NHKドラマ10「宙(そら)わたる教室」 （第3話・2024/10/22） 感想

NHK・ドラマ10『宙(そら)わたる教室』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)

第3話〈全10話〉『オポチュニティの轍』の感想。

なお、原作(小説)となった伊与原新『宙わたる教室』は未読。

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東新宿高校定時制で保健室登校を続ける１年生の名取佳純（伊東蒼）。養護教諭の佐久間（木村文乃）は来室ノートの中に、科学に関する彼女の書き込みを見つけ、藤竹（窪田正孝）に相談する。あるＳＦ小説を模した書き方から、佳純にとって保健室を出ることは困難なミッションだと気づき、藤竹はその小説にちなんだ実験で佳純が外に出るきっかけを作ろうと試みる。一方、佐久間は昔関わった生徒と佳純を重ね合わせ、不安を募らせる…
------上記のあらすじは、公式サイトより引用------

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原作(小説)：伊与原新『宙わたる教室』第70回「青少年読書感想文全国コンクール」課題図書・高等学校の部に選出）
脚本：澤井香織（過去作/夜ﾄﾞﾗ｢ﾕｰﾐﾝｽﾄｰﾘｰｽﾞ｣ (第3週/最終週｢春よ､来い｣,特集ﾄﾞﾗﾏ｢むこう岸｣）
演出：吉川久岳（過去作/猫探偵の事件簿,ﾄﾞｷｭﾒﾝﾀﾘｰﾄﾞﾗﾏ｢猫探偵の事件簿｣)」 第1～3話
　　　一色隆司（過去作/大河ﾄﾞﾗﾏが生まれた日,育休刑事）
　　　山下和徳（過去作/映画｢ｽﾍﾟｼｬﾙｱｸﾀｰｽﾞ｣）
音楽：jizue（過去作/下剋上球児）
主題歌：Little Glee Monster「Break out of your bubble」
制作統括：橋立聖史（過去作/猫探偵の事件簿ｼﾘｰｽﾞ,だれかに話したくなる山本周五郎日替わりﾄﾞﾗﾏ）
　　　神林伸太郎（過去作/ﾕｰﾐﾝｽﾄｰﾘｰｽﾞ）
　　　渡辺悟（過去作/卒業ﾀｲﾑﾘﾐｯﾄ,ﾐﾜｻんなりすます）
※敬称略

今回の感想は “流れ” を追いながら書いてみる

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
今日は、今朝から人間ドックに行っていたので、投稿が遅れました。
―――ここまで、ごあいさつ―――

第3話の主人公は、東新宿高校定時制で保健室登校を続ける１年生の名取佳純（伊東蒼）だ。

両親は離婚し、母は会社経営をしているため多忙で、佳純と姉との関係は密とは言えない関係。

定時制高校生であっても‘保健室登校’の佳純だが、同クラスの松谷真耶（菊地姫奈）と保健室で会う。

過換気症候群やリストカットの経験がある真耶は、「やっぱ うちら同類だね」と真耶に近づいてくる。

というわけで、今回の感想は “流れ” を追いながら書いてみようと思う。

佳純にとって "保健室を出ること" が "困難なミッション"

佳純は、保健室の来室ノートの、青色のペンで書かれた大人びた筆跡の次の文章が気になっている。

「星を継ぐもの」は傑作ですね.
「火星の人」も面白かった. 映画版は観ましたか？

「傑作」「観ましたか」の漢字表記から、ペンの主が同年代ではないことは分かっている様子なのは、佳純の泳ぐ眼球から見て取れる。

一方。

来室ノートの中に科学に関する佳純の書き込みを見つけた養護教諭の佐久間（木村文乃）から相談を受けた、理科教師の藤竹（窪田正孝）は、自分が書いた問いかけに、小さな文字の「yes」を見つける。

そして、藤竹は、佳純にとって “保健室を出ること” が “困難なミッション” だと気づく。

ここまでの約10分間が、第3話のイントロダクション、「起承転結」の「起」としても良いだろう。

過去の2話とは違った、静かなイントロであると同時に、最初から “科学” を押し出してきた点は味付けが違って面白い。

"火星の実験"で佳純が外に出るきっかけを作ろうと思いつく

ここからが、「起承転結」の「承」だ。

来室ノートのやりとりによって、藤竹が小説『火星の人』にちなんだ “火星の実験” をとおして、佳純が外に出るきっかけを作ろうと思いつく。

佳純は、少しずつ藤竹の試みに近づき、クラスメイトに溶け込みはじめるが。

真耶は佳純を “同類” だとし、佳純の気持ちを揺さぶる。

しかし、佐久間が真耶の怖い誘いを打ち消すようなことを佳純に言う。

佐久間「この学校の中に もう一か所ぐらい
　‘ハブ’ってやつがあっても
　いいんじゃない？」

藤竹は、来室ノートにメッセージを書くのではなく、オポチュニティ（NASAの火星探査車）が撮った写真を挟む。

その写真に興味を抱き始めた佳純が気づいたこと。

それは。

遠い星にひとりぼっちのオポチュニティが自分が走行した足跡。

家族の中でも学校の中でもひとりぼっちの佳純が腕に刻んだリストカットの切り傷の痕。

どちらも、自分が進んできた道、そう、“轍（わだち＝通った車が道に残した車輪の跡）” だってことなのだ。

またまた一方では。

佳純を “同類” と感じ真耶が、佳純に抗不安剤を分けてくれるよう依頼。

言われるがまま佳純が渡した薬で、真耶はオーバードーズ（医薬品の過剰摂取）となり、学校の廊下で手首を切って血まみれに。

このまま、佳純が科学部に入部したら話はおしまいだ。

保険医の佐久間と、アムカの真耶の対峙構図が見どころだ！

そこで、今回の「起承転結」の「転」となる。

すでに、首を傷つける「リスカ」だけではなく、腕を傷つける「アムカ（アームカット）」にまで進んでしまった真耶が半狂乱のようになって。

真耶「何で… 友達でしょ？
　（中略）今度は私を助けてよ！」

これを見た佐久間が、ガツンと言い放つ。

佐久間「他人を危険にさらすのなら
　あなたの居場所は もうここにはない」

しかし、本当の意味での「転」は、次の佐久間のセリフから始まる。

佐久間「自分を救おうとする人間しか
　私は手助けできない」

佐久間が上記の境地にたどり着くまでの経緯や経験については、あえて書かない。

知りたい人には、第3話を見てほしいから。

しかし、次の二つのセリフが「転」を象徴するものになる。

佐久間「どれだけ経験を積んでも…
　正解なんて まるで分からないってこと」

真耶「あんたなんか助けなきゃよかった」

ここで、佳純の “アムカの古傷” がかゆくなる。

「かゆみ」は、皮膚の防衛反応のひとつであり、からだの異常を知らせる警告反応でもあるそうだ。
出典：【環境医学研究所】なぜ、かゆい？｜かゆみと真剣勝負、かゆみの克服を目指して　順天堂大学大学院医学研究科 

恐らく、佳純が “アムカの古傷” がかゆくなり、呼吸が激しくなるも、過呼吸の症状が現れないことが、本当の「転」だ。

この瞬間に、佳純は “自分を救おうとする人間” の側になることを決めたのだ。

そして、自分を助けられるのは自分だけだと、オポチュニティの轍(わだち)と、自らのアムカの古傷を重ね、学校の屋上にひとり立ったのだ。

今作、この第3話が秀逸なのは…

「起承転結」の「結」は、藤竹の、予定の60倍の15年間も火星の荒野でひとりぼっちで探査任務を頑張ったオポチュニティとスタッフらの話から…

藤竹「オポチュニティの轍を
　孤独の象徴と捉えるひとも
　いるかもしれない。
　でも僕には 少しでも前に進もうって
　懸命に生きた証しに思えるんですよ」

ハッキリ言えば、『オポチュニティの轍』のサブタイトルと、リスカの女子学生2名が登場した段階で、流れも結末も容易に想像できる。

しかし、今作、この第3話が秀逸なのは、今回の主人公である佳純の心の動きや変化だけを、丁寧に紡いで描写し続けたことだ。

佳純の家族の問題もそこそこにし、真耶が抱える苦しみもほどほどにし、科学部のくだりもまずまず程度に抑えて。

今作の主人公・藤竹らしい佳純への寄り添い方、佐久間ならではの葛藤、そして…

ラストは、真面目で几帳面な佳純が科学部部員になることで、自分が何かの役に立つことの喜びを再認識する。

なかなか、ロマンチックなエンディングだ。

小説｢火星の人｣,映画｢オデッセイ｣,小説｢星を継ぐもの｣

今日は、投稿が遅くなったので、あちこちのネット界隈で情報提供が行われていると推測する（まだ読んではいないが）

でも、あちらこちらと重なるかもしれないが、とにかく書いてみる。

今作の序盤に登場したのが、アンディ・ウィアーによる2011年の小説『火星の人』（The Martian）だ。

そして、その小説を原作にしたのが、2015年に公開されたアメリカ映画『オデッセイ』（原題: The Martian）。

2035年の近未来を舞台に火星に、ひとり取り残された火星探索者が生き延びようとする活躍と、彼を救い出そうとするチームのクルー達や地球のスタッフ達の努力を描くSF映画だ。

まだ鑑賞しておらず興味がある方は、劇場公開時に投稿した感想があるので読んでいただきたい（ネタバレなし）

映画「オデッセイ（2D・日本語字幕版）」 感想と採点 ※ネタバレなし 

また、もう一つ登場したのが、ジェイムズ・P・ホーガンのデビュー作で、1977年に出版された『星を継ぐもの』（ほしをつぐもの、原題：Inherit the Stars）だ。

月面で発見された人類の死体が5万年前のものであることから、その謎を解明するために、科学者たちは調査を進め、地球と太陽系における人類の起源に関する驚くべき真実を発見。
宇宙規模の謎解きが展開され、人類の歴史と未来に関わる壮大なテーマが描かれる。

どちらも、SF好きなら、バイブル（聖書）のような作品と言っても過言でない。

ということで、私が説明する必要もなかったか（笑）

あとがき

今回紹介された「オポチュニティの旅」が映画化されています。

ライアン・ホワイトが監督、アンジェラ・バセットがナレーターを務め、2022年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画ですね。

現在、Prime Videoで配信されています。

多くは語りませんので、見てみてください。

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★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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