NHKドラマ10「宙(そら)わたる教室」 （第4話・2024/10/29） 感想

NHK・ドラマ10『宙(そら)わたる教室』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)

第4話〈全10話〉『金の卵の衝突実験』の感想。

なお、原作(小説)となった伊与原新『宙わたる教室』は未読。

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科学部の発足に向けて集まった岳人（小林虎之介）、アンジェラ（ガウ）、佳純（伊東蒼）が実験装置の制作に手こずる中、藤竹（窪田正孝）は七十代の生徒、長嶺省造（イッセー尾形）にも科学部参加を呼びかける。昔、町工場を営んでいた長嶺の技術を貸してほしいと藤竹は頼むが長嶺は拒否。そんなある日の木内（田中哲司）の授業中、長嶺は価値観の違いから岳人ら若い生徒たちと衝突。科学部に誘うどころではなくなってしまう。
------上記のあらすじは、公式サイトより引用------

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原作(小説)：伊与原新『宙わたる教室』第70回「青少年読書感想文全国コンクール」課題図書・高等学校の部に選出）
脚本：澤井香織（過去作/夜ﾄﾞﾗ｢ﾕｰﾐﾝｽﾄｰﾘｰｽﾞ｣ (第3週/最終週｢春よ､来い｣,特集ﾄﾞﾗﾏ｢むこう岸｣）
演出：吉川久岳（過去作/猫探偵の事件簿,ﾄﾞｷｭﾒﾝﾀﾘｰﾄﾞﾗﾏ｢猫探偵の事件簿｣)」 第1～4話
　　　一色隆司（過去作/大河ﾄﾞﾗﾏが生まれた日,育休刑事）
　　　山下和徳（過去作/映画｢ｽﾍﾟｼｬﾙｱｸﾀｰｽﾞ｣）
音楽：jizue（過去作/下剋上球児）
主題歌：Little Glee Monster「Break out of your bubble」
制作統括：橋立聖史（過去作/猫探偵の事件簿ｼﾘｰｽﾞ,だれかに話したくなる山本周五郎日替わりﾄﾞﾗﾏ）
　　　神林伸太郎（過去作/ﾕｰﾐﾝｽﾄｰﾘｰｽﾞ）
　　　渡辺悟（過去作/卒業ﾀｲﾑﾘﾐｯﾄ,ﾐﾜｻんなりすます）
※敬称略

過去3話の3人を描いてきたからこそ描くことができる物語

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

勝手な想像だが。

すでに今作は〔全10回〕であることが告知済みであるから、恐らく次回（第5話）が全体の折り返し地点だ。

だとすると。

第1話の主人公が、読み書きが苦手なために中学から不登校になり、不良となった柳田岳人（小林虎之介）。

第2話の主人公が、四十歳を過ぎ、夫と娘の後押しを受けて東新宿定時制の高校生になった越川アンジェラ（ガウ）。

第3話の主人公が、オーバードーズとアムカ(リスカ)を続ける保健室登校を続ける1年生の名取佳純（伊東蒼）。

この3人を描いてきたからこそ描くことができる物語であると同時に。

今回で、何気にカメラが追従していたキャバクラで働いている庄司麻衣（紺野彩夏）が第5話の主人公である（だろう）ことが見えてくるわけだが。

もしかすると、今回の“働きながら定時制に通いたかった昭和の女性” のエピソードを起点に。

“働きながら定時制に通う今どきの女性” の挿話へシフトしつつ、前半戦を終えるのかもしれない。

今回は、私の心に刺さった数々の名台詞を挙げながら…

さて、ご常連さんの読者様はお気づきのとおり、今作の感想は、全く意図はなく「どう書いたら私の思いが伝わるか？」だけを考えて、毎回感想のスタイルを変えてきた。

そうなると、劇中の… 青年時代高校に通えなかったため、学び直すために定時制に入学した長嶺省造（イッセー尾形）にどちらかというと年齢が違いアラ還(あらかん)の私は、つい意固地になって「絶対変えるぞ！」と思うのだ。

そこで、今回は、私の心に刺さった数々の名台詞を挙げながら書いてみる。

科学に限らず"自ら手を動かして"いろんなものを変えられる

結果的には、主人公・理科教師の藤竹叶（窪田正孝）が省造を巧みに科学部に引き込むためのセリフだが。

藤竹「科学って聞くと 頭でっかちなイメージ
　持たれがちなんですけどね。
　実際は 手を動かして アイデアを形にする
　ものづくり的要素が必要不可欠なんですよ」

その一方で、広い意味での「仕事」「勉強」「世渡り」、そして「人生」だって、“手を動かして アイデアを形にする、ものづくり的要素が必要不可欠” なのだ。

例えば、先日行われた総選挙だって、一人ひとりの投票行動という“手を動かして アイデアを形にする、ものづくり的要素” があるから、政治や政権や世の中を変えることができる。

そう考えると、この藤竹のセリフは大げさに言えば “宇宙的” な広がりを持つ言葉なのだ。

入院中の江美子のほうが世間を知っている表現によって…

省造と病気を患い退院のめどが立っていない、省造の妻・長嶺江美子（朝加真由美）とのやり取りだ。

省造「アタリ ハズレがあるのは昔から同じだろ。
　私なんか大ハズレだ。カプセルの中身は空っぽだったよ」
江美子「私たちの時代は せいぜいアタリでも
　高校に行けるぐらいだったでしょ？
　でも 　今の子たちはもっとキラキラしたものを
　いっぱい目にしている。
　そこで自分が引いたカプセルがハズレだったら
　そりゃあ　やりきれないと思うわ」

いわゆる、ひと言で表現してしまえば “時代が違う” だ。

しかし、私もアラ還（アラウンド還暦＝60歳前後の世代のこと）になって思うのは。

確かに、時代が変わっても同じようなこと、差別や偏見、貧困や不平等などの社会問題はある。

でも、「VUCA（ブーカ：Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）の頭文字をとった造語）時代」と言われる…

私の若いころとは比べ物にならない情報過多で、移り変わりが激しい時代とは、やはり“体感”として全く違うと思うのだ。

そのことを、このやりとりによって、江美子から省造が感じ取るわけだ。

これ、中高年になると、なかなか若い世代と話す機会も減るし、話す必要もなくなって、ついつい小さな世界に閉じこもっていることに、意外にも気づかないものなのだ。

この描写では、若い世代と交流している風の省造よりも、入院中の江美子のほうが世間を知っているとなっていた。

やはりこれも、広義の“手を動かして アイデアを形にする” ではないだろうか？

自ら自分とは違う価値観を能動的に知ろうとしないと、受動的にしていては一方的な価値観は変わらない… と。

老若男女問わず、"○○警察"が巷に現れては消えるが…

省造が自分の人生を、いや、妻の人生をクラスメイトらに講義する場面のセリフだ。

省造「若い頃 私の原動力の怒りはね
　外に向かってた。
　今 自分に向かってますよ。
　許せない 自分が！」

「昭和のオヤジは怒りっぽい」なんて印象が、若い人にはあるかもしれない。

もしかすると、その昭和のオッサンたちの怒りは、許せない自分に向けての怒りの可能性もあるってことだ。

自分が悔いても悔やみきれないから、大きなお世話だと分かっていても若い人たち「やるな！」と静止したくなる。

ただ、今回のエピソード、過去の物語を見ても、若者に限らず、多くの人たちは意外に考えて行動しているのだ。

しかし、自分の思い通りにやってくれないから、怒って、正そうとする。

自分がやっている行いの全てが “正義” だなんて、何の根拠もないし、証明もされていない、思い込みだけなのに… だ。

ただ、省造の救いは、今になってではあるが、自分を冷静に見られていること。

そして、妻・江美子のことを心から愛して、理解しようと必死なこと。

だから、この省造の心の叫びが刺さるのだ。

「食えん」は、なかなか素敵な言葉選び

私が、今回で最も好きなセリフ、やりとりが次だ。

藤竹「策士ですね 奥様」
　（中略）
省造「あんた食えん。妻より食えん」

今作で最も “策士” である主人公をうまく強調する表現になっていると同時に。

「人当たりはやわらかいが、実はずる賢くて気が許せない」の意味の「食えない」という言い回しを巧みに利用して、省造が75歳であることを見せたと同時に。

策士である妻に対する愛情に似たものを、省造が藤竹に感じ取った瞬間も表している。

「食えん」は、なかなか素敵な言葉選びだ。

そして、ラストの藤竹のモノローグ。

藤竹(M)「天体の衝突は 時に
　さまざまな生物の絶滅の原因になる。
　しかし同時に
　新しい別の何かの始まりでもある」

この独白こそ、今作のテーマであると書くのは無粋すぎるか（笑）

あとがき

当ブログでは、‘演技の怪獣’と呼ばせていただいているイッセー尾形さんの約10分間の長尺の人生語りが素晴らしかったです。

緊張感と緊迫感が凄すぎて… と思ったら、いい塩梅にアンジェラが馴れ初めのくだりでインターバル。

コミカルとシリアス、緊張と緩和のバランスが見事な第4話でした。

若い人たちには刺さらないかなぁ

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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