NHK総合・連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(公式)
第3週『たった五日で花嫁に』の 『第15回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第15回】
いよいよやってきた見合い当日、昭和36年1月25日。飯田家は朝から準備で大騒ぎ。源兵衛(大杉漣)はミヤコ(古手川祐子)にあれこれと指示を出し、布美枝(松下奈緒)は緊張でいてもたってもいられない気持ちだった。茂(向井理)が修平(風間杜夫)と絹代(竹下景子)に伴われて飯田家に到着し、仲人の谷岡(小林隆)の進行のもと、見合いの幕が静かにひらく。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第15回】
こう言うアバンタイトルが好きなのだ!
私は、こう言うアバンタイトルが好きなのだ。何がって? ドラマにとっても、ヒロインにとっても、そして視聴者にとっても、いよいよ描かれる「見合いの当日」のアバンタイトルと言う構成ならではの魅せ方で、視聴者にサービス精神旺盛に表現するのが…だ。
僅か30秒のアバンで短いカットを繋ぎ見事に見合いの朝を描いた!
1カット目で、場所が酒屋であること、2と3カット目で近所の「魚八」と言う夫婦がやって来たこと、そこから続けて、留蔵(春海四方)の「おはようさん。今日 見合いだげなね?」で時間が朝の開店前であることと、この日が見合いの当日であることを伝え…
妻の克江(梅沢昌代)の「まとまるとええね」で布美枝(松下奈緒)が近所の人たちに好かれていること、再び留蔵の「姉ちゃんが片づいたら」で、窓を拭いていたのが布美枝の弟で未婚であることまで一気に描いて、それらを締め括るようにナレーションで解説。
更に、俊文の「おばちゃん」で布美枝がそう呼ばれる年齢になっていることと同時に、この見合いがドタバタ劇のように楽しくなるような予感まで漂わせて、主題歌へ。ここまで僅か30秒足らず。まるで、俳句のように短いカットの切り替えしで見事に、“いよいよお見合いだ” な雰囲気を醸し出した。そう、このような洒落ていて、粋な演出が好きなのだ。
主題歌明けは、鮮やかな手法で、アバンでの零した水のネタ回収
主題歌明けも、まだ第15回なのに恒例のような楽しさを感じる、父・源兵衛(大杉漣)の「娘・布美枝を出来るだけ小柄に見せる作戦」と、その極秘任務などを任されて大忙しの母・ミヤコ(古手川祐子)の図。準備で大忙しなのを描きながら、アバンで花を入れた桶の水を零したネタの回収で、この源兵衛の台詞だから面白い。
源兵衛「はあ~ 背も高いが 足も大きいなあ!」
まるで刑事ドラマの事件後の現場のようにカメラを床板の上ギリギリに据え置いて、布美枝の濡れた足跡を強調した上で、「11文ありますけんねえ」と事実を言ったミヤコに、更に源兵衛が作戦の大切さを補強。ドタバタが続くかと思いきや、今度は登志(野際陽子)と布美枝の回想シーンで、グッと落ち着かせる。
「布美枝を出来るだけ小柄に見せる作戦」の魅せ方がお見事!
むやみやたらに騒動を騒動として “あざとく” 演出するのでなく、見合いの準備に於ける「娘・布美枝を出来るだけ小柄に見せる作戦」と言う騒動を通して、飯田家の家風や個々の人間性を “必要最小限” に演出して魅せた。見合い相手がやって来るとの知らせが来た時、源兵衛が廊下のランプに頭を一瞬ぶつける辺りの演技も見事だ。
"視聴者を巻き込んで"進める脚本と演出のさじ加減の上手さ
そして、前回で屋外ロケの使い方が巧いのが今週の演出担当の渡邊良雄氏が、スタジオセット(追記:オープンセットのカットもあった)の中に黒塗りの「安来タクシー」を走らせると言う工夫を見せた。劇伴も実に内容にピッタリ。タクシーから降り飯田家に到着した茂(向井理)は茂で、修平(風間杜夫)と絹代(竹下景子)の「見合いの合否を見極める作戦」会議。
単純に両家を交互に描くのでなく「楽しい作戦会議」で、両家の違いを面白く描いているように見えるには訳がある。それは両家の作戦を知っているのが当事者たちと、視聴者自身だけだから。最近の朝ドラに多い「視聴者置いてけぼり」とは真逆なのだ。この辺の視聴者を巻き込んで進める脚本と演出のさじ加減は上手いと言うしかない。
朝ドラ名物を "視聴者がヒロインと一緒に体験する" 面白さ
仲人の谷岡(小林隆)の進行のもと、見合いの幕が静かに開くが、当然一筋縄では進んで行かない。朝ドラ名物に “これ見よがし” の覗き見や立ち聞きがあるが、ここでは敢えて覗き見と立ち聞きをさせるのを、布美枝が少しだけ開けた襖の間から “視聴者がヒロインと一緒に体験する” と言う展開には恐れ入った。本当に飽きさせない。
脚本と演出の"見せるべき情報量"の"さじ加減"の絶妙にスゴイ
いよいよ布美枝が見合いの席に合流すると、「目玉」をきっかけに茂が布美枝に興味を持ち始めたのが分かる。この「目玉」と言うのが良いではないか。
とにかく、茂と修平が “下戸” であることが判明したあたりから、雲行きが怪しくなるが、そうなればなる程に、物理的にも、心理的にも、布美枝と茂の “距離感” が絶妙なのが活きて来る。
前回の感想にも書いた通り、サブタイトルにもあるように「布美枝と茂が必ず結婚する」と言う視聴者が分かり切っていること。それを視聴者に興味が湧くように近すぎず通し過ぎずに置いた上で、茂に突拍子もない質問をさせる…
茂「自転車は 乗れますか?」
茂の “独特な個性” を描きつつ、布美枝の安堵の気持ちも描いて終了。今回も、あっと言う間の15分間だった。とにかく、詰め込み過ぎの印象が全く無いのに、満足感は十分過ぎる位にある。やはり、脚本と演出の “視聴者に見せるべき情報量” の “さじ加減” が巧みだと思う。
あとがき
今日(2019/6/26)は、ニュース「安倍首相記者会見」があったために、第15回だけの放送でした。サブタイトル通りに進むとすると、あと2回で結婚まで一気に進むのか、結納から結婚までの日取りが決まるのか分かりませんが、今のところ不満はありませんね。むしろ、不安が解消されつつあります。このまま進むのを祈ります…
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第3週『たった五日で花嫁に』の 『第13,14回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
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【第13回】
昭和35年の秋。布美枝(松下奈緒)と、東京に住む貸本漫画家の村井茂(向井理)との見合い話が持ち上がった。茂にはまだヒット作がなく、貧しい暮らしを強いられていた。漫画で成功するべく仕事に全力投球したい茂は結婚に関心をもっていなかったが、郷里の境港より上京してきた父・修平(風間杜夫)と母・絹代(竹下景子)から布美枝との見合いを強引にねじ込まれてしまう。
【第14回】
布美枝(松下奈緒)は茂(向井理)との見合いを控えて、期待と不安の入り混じる思いで日々を過ごしていた。貸本漫画家という相手の職業も、東京住まいであることも、生まれ育った大塚の町を出たことのない布美枝には想像しづらいことだったのだ。いっぽう、漫画が当たらずに東京で貧乏暮らしをしている茂は、見合いのための洋服の調達にも苦心するありさまだった。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第13回】
最近は脇役で光り輝く向井理さんの"夫役"が楽しみになった
本放送時は2010年4月11日(月)で、劇中は昭和35年(1960)の秋。いよいよ、向井理さん演じる村井茂の登場だ。2014年の『信長協奏曲』以来、主演よりも脇役で光り輝く印象が強くなった向井理さんが、ヒロインの夫役をどう演じるのか楽しみになって来た。
"水木しげる風"な父の雰囲気や、息子と両親の対比が楽しい
その理由の一つが、茂(向井理)の父・修平(風間杜夫)と母・絹代(竹下景子)のキャラクターと存在感の楽しさだ。特に興味深かったのは、風間杜夫さんが演じる父の修平は、どことなく “水木しげる” に似た雰囲気を醸し出している点だ。また飄々とした茂と、正直者でひょうきんな両親との対比も面白い。
茂初登場の回としては、十分過ぎる程 "ツカミ" はオーケーだ
10分過ぎに、一度、昭和21年(1946)の春に、14年分も物語がタイムスリップする展開も、中々工夫が活かされた脚本と演出だ。放送尺は僅かな回想シーンではあったが、母の絹代の気持ちをサラリと描いたし、村井家の家風も描かれた。
久し振りに、15分間があっと言う間の朝ドラに再会した…そんな『ゲゲゲの女房』の第13回。とにかく、茂初登場の回としては、十分過ぎる程の “ツカミ” はオーケーだった。
【第14回】
母・ミヤコが蜂に刺されて医者を呼びに行ったのを思い出した…
『まんぷく』でも屋外ロケのシーンでは一定の巧さを見せていた渡邊良雄氏の演出が、第3週も光っている、そんな印象で始まった第14回。
で、第6回で、母・ミヤコ(古手川祐子)が飼っていたハチに刺され、意識を失って倒れたために、布美枝(子役:佐藤未来)が医者を呼びに町へと走ったくだりの時にこんな感想を書いた。
「引っ込み思案で消極的」と言う布美枝の特徴に加えて、今後「土壇場で力を発揮する」と言うキャラ設定に繋がって行くと、布美枝のヒロインとしての人間性が深まって良いと思う。とにかく、日常では描けないヒロインの特徴を、“非日常である騒動” でサラリと描いたのは良かった…と。
似たエピソードでヒロインが「土壇場で力を発揮」を重ねたのは巧い!
そして、今回では、布美枝よりも年下の義姉・邦子(桂亜沙美)の突然の出産と言う “非日常である騒動” で再び「土壇場で力を発揮する」と言うキャラ設定が描かれた。
邦子の「布美枝は いざとなったら 肝が据わって 思い切った事ができる子だって」と「どこ 行っても やってけるよ!」の台詞でも補強された。丁寧に布美枝のキャラ設定を紡いでいる印象だ。
茂がマイペースでなく、自己主張し自信あり気なのが描かれた!
一方の茂のキャラ設定の描き方だが、前回の “飄々とした” マイペースな雰囲気を排除して、どことなく “水木しげる” に似た雰囲気を醸し出している父・修平を真似させた感じで、自分なりの考えがあることや、自信あり気な様子も描かれ、良い感じだ。
第13回と14回で一番良かったのは、布美枝と茂の両方を…
だが、一番良い感じなのは、家族を絡めて同時並行に描き、両者、両家が対照的であることを、おもしろ楽しく描いている点だ。
周知の「布美枝と茂が必ず結婚する」の描き方が秀逸!
更に、きっちりと時間経過をしながら、サブタイトルにもあるように「布美枝と茂が必ず結婚する」と言う視聴者が分かり切っていることを、興味が湧くようにエピソードを両家交互に描いて魅せている点だ。そのために、視聴者には自然と脇役の設定も入って来るし、物語には入って行ける。これ、中々出来ることではない…
あとがき
ベタな展開ではありますが、とてもドラマらしくて私は好きです。やはり、騒動を描くのでなく、騒動で登場人物を描く…これこそが、ドラマのやるべきことであり醍醐味。それを、今のところ上手くやっていると思います。
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NHK総合・連続テレビ小説『なつぞら』(公式サイト)
第13週『なつよ、“雪月”が大ピンチ』の 『第75回』の感想。
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雪次郎(山田裕貴)を菓子職人の道に戻すため、北海道から上京した雪之助(安田顕)、妙子(仙道敦子)、とよ(高畑淳子)。雪之助たちの説得に対し、雪次郎は、自分の夢を追わせてほしいと必死に懇願する。しかし、雪次郎の抵抗もむなしく川村屋に連れ戻されてしまう。なつ(広瀬すず)は、雪之助と雪次郎、お互いの気持ちがわかるだけに、どうしていいのかわからないのだった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
まえがき
前回の感想で、読者の「通りすがりさん」から、私のナレーションの記載及び理解不足についてご指摘を受けたので(ありがたいと思っていますので、誤解のございませんように)、今回は丁寧に見てみたつもり。しかし、この作品を複数回見直すのは本当に苦痛と言うか何と言うか…
安易に"筋"と言う単語を使うから、こんな矛盾だらけになる
とりあえず、主題歌明けに北海道から上京した雪之助(安田顕)、妙子(仙道敦子)、とよ(高畑淳子)が、 咲太郎(岡田将生)に囲まって貰っている雪次郎(山田裕貴)と再会した。そこで、とよが、こんな事↓を言う…
とよ「すぐ行くのが筋だ」
川村屋を辞めるなら辞めるで、きちんと川村屋に謝罪すると言う “筋” を通せと言うことらしい。また、私の見間違いがあるかも知れないが、前回で雪之助たちが、日曜日の早朝におでん屋「風車」に行く前に、ベーカリー兼カフェ「川村屋」に立ち寄ったとの描写は無かった。
私の感覚がおかしいのかも知れないが、普通 “筋” を通すなら、雪之助たちは事前に状況は把握しているのだから、上京したら最初に向かうべきは「川村屋」でないと変では?
余計なお世話だが、「風車」と「川村屋」は業種の違いから、普通は「風車」の方が閉店時間が遅い訳で、それを考えたら幾ら主人公を画面に映したいとは言え、1カットで良いから雪之助たちが「CLOSE」の札の掛かった「川村屋」を訪れて、止む無くそこを後にする姿が欲しかった。
と書くと、擁護派は、「北海道から出て来た雪之助たちがなつ(広瀬すず)を頼るのは当然だ」と言うだろう。しかし、なつが翌日が日曜日なのに徹夜明けで、窓を開けたから良かったものの、なつが久し振りの日曜日だから遅くまで寝ていたらどうなっていたのか?
結局、安易に “筋” と言う単語を使うから、こんな矛盾だらけになる。それこそ、物語に “筋” を通すなら、もっと細かい部分に配慮して、作品づくりをするべきだと思う。
"他人"の"無関係"な話を ここまで感動的にする必要ある?
さて、「川村屋」と菓子屋「雪月」の関係者の出演者目当てで見ている人、「北海道編」を名残惜しんでいる人には楽しく感動的な家族のお話に見えるかも知れない。
しかし、どのどちらでもない私にとって、ドラマとしては脇役、先日の劇中の言葉を引用すれば、主人公なつとは “他人” の “無関係” なエピソードを 10分過ぎまで引き延ばして放送するのは、どうかと思う。
演出家もハンディカメラでリアリティーを出しているつもりのようだが、ここって、そんなに盛り上げる必要のあるシーンだろうか。
ここは、いつも映像と不釣り合いな劇伴の雰囲気と逆に合わせて、田舎の和菓子屋の跡取り問題と若者の未来を、ちょっとだけ感動的に描くだけで良かったと思う。特に、この直後の主人公に起こるエピソードの薄っぺらさを考えれば、尚更…
もっと"自然な、なつアゲ"をやってあげられないのかって思う
さて、前回のアバンタイトルで(ここは、何度も見直した)、徹夜明けのなつは、数枚の馬の絵を描き終えたらしい雰囲気の中で、「はあ… よ~し…」と言っていた。で、今回の10分過ぎのなつは、赤い衣装から着替えていたから日曜日の夜と言う解釈で良いだろう。そして、なつは自分の絵を見直して「よ~し。出来た~…」と言っていた。
まあ、前回は徹夜明けで一応出来たってことで、日曜の昼間は雪次郎たちに振り回されて、最終的なチェックが出来なかったから夜に「出来た~…」と言った…と言うことなんだろう。
でも、何となく腑に落ちないのは、翌日が出勤日だから徹夜した訳でも無い程に、「重要な徹夜作業」だったら、帰宅したら着替えもせずに続きをやって、「出来た~…」と言ってから、銭湯に行って着替える方が自然だし、なつの仕事への情熱や真剣さが描けたのでは?
そんな演出、あちこちのドラマであると思う。遅く帰宅したお父さんが妻が用意した夕食も摂らず、風呂にも入らず、ネクタイだけ外して書斎に入って行く…みたいなの。そうすれば、風呂に入らず着替えもせずに土曜日に徹夜作業をした意味も価値も深まったのに、なぜ、そう言う “自然な、なつアゲ” をやってあげないのかって思う…
徹夜作業の絵に駄目出しって事は、先日は未承認だったの?
主人公の話が始まったのは、11分過ぎ。やっと…と思って観始めたら、折角の「重要な徹夜作業」の結果に対して、 下山(川島明)と麻子(貫地谷しほり)が駄目出し。書き直しを食らった。先日の坂場(中川大志)となつの「稚拙な演出議論」の時は、下山と麻子は、なつの馬の動画の内容に OK を出していたんじゃなかったのか?
あくまで、絵の内容については承知はしていなかったが、「なつがどう演出的に考えて描いたのか?」を板場との議論の中で知りたくて試したってこと? せめて、先日の時に、脚本家が気付かないのか、演出家が手抜きをしたのか知らないが、下山がなつの絵を承認していることを、これまた 1カットでも入れておけば良かったと思う。
それをやらないから、見ようによっては、なつが作画課になってから才能が発揮できていないように見えてしまう。もちろん、脚本家は作画課は、新人のなつが一晩徹夜した位で通用するような軟な世界でないと言っているつもりなのだろうが。
あとがき
最後の最後にイケメン板場が登場して何をやるのかと思いきや、なつの命に関わるような階段落ちを使って、何やらあれこれ含ませましたね。やらなくても良いことをやって、やっておくべきことをやらないのは、前作『まんぷく』に似て来ましたね。視聴者置いてけぼりで、テレビの中だけが進んでっちゃう。
前回と今回は、もう少しやりようによっては、感動的にもなつのアニメーションへの思いもしっかり描けた可能性があっただけに残念でなりません。そして、『なつよ、千遥のためにつくれ』は何処へ…
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TBS系・火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(公式)
第10話/最終回『あなたは何のために働いていますか…?働き方新時代の決断』の感想。
なお、原作の小説、朱野帰子「わたし、定時で帰ります。」(新潮文庫)は未読。
巧(中丸雄一)が「結婚できない」と結衣(吉高由里子)に告げ、家を出ていった。さらに、外注先が倒産し、制作4部は大混乱。動揺が収まらない結衣は、復帰した賤ヶ岳(内田有紀)を見て気持ちが緩み、彼女と三谷(シシド・カフカ)に巧のことを相談する。そんな折、結衣は種田(向井理)から、取引先の星印工場が福永(ユースケ・サンタマリア)を担当から外すよう要求してきたことを聞く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:朱野帰子「わたし、定時で帰ります。」(新潮文庫)
脚本:奥寺佐渡子(過去作/夜行観覧車、Nのために、リバース) 第1,2,5,7,9,最終話
清水友佳子(過去作/夜行観覧車、女はそれを許さない、リバース) 第3,4,6,8,9話
演出:金子文紀(過去作/監獄のお姫さま、チア☆ダン、大恋愛) 第1,2,6,7,最終話
竹村謙太郎(過去作/アンナチュラル、警視庁ゼロ係シリーズ、中学聖日記) 第3,4,9話
福田亮介(過去作/チア☆ダン、初めて恋をした日に読む話) 第5話
坂上卓哉(過去作/隠蔽捜査と監獄のお姫さまの演出補) 第8話
音楽:平野義久(過去作/ゆとりですがなにか、獣になれない私たち)
新屋豊(過去作/ぴんとこな、TVアニメ『ノブナガン』)
主題歌:Superfly「Ambitious」(ワーナーミュージック・ジャパン)
第9話と最終回の間が空いたのは、本作にとって有利だった
先週の 6/18 に発生した「山形県沖地震」での被害に遭った方々には、お見舞い申し上げます。と書いた上で、書きづらいが敢えて書こうと思う。正直、前回の第9話で描かれた 巧(中丸雄一)の浮気話の件を含めて、前回まではネタが相当詰め込み過ぎだった上に、先週途中まで放送された内容を見て、「まだ詰め込むか…」と少々落胆した。
しかし、放送が1週間先延ばしになったために、何となくこれまでと “一区切り” が付いて観ることが出来た。“詰め込み過ぎ感” も薄まった。もう一度書くが、「山形県沖地震」での被害に遭った方々には、お見舞い申し上げつつ、第9話と最終回の間が空いたのは、本作にとって有利だったと思う。
仕事、恋、人間関係に、真剣に向き合い奔走する結衣を魅せた!
さて、最終回の具体的な感想だ。まず、良い感じで巧(中丸雄一)の浮気話は序盤で少しだけ描いた。そのお陰で、その後はしっかりと結衣(吉高由里子)が仕事に恋に人間関係に、真面目に向き合うがために翻弄される姿が丁寧に描かれた。
また、丁寧に主人公の結衣を物語の中心に据えておきつつ、会社組織の中での一社員の在り方や働き方、上司(社長)と部下(社員)の関係などの多様性の大切さと言う、最近の所謂「お仕事ドラマ」では扱わなかった部分にまで踏み込んで描いた。
結衣が社長へ直談判してからの結衣の見せ場の作り方が巧み
特に、ドラマとして面白味を感じたのは、放送時間を約 1/3 も残しての…結衣が社長に直談判をしてからの「起承転結」の「転から結」へ向かう展開を単純にせず、まず、結衣が倒れるまでの回想シーンを盛り込んだカメラワークと編集の巧みさ。やはりここは、パソコンに入力しながらバタンと倒れるだけでは物足りない。
そんな上手い演出の直後だからこそ、結衣が倒れたことで大切な人を失うかも知れない恐怖に遂に気付いた種田(向井理)のシーンが輝いた。更に、種田と結衣がお互いの気持ちに気付き、呼応し合い通じ合う場面は、 誰よりも集中して仕事を終わらせ、プライベートも大切にする主人公のドラマの “見せ場” として、とても良かった。
難しいテーマを、軽妙に上手く掘り下げ描いたのはお見事!
きっと「会社勤め」の人たちには考えさせられることも、結衣のような生き方や結末に “明日も働く元気” を貰ったと思う。しかし、私のようなフリーランスと言う時間や場所に対して基本的に制約のない働き方の人間にとっても、本作はたいへん興味深かった。
とりわけ、会社の残業問題を切り口にし、単純な会社内の制度や仕組み改革ではなく、働く人たちの意識改革に注力して、社会人の一人ひとりが自分に合った “ライフワーク・バランス” とは何か? について、軽妙な恋バナやコミカルな要素を盛り込みながら、実は難しいテーマを上手く掘り下げたのはお見事だった。
あとがき
今回のような、仕事もプライベートも主人公が羨ましい程のハッピーエンドにするなら、もっと 結婚前提の婚約関係にあった巧(中丸雄一)の描き方のへ工夫があっても良かったですね。そこだけが気になりました。
でも、平らかな言い方になりますが、全体的にはシリアスなテーマを「定時で帰る主人公」をブラすことなく、最後まで描き切ったのは “秀作” と言っても良いと思います。
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【これまでの感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
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関西テレビ制作・フジテレビ系・『パーフェクトワールド』(公式)
第10話/最終回『未来への誓い』の感想。
なお、原作の漫画、有賀リエ「パーフェクトワールド」(講談社『Kiss』に連載中)は単行本既刊9巻(ドラマ放送開始時)は既読で、同原作の2018年公開の岩田剛典と杉咲花のダブル主演の実写版映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』も鑑賞済み。
つぐみ(山本美月)との結婚を許してもらうために毎週のように元久(松重豊)の元を訪れていた樹(松坂桃李)。根負けした元久から公園に誘われた樹は、つぐみへの思いと覚悟を語るが、元久は障害がある体でつぐみを守れると思うのかと問い詰め、結婚には反対だと言い放つ。だが直後、元久は胸を押さえて倒れてしまう。苦しむ元久を目の当たりにした樹はすぐに電話をかけ、的確な指示で救急車の出動を要請。それと同時に、車椅子では行くことができない場所に落ちた元久の心臓の薬を、腕の力だけではって取りに行く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:有賀リエ「パーフェクトワールド」(講談社)
脚本:中谷まゆみ(過去作/ラスト・シンデレラ、地味にスゴイ!校閲ガール、隣の家族は青く見える)
演出:三宅喜重(過去作/銭の戦争、嘘の戦争、FINAL CUT) 第1,2,4,6,8,最終話
白木啓一郎(過去作/CRISIS 公安機動捜査隊特捜班) 第3,5,7,9話
音楽:菅野祐悟(過去作/アイムホーム、リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~)
主題歌:菅田将暉 「まちがいさがし」(エピックレコードジャパン)
結婚までの過程を普通の日常の積み重ねで描いて欲しかった
原作となった漫画を読み、それの実写映画版を観たからこそ、もっと主人公たち二人の恋バナを、正確に言えば、もっと二人の結婚に至るまでの過程を “普通の日常” の積み重ねで描いて欲しかった。最終回の感想をまとめると、そんな感じだ。
本作には、あまりにも "事件" や "騒動" が多過ぎた
そりゃあテレビドラマだから視聴率稼ぎのために、多少の嘘やあざとさには目をつぶる。でも、私がこの全10話、10時間近い放送尺を活かして、2時間程度の映画版では描けなかった、樹(松坂桃李)とつぐみ(山本美月)の “普通の日常” を期待した。原作や他の映像作品と比較しているのではない。
本作には、あまりにも “事件” や “騒動” が多過ぎた。“事件” や “騒動” が発生する度に、二人の恋愛感情が高まり絆が深まった…から、感動した視聴者も多いだろう。
ドラマで描くのは「人間」「人間性」そのものであるべき
しかし、原作があろうと無かろうと、ドラマが描くべきは「人間」「人間性」そのものであり、“事件” や “騒動” であっては困るのだ。なぜ、そう思うのか? それは簡単だ。事件や騒動に巻き込まれる姿で人間を描こうとすると、実際の人生には “本作程の事件や騒動は無い” から、非現実的で嘘くさく見えてしまう。
もう一度書くが、障がい者ながら前向きに生きる樹と、樹と関わりながら彼を支えたいと思うようになっていくつぐみを、ただただ彼らの日常を通して描くだけで良かった
その意味では、最終回の中のつぐみの父・元久(松重豊)が倒れた騒動で、これまでの展開が一転した、あの事件だけで良かったと思う。あれこれ詰め込めば良いと言うものではないと思う…
あとがき
きっと「パーフェクト・エンディング!」なんて称賛する人もいるのだろう。これまでの内容でも、視聴率が 6%はあるのだから…
でも、私には、ほぼ全てがあざと過ぎた。病名は伏せるが、私も3年間以上週3回はリハビリに通院しているが、つぐみの父のような気持ちになるには、相当の時間が掛ると思う。そんな、上記で必要だと言った唯一の騒動ですら、丁寧に描けなかったのが本作。
そして、もっと残念なのは第9話まで、樹とつぐみが “ほぼ子どもの恋愛” として描かれてしまったこと。もっと大人の恋愛の日常を通して、障がい者や周囲の人たちの幸せを描いて欲しかった…
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