不適切にもほどがある！ （第9話・2024/3/22） 感想

TBS系・金曜ドラマ『不適切にもほどがある！』
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第9話『分類しなきゃダメですか?』の感想。

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社内報のインタビューを受けた渚（仲里依紗）。すると、その記事を読んだ後輩の杉山（円井わん）が、渚の発言は自分に対するアウティングかつマタニティーハラスメントだと、市郎（阿部サダヲ）の元に相談に来る。それを聞いた渚は、特定の誰かについて話したわけではないとショックを受ける。そんな中、市郎と秋津（磯村勇斗）が「SCANDAL」へ行くと、昭和にいるはずのサカエ（吉田羊）の姿があった。
---上記のあらすじは、公式サイト等より引用---

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原作：なし
脚本：宮藤官九郎（過去作/あまちゃん,ゆとりですがなにか,俺の家の話）
演出：金子文紀（過去作/恋つづ,逃げ恥,俺の家の話） 第1,2,5,7話
　　　坂上卓哉（過去作/死にたい夜にかぎって,ﾌﾞﾗｻﾞｰ･ﾄﾗｯﾌﾟ） 第3話
　　　古林淳太郎（過去作/100万回 言えばよかった） 第4,9話
　　　渡部篤史（過去作/ﾊﾟﾘﾋﾟ孔明,100万回 言えばよかった） 第6話
　　　井村太一（過去作/ﾍﾟﾝﾃﾞｨﾝｸﾞﾄﾚｲﾝ-8時23分､明日 君と第5話のみ） 第8話
音楽：末廣健一郎、MAYUKO、宗形勇輝
振り付け：八反田リコ（過去作/ｳｫｰﾀｰﾎﾞｰｼﾞｽﾞ"陸ﾀﾞﾝｽ",うぬぼれ刑事,吾輩は主婦である）
ミュージカル作曲：MAYUKO（過去作/海月姫,ﾁｱ☆ﾀﾞﾝ,ﾒｿﾞﾝ･ﾄﾞ･ﾎﾟﾘｽ）
主題歌：Creepy Nuts「二度寝」
Ｐ：磯山晶（過去作/ごめんね青春!,俺の家の話）
　　勝野逸未（過去作/俺の家の話,王様に捧ぐ薬指）
　　天宮沙恵子（過去作/ﾌﾟﾛﾃﾞｭｰｽ作品不明）
※敬称略

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今回の感想も、あれこれ「させていただき」ます（笑）

今回も、「昭和あるある」「昭和間違い探し」は、ほかでやっていただき。

今回も、万人向けは一切考慮せずに書かせていただき。

私のドラマ愛を前面に押し出した当ブログの特性をご理解いただき。

お読みください（笑）

「過不足」を「かぶそく」を読むのは誤読です

まず、昭和生まれ育ちのオッサンがお節介をさせていただいちゃいう（笑）

冒頭、社内報のインタビューを受けた渚（仲里依紗）が次のように言う場面があった。

渚「過不足なく受けされてもらって」

こうして文字起こしすると分かりにくいが、仲里依紗さんは「過不足＝かふそく」と読んでいた。

この「かふそく」に引っ掛かった人、いるのでは？

実は、意外と間違っている人が多いのが「過不足」の読み方だ。

コトバンクを見ても分かるように

デジタル大辞泉 「過不足」の意味・読み・例文・類語
か‐ふそく〔クワ‐〕【過不足】
多すぎることと足りないこと。過不及。「事実を過不足なく伝える」
[類語]過不及
か‐ぶそく〔クワ‐〕【過不足】
「かふそく（過不足）」の誤読。

出典：小学館デジタル大辞泉について　情報 | 凡例

「かぶそく」は昭和でも令和でも誤読なのだ。

まっ、それだけのことだが（笑）

また、渚の先輩・栗田一也（山本耕史）が劇中で、「いいや、いや」の意味で「否（いな）」を使用していたのも、言葉を大切にする脚本家らしい選択だったと思う。

過不足(かふそく)とは？ 意味や使い方 - コトバンク 

脚本家・大石静氏へのエールであり、リスペクト!?

小ネタで面白かったのが、マッチングアプリの問題点を市郎（阿部サダヲ）と‘秋津くん’こと秋津真彦 （磯村勇斗）が語らうくだりで始まった、市郎の次のセリフだ。

市郎「じゃあ 六人一首で決めよう ねっ」

これと連携していたと感じるのが、フェミニストの社会学者・向坂サカエ（吉田羊）が息子・キヨシ（坂元愛登）に書き残した “巻物手紙” だ。

「六人一首」は、平安初期の「古今和歌集」の序に掲げられた “歌仙” といわれた歌道に秀でた小野小町ら６人を “六歌仙” と呼び、その歌を “六人一首” のことだと思う。

そして、「国宝 紫式部日記絵巻」に代表される穏やかな平安宮中の世界を彷彿させる “巻物手紙” と、どこか平安宮中が漂う吉田羊さんの雰囲気。

どちらも、平安時代の日本の文学に通ずることから、現在放送中の紫式部の生涯を描く NHK大河ドラマ『光る君へ』の脚本家・大石静氏へのエールであり、リスペクトを感じざるを得ない。

だって、宮藤氏と大石氏は、2023年、松坂桃李さんと仲里依紗さん共演の Netflixシリーズ『離婚しようよ』で交換日記のように執筆した共同脚本の魅力が話題になった間柄だからだ。

因みに、市郎は＜あくまでも個人の意見です＞とのことで。

市郎「男は作んねえよ こんなの
　マグロのぶつと もつ煮だよ」

下図が一昨日の晩に私が作らさせていただいた「アクアパッツァもどき」と「鴨肉のロースト　オレンジソースもどき」だ（笑）

『♪失恋レストラン』の歌詞

今作の見どころ、聴きどころといえば「歌と踊り」「ミュージカル」だ。

今回は、清水健太郎の『♪失恋レストラン』を面白く使われていた。

序盤で、サカエが市郎の同僚でキヨシの現担任教師である安森（島歩）とチョメチョメしたのかどうか尋ねるくだりで。

市郎「ポッカリあいた胸の奥に
　つめこむメシを食べさせる だよ」

上の市郎のセリフが、丸々『♪失恋レストラン』の歌詞なのだ。

だから、このあとのカラオケシーンでは敢えて歌わない選択がされた… と思う。

劇中で、このような種明かしをやるのは野暮だからだ（自己反省）

失恋レストラン 清水健太郎

ＪＢ風のゆずるのミュージカル『コーラスライン』

犬島ゆずる（古田新太）の単独ミュージカルも良かった。

たった一人で観客を魅了する姿は、確かに “ジェームス・ブラウン” だし。

ＪＢは、生前に薬物中毒で夫婦喧嘩をし、銃を乱射し警官とカーチェイスをやったが、なんとガス欠で逮捕されたことがある。

この辺のパトカーとのカーチェイスと、駆け付けた救急車もちょっと重なるし。

また、ゆずるが歌ったのが、誰もが知る1975年に初演されたブロードウェイミュージカル『コーラスライン（A Chorus Line）』のフィナーレの名曲『One』を “ワンチャン” に掛けた替え歌だ。

「One（ワン＝１）」は、たった一つの夢、一つひとつのきらめき、一目惚れ、世界にたったひとり… を意味する。

愛する妻を亡くしたゆずるが、渚を守るように熱唱するのが、なんともカッコいい。

墓石に純子の名を見つけた市郎の心情を慮ると泣けてくる…

個人的にグッと来て泣きそうになってしまったのが、ワンチャン” 直後の市郎の一人娘の純子（河合優実）の墓参りだ。

奇しくも、明日の3月23日（土／先負）が春彼岸明けで、お墓参りの季節でもあるわけだ。

で、泣けたのが。

市郎「勝手に 小川家の墓に入ってるかと思ってたよ」
ゆずる「すいません 」

今年1月20日に妹が急逝して、先週が四十九日だった。

妹は旦那さんの九州の実家の墓に埋葬されることになった。

突然のことだから、関東にお墓を用意できなかったし、13歳も上の旦那さんも埼玉県で一人暮らしは大変だということでお骨と一緒に帰郷という。

古い考え方かもしれないが、結婚して私の家系から出たわけだから、妹はうちの菩提寺の墓に入らないとは思っていたが。

やはり、九州は遠いなぁと。

こちらへ分骨するなどの方法もあるが、まあ、そのことは置いておこう。

とにかく、自分の未来の死を知ってしまった市郎ではあるが、娘の純子と同じ「小川家」の墓に入らない現実を見てしまったのは、どんなにショックで、どんなにグッときちゃったのか、想像を超える悲しさだった…

みんなが純子と "ご縁" でつながっているという解釈が素敵

でもって、ここで私がグッときちゃったのが。

サカエ「でも ここにいる みんな
　純子ちゃんでつながってる」
市郎「俺の娘で」
渚「私のお母さんで」
井上「僕の先輩で」
ゆずる「私の妻 ですもんね」

血のつながりの有無ではなく、 みんな “ご縁” でつながっているという解釈。

英語圏でいうところの、広義での “ファミリー” や “ブラザー” の感覚に近いか。

その一方で、その対極ではないが、ある意味での血縁の結びつきの延長線上的な “妊活” が今回で描かれたテーマの一つにもなっていることで、全部がつながっているのだ。

当然、これらは、クドカン脚本における、死んだはずの先妻の幽霊が登場する『11人もいる!』（テレ朝/2011）。

古典や伝統芸能を扱い、早過ぎる死を描いた『俺の家の話』（TBS/2021）にも通じる。

やはり、宮藤官九郎という作家の作家性が明確に表現された作品の一つであることがよく分かるくだりだ。

視聴者とのお約束事を破って、予測不能にするだけでなく…

今回は、細かい部分にばかり焦点を当ててきたので。
ここからは、少し大局的な部分に触れてみる。

最終回直前回になって、いくら “タイムマシンにお願い” しても、大規模なタイムスリップ無しって（笑）

最終回用の往復１回分の燃料だけ残して、タイムマシンが計画運休する展開とは！（爆）

だって、多くの視聴者が「今回は、どんな昭和あるあるやるの？」であり。

市郎や純子にとって「タイパ、コスパ、【すしざんまい】ならぬハラ三昧は、どう映るの？」が、最大の関心事なのに。

そのお約束事を放棄して、病人のミュージカルと墓参り。

こうやって、高笑いするかのようにトリッキーに視聴者とのお約束事を破って。

予測不能にするだけでなく、“人間ドラマ” として重く深いところをえぐって、「どうだ！ こういうカッコつけようとしてもダサくて、弱虫なのに強がりで、泥臭い生き物が人間なんだ」と胸ぐらを揺さぶるように描いてくる。
＜あくまでも個人の意見です＞

やはり、描こうとしていることがブレないから、見ていて楽しいし、納得できるのだと思う。

あとがき

いやあ、ここまで全部 Blu-rayで永久保存版にしているんですが。

それでも、今から “ロス疑惑” でも “ロス・インディオスのシルヴィア” でもなくて “ふてほどロス” です。
＜あくまでも個人の意見です＞

これ、本当に “続編” を作ってほしいです。

とはいえ、最終回では誰が戻って、誰が行って、何が変わって変わらないのか？

笑えて泣けて、腹が立つ部分もあって感慨深くもあって、ホント素晴らしいドラマです。

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