すきすきワンワン！ （第8話・2023/3/13） 感想

日本テレビ系・シンドラ『すきすきワンワン！』
公式リンク：Website、twitter、Instagram、YouTube

第8話『犬と猫がんばる』、EPG欄『一人でも　淋しくないもん　猫だから』の感想。

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てん（浮所飛貴）の行方を気にしながらも仕事に向かう炬太郎（岸優太）。だが仕事第一のエリー（松本まりか）にとって炬太郎の事情などお構いなし。帰宅させるべく、てんに言葉を尽くす炬太郎。そんな最中、エリーの意外な私生活の秘密を知ってしまった炬太郎は驚くべき行動に出る。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：なし
脚本：水橋文美江（過去作/朝ﾄﾞﾗ｢ｽｶｰﾚｯﾄ｣､死にたい夜にかぎって､古見さんは､ｺﾐｭ症です｡）
　　　工藤鈴子（過去作/詳細不明） 第7話
演出：中島悟（過去作/ﾃﾞｶﾜﾝｺ､世界一難しい恋､俺の話は長い､新･信長公記） 第1,2,5,6話
　　　丸谷俊平（過去作/もみ消して冬､俺の話は長い､#ﾘﾓﾗﾌﾞ､ﾊｺﾂﾞﾒ） 第3,4,7,8話
音楽：青木沙也果（過去作/この初恋はﾌｨｸｼｮﾝです､ﾕﾆｺｰﾝに乗って）
主題歌：King & Prince「We are young」
制作協力：オフィスクレッシェンド（過去作/世界一難しい恋､もみ消して冬､俺の話は長い､ｼﾞｬﾊﾟﾆｰｽﾞｽﾀｲﾙ）
※敬称略

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もう今回の演出が丸谷俊平氏であることは分かったはず(笑)

当ブログで演出の勉強をしている読者様なら…

冒頭の炬太郎（岸優太）と炬太郎が住む家の管理人・柿田（おいでやす小田）の場面で…

●カメラアングルが高めなこと
●柿田の背後の障子に木々の影がないこと
●序盤に引きの画がなく人物のカットだけの切り替えしだったこと

以上の三つから、今回の演出担当がメイン監督の中島悟氏でなく、丸谷俊平氏であることは分かったはず（笑）

そう、何となくでも分かることが、今作を深く理解したり、より楽しんだり、テレビの中の出演者の人たちの気持ちに近づけることなのだ。

ついでに書いておくと、今回は「前回と同日のその後」って設定だ。

だから、台詞にもそれを意識させるキーワードが盛り込まれているから、「同じ日」なのだから前回担当の丸谷氏が担当するのは “連ドラ” としてはつながりを考えてもいい選択だと思う。

EPG欄『一人でも　淋しくないもん　猫だから』が絶妙！

前回は、炬太郎のことを心配した‘てん’（浮所飛貴）がスーツケースをもって家を出たところで終わった。

従って、今回はサブタイトルが『犬と猫がんばる』であることからも、「炬太郎のために家出をした‘てん’」と「何らかの事情を抱えることになるエリー」を均等に描くと思ったのだが。

以前にも書いた今作の EPG欄は『一人でも　淋しくないもん　猫だから』と “五・七・五” の俳句調だ。

従って私は、今回は炬太郎が高校生の時に知人から一時的に預かったセレブ猫・エリザベスの記憶を持つ女・湊エリー（松本まりか）を描いて、エリーに翻弄される炬太郎と‘てん’を描くのだと、見る前に頭を切り替えた。

‘てん’が炬太郎に電話をかけてくる場面の劇伴に傾聴！

そうすると、4分過ぎに炬太郎に‘てん’（浮所飛貴）から電話が掛かる場面の劇伴に注目（傾聴）だ。

コミカルな劇伴になっているのが、ちょっとした演出家やサウンドデザインの工夫であることが分かる。

ここ、普通に考えたら「炬太郎のために家出をした‘てん’」と炬太郎を描くのだから、それなりにセンチメンタルな劇伴のほうがしっくりくる。

でも、実際にはいつも自宅のシーンでさり気ない場面でよくかかる劇伴だ（サントラ盤未発売につき、曲名は不明）。

でも、この選曲によって今回は「炬太郎のために家出をした‘てん’」にあまり重心は置かれないことが分かるのだ。

要するに、「‘てん’のことは今回はアッサリ気味にして、次回でガッツリ描きますよ」という作り手の意思表示、宣言なのだ。

恐らく多くの人が既に一度は見たと思うから、〔おかわり視聴〕する際は劇伴を傾聴すると、ここがしんみりした劇伴でないから、7分11秒の次の炬太郎の台詞からの「We are young」のアコギ・ヴァージョンが冴えて聞こえることに納得できると思う。

炬太郎「けど 今は帰ってきたら お前がいてさ」

エリーの淋し気なアップの"インサートカット"を掘り下げる

このシーンの秀逸な演出がもう一つある。

この台詞の後は、炬太郎と‘てん’がカットバック（映像が交互に切り替わること）していく。

炬太郎と‘てん’は物理的な距離は離れているけれど、心の距離はちっとも離れていないってことの映像化だ。

そう、以心伝心… である。

本来なら二人のカットバックで終わらせた方がスッキリする。

しかし、前述の通りに今回は『一人でも　淋しくないもん　猫だから』なのだ。

だから、炬太郎の次の台詞の時に、エリーの淋し気なアップをインサートカット（突然、別のカットを挿入すること）する。

炬太郎「邪魔だよ。でも それが うれしいって話だよ
　　　　いてくれるだけで十分って話」

©日本テレビ

©日本テレビ

細かいことは以前の投稿（すきすきワンワン！ （第2話・2023/1/30） 感想）を読んでいただくとして、未読の人は下の私の解説図を見てほしい。

©ディレクターの目線blog

ここでの注目は炬太郎は「下手（画面左）向きへの目線」になっており、見れば分かるように、炬太郎は‘てん’に家出を実行させてしまったことに絶望や敗北を抱いているという表現なのだ。

一方のエリーは「上手（画面右）向きへの目線」になっており、‘てん’よりも炬太郎の近くにいるという優越感を感じつつも、‘てん’の存在に安心感や慈しみを感じているという表現で。

それはここまでの‘てん’のカットも「上手（画面右）向きへの目線」だから、サブタイトルの『犬と猫がんばる』にも、つながっているのだ。

メッセージの画面の角度と、炬太郎の家のアングルに注目！

もう一つ、演出の工夫というか、演出家の意図を想像してみる。

終盤でエリーが炬太郎にタクシー車内からメッセージを送ってくる場面での、メッセージの画面の角度と、炬太郎の家のアングルについて。

以前、第4話の感想で、炬太郎に助けられたおばあちゃんからのメッセージの画面が「右上がりの構図」になっており、その角度が直前の炬太郎が天井を見て寝転ぶ角度と同じだと言及した。

今回も同じ丸谷氏の演出だが、今回はメッセージの画面の「右上がりの構図」を左右反転させると、炬太郎がメッセージを読む構図の角度と同じという演出。

©日本テレビ

©日本テレビ

©日本テレビ

3枚目の左右反転させて投下させた画像を見れば、メッセージの文字の角度が、玄関の角度と同じことが分かると思う。

このことから、映像的に左右反転させて同じ構図を使うことで、この時点での炬太郎とエリーの立場が真逆のような印象になるってこと。

以前は炬太郎がエリーに頼ってばかりって感じだったのが、今回の炬太郎の最後の一言で形勢逆転って感じ。

そんなことを、カメラの角度でも表現できますよ… ってことだ。

酔っぱらったエリーを気遣う炬太郎を演じる岸さんの演技！

さて、今回も「俳優・岸優太」のお芝居について書いてみる。

今回で注目したいのは、終盤での “宅飲み” のシーンで、酔っぱらったエリーが立ち上がってふらついて、それを心配した炬太郎が… ってくだりだ。

©日本テレビ

エリーを演じる松本まりかさんが若いながらも演技で魅せるのは、あちこちのドラマでよく見かけるから、松本さんの演技を批判するつもりはないし評価もしている。

しかし、相対的に考えると「酔っぱらってる演技」よりも「酔っぱらってる演技の人を扱う演技」のほうが難しいのは想像できると思う。

だって、演技で酔っ払ってる人を本当に酔っぱらっている人として、酔っぱらってる演技をしながら対応するわけだから（複雑…）

で、よく見るとエリーが紙コップを持ったまま立ち上がった際に、炬太郎が一瞬だが、立ち上がった瞬間と、そのあとの2回だけ畳の上を心配するのが分かると思う。

©日本テレビ

畳の上が汚れていないことを確認してからエリーを見上げて話を聞くわけだが。

ここは、岸さんのアドリブっぽいなぁと思う。

だって、この直前にエリーは紙コップの中を飲み干しているのだから、普通なら何も零れないと考えるはず。

でも、リアルに考えると、たとえ飲み干したつもりで、数滴は零れることってあるではないか。

そのことをお芝居でやっているのだと思うのだ。

そう、あの畳を心配することが、大家さんとしての炬太郎らしさであり、実は神経質で繊細な人って感じが出てくる演技なのだ。

そしてコタツに突っ伏して寝てしまう（フリだが）エリーを介抱する炬太郎の左手の微妙な動きも、正に炬太郎って感じ。

©日本テレビ

以前にも書いたが、炬太郎が岸さんで、岸さんが炬太郎になっているのだ。

これは、岸さんと炬太郎が似ているという意味ではなく、脚本と演出と演技によって “ドラマ” の主人公と岸優太さんが互いに近づいて行っているような関係になっているってこと。

でも、これが「岸優太＝雪井炬太郎」でないことは、今作を見ていると炬太郎の中に少し岸さんが見えることはあっても、歌っている時の岸さんや『King & Princeる。』の岸さんからは炬太郎が全く見えないことからも分かること…

やはり「俳優・岸優太」にしか演じられない「雪井炬太郎」なのだと思う。

思い出に頼らず未来に進んで行く炬太郎も見たくなる…

最後に総括的に。

今回は、犬と猫の習性みたいなものを物語に盛り込んだエピソードになっていたと思う。

たまにネット調査で「あなたが飼うなら犬派 or 猫派？」みたいなアンケートを見かける。

人懐っこさが魅力だという犬派が 6割で、自由さが魅力だという猫派が 4割との統計もある。

それはそれとして、今回は犬は忠実で従順で感情が伝わるとし、猫はマイペースで気分屋さんとの見方もある。

まあ、犬は元来群れで生きていた動物だから群れのリーダーを強く認識する習性があり、それが今でも残っていて、育てくれた人を親だと思って信頼を寄せるとの説がある。

一方の猫は縄張りは持つが行動は単独の習性があり、だから飼い主であってもすぐに逃げられるような行動をとりがちとの説もある。

今回の、特にエリーについては「自分の縄張りは壊されてくないし、単独行動が好き」だけど、「撫でてほしいときや、トイレ掃除をしてほしいときには “ツンデレ” で人懐っこさを出す」という特性がうまくいかされたエピソードだと思う。

タイトル『すきすきワンワン！』から、犬を描くとは思っていたが、猫の習性をいかしたエピソードで、気まぐれで偉そうなエリーを愛おしい存在に思っていた若き日の炬太郎の切ない思いを描くとは思わなかった。

そして、そんな少年時代の思いを今も持ち続けている炬太郎青年だからこその、思い出を大切にしつつも、思い出に頼らず未来に進んで行く炬太郎も見たくなる…

あとがき

日テレから正式発表はありませんが、シンドラ枠なので〔全10回〕までになりそうですね。

次回で、‘てん’から犬の‘天’の記憶が消えてしまうかも… って？？？

天は‘てん’としてのコタくんとの思い出が消えてしまうから淋しいでしょうけど、青年‘天’としてのコタくんとの生活は忘れちゃうのかなぁ。

その辺も大いに気になります。

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