正直不動産2 （第4話・2024/1/30） 感想

NHK・ドラマ10『正直不動産2』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、YouTube

第4話〔全10話〕『信用って何だ?』の感想。

なお、原作となった漫画・大谷アキラ(漫画) 夏原武(原案) 水野光博(脚本)「正直不動産」は、既刊19巻（2023年12月現在）を完読。

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十影（板垣瑞生）の初の成約まであと少し。客は結婚を控えた藤森（佐藤寛太）と恋人の美玲（恒松祐里）だが、藤森の過去のカード事故が原因で賃貸保証会社の審査に落ちてしまう。2人の関係がぎくしゃくする中、美玲の妊娠が判明。2人それぞれの思いを知った永瀬（山下智久）と月下（福原遥）は、マンションのオーナーへの説得を試みる。そんな永瀬と月下の姿に十影は…。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：漫画・大谷アキラ(漫画) 夏原武(原案) 水野光博(脚本)「正直不動産」
脚本：根本ノンジ（過去作/正直不動産,相棒ｼﾘｰｽﾞ,ﾌﾙｰﾂ宅配便,ﾊｺﾂﾞﾒ） 2024SP,第1,2話
　　　清水匡（過去作/僕の姉ちゃん） 第3話
　　　木滝りま（過去作/ｶﾅｶﾅ,青春ｼﾝﾃﾞﾚﾗ）） 第4話
演出：川村泰祐（過去作/正直不動産,ﾄﾞS刑事,屋根裏の恋人） 2024SP,第1,2話
　　　金澤友也（過去作/正直不動産,ﾗｽﾄ･ﾄﾞｸﾀｰ~監察医ｱｷﾀの検死報告~） 第3,4話
　　　下向英輝（過去作/ｶﾅｶﾅ,青春ｼﾝﾃﾞﾚﾗ）
音楽：佐橋俊彦（過去作/正直不動産,ちりとてちん,ﾃﾐｽの剣,集団左遷!!,行列の女神）
主題歌：小田和正「so far so good」
※敬称略

まえがき

第4話の感想の前に。

第3話の感想に＜59回＞も Web拍手をいただき、ありがとうございます。

また、SNSで当ブログをご紹介してくださった方々へも感謝いたします。

第1話と第2話と、第3話と第4話の構成がかなり違う

多くの読者様にはどうでも良いことだろうが。

“ドラマ” を理解する上で、それなりに大切なことだから、当ブログでは抑えておく。

まず、前回の脚本担当・清水匡氏と、今回の脚本担当・木滝りま氏、いずれも前作『正直不動産』に携わっていないってこと。

同時に、前回と今回の演出担当・金澤友也氏は前作から引き続き担当しているってこと。

なぜ、こんなことを書いたのか？

それは、第1話と第2話と、かなり構成が違うからだ。

『正直不動産2 』（以下『２』とする）になってから、正直過ぎる不動産営業マン・永瀬財地の師匠で常にナンバーワンの営業成績を誇った男・神木涼真（ディーン・フジオカ）やＺ世代の新入社員・十影健人（板垣瑞生）など、数名の新キャラクターが登場している。

しかし、前回では「永瀬 VS 神木」を封印して。

永瀬の後輩でカスタマーファースト命の月下咲良（福原遥）月とミネルヴァ不動産の花澤涼子（倉科カナ）の対決を描いた。

そして、今回は「永瀬 VS 神木」も、「月下 VS 花澤」も封印。

光友信用保証の幹部・愛原真耶（松本若菜）は一部に登場したが。

不動産案件に深く絡んだのは、十影だけ。

そう、『１』を見ていた人なら分かると思う。

『１』風に、今知っておきたい不動産情報を伝える役割重視

今作の基本は…
先輩が後輩の売り上げのために奮闘しつつ、後輩も成長する… のは、正に『１』と類似のエピソードなのだ。

私は、“連ドラ”、それも続編まで作れる人気作品としては、 とても丁寧な構成だと感心した。

なぜ感心したのか？

ご存じのとおり、今作は正直者が嘘つきとバトルして勝つのを描いて、「嘘はいけませんよ」を描くドラマではない。

基本的に、不動産業界、不動産会社の営業を通して、家の大切さ、コミュニケーションの重要性などを描きつつ、働くすべての人たちに明日への元気を与える痛快さを提示するとともに。

今知っておきたい不動産情報を伝える役割もあり、『１』ではそこに重点が置かれていた。

『２』から見始めた人への"原点回帰の配慮"も見逃せない

で、今回は正に “原点回帰” といって良い。

世間での評判、正月SPを見て、『２』から見始めた視聴者も多いはず。

だから、大前提として “今知っておきたい不動産情報” をしっかり盛り込んで。

レギュラー・キャラである永瀬と月下の “個性” をふんだんに盛り込みつつ。

いつもどおりの、人情モノ、ある種のホームドラマ、お仕事ドラマとして完結させた。

贅沢をいえば、ミネルヴァ不動産が邪魔に入ったら、更に面白くなったと思うが。

ここは、新しい脚本家に『１っぽいエピ』で成功させよう！ という制作陣の今作への熱意が込められていたと推測する。

今回で注目すべき演出は「エキストラの使い方のうまさ」

さて、今回で注目すべき演出は「エキストラの使い方のうまさ」だ。

最近のドラマでは、お金も時間も手間もかかるから手抜きしがちなのがエキストラの存在だ。

エキストラとは、テレビ撮影などで、群衆・通行人・客などの役を演じる臨時雇いの出演者のこと。

でも、今作では、ほかの作品に比べるとエキストラの配置が多い。

しかし今回は、エキストラの配置が実に細かく計算されていた。

因みに、エキストラを使う理由はいくつかあって。

●そのシーンをリアルに見せるため
●メインの登場人物を背景から独立した感じに見せるため（孤独感とか）
●逆にメインキャラを雑踏に潜り込ませるため（存在感を消すとか）

登坂不動産やミネルヴァ不動産の店内にいる客はもちろんだが。

例えば、今回の客・美玲（恒松祐里）が妊娠していることが判明する公園にも多くのエキストラがいた。

登坂寿郎社長（草刈正雄） と大地主のマダム（大地真央） と永瀬が飲んでいたバーにも。

夜中に永瀬が十影を呼び出した歩道橋の上にも。

終盤の武蔵山公園の池の周辺にも。

これらのエキストラの存在により、永瀬たちが “生きている” ってことが映像から伝わるのだ。

私がドラマの感想でよく書く…

「主人公が生きている世界」と「主人公が生かされている世界」と「主人公が生きているから成立する世界」が一つにつながって見えるのだ。

きちんとファンタージーに見せる演出として評価したい部分

しかし、屋外や店内なら、とにかくエキストラを配置しているかというとそうではない。

印象的に “人払い” したシーンが…
27分ごろの水商売の藤森（佐藤寛太）とその恋人・美玲が20年ぶりに再会する回想シーンだ。

路上にケンカ相手は登場するが、路地という設定もあって、通行人を意図的に配置していない。

＜並みのつくり＞のドラマなら、酔っ払いの複数の通行人を使って「なんだなんだ」みたいなのを入れて。

野次馬の中から美玲が「えっ、もしかして藤森君!?」みたいに出て来るの！（苦笑・見たことあるでしょ？）

でも、今作の脚本も演出も一種のファンタージーにしたかったから、まず美玲を大きな影でラスボスっぽく登場させ、強い光源の中から美玲を見せた。

このことで、普通は「回想は説明で物語じゃない」とバッサリと切り捨てるところを、きちんと今作をファンタージーに見せる演出として評価しちゃうのだ。

「普通、無いでしょ？」を信じさせる魔法がファンタジー

ファンタジーを強調したシーンは、ほかにもある。

終盤の32分すぎ子ども時代の藤森と美玲を “今の藤森” が見ているシーンもそうだ。

だって、こんな話、普通無いでしょ（笑）

20年ぶりに、自分のヒーローが目の前で倒れていて助けちゃうとか（汗）

美玲が部屋を気に入った物件「ラプラス武蔵山」のオーナー貴島孝雄（ダンカン）が手書きに感動して入居を許すなんて（大汗）

でも、「幼馴染のヒーローとの20年ぶりの再会」のファンタージーを受け入れられた視聴者なら、最後で満足した）はず。

この辺の視聴者の心理を、エキストラの有無で動かすなんて、なかなかできない演出だと思う。

「ラプラス武蔵山」と「オリポスカード」の名称の意味

さて、今回も劇中に登場した「名称」を紐解いてみる。

まず、藤森と美玲が入居することになった賃貸マンションが「ラプラス武蔵山」。

ラプラスは、「広場」を意味するフランス語の同音語「La Place(ラプラス)」がもとになっていると思われる。

公園が近くにあり、いろんな人が集まって来る「壁のない広場」から名付けられたと推測する。

もう一つは、賃貸保証会社の「オリポスカード」。

オリポスは、恐らく「Olympos／?λυμπο?(オリンポス)」のことで。

オリンポスは、ギリシャ神話の神々が頂上に住んだとされる山の名前。

このことから、天の上から下々の人間を見ているという感じが、信用審査に通じていると思う。

月下"私たちが探す『家』はただの『箱』なんかじゃないの"

前回は妹の急逝で落ち込みすぎて簡素だったから、今回はもう少し書いてみる。

やる気ゼロの十影に月下が次のように言った。

月下「私たちが探す『家』は
　ただの『箱』なんかじゃないの。
　住む人が幸せになれる場所なの」

あまり世相に関連することは書きたくないが。

【能登半島地震】仮設 その場所も不安　115戸建設開始 みなしも確保：北陸中日新聞Web 

仮設住宅は一日も早く多く必要だと思うが。

仮設住宅の一部は、津波の浸水想定区域に建設するという。

月下の言葉を胸に、行政には市民に寄り添って進めてほしいと思う。

"ドラマ"の世界くらい"こういう世間"があっても良いと思う

今回で一番面白かった、見どころとして良かったのが、35分すぎの永瀬のセリフだ。

永瀬「私も 清廉潔白な人間ではありません。
　たたけば大量にほこりが出るような人間です。
　（中略）こんな時だからこそ正直にいきましょう。
　『最後は人』だと思うんです」

藤森と美玲、永瀬と月下と十影が “正直” になったからこそ。

「ラプラス武蔵山」のオーナー貴島の心が動いた。

繰り返すが、これを「現実味がない」「あの二人は別れる」「私なら絶対貸さない」と思うのは自由だ。

しかし、“ドラマ” の世界くらい “こういう世間” があっても良いと思う。

こんなにも殺伐した世の中だから…

あとがき

基本的に「原作と実写ドラマは比較しない立場」なのは、いつもどおり。

でも、ここ数日「原作とドラマ化」が話題になっているから少しだけ。

今回の原作の元ネタは、第12～13巻にまたがる「賃貸保証会社（前後編）」です。

amazon「正直不動産」第12,13巻

原作には、「思い出の公園」は登場しません。

妊娠した女性客が「妊娠しているから評判のいい産婦人科のある病院の近くに引っ越したい」と選ぶのです。

これ以上は書きませんが。

今作が続編まで作られているのは、ドラマスタッフが原作をリスペクトし。

原作が伝えたいことはそのまま描いて、連ドラらしい連続性（成長など）と、実写ドラマとして馴染みやすい人情モノに上手に昇華しているからです。

次回も、引き続き期待しつつ、応援します！

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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