にじいろカルテ （第3話・2021/2/4） 感想

テレビ朝日系・木曜ドラマ『にじいろカルテ』（公式）
第3話『私は誰なんですか-?僕を忘れた愛する妻へ、涙のプロポーズ』の感想。
また、本作は昨夏に全話を撮影終了しているため、要望などは基本的に書きません。

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診療所に現れた雪乃（安達祐実）の様子がおかしい。戸惑う真空（高畑充希）は、雪乃が何カ月かに一度、記憶がリセットされる‘まだら認知症’を患っていると知る。朔（井浦新）の連絡で駆け付けた夫の晴信（眞島秀和）はあえて声を掛けず、続いて訪れた幼なじみの嵐（水野美紀）と氷月（西田尚美）が病状とこれまでの半生について雪乃に説明を開始。真空もそこに加わって…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：なし
脚本：岡田惠和（過去作/ひよっこ､最後から二番目の恋､少年寅次郎､姉ちゃんの恋人）
脚本協力：本田隆朗（過去作/ﾚﾝﾀﾙなんもしない人第5,9,10話､ｹﾞｷｶﾗﾄﾞｳ第5話）第2話
演出：深川栄洋（過去作/偽装の夫婦､破獄､僕とｼｯﾎﾟと神楽坂､犬神家の一族2018）
音楽：ワンミュージック（過去作/黒革の手帖2017,2021､家政夫のﾐﾀｿﾞﾉ1,2,3）
主題歌：藤井風 「旅路」（HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA ）

前回までは、「医療ドラマ」として幾つかの不満があった…

前回までは、感想にも書いたように、映像処理的な良いところはたくさんあるものの、「医療ドラマ」として幾つかの不満があった。

特に、不満だし不安だったのは、脚本家の岡田惠和氏のドラマらしさは満載されてはいるものの、本作がユートピアのような田舎に個性的な登場人物を集めて、稚拙な医療技術によるお医者さんごっこと、スベる笑いと、押し付けの涙で、少々古いタイプの「病と共に生きる」をテーマとしたヒューマンドラマになりそうだったから。

だったら、難病を患っても必死に生きる若き医師が、優しい仲間や村人たちに支えられる日常を描くヒューマンドラマで良かったのでは？ と思っていた。

"今回のエピソード"のために、本作の設定を作ったのかも?

しかし、この第3話は、全く違ったドラマになったと言っても過言ではない。最初に感想の結論から言ってしまえば、岡田惠和氏は “今回のエピソード” を書くために、本作の設定を作ったのでは？ と主程の内容だった。特にスゴイのは、主人公がいなくても、医者がいなくても、「医療ドラマ」になると言うことを証明しちゃったことだ。

医師がいなくても"治療"を描いた、4人の会話劇の秀逸さ!

それを象徴的に描いたのが、中盤での真空（高畑充希）、雪乃（安達祐実）、氷月（西田尚美）、嵐（水野美紀）の4人の会話劇の素晴らしさだ。何が素晴らしいって、医師がいなくても “治療” を描いてしまったからだ。

もちろん、これについては序盤での朔（井浦新）と太陽（北村匠海）の真空への優しさも含まれるが、やはり、今回で見るべきは、あの4人の会話劇だと思う。

生きようと必死な患者のドラマの感想だが「死」のことを書こうと思う…

さて、今作の感想に、「死」を引用するのは間違っているかも知れない。また、不快に思う人がいるかも知れない。不快なら、すぐにここから離れて欲しい。でも、本作の第3話の感想を、私の視点で書くには、ある本のことを引用するのが、最も最適だと思うから、そのことを書こうと思う。

キューブラー・ロス著『死ぬ瞬間―死とその過程について』

今から52年前の1969年に一冊の本が出版された。その本は、50年以上経った今でも「看護のバイブル」と言われている、エリザベス キューブラー・ロス(著)の『死ぬ瞬間―死とその過程について』だ。

フランス人哲学者・モンテーニュが唱えた「死は死にいたる過程が終わる瞬間に過ぎない」を引用し、「死に至るまでの過程」を、「否認と孤立」、「怒り」、「取り引き」、「抑うつ」、「受容」と位置付け た。

このことは、死を待つ終末期患者にだけ当て嵌まることではない。例えば、虫歯や骨折でも多かれ少なかれ投影できる。もちろん、全ての患者や病気に当て嵌まる “万能ツール” ではないが、看護の世界では、多くの患者の心理状態は上記のような過程を辿るとされている（30年以上に亘り、看護師と助産師をしている妻から聞いた話として）。

だから、上記の5つの過程を分かり易く感情的な言葉で表現すると、こんな感じになるのだ。

　　●「否認と孤立」＝「うそ～」
　　●「怒り」＝「何故私だけ？
　　●「取り引き」＝「○○を止めれば良いの？」
　　●「抑うつ」＝「毎日通院しなくちゃダメなの？」
　　●「受容」＝「しょうがない、治療しよう」

あのシーンは、4人がそれぞれの病気や悩みを “自己開示” することで、今の自分を “受容（受け入れる）” とした。

そして、一生懸命に受容しようとしている相手の話を聞くことで、自分自身が問題を抱えた一人の人として、上記の5つの段階のどこにいるのかを “認識（知る）” ことを通して、自分自身の立ち位置の再確認や、「自分だけではないんだ！」と言う同朋意識や孤独からの解放、苦しみからの浄化や癒しを感じた。

まあ、難しい話のように聞こえるかもしれないが、敢えて誤解を恐れずに書けば、病院の待合室のベンチで、偶然に隣へ座った初対面の患者さん同士の何気ない会話で得られるもののような感じだろうか…

個々が自己開示し、各自の"受容"の大切さなどを描いた!

あのシーンが秀逸なのは、医師である主人公が、カウンセラー役（仕切り役）でないことも大きな要因だ。もっと言えば、誰もカウンセラー役でないこと。

4人全員がクライアントで、個々が自己開示することで、自分なりの、自分でしか出来ない、自分らしい “受容” を見つけ出すことの大切さや、尊さ、美しさ、切なさ、幸福感、そんなものが、まるで柔らかなオブラートで包まれて、やさしく描かれた。

そう映ったのは、やはり、会話劇としての脚本に書かれた台詞の素晴らしさもあるし、あの回るカメラワークで仕切り役を作らず4人を同一線上に表現した演出の巧さもあるし、演者の的確な演技力が奇跡的に交わったからこその秀逸なシーンになったと思う。

4人の会話劇で継続視聴からの離脱を決めた人も多いと思う

但し、心配なこともある。観る人によっては、私が秀逸と評価した4人の会話劇が、第3話までで最も好き嫌いが分れる設定と描写だったことだ。恐らく、あのシーンで本作の継続視聴からの離脱を決めた人も多いと思う。

まあ、ドラマなんて好みで見るものだから、あれが許容範囲外なら見ない方が良いと思う。逆に、良かったなら次回以降も楽しめるような気がする。

オチも、終盤の光の演出も良かった!

そして、今回のオチも、これまでとは打って変わった見事なものだった。

そして、終盤での、お母さんの顔へのスマホ画面の光の当たり具合と背後の照明器具のバランス、バスから降りた時のアンバー系のライトの温かさ、宴会に遅れてやって来たシーンでのドアから漏れる強めの光など、前回では「被写界深度」ついて触れたが、今回は光の演出も見逃せなかったのも、感想の最後へ添えておきたい。

あとがき

今回も、ユートピア村の賑やかな、いいひとだらけのお花畑挿話みたいな内容だったら、離脱する気満々でした。でも、今回は良かったです。

また、感想の中で紹介した、エリザベス キューブラー・ロス (著)の『死ぬ瞬間―死とその過程について』に興味を持った読者さんは、下記にリンクを貼っておきますので、是非手に取って読んでみて下さい。また、本の感想もあります。
【書評】「死ぬ瞬間―死とその過程について」エリザベス キューブラー・ロス (著)

管理人・みっきー お薦めする商品を、Amazonと楽天市場から安心して ご購入して頂けます! 死ぬ瞬間―死とその過程について (日本語) エリザベス キューブラー・ロス(著) 鈴木晶(翻訳) 読売新聞社; 完全新訳改訂版 1998-4-1 ￥3,000(記事投稿時) Amazonで購入 楽天市場で購入

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