「スカーレット」脚本・水橋文美江氏のラジオでの発言とインスタから思うこと

©NHK

まえがき

土曜日（3/7）の朝ドラ『スカーレット』の感想が、仕事の都合で「簡単感想」になったため、少しだけ補足（と思いましたが、長文になりました）。また、この投稿は、第133回（3/9）を未見の状態で書きました。

岡田惠和氏のラジオ番組に、水橋文美江氏が出演していた

実は、あるラジオ番組の放送当日も仕事で、聴き逃し再生もない番組ゆえに、番組自体は気になっていたものの内容が分からずにいたのが、この2020年3月1日にNHK-FMで放送された『岡田惠和 今宵、ロックバーで～ドラマな人々の音楽談議～「水橋文美江」』の回。

岡田惠和氏と言えば、朝ドラ『ひよっこ』を手掛けた脚本家。あの作品は、前半戦は良かったが、終盤の行方不明のヒロインの父の扱いに失敗して、秀作の予定が凡作になった（と思っている）。そして、『スカーレット』も前半戦は良かったが、離婚したヒロインの夫と長男の扱いに戸惑っているように見える点で、類似点がある。

と言う訳で、放送直後にも、ほぼ話題になっていなかったが、1週間経った昨日に幾つかのネットニュースで昨夜（3/8）に内容が明らかになった。詳しくは下記の記事を熟読して頂くとして…

「スカーレット」最終章へ　“ヤマ場”7年飛ばしたワケ　喜美子の陶芸家としての成功は描かず「潔く」― スポニチ Sponichi Annex 芸能
     https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2020/03/08/kiji/20200307s00041000331000c.html

女優の戸田恵梨香（31）がヒロイン・川原喜美子を演じるNHK連続テレビ小説「スカーレット」（月～土曜前8・00）は残り3週。白血病を発症した喜美子の長男・武志（伊藤健太郎）の闘病が描かれ、喜美子たち家族にとっても、視聴者にとっても試練の展開となる。派手さこそないものも、キャラクターの機微を生々しく描き出している脚本家・水橋文美江氏（56）は今月1日放送のNHK　FM「岡田惠和　今宵、ロックバーで～ドラマな人々の音楽談議～」（隔週日曜後6・00）にゲスト出演。“執筆秘話”を明かした。

あの｢すっ飛ばした7年間｣が当初から"意図的"だったとは!?

私が気になったのは、番組パーソナリティの岡田惠和氏が水橋氏に、「時間の経過の飛ばし方も、凄く気持ちよかった」と絶賛したことへの返答。

岡田氏が絶賛と称した「時間経過の飛ばし方」とは、知らない、忘れた方のために少し補足すると…

喜美子が家族や家財を失っても良いと言わんばかりの強引なやり方で、7回目でやっと穴窯に初成功した後、陶芸家としての成功は詳細に描かずに、「灰と土が反応してできる自然釉の作品は陶芸家・川原喜美子の代名詞となりました」のナレーションだけで、昭和53年（1978）に第105話（2/5）に、「7年間」の時間経過をしたことを意味する。

それに対して、水橋氏は、こう答えたそうだ。

7年バーンと飛ばしたんですが、あそこは意図的です。喜美子（戸田恵梨香）にとっての成功は、陶芸家として有名になることじゃなく、穴窯で自然釉の作品を作ること。ゴールは（穴窯に初成功して）作品ができた瞬間なんです。

その後（の陶芸家として有名になっていく姿）を描くと、ゴールが見えなくなっちゃうと思ったので、飛んだんです。

その台本を渡すと、（制作統括のチーフプロデューサー）内田（ゆき）さんもOKしてくれて。プロデューサーによっては『もうちょっと、ここをやりましょう』と言う人もいると思うんですが

｢すっ飛ばした7年間｣は､戸田ｻﾝへの負担と働き方改革だと…

これを、どう捉えるか？ 水橋氏の言いたいことは分からなくもない。しかしこれは、飽くまでも「全体の構成が分かっている人」だからこそ、そう、ゴールが分かっているから言える提案であり構成であり、全体がどうなるのか分からない私には、ただの「自己満足」でしかない。なぜ、そう思うかと言えば、ここが問題なのだ。

脚本家である水橋氏は全体の構成を知っている。しかし、私は知らない。だから、 私はガッツリでなくても、喜美子が出産し子育てしながら、自分が求める「穴窯で作った自然釉の作品」を作り上げる過程は観たかったし描くべきだったと、今でも思っている。だって、私にとって本作は『信楽初の女性陶芸家の朝ドラ』なのだから。放送前からのNHKの番宣も、そう高らかに謳っていた。

だから、肝心なところを描かずに何を描くのか？ と言う疑問と疑念しかなかった。ただ、「描かない」のでなく「描けない」と言う想像もした。作陶の演技は戸田恵梨香さんに大きな負担を掛けるし、「働き方改革」のスタッフにも負担が掛かる。だから、「意図的に描かない」のでなく、「条件的に描けなかった」と納得した。

しかし、このラジオ番組で、「意図的に描かなかった」ことが分かり、愕然としたのは言うまでもない。

喜美子の両親の｢病と死｣さえ､盛り上げられなかったのに…

さて、水橋氏が2/28の自身のインスタグラムで、こんなことを言っている。

（喜美子が）陶芸家の道を歩きだしたことを表現するためには、どなたかの作品をお借りしなければなりません。あちこちから適当にというわけにもいきません。喜美子の作品はすべて陶芸家の神山清子先生からお借りすることになりました。喜美子の作品イコール神山清子先生の作品です。

神山清子先生の最愛の息子さんは白血病と闘われたという経緯があります。お借りした作品ひとつひとつに、息子さんへの深い愛情とその時々の思い出、いとしい出来事が込められていることを知りました。

それら大切な作品をお借りして喜美子の作品と謳っているからには、その思いに全く触れずにいることは同じ物作りの端くれとして敬意に欠けることではなかろうか。

チーフ演出の中島さん、内田P（プロデューサー）と十分に熟考を重ね、できる限りの配慮を胸に、私は覚悟を決めました。第22週からは喜美子の人生の最終章『生きるということ』を描いていきます

今回の長男・武志（伊藤健太郎）の病気のエピソードは、基本的に「“死” と言う “先” が見えない深刻で真面目な話」だ。逆に、だいぶ前に描かれた喜美子の両親の病気は「“死” と言う “先” が見えた深刻で真面目な話」だ。

そして、本作に於ける喜美子の両親の「死」の扱い方は、年齢的に年相応であるし、家族の順番として言うなれば「自然な順番」だったから、例え「死」を扱うにしても、ホームドラマの一場面としては “盛り上がり” に使うのは間違っていないし、先週までの作風では、変顔やコントを必要以上に盛り込むのが本作の脚本家と演出家の作風であったから、許容した。

前回の感想でも書いたが、私は医療ドラマや刑事ドラマ以外のドラマで軽率に「人の死」を扱うのは反対でも、朝ドラ、特に今作は、まあしょうがない…とないと諦めて通り過ぎるのを待った。因みに、私は、喜美子の両親の死で、ホームドラマとして面白味が増し成功したとは、1ミリも思っていないが。

武志の病は､喜美子の｢人生のただの通過点｣ではないはず…

さて、今回の武志の件だ。前述のインスタのコメントにもあるように、水橋氏は “神山清子先生の最愛の息子さんは白血病と闘われたという経緯があります。（中略）その思いに全く触れずにいることは同じ物作りの端くれとして敬意に欠けることではなかろうか。” と言っている。と言うことは、やはり「川原喜美子」のモデルは「神山清子」さんであるのとは間違いない。

そして、知っている視聴者（少なくとも、私はその1人だ）は、神山さんと長男・賢一さんの “先” を知っている。そう、史実通りに進めば、喜美子と武志の “未来” を知っているのだ。だから、土曜日を観た時に、“ 本作が「人の死」「人の命」を真面目に描こうとしているのは伝わった” と書いたのだ。

だって、前回の（と言う表現が適切かどうか分からないが）両親の病気エピの時は “死” と言う “先” が見えていたが、喜美子の人生にとっては「ただの通過点」に過ぎない。人間生きていれば、私だって既に両親を亡くしている。しかしその両親の死が「人生の転機」だとは、今は思っていない。もちろん、「人の死」についての考え方や死生観は少し変わったが…

｢武志の病気｣を通して､｢喜美子の転機｣が描かれるのは確か

話を『スカーレット』に戻そう。今週から描かれる「喜美子と武志の闘病記」（こんな表現も薄っぺらで嫌だが）は、明らかにドラマ上、喜美子の「人生の転機」であるのは間違いない。結果が「武志の死」なのかは分からない。しかし、「武志の病気」を通して喜美子の「転機」が描かれるのは確か。

それも、「子どもが親より先に…」と言う、普通に描いても超がつく程に深刻で切実で痛切なエピソード。それを、これまでのような “おふざけ” を盛り込むのはもってのほかで、これまでのような “雑な台詞や演出” をやったら絶対にダメだと思う。

本作のｽﾀｯﾌに出来るのは､"ﾊｯﾋﾟｰｴﾝﾄﾞ" しかないと思う…

もちろん、 今週から今までの作風とは真逆に、表面だけを立派に取り繕う “綺麗事” に取り繕えば、「何だ？ お涙頂戴路線に変更か？」と、更に “雑さ” や “粗さ” が目につくし、鼻にもつくし、不快感に繋がると思う。

そして、本作の制作統括、脚本家、演出家にそれが出来ると思えない。だから、私は、もう「病気」は扱い始めてしまったから、せめて「死」は扱って欲しくない。本作のスタッフに出来るのは “ハッピーエンド” しかないと思う。ただ、本作の結末は分からない。だから、「人の死」「人の命」を真面目に、そして丁寧に描け！ と思う。

あとがき

今週で心配しているのは、とにかく喜美子には関係者が少ないこと。近年の朝ドラ中で最も友人や知り合いが少ない部類では無いでしょうか？ そんな中で、本作はヒロインの離婚を選択しました。となると、今回の「喜美子と武志の闘病記」に八郎（松下洸平）がいつ、どう、絡んで来るのか？ それとも絡んで来ないのか？ がとても気になります。

だって、公式サイトの「あらすじ」にある「5分間動画」には、元夫婦だろうが八郎の姿は1カットも無く、八郎よりも、幼馴染で親友でも “赤の他人” の照子（大島優子）と号泣して抱き合っている喜美子しかないからです。

もし、その順番通りだったら、喜美子は “人でなし” になると思うのです。とにかく、今週はいろいろな意味でラスト1か月を安心して見られるか、不快になるか…の山場のような気がします。

 

連続テレビ小説 スカーレット 完全版 ブルーレイ BOX1 [Blu-ray][喜美子の幼少期から大阪・荒木荘までの第1～6週収録] 服部 匡志 あさ出版 2010-12-24 Amazonで購入 楽天ブックスで購入

火火{DVD} 朝ドラ『スカーレット』のヒロイン喜美子のモデルとされる「神山清子さん」の人生を綴る人間賛歌の物語の映画化田中裕子 バップ 2006-04-26 Amazonで購入 楽天市場で購入

連続テレビ小説「スカーレット」オリジナル・サウンドトラック 冬野ユミ バップ 2019-11-20 Amazonで購入 楽天ブックスで購入

★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
連続テレビ小説 スカーレット 完全版 ブルーレイ BOX１ [Blu-ray]
火火 [DVD]
連続テレビ小説「スカーレット」オリジナル・サウンドトラック

トラックバックは、下記の「ミラー & TB用ブログ」へお願いします。
【FC2ブログ】http://dmesen.blog71.fc2.com/blog-entry-11126.html

---

【これまでの感想】

第1週『はじめまして信楽（しがらき）』
1 2 3 4 5 6
第2週『意地と誇りの旅立ち』
7 8 9 10 11 12
第3週『ビバ！大阪新生活』
13 14 15 16 17 18
第4週『一人前になるまでは』
19 20 21 22 23 24
第5週『ときめきは甘く苦く』
25 26 27 28 29 30
第6週『自分で決めた道』
31 32 33 34 35 36
第7週『弟子にしてください！』
37 38 39 40 41 42
第8週『心ゆれる夏』
43 44 45 46 47 48
第9週『火まつりの誓い』
49 50 51 52 53 54
第10週『好きという気持ち』
55 56 57 58 59 60
第11週『夢は一緒に』
61 62 63 64 65 66
第12週『幸せへの大きな一歩』
67 68 69 70 71 72(Vol.1) 72(Vol.2)
第13週『愛いっぱいの器』
73 74 75 76(Vol.1) 76(Vol.2) 77 78
第14週『新しい風が吹いて』
79 80 81 82 83 84
第15週『優しさが交差して』
85 86 87 88 89 90
第16週『熱くなる瞬間』
91 92 93 94 95(Vol.1) 95(Vol.2) 96
第17週『涙のち晴れ』
97 98 99 100 101 102
第18週『炎を信じて』
103 104 105 106 107 108
第19週『春は出会いの季節』
109 110 111 112 113 114
第20週『もういちど家族に』
115 116 117 118 119 120
第21週『スペシャル・サニーデイ』
121 122 123 124 125 126
第22週『いとおしい時間』
127 128 129 130 131 132

---

感想の趣旨について

当ブログの感想は、僭越ながら 「もっと こうしたらよいのに…」を追究 することで、広く映像作品を楽しめるようになることを目的としています。
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。

【すべてのコメントの「投稿時の文字数」について】
投稿の際は、できれば文字数200以内のご協力をお願いいたします。

【すべてのコメントの「非公開希望」について】
表題か本文中に「非公開希望」と書いてくださると助かります。

【すべての投稿されたコメントについて】
当blogの『無断転載禁止＆まとめサイトへの引用禁止、コメント，トラックバック＆リンク・ポリシー』に基づき、不適切な書き込み（読む人を不快にさせる内容、誹謗中傷、特定の個人への攻撃）は、恐れ入りますが管理人の判断で、非公開、または削除させていただく場合もございます。何卒ご理解・ご協力くださいませ。

【Amazonアソシエイト、楽天アフィリエイト、忍者AdMaxについて】
商品リンクや広告は「成果報酬型広告」です。
私に少しポイントが入りますが、商品の値段は変わりません（謝）

｢共感!｣｢納得!!｣なら"Web拍手"と一緒にﾎﾟﾁｯと…
｢違うでしょ?｣｢怒!!｣でも意思表示でﾎﾟﾁｯと…
押していただけると､うれしいです♪

◎Web拍手のために、こんな下まで来てくだり、本当にありがとうございます（感謝）