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2017/12/5 20:55 記事更新
コウノドリ[2]

TBSテレビ系・金曜ドラマ『コウノドリ[2] 命についてのすべてのこと』公式
第8話『医師の決意 選ぶべき道』、ラテ欄『医師の決意!病院を辞めます』の感想。
なお、原作:鈴ノ木ユウ「コウノドリ」(漫画)は未読。

まえがき

一部の読者の皆さん、たいへんお待たせしました。さて、先日の第8話も濃厚な感想を書けなかったので、書き足りないかった部分を全力でフォローする、今や恒例?となった濃厚な感想の第2弾です。早速書きます。因みに、文字数もキャプチャ画像数も過去最多です(謝)

※なお、これまで本編から引用する台詞は「字幕表示」に準じておりましたが、今回は読み易さを重視し、私の聞き取りを中心に「脚本風」の表記にしました。従って一部「字幕表示」とは異なる表現があります。

"医師としての志" を時間の壁を超えて描いた感動作!

前々回で、下屋が “母体と赤ちゃんの両方を救える産婦人科医” になるために産科から救命科に異動し、若くて熱意ある医師の進むべき道の選択過程を描いた。また前回では、助産師の小松が子宮全摘をするかしないかを通して、女性のQOL(生活の質)とは何かを描いた。

そして今回は前々回のように、新生児科の白川の自分の進むべき道を模索する姿を描いたが、第8話では、『第1シリーズ』に登場した、責任感が強く頑張り過ぎる新米新生児科・新井 恵美(山口紗弥加)の再登場で、時間の壁を超えたペルソナの周産期母子医療センターの壮大なストーリー展開だった。

医師の数だけ、様々な考え方や理想や立場がある!

さて、ここでいつもの脱線コーナー(笑) もう10年近く前の話だ。当時からテレビや週刊誌などで、「心臓外科の神の手」と紹介されていた、元金沢大学心肺・総合外科の教授、現ニューハート・ワタナベ国際病院 院長の渡邉剛先生の「最先端心臓外科手術の研究会」の演出を数年間に亘り、お手伝いさせて頂いていた頃の話。

彼は、外科手術用ロボット「ダヴィンチ」を使った心臓手術を初めて行ったり、心臓を動かしたまま行う「Off-pump CABG」を開発した人。手術の成功率はナント99.9%のスーパードクターだ。そんな渡邊先生から「未来の心臓外科医に最新医術を伝える映像と研究会をやりたい」との演出依頼があり、その制作過程でのインタビューで…

「私は、ブラックジャックに憧れて先端医療を駆使して患者の命を救う医者を目指したが、遺伝子レベルの医療革命が起こる時代には最先端医療を研究開発して未来の命を救う医師や、逆に地域の中で子供や成人の日常的な健康管理をする医師、そして、高齢者たちの日常生活を支え、看取る医者も必要になる」

…と、語っていたのを思い出した。このように一言で「医師」と言っても、医師の数だけ様々な考え方や理想や立場があることは容易に想像できる。

四宮の父の "医師の選択" と "余生のQOL" も描かれた!

そしてこの第8話では、新生児科医師として更なる高みを目指す白川の自信過剰からの誤診を経ての医師人生の選択、四宮の長年の夢を叶える選択、そして四宮の父で産科医の晃志郎の医師としての選択と余生のQOL(生活の質)が描かれた名作回。

誰でも日々仕事をして入れば様々な問題にぶつかったり、悩んだりすることはある。また、私のようにやりたい仕事をダラダラと30年近くやっている人間でも「今度の仕事も少しでも良いものをお客様に提供したい」と言う気持ちはある。しかし、本作の白川は「俺は上を目指すんじゃなくて、先を目指す」と言った。

「上」でなく「先」とは何なんのか?前述の渡邊剛先生の言葉、また前回の濃厚な感想で触れた日本ウーマンズヘルス学会 学会長・久米美代子先生の「多様なQOL(quality of life = 生活の質)の欲求を実現する」を、頭の隅に置いて、続きの感想を読んで頂ければ嬉しい限りです…

サクラ自身も、様々な悩みを抱えている…

前回の簡単感想の「あとがき」で、「最終回までに “サクラ” がメインの物語を1つ見てみたいです。確かにサクラの存在感はスゴイですが、サクラの苦悩や感動を視聴者として、そして相手のいる同じ職業人として、分け合い共有したいのです」と書いたが、それへの1つの答えがアバンタイトルにあった。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

冒頭、目黒のライブレストラン「Blues Alley Japan」の閉演後のステージ前で、BABYことサクラを待つ四宮のシーンだ。まずサクラが、四宮が自分の事を「BABY」と知っていたのに驚く。そして、四宮が大学から「早剥の研究に専念しないか?」と誘われており、悩んでいることをサクラに相談する。そんなサクラと四宮の会話がこれ↓。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

鴻鳥「ペルソナは関係ない。四宮が自分で選択するべきだ。
   自分の行くべき道を。
   それに、こう見えて僕だっていろいろ考えてるんだよ。
   ペルソナの事、皆の事、自分自身の事も」
四宮「結婚するのか?」
鴻鳥「えっ?話が飛躍し過ぎだよ。
   でも、僕達もいつかそんな日が来るかも知れないね」
四宮「言っておくが、スピーチだけは御免だからな」
鴻鳥「安心して。四宮には絶対に頼まないから。
   ああ、でもその代わり、余興でお嫁サンバを…」
四宮「絶対にやらないぞ」

この会話↑の前段でサクラ自身が様々な悩みを抱えていることがサラリと語られる。この「サラリと」が本作らしさ。決して主人公が飛び出して物語をけん引して行くのでなく、あくまで “物語の要” として存在したそれぞれの医師たちの群像劇に仕上げて来た。これが『2』の特徴でもある。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

もっとサクラ自身のエピソードを見たいと言う欲求はあるものの、ドラマとして捉えると実に高次元の群像劇になっているのだ。言い換えると、前々回は下屋、前回は小松、そして今回は白川と四宮の人生ドラマがしっかりと描かれた上に、サクラが根底に関わっている印象だ。なかなか良く出来た脚本だ。

更に言うなら、今年の結婚披露宴の余興人気第1位間違いなしの「恋」を歌った綾野剛さんに対しての「お嫁サンバ」のネタ。僅か3分のシーンにシリアスとコミカルを混ぜたなかなか上手く出来た脚本だ。そんな所へ、四宮の妹・夏実(相楽樹)から父親の容態が悪いと電話が入る…

救命に異動した下屋も、確実に成長している!

主題歌明けは、ペルソナの屋上。下屋に昨日の武勇伝を語る白川のシーン。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

白川「昨日退院した子はさぁ、元は600gで産まれたんだけど…
   あっ、俺が蘇生したのね」
下屋「フフフッ」
白川「んで、最後は体重も2キロを超えてさ。
   ご両親も嬉しそうに退院してった」
下屋「へぇ、良かったね」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

白川の武勇伝を嬉しそうに、カップアイスを食べながら聞く下屋が、前々回からもう成長を見せているのが、下屋の知り合いのように喜ばしいのは読者の皆さんも同じだろうか。その成長が見えるのが、白川の言い分を話半分くらいにしか聞いておらず相槌係に徹している下屋…

白川「今橋先生の言ってる事も考えてる事も分かるんだけど、
   正直、学会とか研究会とかに顔を出すとさ、
   ここのNICUは、まだまだだなぁって思うんだよね」
下屋「ふーん」
白川「俺はもっと最先端の医療に携わりたいし、
   技術だってもっと身に着けたい訳…
   じゃないとワンランク上の新生児科医になれないからさ」
下屋「へえ」
白川「へえって、お前だって一緒じゃねえの?」
下屋「もちろん、知識も技術も必要だけど、
   私は患者さんが助かれば、それで十分だよ」
白川「だからお前は、いつまで経ってもぺーぺーなんだよ」
下屋「はあ!?」
白川「医者がどんどん上を目指さなきゃ、患者は救えねえだろ」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

同期の白川に完全に水を開けられたような下屋が白川に抵抗する所で、白川のピッチ(PHS)が鳴る。下屋の「生意気言うな」を遮って言う白川のこの台詞↓では、まだ「上を見る」と言っている。これがどう言う過程を経て「先を見る」になるのかが見所となる…

白川「医者ならもっと上を見ろ。上を」

しっかりした演出で、俳優さんたちの演技がリアルに見える!

妹の電話で能登の実家に向かう四宮。当blogの常連さんには野暮ったいかも知れないが、上↑の四宮がタクシーで実家に向かうカット。四宮が下手(画面左)に位置し、目線は上手(画面右)を向いている。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

私が以前書いた『[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~』によれば、下手の位置は「不安や寂しさ」を、上手 目線は「上昇思考」を表す。正に、次のステップへ進もうとしている「上昇思考」と、父の病状やバラバラな家族への「不安や寂しさ」の下屋を表している。

[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~
©TBS

こう言う映像の掟をしっかりと踏襲している演出があるから、より俳優さんたちの演技力がリアルに見えてくるのだ。

白川と吾郎の関係が興味深く描かれていた

四宮がいない産婦人科。羊水混濁の妊婦の状態が良くなく、吸引と緊急カイザーのダブルスタンバイが必要になる。サクラは新生児科に要請をするが、丁度今橋がリクルート説明会に出向く所。今橋は前回での白川への心配があるから出掛けるのを躊躇すると、白川が「分娩は俺が行きます」とイケイケノリノリで宣言してきた。

心配が募る今橋のこの台詞↓に、白川がプチ切れした感じで吾郎に言う。既に冷静に周囲が見えていないような白川に不安な表情の今橋が印象的だ。

今橋「吾郎先生もバックアップして」
白川「足引っ張んなよ」 吾郎「はい」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

脚本と演出の連携が上手く行っているのが分かるシーン

結局。赤ちゃんは新生児仮死で産まれた。出産直後の白川のテキパキとした処置に対して、あとで小松や看護師たちが「助かった」「冷静だった」だったと白川を褒めて談笑するシーンがある。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

しかし、その前の分娩室で手間取った吾郎を叱る白川の態度や目は、(素人目にも)褒めて談笑するに値するものでは無いように映って(して)いた。要は視聴者は “冷静さを欠いて自己中心的な治療を行った白川” を見ていた と言う演出だ。そして、そんな白川の言葉と背中を見ただけで白川が普通で無い事を察したサクラがこの↓カット。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

こう言うシーンの前後の位置やカット割りのやり方は、脚本と演出の連携が上手く行っている証拠。これによって、サクラと視聴者だけが “同じ体験と思い” を共有することになるから、益々視聴者は主人公の世界に入り込める。「なぜ小松は気付かないの?」の違和感を逆手に取った作戦と言う訳だ。

「サクラと視聴者だけが気付いている感」の心地良さ

産まれた真帆(芦名星)の赤ちゃんは新生児遷延性肺高血圧症。これは、肺に繋がる動脈が出生後も狭い(収縮した)状態が続くことが原因で、肺に十分な量の血流が送られず、結果的に血流中の酸素量が不足する重篤な病気。真帆と夫・陽介(高橋努)は白川に心配を訴えるが、ここでも白川の自信アピールは患者にも向かう…

白川「この治療に関して言えば、
   僕はこの病院で一番経験がありますし、
   学会発表などもしている詳しい治療ですので、
   安心して下さい

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

自信満々な白川を横目で見るこの↑サクラの表情からも、先に書いた “サクラと視聴者だけが気付いている感” が活かされて、見ているこちらが真帆たちよりもずっとハラハラする仕掛けだ。それにしても、実は吾郎も白川のおかしな点に気付き始めているのを真帆夫婦が頭を下げるカット↓でチラリと見せているのが上手い。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

放送開始から11分、白川のおかしさが次第に周囲に広がっているのを台詞でなく映像で何気に視聴者へ植え付けることで、今後の展開がドラマチックに見えると言うこれも演出的な作戦だろう。

何せ第8話の演出担当の土井裕泰氏は『コウノドリ[1]』を始め、『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』等のチーフディレクターで、登場人物の心情や物語を魅せるだけでなく、視聴者を作品の世界に巧みに惹き込んで、心を揺さぶるのが得意な演出家だ。今回のような感情移入がし難い医師がテーマの作品で才能が発揮される人なのだ。

今橋とサクラの会話が能登の四宮のシーンに絶妙に挟まれていた

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

ペルソナに戻って来た今橋とサクラが白川について語らうシーン。実はこの↓シーンのやり取りは、とても説明的で取って付けた感じがするのだが、新生児科部長の今橋と産科を任されているサクラの意見が同一であることを示すシーンとしては、絶対に必要。問題は、全体の流れの中でどこに差し込むか?

今橋「最近の白川先生を見ててどう思う?」
鴻鳥「皆、頼りになるって言ってます。ただ…」
今橋「ただ。少し心配な時期だよね」
鴻鳥「はい。僕にもそう言う時期がありましたから」
今橋「自信が付いてくると自分の考えに固執してしまうからね」

脚本(演出家の編集テクの可能性もある)の流れでは、能登の四宮が父の務める病院の院長と話すシーンと、海辺で倉橋との電話で産科の今日の報告のシーンの間に挟まれていた。この編集によって、四宮のくだりが白川のくだりから隔離されるのを上手に防いだ。

四宮家のホームドラマの部分の "王道な演出" が良かった

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

更に加えるならば、四宮が最初に電話で話すカットでは「下手の位置で上手向き」で「現場を離れている不安と早く病院に戻ると言う強い意識」が表現されるが、「頑固親父なんだ」と言う次のカットは「上手の位置で下手向き」。これで「ペルソナへの安心感と父の病気への絶望や敗北」を表現。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

更に次のカットは夕日が沈んだ水墨画のような色のない世界。当然に時間経過を表すと共に、次のシーンでは父の病状などが語られるフラグになっていると言う丁寧さ。オーソドックスな演出だが、このあとに続く四宮家のホームドラマの部分の前段としては、この位に王道演出が安心できる…

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

四宮家の団らんのシーンは、台詞も編集も良い

四宮が狭間院長から父親が「ステージIVの肺がん」であること聞いたと話すシーン。妹の夏実も「嘘でしょ!?」と初耳だったようだ。このシーンの映像で演出の細かさと脚本での台詞の巧みさが分かる描写がある。

1つは布団が押し入れにしまわれていないことで、父の忙しさと高齢を表現。もう1つはストーブにかかるヤカンから湯気が立っていないことで、帰宅してから間もないことが分かる。要は、父が広い家に一人暮らしで、親子三人で帰宅して間もない時だと言う説明。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

そして、「お前は玉子が好きだったな」の台詞で寿司を出前でとって家族で食べるのが子どもの頃以来なのが何となく読める。更にこの台詞を話す父も受ける娘も映さずに、四宮の茶をすするカットのままにすることで、四宮の苦悩が深まったことを表現した。なかなか潔い編集だ。だから、四宮の出す答えが気になると言う仕掛けでもある。

コウノドリ[2-8-2]
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自分を責める真帆の心を落ち着かせるサクラの台詞…

CM明け、白川の一酸化窒素(NO)吸入療法が効果を見せない状況に父親も吾郎も看護師も気になっている場面。一瞬不安な顔を見せるがすぐに平静を保とうとする白川。一方で白川の出産時の態度も重なっているように、「元気な赤ちゃんが産めなかったのは、私が悪いんですよね」と自責の念に駆られる真帆。

コウノドリ[2-8-2]
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真帆「私、赤ちゃんを見た時、胸がキューっとなって…
   心の中で何度も謝ってるんです。
   ごめんね、ごめんねって」

実は出産時からずっと自分を責めて来た真帆に、サクラが産科医らしい視点で励ましの言葉をかける。

鴻鳥「じゃあ今度赤ちゃんに会う時は、
   こう声を掛けてあげて下さい。
   すごいね。頑張ってるねって」
真帆「えっ!?」
鴻鳥「赤ちゃんに繋がれているたくさんの管は、
   赤ちゃんが今、一生懸命頑張っている証です」

上手い具合に患者を励ますものだ…なんてこの↑サクラの台詞を捉えるのは、脚本家にとって意地悪かも知れないが、このシーンの上手い所は、前述の「僕にもそう言う時期がありました」と自分の経験と成長を認める(当然だが)サクラが、同じような患者にこう言って安心させているんだろうなと想像させること。

確かに妊婦も赤ちゃんも1人1人違うが、医師にとってはある意味で “いつもの” なのである。だから “本作内でのいつもの” サクラとは違って一歩引いた演技で “産科医としてのいつものサクラのテクニック” として魅せた綾野剛さんとこの↓引きの2ショットがお見事。熱いけど冷静、でも温かい。そんな不思議な仕上がりになっていた。

コウノドリ[2-8-2]
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白川のジレンマとプライド

一向に改善しない肺高血圧の赤ちゃん。ここで前述の白川のおかしな点に気付き始めていた吾郎が白川に意見をする。いや、立場的に「意見を聞く」形をとって意見する。新生児科のナース・麻生(古畑星夏)も。

吾郎「この子、本当に肺高血圧なんですかね?」
白川「えっ!?」
吾郎「他の病状を疑わなくても大丈夫ですか?」
白川「…大丈夫だよ。今の治療も一応効果出てるし。
   もう少し様子見れば…」
麻生「でも、これだけやってサチレーションが
   上がらないのは変じゃないですか?
   今橋先生に相談した方が…」
白川「その必要はない」

この↓吾郎と麻生に背を向けた白川の表情を見る限り、既に白川は気付いているものの一度言ったことを引っ込める訳にはいかないジレンマとプライドに押し潰されそうになっているが…

コウノドリ[2-8-2]
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朝の玄関での父と息子のやり取りに、ウルッと来た…

四宮が東京に帰る日の四宮家の玄関。四宮が立ち上がる父に手を差し出すが、断り1人でスックと立ち上がる晃志郎。

コウノドリ[2-8-2]
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晃志郎「大袈裟に聞こえるかもしれないが、
    父さん、この町のお産を守る事が使命だと思ってる。
    だから、最後までやらせてくれ」
四 宮「勝手にすれば良いよ」

死ぬまで地域医療を支える事を決めている晃志郎の心情。何を言っても聞き入れない事を知る四宮。このままこの父と息子は別れるのかと思いきや…

コウノドリ[2-8-2]
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四 宮「病院まで送る」
晃志郎「うん」

父が選んだ “医師人生” を全うさせようと決めた四宮と、その気持ちが嬉しい晃志郎の笑顔が清々しい。

コウノドリ[2-8-2]
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白川よりいち早く反応して動き出す吾郎…

真帆の赤ちゃんのレントゲン写真を見ると肺が真っ白に写っている。新生児呼吸窮迫症候群(RDS)と診断した白川は、RDSの肺サーファクタント(リン脂質が主成分の混合物)の欠乏によって引き起こされたと推測し、サーファクタント療法を始めようとする。そこへ、今橋が「サーファクタントは少し待って」と登場する。

コウノドリ[2-8-2]
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今橋が「その前にもう一度エコーしてみよう」と促すと、白川より吾郎がいち早く反応して動き出す。実は赤ちゃんが心配でナースの麻生が今橋にも相談していたのだ。そしてここから、物語も、白川の人生も、大きく舵を切ることになる…

医療ミスに至る過程の白川の態度に今橋の愛のムチが飛ぶ!

新生児エコーの結果、赤ちゃんは「総肺静脈還流異常症(TAPVD)」である事が判明する。白川の誤診だ。呆然とする白川。我が家の産科医療従事者によれば、胎児診断が最も難しい心疾患であると同時に、最も胎児診断が必要な疾患らしい。また、知り合いのNICUの医師に聞いても、診断も手術も難しい病気だそうだ。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
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陽介に「医療ミスですよね。(中略)この人の最初の診断が間違ってたんだろう」と詰め寄られる白川は言葉も出ない。しかし、今橋は「難しい症例でして…」とフォローするが、陽介の怒りは収まらない。でも、美穂は至って冷静を装い、白川に赤ちゃんの現状と今後の治療方針を問うが、白川の口からは何も発せられない…

コウノドリ[2-8-2]
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大学病院に搬送して緊急手術をする必要があると今橋が告げる。完全にノックアウト状態の白川。「申し訳ない」と頭を下げる事しか出来ない。赤ちゃんに付き添ってドクターカーに同乗する事も拒む。そんな既に後ろ向きの白川に、今橋の愛の鞭(ムチ)が炸裂する。

今橋「ドクターカーには君が乗るんだよ」
白川「でも、風間さんは俺となんか…」
今橋「乗りたくないかもしれない。
   だけど、風間さんの赤ちゃんの担当は誰だ?」
白川「自分です」
今橋「だったら、責任を持って最後まで見届けなさい!」

珍しく大声を出す今橋に驚いたのか、更に後退する白川に、今橋の愛の指導は尚も続く。緊張が走るNICU…

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

しかし、今度はぐっと落ち着いたトーンで白川を諭すように話し出す今橋。

今橋「君は過ちを犯した。自分の実力を過信して、
   赤ちゃんの命を危険に晒したんだ。
   自分の過ちから逃げるんじゃない」
白川「はい」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

走るドクターカーの中。真帆は白川と目を合わせようとはしない。ただ、ひたすらにサクラのあのシーン↓での言葉を思い出し、そして信じて「頑張ってるね。すごいね」を繰り返す。そんな真帆の事をチラリと一瞬しか見る事の出来ない白川。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

大学付属病院に到着すると既に受け入れ態勢は整っており、NICUの担当医に「一酸化炭素で3日かぁ。結構引っ張りましたね。気が付いて良かったですよ。あとはこちらで何とかしますから。もう帰っていいですよ」と白川の言い訳など聞く耳持たぬ状態で、キツい洗礼を受ける。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

今回の脚本が連ドラとして良く出来ているのは、この大学病院の医師の「結構引っ張りましたね。あとはこちらで何とかしますから」と言う台詞が、第6話『突然の命の危機 母子の救急救命』で、下屋が妊婦の甲状腺異常に気付きながらも結果的に見逃がして妊婦のカヨが死んだくだりに直結するとも見えるからだ。

今回は白川がペルソナの “稼ぎ” のためにギリギリまで自分のペルソナで診て、ペルソナの手に負えなくなったら手放した訳ではないが、これが地域包括医療の現実であり、だから周産期に限らず全ての診療科の多くの患者(妊婦も)が大きな病院を目指して来る。そう言う延長線上にこんな↓問題もあると思う。

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http://news.livedoor.com/article/detail/13976316/

脚本家・吉田康弘氏の腕の見せ所が "新井の登場" だ!

傷心状態の風間夫妻に声も掛けられない白川は一人帰ろうとすると、ドクターカーに乗って来たからお金の持ち合わせがない事に気付く。ペルソナに帰ることが出来ない。ここからが第8話の脚本家・吉田康弘氏の腕の見せ所だ(原作にあるかも知れないが)。

ここで、元ペルソナの新米新生児科医・新井(山口紗弥加)の登場だ。

白川「俺が悪いんです。俺の責任です」
新井「もちろん、そんなのあんたのせいに決まってるわよ。
   …って、誰かに言われたいんでしょ」

以前に、白川と同じような立場になり惨めになった新井だから言える言葉だ。そして、新井はその時の悔しさから生まれた決意をこう↓話す。「第1シリーズ」の回想シーンも効果的に編集されていた。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

新井「もっと経験積んで勉強して、
   どんな赤ちゃんでも診られる
   無敵の新生児科医になってやるって。
   結局、バーンアウトしちゃったけどね」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

新井は、ペルソナを辞めてからの半年間、何をしても「ペルソナに放っぽり出してきた赤ちゃんたちの事」が頭から離れた事は無かったと話す。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

新井「やっぱり、子どもが好きなんだよねぇ。
   どんな子供にだって未来も可能性もあるから。
   自分が出来る事を精一杯やりたい、そう思ってる」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

新井の笑顔を久しぶりに見た白川が、新井の事を「鉄仮面」と呼んだのが微笑ましいし、そう言えば『1』での新井はいつも厳しい表情で仕事をしていたのを思い出した。そんな “元鉄仮面” が白川の背中を優しくそっと押し出す…

新井「そろそろ帰りなよ。
   ペルソナの赤ちゃん達が、あんたの事待ってるよ」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

そして、この励ましがサクラの根回しによって行われた事が、サクラと新井の電話のシーンで明かされる。「皆、新井先生に会いたがってますよ。いつでも会いに来て下さい」のサクラの優しさが、新井と視聴者の心を打つ…

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

劇伴の使い方で、演出の技を考える!

「まだ演出の話をするの?」と言われそうだが、止める訳にはいかない。実はこのシーンで流れている劇伴『For Tomorrow(第2シリーズのメインテーマ)』(CD「For Tomorrow 清塚信也」の1曲目に収録)のロングヴァージョン(未収録)が、その前の白川と新井のベンチのシーンでの「やっぱり子どもが好きなんだよねぇ」の台詞からずっと流れている。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

そして「私も皆に会いたいな」でサビに入り、四宮が戻り、白川も日常に戻り、真帆がペルソナを退院する場面で大サビが来ると言う、洒落いて超効果的な演出。そして、白川が退院して行く風間夫婦に頭を下げるが、風間夫婦に完全に無視して通り過ぎられるシーンにも続く…

劇伴が続くから無視されては終わらない。白川は風間夫婦を追い掛け呼び止めこう↓言って深々と頭を下げて謝罪する…

白川「力及ばず…。申し訳ございませんでした」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

そんな白川に、真帆が「お世話になりました」と一言だけ言い残して、無言の夫とペルソナを後にする。ここまでで1曲の劇伴を複数のシーンに跨がせて使ったことで、人は紆余曲折があって1つの結果(時に通過点)に辿り着くと言う事を、新井と白石と真帆で描いたのではないだろうか?

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

こんな音楽の演出があるから、次の白川の決断がドラマの中で際立って来る…

主題歌のタイミングもなかなか…

NICU。涙が止まらない白川。白川に気付く今橋。

白川「悔しいです… 悔しくて…」
今橋「うん。その気持ち忘れないでね」

そして、この会話の直後からUruさんが歌う主題歌「奇蹟」が流れる…。廊下の隅でまだ泣き続ける白川の小さな背中に「奇蹟」が被ると、何かもの悲しさと勇気を感じる…。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

星野源さんの演技力も恐るべし!

場面は産婦人科の医局。四宮の父親から海産物が届く。小松らが魚の名前を四宮に聞く時、くるりと後ろを振り向くが、私の気のせいかもしれないが星野源さんの振り向く時の背中の曲がり方が、塩見三省さんに若干寄せているように見えるのだが。もしそうなら、星野源さんの演技力も恐るべしだ。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

日々の忙しさと未来への希望が、常に背中合わせ!

今橋から産科のメンバーに白川がペルソナを辞める事を告げられる。そして、屋上の白川と下屋。

下屋「小児循環器科か。
   あんたが言ってた、上を目指すってやつね」
白川「違う、先を目指すんだよ」
下屋「えっ?」
白川「俺、自分がどんな医者になるかって事ばっか考えてて、
   患者に寄り添う気持ち、見失ってた」

一方で、「どうして止めなかったんですか?」と吾郎が今橋に詰め寄ると、今橋は「どうして止めるの?」と言い…

今橋「人生の目的や目標、そんな日は必ず来るよ」
小松「でも、うちはただでさえ人手が足りないのに…」
今橋「確かに専門医の白川先生が抜けるのは大きな痛手です。
   それでも僕は白川先生を
   応援して送り出してあげたいんです」

この辺の脚本は正に『コウノドリ』と言う感じ。日々の忙しさと未来への希望が常に背中合わせに存在するドラマらしい展開だ。

なんて前向きに医師と言う職業と向き合っているんだ!

場面は再び屋上。白川がペルソナを辞めて小児循環器科の道を選択した理由が明かされる。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

白川「小児循環器を学べば、産まれてすぐの心臓病でも、
   自分で診断して治療することが出来る。
   そうすれば、どんな小さな命にも今よりももっと
   良い未来を届ける事が出来るかも知れない」
下屋「今よりも良い未来か…」
白川「下屋! 俺はいつか最強の新生児科医になるから」
下屋「フフフ、私も負けないから」

それにしても、下屋と白川と言うこの同期、なんて前向きに医師と言う職業と向き合っているのかと感心してしまう。今の職場で努力を続けるのも大変だろうに。

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

台詞の1行1行と映像の1カット1カットが絶妙にシンクロ!

終盤の約1分45秒にも亘る BABY のピアノ演奏に乗せたサクラのモノローグがとても良かった。台詞の1行1行と映像の1カット1カットが絶妙にシンクロして、まるで「第1シリーズ」からの総集編のような雰囲気。

鴻鳥(M)「僕達は医者である前に人間だ。
     皆、将来に悩み迷いながら生きている。
     最初に敷かれた道を歩き続ける者もいれば、
     一度立ち止まり、また歩き出す者も、
     交差点に差し掛かり、違う道を選ぶ者もいる。
     近道を探す者もいる。
     誰も通りたがらない道を自ら選択する者もいる。
     僕達はこの先どんな道を選ぶんだろう。
     僕にもきっと選ぶべき道があるはずだ」

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

コウノドリ[2-8-2]
©TBS

この第8話、本当にサクラ以外の登場人物の悲喜交々が丁寧且つ魅力的に描かれている。いや、「第2シリーズ」が…と言った方が正しいかも知れない。あとは、サクラ。主人公であるサクラ自身をもっと描いて欲しい。オールメンバーを束ねる役も素敵だが、サクラ、BABYの “今” を見てみたい…

あとがき

白川先生は小児循環器科の研修先が見つかり次第異動。そして、四宮の父が倒れて病院に搬送される…と言う展開で終了した第8話。本作は、『1』から医師による医療ミスや患者を亡くした心情を、幾度も描いて来ました。そして、その度に医師たちは後悔を胸に刻み積み重ねて、進んで行く医者の姿を描いてきました。

今回は、新井が登場したことで連ドラとして新井の人生が継続していた事に驚きました。こう言う楽しさこそ連ドラを見る醍醐味ではないでしょうか。次回は「不育症」がテーマ。妊娠はしても、流産、死産や新生児死亡を繰り返し結果的に子供を持てない女性の事。まだまあ知らない人も多いでしょうから、本作の意義が益々高まりますね。

最後に。第7話の「かなり濃厚な第2弾」の感想に 174回、第8話の通常版に 78回ものWeb拍手やたくさんの応援コメントを頂戴し、ありがとうございました。今回は涙溢れると言うより、医師たちの真摯な姿に感動しました。あと残り何話あるのでしょう?それが気になって気になって…
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作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃目的ではない ことをご理解ください。

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