの成績で音楽学校を卒業したのにもかかわらず、4年たっていまだ歌手としてデビューできていない親友の久志がチャンスをつかむ事ができるように、裕一は作曲そっちのけでおせっかいを焼いていた。そんなある日、音の声楽の先生、御手洗先生(古川雄大)が突然古山家に現れる!
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

本作をいつも見ていない妻が「先週と今週は面白い」と…

●原案:林宏司 ●作:嶋田うれ葉 ●演出:野口雄大(敬称略)

前回のラストシーンが、“おでん屋の大将” こと鉄男(中村蒼)の粋な計らいで、「はんぺん」をギャラにして裕一(窪田正孝)の願いを聞いた久志(山崎育三郎)が、屋台に座ったまま「♪故郷」の1コーラス目を感動的に歌ったところで「つづく」となった。

あれだけ感動的なラストシーンを受けての今回のアバンタイトルは、どうやって楽しませてくれるのか本当に期待をしていた。

何せ、『エール』を殆ど見ていない妻に「先週と今週は今まで見てなくても楽しめるから…」と言って夕食時に一緒に録画を見ているが、妻も「人間関係が分からない人が見ても面白いし感動するね」と言っている。

"本編にスピンオフ"を"新たな朝ドラの楽しみ方の提供"と考える

この言葉は、「連続テレビ小説」、「連ドラ」の一部としての評価としては、私自身も複雑な心境だ。

ただ、今、これまでの価値観や考え方を変えなければいけないご時世であることを考慮すると、先週と今週(来週も…と言う噂もあるが…)が、NHKが視聴者への「新たな朝ドラの楽しみ方の提供」と捉えれば、これはこれで成功しているとも言えるのだ。

アバンタイトルに、しっかりとホームドラマ要素が入ってた

そして、今回のアバン。やはり、今週のアバンはしっかりと計算されている。前回の冒頭でナレーションが「これは 久志が まだ 祐一と出会っていない頃のお話です」と言ったように、完全に「久志の幼少期のお話」に関する部分は削除して、裕一が久志にオーディションを進めて応募する気になった所だけ摘まんだ。

そして、その延長線上に、文字通り「応募する気満々の久志」をくっつけて、場所もおでん屋の屋台でも古山家でもない喫茶バンブーに置き換えた。ちょうど先週の水曜日が『古本屋の恋』だったから、この辺も少し計算しているような気がする。

そして、音楽学校はトップクラスの成績で卒禦したにもかかわらず、4年間も鳴かず飛ばずで歌手デビューできない親友の久志がチャンスを掴めるように手を焼く裕一。こんな二人のやり取りだけでも楽しいが、ここでちゃんとホームドラマの要素を入れるのが、今週の脚本家だ。

華「お父さん 起こってるの?」
音「お父さん 応援してるの」

音に「応援してる」と言う台詞をわざわざ書いた。やはり、こう言う「作品のテーマを視聴者に植え付け続ける」のは、とても大事だ。それでなくても、スピンオフがどうだこうだと言われているからこそ、ちょこちょこと、こうして「応援」や「エール」に通じる単語を含んだ台詞なナレーションを入れた方が良い。今回もアバンも、テンポ良く、内容も良くて安心した。

裕一が、"右手でマイクを持っている風"の芝居が良かった

さ~て、主題歌明けは廿日市(古田新太)が登場。この人が画面に映るだけで、場所がコロンブスレコードになって “音楽のドラマ” と言う感じが、じわっと伝わるのが良い。そして、廿日市と裕一の関係も、裕一がヒットを出したからだろう、少し距離が縮まったようだ。

それが分かったのが、裕一がオーディションの内容について廿日市を問い詰める際に、裕一が廿日市へインタビューをするように “右手でマイク” を持っている形を作っていた。こう言うのって、それなりに親睦が深まらないと出来ないし、そもそも裕一のような気が弱い人ならなかなかできないはず。

でも、それをやったことによって、二人の関係性が進展したことや、裕一自身が成長しているのも見えた。そして、何より面白い。脚本にあったのか、演出家か窪田正孝さんのアイデアか分からないが、こう言うちょっとした芝居が、ドラマに奥行きを与えると思う。

おでんで、"3人横並びを捉えた1カット"が楽しかった

おでん屋の最初の1カットも面白かった。屋台に鉄男と裕一と久志の3人が横並びに座っていて、カメラがダイアローグ・カット(台詞を喋っている人だけを撮影して、カットを切り替える撮影&編集技法)をベースにして、単純にカメラを横に振るだけでコント風の映像の面白味を作った。

その上、3人が座っているから、カメラが登場人物の目線でなく、視聴者の目線になったことで、まるで自分がその場にいて、3人のやり取りを覗き見ているような楽しさも生んだ。こう言うのも、どんどん取り入れた方がいいと思う。

久志と藤丸の"旅芸人芝居風のコント"を徹底的に作り込んだ

そして、“芸者の藤丸” こと下駄屋の娘・沼田松子(井上希美)が場面に登場すると、カメラは通常のカット割りになって芝居が始まる。そして、松子は本職がお花代で生きる芸者になったことを告げた。そして、コミカルな劇伴が始まると、久志と藤丸のプチ旅芸人芝居風のコントがスタート。

でも、この「旅芸人芝居風」と言うのが、藤丸の芸者菅田と久志の三つ揃いのスーツのアンバランスさ、「金色夜叉」風のお決まりの台詞のやり取りっぽさ、そして鉄男を「おでん屋さん」と他人行儀に呼ぶ完璧なオチを言って、2人揃って舞台袖に消えて行く…みたいなのまでしっかり作り込むなんて、残された裕一と鉄男のポカ~ンとした感じも合わせて、本当に楽しい。

縦書きと横書きで、時代や廿日市と久志の性格が見えて来た

音の、久志のウインクが強力過ぎる…と言うネタを経由して、久々に廿日市の口から飛び出したのが「ひらひらシャツ男」。何度聞いても楽しいし、私はどうしても荒巻さんが言った「前髪クネ男」を連想しちゃって、更に楽しくなる。そして、秘書の杉山あかね(加弥乃)が久志の履歴書を廿日市に渡すと…

廿日市「横書きじゃん! 読みづれえ~」

と、また文句。でも、、これだけで、時代が分かる。該当するWikipediaによると、役所に出す公文書の類が横書きになって来たのが昭和15年(1940)。新聞の見出しの横書き昭和21年(1946)だそうだ。

そして、劇中が現在、 昭和11年(1936) 年だから、まだ縦書きが主流だったと言うことになって、廿日市が文句も言うのも当然だし、久志の “ハイカラっぷり” や “個性的” な性格を表すのに貢献した。縦書きと横書きで、ここまで見えて来るのだから、ドラマって面白い。

「スター御手洗 VS プリンス久志」の始まりは意外とあっさり

7分過ぎ、どうして場面が喫茶バンブーに戻るのかな…と思ったら、遂に、“ミュージック ティーチャー” こと御手洗(古川雄大)が登場し、久し振りに音と再会。 4月に放送された第4週『君はるか』では、「ミュージック ティーチャーと呼んで」の台詞が流行ったし、私もそれが聞きたくて御手洗のシーンを楽しみにしていた。

しかし、今回は「スター御手洗と呼んでちょうだい」に進化した。そこへ、久志が登場。もう、御手洗と久志、古川雄大さんと山﨑育三郎さんが、一つの画面に収まれば、どんな展開になるのか想像は容易い。

その期待の「スター御手洗 VS プリンス佐藤久志」の始まりだが、意外にも意外に、スターとプリンスのプライド合戦に保(野間口徹)と恵(仲里依紗)も絡むこともなく、古山家へ。

でも、ここのスターとプリンスに保と恵を必要以上に(と言うか、全く)絡めないのは、得策だと思う。だって、ここで初対面の2人のくだりを伸ばしたって、それこそ時間の無駄遣い。ここで描くべきは、御手洗が、久志に初対面にして最強のライバルとして存在感をみせつけることだし、ラストシーンもあるわけだから…

今度は裕一の台詞の中に「応援」と言うキーワードがあった

物語は進んで、オーディションの日まで御手洗が、古山家の居候になることが決定。味噌汁の味噌も、暫くは「八丁味噌」になることも決定。

で、当然、裕一は久志の応援団で、音は御手洗の応援団になるわけで、これまたこれまでの展開だと、夫婦喧嘩で一発コントが始まるところを、今週の脚本家は、私の期待通りにコントは封印して、祐一にこう言わせて、夫婦喧嘩を回避させた。

裕一「とにかく… あの2人が悔いなく戦えるように
   精いっぱい応援してあげよう」

そう、「応援してあげよう」だ。これに音も賛同する。でも、これでこのシーンが終わると、今週の脚本家が描くのが得意なホームドラマっぽさが薄いままになる。だから、華に「朝から うるさいな…」と言わせて、オチを作って締め括った。

大人の男同士のガチな闘いに、子どもが割を食うと言う面白さ。その上、書類審査発表の新聞記事を見て、夫婦でハグ。こんなのも、いいと思う。

全8カット約50秒の1シーンで、「御手洗 VS 久志」魅せた!

そして、今回のラストシーンは、「ただの、御手洗と久志の発声練習」。あえて「ただの」と付けたのは、おでん屋のシーンのあと、約50秒のシーンに、全8カット。

巧みにアングルを切り替えて、最後のカットは俯瞰で2人を見せて、発声練習に一区切りがついたところ、ナレーションの「はい。」をピタリと合わせて「つづく」へ。この辺の脚本、演出、俳優が生み出す、「先が見たくなる」感じは、本当に良く出来ていると思う。

あとがき

やはり、『エール』には、“本物の歌” が登場するのが良いですね。こうなってくると、御手洗のスピンオフも見たくなります。さて、次回はオーディションの当日でしょうか? “本物の歌” を楽しみに待とうと思います。

今朝は、不要不急の外出で朝から病院に定期検査で、午後もこれから別の病院へ定期検査。オジサンになると、いろいろ持病があって苦労します。でも、こう言う「応援」してくれる朝ドラがあると、頑張ろうと言う気持ちになりますね。



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連続テレビ小説「エール」

NHK総合・連続テレビ小説『エール』公式サイト
第13週『スター発掘オーディション!』の 第62回の感想。


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久志(山崎育三郎)がなぜ音楽の道に進むことになったのか、そのきっかけについての物語。学校ではクールにふるまっている10歳の久志(山口太幹)だったが、家では父の再婚で新しくやってきた母・玲子(黒川芽以)になじむことができず、葛藤をかかえていた。担任の藤堂先生(森山直太朗)は、ある日クラスの皆で歌っている時に久志の歌の才能に気づいて、学芸会でその歌声を披露することをすすめる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

今週の「劇中の年表(場所も)」に対する演出は良いと思う

●原案:林宏司 ●作:嶋田うれ葉 ●演出:野口雄大(敬称略)

今回のアバンタイトルも、冒頭で「大正八年・福島」のテロップが入った。前回の感想に書いた通り、こう言うのが大事なのだ。

史実や事実がどうであれ、ドラマの中にはドラマの中だけの年表がある訳で、そこを定期的に視聴者に提示するのはドラマとしてやるべきだし、たまたま今回が初見だと言う視聴者もいるのだから、今週の「劇中の年表(場所も)」に対する演出は良いと思う。

今回のアバンタイトルも、なかなか良かった

そして、前回同様に、ナレーションが不得手だと思っていた嶋田うれ葉氏の脚本も、このナレーションを聞けば最適化されているのが分かる。

N「これは 久志が まだ 祐一と出会っていない頃のお話です」

まあ、前回の終盤で、なぜ久志(山崎育三郎)が音楽の道に進むことになったのか…を、今回で描くことは分かっていたが、裕一(窪田正孝)と出会う前の物語を描くとは思わなかった。これぞ、先週と同様の『アナザーストーリー』だ。

実は、鉄男(中村蒼)の幼少期の生活状況については若干の描写があったが、久志について具体的な家族構成等の描写があったと言う記憶がない(あっただろうか?) なんとなく、10歳の久志(山口太幹)の身なりや言動から “人物像” の想像は出来たが物足りなかった。そこを掘り下げるのは面白いし興味が湧く。

もちろん、「今、やる必要ある?」と言う意見もあろうが、私はやれる時にやっておくべき…と思う。さらに、主題歌明けから、お話が始まるのに、10歳の久志が玄関の戸を閉めると言うもの、何となく “訳あり気” でいいじゃないか。

私の明治生まれの祖母は「はんぺん」をおやつに出してくれた

主題歌明け、ドラマとしてでなく、気になったのが、女中(池津祥子)が「奥様が おやつで はんぺんを作っていらっしゃいます」と言ったこと。久志宛の封筒の住所が「東京府東京市麹町」になっていたが、大正8年頃は東京で「はんぺん」を「おやつ」に「作る」と言う習慣があったのだろうか?

ちょっと調べてみたが見当たらなかった。ただ、関内家では「竹輪」を「おやつ」に食べていたから、そう言う家もある… との解釈で良いのか、それとも何かの伏線なのか、少し気になった。

でも、我が人生を振り返ると、私が子どもの頃(東京)の「おやつ」として、甘いものが得意でない私に明治生まれの祖母が「はんぺん」を網焼きにして出してくれたのを思い出した。そう考えると明治時代の女性にとっては、普通だったかも知れない… おぼろげな記憶だから間違っているかも知れないが。

生みの母を探して見掛けるまでの、映像が良かった

3年前に家を出て行った生みの母・麻友(深澤しほ)に会いに福島の住所のところに行ったが、そこもだいぶ前に引っ越したと聞いて、神社の鳥居にもたれて途方に暮れている久志の前を偶然に麻友が通る。

「お母さん」と声を掛けるも、麻友の目線の先には、今の夫(佐藤誠)と子どもがいて、幸せそうな母の新しい家族を見てしまう。大事に、大事にして来た手紙を破り捨てて、その場を走り去る久志。破り捨てられた手紙の上に大粒の雨が降って来る。

この、最初の家で、家主の男を門戸の隙間越しに見え隠れさせるカットや、麻友も朱色の鳥居で見え隠れするカットも、スローモーションの使い方も、久志の心の中のもやもやを、霧が晴れない感じが表現されており、いいなと思う。

教室の中に漏れて来る「雨音」の音量が絶妙だった

シーンが、福島から東京の佐藤家に切り替わると、雨は一段と強くなり、雷まで鳴り出した。ずぶ濡れの久志は家には帰らず、学校の教室に一人いた。そこへ担任の藤堂先生(森山直太朗)がやって来て、久志の濡れた上着を脱がせて、自分のスーツの上着を着せる。

このあたりから、直前まで流れていた悲しげで重苦しい劇伴がフェードアウト。でも、実際なら大きめに聞こえて来るはずの雨音は、ごく小音量にしてノイズっぽくして、これも久志の心の中のもやもや、霧が晴れない感じを表現しているに違いない。だって、このシーンの背景音が無音だと雨を降らせた意味、そのものが無くなるからだ。

「♪故郷」が途中からオルガンの伴奏付きになったのは…

藤堂先生と久志が「♪故郷」を歌うシーンは見応え十分だった。歌い出しの久志は椅子に腰かけていて、藤堂先生に「よし! こっち来て。もう一回 大きな声で」と言われて立ち上がって、再び歌い始める時はオルガンの伴奏無し。しかし、学校からシーンが鈴木家の玄関前に移ると、オルガンの伴奏が入った「♪故郷」にクロスフェードする。

と言うことは、久志は “何度も” 藤堂先生のオルガンで『♪故郷』を歌って、自分の歌を褒めて貰ったことで、「何かあるって思ったのに… 何もなかった」と感じたのは、生みの母に会えば “心にポッカリ空いたままの隙間” が埋まると思ったが、自分の “心の隙間” を埋めてくれるのは、今の母を大切にすることであり、麻友が書いた「心優しい あなたのままでいて下さい」と言う願いを裏切らないこと、そして、そう言う気持ちにさせてくれたのが、「歌」であること。

それらを藤堂先生と歌ったことで学んだのだ。だから、新しい母・玲子に優しくなれた…と思う。

久志にとって藤堂先生に褒めて貰ったことが嬉しかったのか

シーンが、昭和11年のおでん屋に戻ってから、1シーンだけ藤堂先生と久志が歌い終わった場面がインサートされた。藤堂先生が「いいじゃないか!」と褒めたシーンだ。これ、褒められたから音楽室に移動してオルガンで歌った…と言う解釈で良いのだろうか?

藤堂先生がオルガンの前に座って褒めるシーンの方が良かったような気もするが、久志にとっては藤堂先生に「いいじゃないか!」と褒めて貰ったことが大きな自信に繋がったと解釈することにした。

久志が「♪故郷」を歌う場面には、ジ~ンとしてしまった…

そして、裕一が久志に「♪故郷」を歌って貰いたいと言ったら、鉄男がおでん鍋から三角に切った「はんぺん」を2枚、久志に出した。前回の鉄男(中村蒼)のおでん屋の鍋に「はんぺん」らしきものは映っていなかったし、久志も裕一も食べていなかった。

東京のおでん屋なら必ずあるはずの「はんぺん」が映っていなかったからなぜだろう? と思っていたが、こう言うネタのために強調しなかったと言うことか。なるほど。それにしても、最後の大人になった久志が「♪故郷」を歌う場面には、ジ~ンとしてしまった…

あとがき

先週の『古本屋の恋』で、東京・神田の古本屋に、子ども時代の久志が登場しましたが、あの時は、まだ久志は東京・麹町在住だったと言うことなんですね。麻友からの手紙の消印が「大正5年1月10日」だったので、大正5年は東京在住で、冒頭で久志の父親・弥一(日向丈)が「新しい学校はどうだ? 慣れたか?」と聞いていましたから、大正8年に福島に引っ越した。

と言うことは、まだ転校したての頃に、藤堂先生に救ってもらったと言うことになりますね。それは、久志にとって、感謝すべき先生になるはずです。そして、藤堂先生は、3人の個性を見事に見抜いて育てる理想的な先生。そして、作曲、作詞、歌唱の才能の持ち主が偶然に1つの小学校にいたと言う偶然も、とてもドラマチックで良かったです。



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拍手[52回]

月曜プレミア8「小杉健治サスペンス 当番弁護士 梶原藤子の事件ファイル」 (2020/6/22) 感想

テレビ東京・月曜プレミア8『小杉健治サスペンス 当番弁護士 梶原藤子の事件ファイル』公式
『人情派の弁護士が難事件に挑む小杉健治の名作をドラマ化!殺人事件の被疑者の弁護を引き受けた梶原藤子が二転三転する供述に翻弄されながらも真実に迫る痛快サスペンス!』の感想。
なお、原作の小説、小杉健治『不遜な被疑者たち』(集英社文庫刊)は未読。



弁護士の梶原藤子(松下由樹)は、弁護士会から派遣される「当番弁護士」として殺人事件の容疑者・大木悟(荒川良々)に接見。大木は容疑を否認するものの藤子を信用せず、曖昧な供述を繰り返す…。だが、殺された城山錦司(羽場裕一)の“黒い噂”を編集者の高林信介(中村俊介)から聞いた藤子は1人調査を始める!!そこに待っていた衝撃の事実とは…!
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビと、公式サイト]より引用---


原作:小杉健治『不遜な被疑者たち』(集英社文庫刊)
脚本:土屋保文(過去作/映画「明日へ ―戦争は罪悪である―」、映画「時の行路」)
演出:水谷俊之(過去作/ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告~)

主演級の俳優陣と2時間ドラマに欠かせない俳優さんばかり

これまでテレ東系「月曜プレミア8」枠は、7~8本の単発ドラマを放送しており、都度見てきたが、正直言うと感想を書く程の内容の作品は無かった。別に、作品が悪いと言うのでなく、わざわざ時間と労力を割いてまで書く必然性を感じなかったって感じ…

しかし、今回は、これまで本放送枠で放送された作品の中で、一番面白かったから、備忘録のつもりで感想を書こうと思う。

まず、特筆すべきは、豪華な出演者たち。主演の松下由樹さんを始め、中村俊介さん、田村亮さんら、個々で主演作品のあるクラスの俳優さんが、松下由樹さん演じる主人公・弁護士の梶原藤子の脇をがっちりと固めた。その他の脇役の俳優さんたちも、今や2時間ドラマには欠かせない人たちばかり。

なんと二世俳優3人が"刑事役"と言う見所もあった

その上、意図的か、話題づくりなのか、偶然なのか、制作陣の真意は分からないが…

主人公・藤子の義父である梶原萬治役で出演されたのが田村亮さんで、その田村亮さんの息子の田村幸士さんが警視庁湾岸中央署刑事・瀬戸和樹役(共演は無かった)。

また、若林豪さんの息子さんである若林久弥さんが警視庁捜査一課刑事・三浦義男役、佐藤B作さんの息子さんの佐藤銀平さんが警視庁湾岸中央署留置係・児玉隆役でそれぞれ出演され、なんと二世俳優3人が刑事役と言う見所もあった。


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どんでん返しに次ぐどんでん返し、トリックの連続も見応えあり!

物語としては、中盤までは少々中弛みを感じたが、義父の「全体を見ろ!」の言葉で、主人公の藤子が、事件の全体像が見えてくるあたりから、どんでん返しに次ぐどんでん返し。伏線の回収もバッチリだし、トリックの連続はなかなか見応えがあった。

高橋和也さんの俳優としての魅力も増した

東京の浅草を舞台にした点も、しっかりと映像に活かされて「ご当地ドラマ」としても楽しめた。やはり、テレ東が作るドラマだから、東京の良さを引き出してくれると嬉しくなる。また、ゲスト欄に「高橋和也」の名前があったから、何かしらのキーマンを演じるとは思ったが、善人も悪人も両方演じられる俳優としての魅力が、また増えたと思う。

あとがき

主人公の娘の友だち「替え玉受験」の話から「入れ替わり殺人」への展開は、ちょっとドキドキして見てしまいました。個性的な俳優さんが数多く登場していたのに、個々の個性は残しつつ、しっかり主役を立てる演技も良かったです。

また、単純に人情派の弁護士・藤子を描く弁護士ドラマでなく、藤子を支えるジャーナリスト・高林と、同期でありライバルでもあら検事・村川が弁護士に協力すると言うのも悪くなかったです。また、私が見る松下由樹さん出演のドラマは、主役でも脇役でもハズレ無し伝説(私だけ?)も記録更新して嬉しいです。



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連続テレビ小説「エール」

NHK総合・連続テレビ小説『エール』公式サイト
第13週『スター発掘オーディション!』の 第61回の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


コロンブスレコードと契約して5年が過ぎ、裕一(窪田正孝)はご当地ソングや「大阪タイガース」など球団歌を数多く手がけ、安定した作曲家生活を送っていた。ある日、裕一は廿日市(古田新太)から「コロンブス専属新人歌手募集」のオーディション合格者のデビュー曲の作曲を依頼される。裕一は4年前に音楽学校を卒業以来、いまだオペラ歌手としてデビューできていない久志(山崎育三郎)に応募を勧める。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

本作の2つの大きな弱点を、アバンで少しだが回避した

●原案:林宏司 ●作:嶋田うれ葉 ●演出:野口雄大(敬称略)

今週は、裕一(窪田正孝)がコロンブスレコードと契約して5年が過ぎた昭和11年(1936)からスタート。これまで何度も書いているが、本作の大きな弱点に「時代(時間経過)の分かり難さ」と「古山家の経済状態の不明瞭さ」がある。

今回は先週が、ある意味で “時間停止状態” だったから、アバンタイトルで「昭和十一年」とテロップを入れ、更に「裕一は ご当地ソングや球団歌を数多く手がけ 安定した作曲家生活を送っていました」とナレーションが入った。

まあ、欲を言えば、娘の華が生まれた時も「悠々自適」でお茶を濁したし、今回も「安定した」と曖昧にした。朝からお金の話をするのを敢えて控えている可能性はあるが、例えば、「普通の大卒の初任給が年収○○円の時代、裕一の年収は〇〇円」みたいなナレーションを入れても良いような気はするが、一度に欲張り過ぎか…

プロ野球が開幕した翌週の月曜日に、六甲おろしと掛布さん

ただ、これは完全に偶然の産物だろうが、コロナ禍でやっと6月19日(金)にプロ野球が開幕した翌週の月曜日の冒頭で、阪神タイガースの球団歌『六甲おろし』を登場させ、「4代目ミスタータイガース」と称される掛布雅之さんがゲスト出演(因みに役名は “掛布寅男”) されたのは、偶然とは言え、一気にドラマを「作曲家・古山裕一」の朝ドラに引き戻した効果は絶大だ。

やはり、こう言う強運も、特に、東日本大震災から10年の節目を目前に「福島を応援したい」との思いを込めて企画としても、コロナ禍の多くの視聴者に “エール(応援)” を送る朝ドラとして大いに価値があると思う。

GReeeeNの主題歌も脚本家も演出家も期待が高まる布陣だ

メインタイトルは、久し振りに、GReeeeNが歌う主題歌『星影のエール』が流れる定番スタイルになった。先週の『アナザーストーリー ~それぞれの愛のカタチ~』の内容も、イレギュラーなタイトル表示も評価している私だが、やはり定番が戻って来ると嬉しくなる。

そして、今週の脚本担当は先々週、第11週『家族のうた』を執筆した嶋田うれ葉氏。嶋田氏はその1週間しか担当していないが、ナレーションの使い方に多少の難があったが、ホームドラマらしい描写と人間関係の描き分けが比較的ちゃんと出来た脚本家。その人が、アバンから(経済状態は曖昧なのは本作のお約束だから脇に置いといて)的確なナレーションを入れたのは、今週に期待出来そうだ。

演出も第8週『紺碧(ぺき)の空』で朝ドラらしい手堅く清々しい演出をされた 野口雄大氏だから期待が高まる。

アバンと主題歌明けで、古山家の現状を端的に描いた

主題歌明けも、いい感じだ。アバンで裕一の仕事が上手く行っている姿を見せて、主題歌明けでは、音(二階堂ふみ)と4歳になった娘・華(田中乃愛)との幸せな時間を過ごしている…と言う感じを、喫茶バンブーで華がアイスクリームを食べて、音が世話を焼いていると言う微笑ましいシーンで始まった。

『エール』でアイスクリームと言えば、即思い出されるのが第35回(2020/5/15)での、(あの時も)主題歌明けに小山田(志村けん)がシルバー色のアイスクリームカップにアイススプーン、食べかけのバニラアイスにウエハースのアップがあると思う。

そして、今回の華のアイスクリームカップはガラス製で、スプーンは木製…と、ちゃんと変えてある。この辺の細かい演出も見逃せない。

喫茶バンブーのシーンは、単純に良かった!

それにしても、喫茶バンブーのシーンは、いいじゃないか。華のおてんばさと音の躾がしっかりと描かれた上で、「保」と呼び捨てにする辺りは母親似の雰囲気も出ているし、音が母親として一段階成長しているのも見て取れる。

まあ、華を演じている田中乃愛ちゃんは、『なつぞら』で奥原千遥の幼少期を演じた子役だし、『いだてん~東京オリムピック噺~』や『麒麟がくる』にも出演しているから、野間口徹さんとのやり取りも全く動じていない様子。この配役のお陰もあって、月曜からいい感じだ。

古山家の3人家族の日常風景も朝ドラらしいのホームドラマ

時間(時代)経過も、裕一が華を撮影するのが、カメラから8ミリフィルムカメラになったことで表されていた。古山家の3人家族の日常風景も、実に朝ドラの中のホームドラマと言った感じだ。

ちょっとデレっとしている父親と、テキパキと家事をこなす母親と、元気で明るい子ども。そこへ、ちょっぴり夫の浮気心の匂いと、しっかり女房を味付けして。うん、こう言うのが朝ドラだ。

おでん屋に"福島三羽ガラス"が集結してから一気に加速!

5分過ぎ、久し振りに “福島三羽ガラス” が集結した、場所は、元の店主・山根(花王おさむ)から鉄男(中村蒼)が引き継いだ「あのおでん屋」だ。これだけで、まだ鉄男の目が出ていないことも分かるし、意外とおでん屋の経営が上手く行っていることも分かる。

そして、仕事が順調な裕一もいる。だから、腐ってやって来た久志(山崎育三郎)の、オペラ歌手としてデビュー出来ない不満や焦りや苛立ちが余計に見えて来る。そして、ちゃんと犬の遠吠えと犬のインサートカットを入れて、コミカルも忘れずに。こう言うお約束は本当に大事。

そして、「4年前」「3年前」「2年前」「1年前」と1つずつテロップを入れたのも正解。当然だが、衣装も変えているし、8ミリフィルムカメラを買った時期まで見せた。

また、“プリンスの良き時代” の回想シーンも、シネマ風の映像効果とミュゼット音楽で、先週の『環のパリの物語』と、ちょっと被らせるニクイ演出。でも、一番いい芝居をしたのは犬かも…

今週は「久志劇場」と「山崎育三郎劇場」の豪華二本立て!

とにかく、おでん屋に久志がやって来た5分過ぎから、「佐藤久志 劇場」と「山崎育三郎 劇場」の豪華二本立て。先週は、三本立てだったが、それをも破壊しかねない程の破壊力と存在感で、どんどんドラマをけん引して行く。

特に、居酒屋で鉄男のアコギで久志が『船頭可愛いや』を歌い、店の客の親子が感動するシーンには、ちょっとウルッと来てしまった。私が生まれ育った東京の下町は、『夢追い酒(1978)』が大ヒットした渥美二郎さんら、たくさんの “流し” がいた街。そして、今はコロナ禍で “流し” が職を失っていると言う現実。

そんな懐かしさと厳しさの中で、「おかげで明日も頑張れるよ」、「おにいちゃん かっこよかった!」、「たかが一銭 されど一銭」なんて、本当に心が温まるエピソードだ。

あとがき

私も詳しくは知らないですが、企画の早い段階から、ヒロイン役を休ませる目的で、半年の半分あたりの3週間にスピンオフ・ドラマを入れることは決まっていたらしいです。実際にそうなるか分からないですが、少なくとも先週に続いて今週もスピンオフなのは間違いありません。明らかに、音の出番が少ないですから。

でも、先週は先週の面白さや感動がありまして、今週はまだ月曜日だけですが、今週なりの面白さや感動がありそうな気がしました。

とにかく、脚本にしっかりと背骨が通っています。久志と山崎育三郎さんと言う魅力的なキャラクターもいます。そして、『エール』らしい楽しさと感動と励ましの3つの要素に、ちゃんとコミカルも加わっています。どうやら、今週のスピンオフ、いや『アナザーストーリー ~歌って輝け! 未来の星~』も楽しめそうで、何よりです。



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「野ブタ。をプロデュース」特別編

日本テレビ・『野ブタ。をプロデュース』特別編公式
PRODUCE 10『青春アミーゴ』の感想。
なお、原作の「野ブタ。をプロデュース」白岩 玄(河出書房新社)は未読で、ドラマも未見。
 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視させて頂きます。



修二(亀梨和也)と彰(山下智久)が信子(堀北真希)をプロデュース!父の転勤で転校することになった修二だが、彰と信子になかなか切り出せないでいた。そんな中、信子は着実に学校の人気者になりつつあった。その信子をそれぞれの心境で見守る修二と彰。3人が互いの想いを打ち明け合う中で、修二との別れを知った彰と信子がとった行動は…。ひょんなことで信子は一番大切な人は誰かという選択に迫られる。信子が選んだのは…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---


原作:「野ブタ。をプロデュース」白岩 玄(河出書房新社)
脚本:木皿泉(過去作/すいか、富士ファミリーシリーズ、パンセ)
演出:岩本仁志(過去作/時をかける少女2016、崖っぷちホテル!) 第1,2,3,5,7,最終
   佐久間紀佳(過去作/Missデビル、あなたの番です、トップナイフ) 第4,6,9
   北川敬一(過去作/あり得ない!、ろくでなしBLUES) 第8
音楽:池頼広(過去作/相棒シリーズ
主題歌:修二と彰「青春アミーゴ」(ジャニーズ・エンタテイメント)

まえがき

この感想は最後まで見終えてから書く手法でなく、録画を見ながら気になったら一時停止して書いて、チャックしてから進めるスタイルで書いておりますので、読者の皆さんも「その都度、先が分からない」つもりで読んで頂けると、感想の内容が分かりやすいと思います。

また、前回のキャプチャー画像付きの解説が評判良かったので今回も。そして、最終回の感想は過去最長です…

前回4人同時に夢を見る…を受けて最終回のアバンタイトル

なるほど。前回で偶然に4人が同時に同じ夢を見る…と言うファンタジーがあったから、最終回はそれを受けて、サンタクロースの夢を3人が見る…か。でも、前回は同時だったが、今回は信子(堀北真希) → 修二(亀梨和也) → 彰(山下智久)の順番で連動、連携していると言う点で、前回よりも3人の関係が強固なものになった印象。

また、その上で、修二に敢えて「善意の輪」と言う単語を言わせて、直前まで3人の強固な関係を描いて、強固さに急ブレーキをかける。

修二が父の転勤で転校すると言う前回の衝撃的な展開をそのまま引き継がずに、本放送当時の「2005年12月17日」を活かして、サンタクロースを持って来る当たりの予想外の展開で始めるとは、やはり、最終回まで一捻り、二捻りの脚本のようだ。

彰が自身のアイデンティティーを主張するのが本作らしい

クリスマスの夢の話をした翌朝の学校の屋上。ここも、焦らすねぇ。まだ、彰と信子に転校することを伝えられていない修二が、満を持して話そうとした瞬間に、彰が突然にこう切り出す…

彰「みんなに 言いたいことが あるのよ~ん。
  何で 俺のこと 名前で呼ばないの!」

序盤で、夢の連鎖で3人の関係の強固さを印象付けておいて、次から次へと実は強固ではないことを畳み掛ける。

最終回として、「3人は、この先どうなるの?」と言う期待感を視聴者に植え付けるテクニックなのだが、ここへ来て、彰が名字でなく下の名前 “彰” で呼んでほしいと、自身のアイデンティティーを主張すると言うのが、ホント本作らしい。

結局、本作って、3人の「自分探しの旅の途中」を描いている要素もあるから、いよいよ「友情出演」扱いの彰が、首をもたげて来た展開にゾクッとした。

「青空」を強調したカットと「黄色」の修二のカットの関係

早朝で雲一つない「青空」を強調したカットの連続の中に、「黄色」のエフェクターを掛けた修二のカットが2つだけ入る。それも、僅かなスローモーションとコマ落ちの効果を使って、短いカットをより印象付けている。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

まず、最初は、このモノローグの時…

修二(M)「これ以上 仲良くなるのは嫌だ」

要は、「仲良く=強固な関係」になるのを望んでいない、いや、むしろ拒んでいる修二を、修二だけを彰と信子と対照的な心情にいることを「青色と黄色の反対色」の関係を用いて演出しているのだ。

「青色×黄色」は「反対色」と言う関係

ここで、本編から少し離れるが、『色のお勉強会』をやりたいと思う。一般的に色で互いの対象物を強調する場合は「補色」と言う関係を用いる。そう、「青色×オレンジ色」が一般的だ。しかし、この「補色」はどちらか一方を強調すると言う役割が強い。

しかし、「青色×黄色」は「反対色」と言う関係にあって、どちらか一方でなく互いの存在を強調する役割が強い。
※参考リンク(色彩について ー「補色」よりすごい「反対色」ー : ノラの絵画の時間

「青色×黄色」は「反対色」
「青色×黄色」は「反対色」

上↑の絵はゴッホとフェルメールの名画たちだが、どうだろう。いずれも、それぞれを強調し合いつつ、個々も主張しているように見えないだろうか。恐らく、最終回の演出家は、そこを狙いに来ていると思う。これで『色のお勉強会』は終わり。

本編の感想に戻る。最初の黄色の修二のカットのあとの展開は、修二の口から「修二と彰」と言う単語が飛び出すくだりだ。とうぜん、歌手名である「修二と彰」のプロモーション的な場面ではあるが、それを、前段で彰に下の名前で呼んで欲しい…と言う前振りがあるから、まったく商売の臭いがしない。むしろ、「ここで入れて来るか!」と言う斬新さの方が強い。

「3人は、この先どうなるの?」と言う期待感が高まるアバン

そして、そして、2つ目の「黄色の修二」のカットだが。ここまで3人の寄りのカットで繋ぎ合わせて来て、突然、“5秒間” もの太陽と青空を入れ込んだ3人をど~んと引いたロングショット…

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

と「黄色の修二」が直結されて、その中で、再び修二のモノローグが入る。

修二(M)「もうすぐ分かれてしまうのに
     仲良くなったって 悲しいだけだ」

そして、メインタイトルに繋がって行く。ここ、とても印象的だ。アバンタイトルは完全に修二側だけの心理描写になっている。でも、全体を通して見てみると、あまり修二の深刻さが強調され過ぎておらず、3人の仲良しさの方が強い印象に仕上がっている。だからこそ、「3人は、この先どうなるの?」と言う期待感が高まるのだ。

唇だけで心情描写!それが「俳優・山下智久」の秀逸な演技力!

メインタイトル明けは、アバンタイトルと全く違った光景から始まる。信子が下級生からも慕われて来て、着実に全校生徒の人気者になりつつあった。そして、そんな信子をそれぞれの心境で見守る修二と彰…と言う映像になる。

修二は学校で1カットだけ。でも、彰は彰の下宿の豆腐屋の居間の奥で、「彰が忘れたいもの」を封印してある糠床の甕(かめ)を見つめるカットから始まって、彰の正面受けを経由して、山下智久さんには珍しい上手(画面右)向きのアングルのカットが入る。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

この、敢えて表情が見え難いアングルから撮影されたカットが実に良い。直前のカットは表情で複雑な心境を表現しているが、こっちのカットは良く見ると口(唇)の動きだけで彰の心情を演じている。

無表情の時の口や唇の芝居で、登場人物の心情を的確に描写するのが「俳優・山下智久」の秀逸な演技力の一つだと常々思っている私としては、このカットを入れた演出家の気持ちが良く分かる。やはり、「俳優・山下智久」を起用したのだから、彼しか出来ない演技を魅せたいと考えるのは当然だからだ。

彰の気遣いや優しさが、度々登場するのが、これまた良い

さて、礼の糠床の甕の封印を解く時が来る。彰は箸で糠床の奥の方を突くが、信子はビニール袋にも入っていないのに、意外ときれいな「彰の生物のテスト 28点」を糠床の上の方から引き出す。

これ、どう言う解釈をしたらいいのだろう? 彰が修二が隠していることを聞き出すためにわざと「例の写真」とすり替えたのか、それとも、ここも前段の「夢」から繋がって、何らかの仕業ですり替わってしまったのか?

そう思って観ていたら、修二の転校を知った信子が部屋を飛び出して、信子を追い掛けるように修二に言われた彰も部屋を飛び出して行く。で、一人残った修二が糠床の中を箸で探すと「例の写真」を見つけ出した。

そうか、彰の優しさだったんだ。言い出せない修二に “きっかけ” を与えるために、自分は差がしているフリをして、あらかじめ準備しておいたテストを信子に見つけさせたのか。こう言う、彰の気遣いや優しさって、本作に度々登場するのが、これまた良いのだ。

「特別編」は公園のシーンで素敵な場面がカットされている

公園に、今度は彰と信子が二人きり。寒いから、信子に持って来たマフラーを「はい」と掛けてあげる彰。でも、それ以上は出来ずに「上着 持って来るね」と、その場を立ち去ってしまう彰。

でも、ここの編集がちょっとだけ残念なのだ。いや、絶対に編集がおかしいのだ。この「特別編」では、彰が立ち去った直後は、誰もいない彰の部屋で、例の糠床の甕が棚の上に戻されているカットに直結して、更にその直後は修二の家に飛んでいる。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

でも、これではちょっと話が繋がらない。そこで「TVer」で本放送時の映像を見直したら、一度は立ち去ろうとするが、泣いている信子が心配になって足を止めて振り返る彰の印象的なカットがない。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

また、彰の下宿から帰路につく修二と、公園から来た彰が鉢合わせするシーンも丸々カット。彰が修二に信子を慰めるように頼むが、修二が2人に関われば関わる程に別れが辛くなるから断る。

それを知った彰が修二に何も言葉を返せないと言う重要で、且つ亀梨和也さんと山下智久の視線を合わさない芝居がカットされたのは残念だ。それと、自分の部屋でじっと考え込む信子のシーンも無いのが残念…

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

もしも、ここが気になる人は、見逃し配信なりで補強、補完した方が良いと思う。ここがあると無いとでは、その後の修二の父・悟(宇梶剛士)が修二に言う「 お前ってホントに苦労性だな。まずは 自分のこと考えろっつうの」と言う意味の重さが全然違ってくるからだ。

彰と信子のツーショットは素敵なシーンだ!

翌朝の登校風景。信子と彰は既に教室にいて、校庭を歩いて来る修二を上から見ている。

信子「ホントは 寂しいのは私たちじゃなくて
   修二のほうだよね」
 彰「そう言うとこ ホントに人に見せないやつだからね」
    ※「特別編」では、上↑の彰の台詞がカットされている
信子「気持ち良く行かせてあげたいよね。
   笑って見送ってあげたい」
 彰「できる…かな」
信子「やる」
 彰「はい。やろう」

ここ、ある意味で、信子が修二をプロデュースするのを彰に手伝って欲しいと依頼しているカタチになっている。そう、明らかに信子と修二が逆転している印象的なシーンであるし、彰が不安ながらも(「特別編」でカットされている、修二の気持ちを彰が知っている…から)信子に賛同するのも更に印象的だ。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

また、彰が修二の気持ちをとっても慮っている台詞も一部だがカットされているのも残念だ。でも、この彰と信子のツーショットは素敵なシーンだと思う。

いいんだよね、さり気ない潤んだ瞳の「俳優・山下智久」も!

そして、信子は修二に、何か記念に残ることをしたい唐突に言うが、修二は断る。そこで、彰が「ノブタに巫女さんになってもらって。で ノブタパワー注入して貰う」と言う提案をすると、修二は「効きそうだね」と言った途端に、信子が2人の前から姿を消して、教室からカバンを持って走り出す。

向かった先は、 ゴーヨク堂店主・デルフィーヌ (忌野清志郎)の実家だと言う神社。既に、デルフィーヌが神主姿で信子を出迎える。そして、下校途中の修二と彰の背後から、巫女の衣装を纏った信子が駆け寄って、ノブタパワー注入!

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

この時の堀北真希さんの表情も良いのだが、本当に注入をやってくれた信子を見る彰の目に、明らかに光るものがあるのだ。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

いいんだよね、こう言うさり気ない潤んだ瞳の「俳優・山下智久」も。それにしても、信子から修二に「感謝」と言う言葉が飛び出したのは、本当にプロデュースが上手く行って、更に信子自身が変わったことを的確に表現している、いいシーンだと思う。

時々、家族パートを描くことで、学園ドラマのパーチにメリハリがつく

いじめっ子たち? に追い掛けられる怖い夢を見た修二の弟・浩二(中島裕翔)が、うなされて目を覚まし泣いている。

修二「引っ越すの不安なの?」
浩二「…(頷く)」
修二「大丈夫だよ。心配すんなよ」

声を出さずに泣こうとしている浩二に、修二が添い寝をして宥める。やはり、幼い弟と離れて暮らす、自分だけが好きなように一人暮らしのために残れない…と察したのだろう。こうやって、時々、家族のパートを描くことで、学園ドラマのパートとのメリハリがつくと言うのも、本作が単純な学園ドラマでない証拠だと思う。

修二と彰の考え方の微妙な"差"が結末を予想させない…

翌日の学校。修二が引越しを決意したことを彰に話す。

修二「俺さ… やっぱ 引っ越すわ」
 彰「何で?」
修二「弟のことも心配だし。
   だってさ ウチの親父が仕事で遅くなった時とかさ
   あいつ 1人で飯とか食わなきゃ いけなくなるじゃん」
 彰「そりゃそうかもしんないけどさ。
   何で もっと自分のことを大事にしないの?」
修二「『誰かのために』っていうのはさ
   自分を 大事にしてないってことなのかな…。
   俺さ、ノブタのために一生懸命やってる時が
   一番 自分らしかったなって思うんだ。
   お前も そうじゃない?
   ノブタだってさ 誰かを喜ばそうとしてる時が
   一番 生き生きしてない?」

ここだよね。彰が「何で もっと自分のことを大事にしないの?」と修二に言う。「自分の好きなようにする=自分を大事にする」と考えている彰と、「誰かのために好きなことをする=自分を大事にする」のでは無いのかと迷う修二の対比。修二も彰も「自分を大事にする」と言う目的は同じなのだが、手段や方法が違う。

きっと、この辺の “2人の差” がエンディングに大きな影響を与える気がしてならない。だって、そう映像で描いているから…

信子は、孤独な蒼井の気持ちが分かる人間だから…

シーンはガラリと変わって、学校を休んでいる蒼井かすみ(柊瑠美)の家にやって来た信子。「学校… 出て来ないの?」と聞くが…

蒼井「学校行ったら また小谷さんのこと
   いじめちゃうかもしれないし」
信子「いいよ いじめられても。
   蒼井さんの いじわる 全部 私が受け止める。
   受け止めてみせるから」
蒼井「小谷さん バカだな。ホント バカだよ」
信子「だから 学校来て」
蒼井「考えとく」

信子は、孤独な蒼井の気持ちが分かる人間だから、あんなに酷い目に遭わされたのに、蒼井に学校へ来るように言う。でも、このやり取りを聞くと、蒼井は本当の孤独の辛さや寂しさを知らないようだ。

だから、信子をあそこまで傷つけても平気だし、前回で反省したように見えても、心のどこかで信子を小馬鹿に見ている。一体、蒼井が素直になる日は来るのだろうか?

信子が、3人で罰に当たる方を選択すると言うのが面白い!

シーンは神社へ。信子がバイトで境内の庭掃除をしている。絵馬掛所には、信子の自筆で「蒼井さん 復帰」、「彰 楽しいことがいっぱい」、「修二 どこに行っても大丈夫」と書かれた絵馬が、風に揺られてぶら下がっている。

そこへ、子どもたちが走り寄って来たために、信子がバランスを崩して転んでしまい、その時に神社の木の小枝を折ってしまう。そこへ、デルフィーヌがやって来て…

デルフィーヌ「これね 結構 大事な木なんだよね」
    信子「ど… どうなるんですか?」
デルフィーヌ「罰が当たる」
    信子「罰!?」
デルフィーヌ「それもね 自分じゃなくて
       自分の一番大切な人に 当たっちゃったりすんのよね」

自分が書いた3体の絵馬を見て、「困ります!」と言う。すると、デルフィーヌが「ん~ とりあえず これ その人に渡しといて」と、懐から「お札」を取り出して信子へ渡す。信子は、もう一つ欲しいと願い出るが、「一番大切な人なので 一つしかダメ」と断られる。そこで、信子は、修二と彰を探しに、街の中を走り出す。

そして、川辺に座る2人を見つける。修二と彰のどちらに渡すか結論が出ないまま、ナント、「3人で 罰当たろう」とお札を川へ捨てちゃう信子。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

なるほど。一番大切な人を選ぶ苦しみを味わうより、修二と彰のどちらかを選んだ際のギクシャクした関係よりも、3人で罰に当たる方を選択すると言うのが面白い。

修二がまり子に対して、とても素直な人間になった瞬間

学校の階段の踊り場で、偶然に修二と、まり子(戸田恵梨香)が鉢合わせする。そこで、自分が転校することを自身の言葉で伝える。単純なシーンだが、修二がまり子に対して、とても素直な人間になった瞬間として、いいシーンだなぁと思う。

修二と信子が互いに「ありがとう」と言い合う見所が削除か…

終業式のあとの教室(教室内にカバンなどが無いから)へ、“キャサリン” こと教頭兼美術教師・佐田杳子(夏木マリ)がやって来る。教室内には修二と彰と信子がいて、佐田が “3人” に “3つの色違いの小さな人形” を手渡す。

佐田「2つ集めると幸せになるらしいよ」
信子「私たちに幸せを分けてくれるんですか?」
佐田「1個ずつだから 今は 幸せの種みたいなもんね。
   あとは あなたたちの運と努力で増やして 幸せになって
   その幸せを ひとにもあげられる 大人になってください」

ここの解釈は、ちと難しいな。私は、第6話に登場した「ピンク色のブタさんグッズ」のように、キャサリンから貰ったそれぞれの人形に似せた人形を各自が作って、渡したいと思える人に出会い、その人と幸せになったら、また “幸せのおすそ分け” みたいな感じで、「2つ集めると幸せになるらしいよ」と幸せになって欲しい人に渡す。

そんな、幸せで懐の深い大人になって欲しいと言う教師、大人としての願い…かなぁと。だから、クリスマスのプレゼント交換会のくだりのラストは、今はまだ運も努力も足りない3人は、3つ集めて(3人集まって)一つの大きな幸せになると言う締め括りで良いと思う。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

でも、本放送時は、このシーンのあとに、次のシーンがあって…

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

カメラは豆腐屋の外に出て、豆腐屋の全景から2回の修二と信子に、ゆっくりズームインして、修二が信子に「人を好きになること」とはどんなことなのかを教えてもらったとお礼を言う場面と、信子が自分を変えてくれたことへの感謝の気持ちが修二に伝わっていないことを悔いるシーンがある。

これが、結果的に修二がまり子に本当の気持ちを伝えるきっかけになるシーンになるのだが、なぜここをカットしちゃったかなぁ。お互いに「ありがとう」と言い合うのが一番見所なのに…

名台詞があるシーンを削除しても新たな価値観を創造する凄さ

休校日の学校で、修二がまり子との最後のデートのために用意したのは、教室いっぱいの「海」。いろいろ飾り付けをして、波音の効果音を流して、海辺のデートを再現した。と思いきや、波の音は、信子と彰が放送室で、昭和のラジオのように、「竹かごと小豆」で作った効果音だった。

そうか、この「特別編」は、敢えて修二と信子の「ありがとう」のシーンを削除して、「3つの人形」と「海」を直結することで、3つ集めて(3人集まって)一つの大きな幸せになると言う編集だったのか。

確かに、深読みしないと、豆腐屋の2階のシーンって、修二も信子を好きだったの? と受け取っちゃう人がいそうだからか(ん? この解釈で合ってるかな?)。とにかく、名台詞があるシーンをカットしても新たな価値観を創造するとは、やはり視聴者目線で編集していると言うことだ。素晴らしい!

仮の「海」での、修二とまり子の最後のデートの場面も感動的!

で、仮の「海」での最後のデートで修二が本音をまり子に話す。

 修二「俺って バカだよな。
    いっぱい 時間あったのにさ。
    まり子と 楽しもうと思えばさ
    いくらでも楽しめたのになぁって。
    今度 会う時はさ
    もっと マシな人間になってるつもりだから」
まり子「おいしい!」
 修二「本当に おいしい?」
まり子「うん」

やっと、修二がまり子に向き合えた。そして、成長を誓って再会を願う…なんて、青春だ。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

そんな本心を言ってくれるようになった修二に対して、まり子が「うん 待ってる」とか言わないで、ちょっと嬉しそうな顔をしてお弁当のおかずを食べた味の話に、さらりとすり替えるのも、なんか青春って感じだ。オジサン視聴者としては、修二とまり子には、いつかまた笑顔で再会して、2つの人形を持っていて欲しいと思ってしまった…

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

豆腐屋の主人・一平の名言と、山下智久さんの演技の絶妙さ

修二が引っ越して行く朝の豆腐屋。彰が修二の見送りに行かないのを心配して、 彰の下宿先の豆腐屋の主人・平山 一平(高橋克実)が彰に声を掛ける。いつも、一平は名言を残すから、最終回も期待したら、見事にあった。

一平「苦しいからって 逃げてどうすんだよ。
   修二と会ったことも 全部なかったことにするのか?
   うん? 苦しいことを 投げ出すってことはさ
   楽しかったことも 全部 投げ出すってことなんだぞ。
   いいのか?」

本放送版では、この後に彰の「無かったことになんか 出来ないよ」って台詞があっての、次のカットになるのだが。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

「俳優・山下智久」のこの↓カットの演技があれば、カットされた台詞が無くても、十分に彰の心情はこちらに伝わる。やはり、演出担当や編集担当は「俳優・山下智久」の演技力を信じ切っているのが、この分の編集でも分かる。

3人だけの友情の証である"ノブタパワー注入"のポーズも良かった

修二がトラックの助手席に乗って、引っ越し先に向かう途中。土手の上でクラスメイトたちが「修二」の名を呼んで手を振っている。トラックを降りて、クラスメイトたちの所に駆け寄る修二。集団の一番後ろに、彰と信子。信子もちょっと笑ってる。集団と少し離れた川辺には、蒼井もいた。

いつもの不気味な笑みが蒼井から消えていた。結局、前回で真摯な気持ちでクラスメイトに頭を下げた修二が、クラスメイトたちに認められたと言うことだ。そして、3人だけの友情の証である “ノブタパワー注入” のポーズも良かった。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

終盤の、彰と修二と信子の会話の描き方が上手過ぎる!

そして、修二は新天地へ。なるほど、ここで、まり子とのラストデートの「海」が繋がるのか。修二の「この世の全ては ゲームだ」のモノローグで始まる新しい生活は、また、素の自分を隠し、 文武両道な人気者「桐谷修二」を演じるのか… と思いきや、教室の後ろに修二と同じ学ランを着た彰が立っていた。

それは、修二の幻視ではなく、彰は前日に父親の会社のヘリコプターで転校して来たと言う衝撃の事実。

一方、修二と彰が転校してしまった私立隅田川高等学校では、遂に、信子が笑えるようになった。まり子とも友だち関係は上手く行っている様子。で、笑えたことを修二と彰に報告しに行こうと階段を駆け上がる途中で、「いない」ことに気付く。

そして、信子が「修二と彰!は…。2人で1つだって」と言ったのがきっかけで、彰がヘリで飛んで来たことも明かされる。

修二「ノブタが言ったの?」
 彰「私は 1人で大丈夫だよって」
修二「あいつ 本当 1人で大丈夫なのかな?」
 彰「最初の3日は泣くけど
   あとは 絶対 立ち直ってみせるのよ~んって」
修二「ノブタ そんなこと言ってたんだ」
 彰「おう」
修二「そっか」
 彰「なぁ… この空のず~っと向こうにさ
   ノブタは いるんだっちゃ」
修二「あっ ねぇ! あの雲さ
   何か 笑ってるように見えない?」
 彰「そう?」
修二「ほら あれだよ あれ」

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

信子「私… 笑えるようになったよ。
   ちゃんと… 笑えるようになったよ!」
修二「俺たちってさ…」
 彰「ん?」
修二「どこででも 生きて行けんだよなぁって…」
 彰「何? ド~ン。
   聞こえねえでしょうが… 気になるだっちゃ」

ここの台詞のやり取りの描き方が上手過ぎる。巧みに場所と入れ替えながら、台詞も所々モノローグ扱いにして、場所も時間も違えど、3人の友情は繋がっているように、ちゃんと映像で魅せた。

ラストシーンのラストカットをストップモーション処理したのは、演出のお手本!

特に、上↑の台詞のあとの、学ランのまま海に入って、互いに水でじゃれ合う修二と彰のスローモーションの映像と尺と音楽の選曲のバランスの良さは絶妙だ。そして、最後の最後で、もう一度「俺たちは… どこででも生きて行ける」と修二のモノローグを加えて、ストップモーション。

「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第10話/最終回・2020/6/20) 感想
©日テレ

この、ラストシーンのラストカットのケツ(最後の処理)をストップモーションにしたのは、演出のお手本のようだ。フェードアウトだと未来を感じないし、ホワイトアウトだと夢物語になってしまう。そこで、永遠と続く印象を強烈に与えるために、4秒間のストップモーションに、1秒間のホワイトアウト。

ここ、残念ながら本放送時の編集の方が断然に勝っている。ストップモーションは3秒で、ホワイトアウトは無しで、そのまま「青春アミーゴ」に直結する潔さが、やはり本作のベスト編集だと思う。

是非、DVDか見逃し配信で、最終回だけでも見直したら、本作のスゴさ、亀梨和也さん、堀北真希さん、戸田恵梨香さん、そして山下智久さんの演技力や表現力、存在感に圧倒されると思う。

あとがき

いやぁ、スゴイ作品でした。全体を通して描かれるのは、あくまでも、修二と彰と信子の3人それぞれの内面的な苦悩や葛藤を通して成長し、性別を超えた友情を育む姿ですが、第6話までと第7話以降が殆ど別のドラマって感じの構成は新鮮ですし、秀逸です。

ドラマの前半は、いじめられっこの信子のプロデュース作戦を通して、「学校の教室(クラス)」と言う枠組みの中で、3人が自分の居場所を模索する過程が描かれました。

また、ドラマの後半では、素の自分を隠し、 文武両道な人気者「桐谷修二」を演じて来た修二自身が現実と隔絶し始める苦悩、彰の信子への恋心、蒼井のいじめ…と言った様々な対立や対峙が絡んで来て、「クラスの人気者」が逆転すると言う展開を経て、個々が戸惑い、翻弄され、傷つきながら、それでもお互いを信じて友情を育み姿は、本当に清々しかったです。

自分のことを大事にすることが、一番大切な人を傷つけないこと。
苦しいことから逃げたら、楽しいことも逃げてしまう。
この2つは、今の時代、特に、今のご時世に十分通ずるテーマだと思います。脚本と演出も見事でしたし、俳優さんと女優さんたちの演技も素晴らしかったです。

また、特筆すべきは、「俳優・山下智久」が放つ、美しくて優しい表面と、その裏にあるたくさんの苦悩や葛藤を魅せる演技力の素晴らしさの原点を見たような気がしました。これで、結末が分かったので、安心して明日から、Amazonから届いたDVD-BOXを見直します。

毎回の感想に、たくさんのWeb拍手やコメント頂き、ありがとうございました。

山下智久さんのファンの皆さんへ

ご訪問、ありがとうございます。本放送当時、読者の皆さんからたくさんの応援を頂いた山下智久さん主演の『アルジャーノンに花束を』と『インハンド』の全話の感想もあります。最終回の感想文に全話の感想のリンクがあります。
アルジャーノンに花束を:Web拍手への御礼と最終回の新たな感想
インハンド(第11話/最終回・2019/6/21) 感想



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みっきー
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男性
【職業】
宴会/映像ディレクター(フリーランス)
【自己紹介】
東京下町生まれ千葉県在住。
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