新宿野戦病院 （第1話/初回15分拡大・2024/7/3） 感想

フジテレビ系・水曜22時枠『新宿野戦病院』
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第1話/初回15分拡大『＜宮藤官九郎脚本＞笑って泣ける医療エンターテインメント!』の感想。

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美容皮膚科医の高峰享（仲野太賀）ら個性豊かな医師たちが働いている新宿歌舞伎町にある『聖まごころ病院』では、外科医不在の中、流血するホストのマモルが運ばれる。
さらに、NPO法人「Not Alone」の南舞（橋本愛）が動画撮影中に遭遇泥酔した急性アルコール中毒のヨウコ・ニシ・フリーマン（小池栄子）と南も搬送される。
マモルは無事処置を受け、ヨウコは翌朝無断で退院するが、後日再訪。彼女は元アメリカ軍医で海外医師免許を持つが、日本では医療行為ができなかった。
その後、南が銃で撃たれたムハマドの処置を依頼するが、享は外科医不在で拒否。ムハマドは強制送還の危機にある。ヨウコは彼を病院に連れて行き、医師たちの前で処置を始める…
--上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---

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原作：なし
脚本：宮藤官九郎（過去作/あまちゃん,俺の家の話,不適切にもほどがある!）
演出：河毛俊作（過去作/ﾅﾆﾜ金融道,きらきらひかる,救命病棟24時2009） 第1話
　　　澤田鎌作（過去作/不毛地帯,元彼の遺言状,女神の教室）
　　　清矢明子（過去作/ﾗｼﾞｴｰｼｮﾝﾊｳｽII 第8話のみ,僕たちの校内放送）
音楽：不明
主題歌：サザンオールスターズ 「恋のブギウギナイト」 
Ｐ：野田悠介（過去作/競争の番人,ｱﾝｻﾝｸﾞ･ｼﾝﾃﾞﾚﾗ,女神[ﾃﾐｽ]の教室）
※敬称略

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クドカンによる新感覚救急医療エンターテインメントドラマ

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

今作は、宮藤官九郎氏のオリジナル脚本による「新感覚・救急医療エンターテインメントドラマ」がキャッチコピーだ。

新宿・歌舞伎町にひっそりと佇む経営難且つ外科医不在の「聖まごころ病院」が舞台。

ホストやキャバ嬢、ホームレス、トー横キッズ、不法滞在者、元反社など “訳ありな患者たち” を集い、救う地域に根ざした病院だ。

そこで起こるトラブルを、コミカルとシニカル、リアルとフィクションを織り交ぜながら、苦悩しつつも強く生きようとする住民、仲間、家族を通して「生きる」「命」の尊厳を突き詰め、問う作品だ（と思う）。

「うちの院長はね 歌舞伎町の赤ひげ先生って呼ばれて…」

と言い切ってしまうのは、この第1話を見終えたばかりでは少々盛りすぎ、アゲすぎ、擁護しすぎかもしれない。

ただ、私なりの根拠がある。

第1話には、新宿・歌舞伎町にある交番の地域課に勤務する警察官・岡本勇太（濱田岳）のセリフに、数々の洋画の名作の監督名や作品名が散りばめられていた。

例えば。

序盤では「タランティーノ」「スコセッシ」、その後には「ロドリゲス」。
５時間前の回想シーンでは「ゾンビ！ ロメロっぽい」「エクソシスト」など。

それらに混在していたため（恐らく、宮藤氏の意図があると思う）目立たなかったが。

序盤も序盤、NPO法人「Not Alone」新宿エリア代表・南舞（橋本愛）に、看護師長・堀井忍（塚地武雅）が、聖まごころ病院 3代目医院長・高峰啓介（柄本明）を紹介するくだりに注目だ。

堀井「うちの院長はね 歌舞伎町の
　赤ひげ先生って呼ばれているんです」

知る人ぞ知る、名匠・黒澤明監督の名作『赤ひげ』へのリスペクトであり。

と同時に、映画の原作（小説）である山本周五郎の『赤ひげ診療譚』へのオマージュだ。

『赤ひげ』『赤ひげ診療譚』へのリスペクトとオマージュ

黒澤明監督と山本周五郎と聞いて、ピンときたクドカンファンはいると思う。だ。

そう、先日地上波で放送されたドラマ『季節のない街』こそが、山本周五郎の同名小説が原作で、その映画版が黒澤監督の『どですかでん』だ。

ご存じでない方のために、大きなお世話を承知で、映画『赤ひげ』、並びに山本周五郎の『赤ひげ診療譚』の解説をやってみる。

あらすじは。

江戸時代の小石川養生所で、通称赤ひげと呼ばれる所長と若い医師の心の交流を描く物語。長崎で医学を学んだ青年保本は、養生所での貧しい生活や無骨な赤ひげに最初は反発するが、赤ひげの優れた医療技術と貧しい人々への献身に心を動かされていく。

ほら、どこか今作との類似点があると思う。

また、小説『赤ひげ診療譚』には、次の名ゼリフがある。

「あらゆる病気に対して治療法などない。
　（中略）貧困と無知さえなんとかできれば、
　病気の大半は起こらずに済むんだ。
　いや、病気の陰には、
　いつも人間の恐ろしい不幸が隠れている」、

これは、数年前のコロナ禍の当初、コロナウイルスが未知の感染症と恐れられていたときに、一部の医療関係者がやたらと騒ぐ市民らに警鐘を鳴らした際に引用されたので知っている人がいるかもしれない。

私は、上記のあらすじと名ゼリフから、今作のあちこちに『赤ひげ』『赤ひげ診療譚』へのリスペクトとオマージュを感じるのだ。

もちろん、私の勝手な想像だが。

本当の主人公は、美容皮膚科医・高峰享なのでは？

さて、今作の感想に戻ろう。

宮藤官九郎作品としては、放送順ではなく制作順でいうならドラマ『季節のない街』があって、『不適切にもほどがある!』となる。

『季節のない街』では、震災の被災者たちの貧困生活を舞台に、自分らしく生き抜く人々が、笑いと涙と皮肉と毒で描かれた。

『不適切にもほどがある!』では、規則に縛られまくるテレビ制作現場を舞台に、コンプライアンスガン無視の騒動を笑いと涙と皮肉と毒で描かれた。

こうなると、放送局が… というよりも、宮藤官九郎氏が “やりたい作品” “つくりたいドラマ” を作り続けている… と、考えるのが自然だと思う。

だって、『ふてほど』は別にして、どれも大ヒットが約束されるような内容ではないからだ。

そこで、この考え方を進めると、一つの答えにたどり着く。

それは。

今作の本当の主人公は、「医療はビジネス」「今どきは…」と、反論ばかりの美容皮膚科医・高峰享（仲野太賀）なのでは？ と。

亨が、「聖まごころ病院」での “訳あり患者” や過酷な労働環境に反発しながら、高峰院長の昭和風の義理人情や…

アメリカ国籍の元軍医であるヨウコ・ニシ・フリーマン（小池栄子）の斬新な医療行為や振る舞いに、次第に惹起される過程が描かるように思うのだ。

従って、見ようによっては「主人公の存在感が薄い」となるかもしれない。

でも、形式上と本質的な主人公が違う作品は山ほどある（敢えて書かないが）。

そう思えば、ユウコが今後目立ってくる可能性は十分に秘めていると思う。

興味深いのは、『虎に翼』での役柄とほぼ真逆のキャラ設定

さて、一応当ブログでも触れておくか。

というのは、今頃散々ネット界隈では話題になっているから、書くことはないかと思うコト。

それは、配役の部分で、今放送中の NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』のキャストが出演している点だ。

興味深いのは、『虎に翼』での役柄と、ほぼ真逆のキャラクターになっていることだ。

それゆえに、私は「便乗」と卑下するつもりはなく、むしろ、巧みな「使い分け」「演じ分け」を楽しんだ。

21年前のサザンオールスターズのMVに小池栄子さんが出演！

で、こっちは、サザンオールスターズのデビュー当時からの大ファンとして絶対に書きたいコトだ。

今作の主題歌は、サザンオールスターズ の新曲『恋のブギウギナイト』。

実は、今作の主演である小池栄子さんとサザンには縁がある。

それは、2003年7月23日発売の47枚目シングル『涙の海で抱かれたい ～A OF LOVE～』の MVに小池栄子さんが出演していることだ。

桑田佳祐さんが小池さんのグラビアを見ていて気に入り、事務所に連絡して実現したとのこと。

下記で、21年前のサザンと、赤い水着の小池栄子さんが見られるので、是非見ていただきたい。

サザンオールスターズ - 涙の海で抱かれたい?SEA OF LOVE? [Official Music Video]

懸念材料があるとすれば、「NPO設定」が必要かどうか…

たった一つだけ、懸念材料があるとすれば、NPO法人「Not Alone」という団体を盛り込んでいる点だ。

実は、草彅剛主演ドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』（NHK／2023）で、橋本愛さんは ろう者支援活動のNPO団体「フェロウシップ」の代表・手塚瑠美 役を演じている。

ここが、ダブっていることが懸念材料ではない。

『ふてほど』では、社会派ドラマの要素を加味する目的（と思う）で、フェミニストの社会学者、向坂サカエ（吉田羊）が盛り込まれた。

あちらでは大成功したが、正直いえば、父が作ったタイムマシンでキヨシ（坂元愛登）が来るだけで成立したのだ。

そして今作でも、社会派ドラマの要素を加味する目的（と思う）で、NPO法人「Not Alone」が加えられたのでは？ と思うわけだ。

あまり前に出すぎると、全体がお堅くなってしまうので、そこが注目点だということだ。

あとがき

「初回15分拡大」が悪いほうに作用したようですね。

そもそも第1話は状況説明が多く、物語が停滞するので、要注意なんですけど。

おかげで、医療ドラマの面白さと、コメディドラマの面白さが相殺されてしまったと思います。

第2話以降は説明が減るでしょうから、テンポも良くなって、面白味が増すのを期待します。

因みに、「頭蓋骨にドリル」のくだりは、ドラマ『コード・ブルー～ドクターヘリ緊急救命～THE THIRD SEASON』（フジ／2017）の第6話『落胆の向こう側』にあったと思います（間違っているかも？）

FODにて先行配信で次回を見た方、ネタバレコメントはご遠慮ください！

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