ライオンの隠れ家 （第9話・2024/12/6） 感想 ※今作最大級の胸熱で演出を語ります！

TBS系・金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok

第9話『ライオンを助けたい！』の感想。

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愛生（尾野真千子）とライオン（佐藤大空）がペンションから連れ去られ、洸人（柳楽優弥）の連絡を受けた柚留木（岡山天音）は、新潟のフェリー乗り場で待ち構えるが、現れたのは祥吾（向井理）の手下・樺島（後藤剛範）だった。

一方、洸人はライオンが別れを告げず去ったことに困惑する美路人（坂東龍汰）を説得し、忘れ物のぬいぐるみを届ける名目で共に佐渡島を出ることを決意するも、橘家に愛生とライオンの姿はなく、小森家に戻るしかなかった。

元の生活に戻ることへの葛藤に苦しむ洸人と美路人。その頃、愛生はある覚悟を決めて祥吾と対峙していた。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---

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原作：なし
脚本：徳尾浩司（過去作/おっさんずﾗﾌﾞｼﾘｰｽﾞ,恋はDeepに,六本木ｸﾗｽ）
　　　一戸慶乃（過去作/ﾄﾞﾗﾏ初）
演出：坪井敏雄（過去作/妻､小学生になる｡,さよならﾏｴｽﾄﾛ） 第1,2,6,9話
　　　青山貴洋（過去作/ｸﾞﾗﾝﾒｿﾞﾝ東京,ﾕﾆｺｰﾝに乗って,ﾏｲ･ｾｶﾝﾄﾞ･ｱｵﾊﾙ） 第3,4,7話
　　　泉正英（過去作/TOKYO MER,ﾕﾆｺｰﾝに乗って,王様に捧ぐ薬指） 第5,8話
音楽：青木沙也果（過去作/ﾕﾆｺｰﾝに乗って,すきすきﾜﾝﾜﾝ!）
劇中絵画協力：太田宏介,太田信介（ギャラリー宏介株式会社 ）
自閉症スペクトラム症監修：伊庭葉子,宮本一哉（株式会社Grow-S さくらんぼ教室 ）
警察監修：古谷謙一
タイトルバック監修：Vaundy
主題歌：Vaundy「風神」
自閉スペクトラム症監修：伊庭葉子（特別支援教育士）
Ｐ：佐藤敦司（過去作/大恋愛~僕を忘れる君と,ｲﾝﾊﾝﾄﾞ,俺の家の話）
※敬称略

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「重要なセリフ」直後から劇伴が始まる演出について解説！

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

今回も、他のブログやネット記事では書かないような内容にしたいと意気込んでみる（笑）

第3話の冒頭から、ずっと書き続けていることがある。

序盤の映像で、演出担当を当てることも演出の楽しみ方！

すでに、当ブログの常連さんになっておれる読者様は、ピタリ賞の連続だろうから解説するまでもないだろう。

ってことで、今回は皆様の “伸びしろ” 増幅のために掘り下げてみる。

今回担当の演出は、「ミステリーとホームドラマが‘50:50(フィフティー・フィフティー)’で、サスペンス要素をチョイ足し」だから、チーフ監督である坪井敏雄であるのは分かったはずだ（ですよね？）

しかし、今回の坪井氏に演出は、これまでと一味違う工夫が見られた。

これまでは、いわゆる「決めゼリフ」とはまでは言わないとしても、かなり「重要なセリフ」を発するタイミングに合わせて劇伴（BGM）が流れる編集が基本的に踏襲されていた。

でも、今回の、特に前半と中盤は「重要なセリフ」の劇伴は無音で、言い終わった直後から劇伴が始まる演出（編集）になっていたのにお気づきだろうか？

「愛だったんだと思う」まではサスペンスで。そのあとが…

例えば、序盤で。

山梨県で建築会社を経営している橘家の次男で、建築会社「たちばな都市建設」に勤務する橘祥吾（向井理）の部下・樺島（後藤剛範）によってペンションから連れ去られた愛生（尾野真千子）とライオン（佐藤大空）が、祥吾の前で離婚届に名前を書く際の、愛生の「重要なセリフ」のときだ。

愛生「偽装死を選んだのは
　最後に残った　愛だったんだと思う」

一度は愛し、結婚し、子どもを授かった夫に、必死に “愛があった” と思い込みたい愛生の心情を吐露する場面だ。

普通の演出は、直前の「訴えようとは思わなかった」の直後の、祥吾のもがいているような様子のカットで、ちょっとメルヘンチックな劇伴を流せば、ホームドラマっぽさを漂わせることができる…　と、やるはずだ。

しかし、坪井氏の演出意図はあくまでも「ミステリーとホームドラマが‘50:50(フィフティー・フィフティー)’で、サスペンス要素をチョイ足し」だから、「愛だったんだと思う」の直後の祥吾が顔を上げて愛生を見るカットで、ちょっとメルヘンチックな劇伴が流れる。

これによって、「愛だったんだと思う」まではサスペンスで、劇伴以降がホームドラマになる（と思う）のだ。

洸人のモノローグと劇伴の絡ませ方が絶妙！

劇伴による巧みな演出効果を、もう一つ挙げてみる。

山梨のカラオケスナック「かすみ」のママで、地元の情報屋・須賀野かすみ（入山法子）の場面だ。

かすみ「そこには複雑な事情があるみたいなのよ」

上記のかすみのセリフ直後から不穏な感じの劇伴が始まって。

週刊真相 編集部の元記者でフリーの工藤楓（桜井ユキ）と、楓の後輩で週刊真相 編集部のカメラマン兼記者・天音悠真（尾崎匠海）とのやり取りを強調する。

まず、序盤で楓と天音を強調しているのが巧みだ。

だって、前回で祥吾に愛生とライオンが捕まってしまったのだから、ドラマ、物語の “駒” として動かし使えるのは…
今は休職扱いの市役所に勤務している‘ニート’な小森洸人（柳楽優弥）と、アート事務所でアーティストとして働く、自閉スペクトラム症の弟‘みっくん’こと美路人（坂東龍汰）しかしない。

でも、実際に謎解き要素で動かせるのは洸人だけだから、言っちゃ悪いが、最終章直前で盛り上げておきたい時期なのに、ダイナミックな展開にはしづらい。

そこで、自由行動と自由発言が可能な楓と天音を活用して、＜祥吾と愛生の現況＞　を中心に描くことにシフトしたのだ。

で、このまま楓と天音のやりとりを続けると、否が応でも「サスペンス要素をチョイ足し」が、濃い味付けになってしまう。

そこで、劇伴が転調してミステリーっぽくなった瞬間に、洸人のモノローグだ。

洸人(M)「理不尽な運命に翻弄された
　橘祥吾という人を
　どう受け止めららいいのか」

…と、挿入して、言い終わりで劇伴もストップし、直結するのが「洸人と美路人のホームドラマ風」だ。

この編集によって、「ミステリーとホームドラマが‘50:50(フィフティー・フィフティー)’で、サスペンス要素をチョイ足し」が出来上がるわけだ。

お分かりいただけるだろうか（不安…）

「小石を蹴りながら歩く」と「美路人」の名前の意味の合体

私が今回で大好きな演出が、中盤で海辺の港沿いの夜道を洸人と美路人が歩く場面で、美路人が小石を蹴りながら気持ちを語るシーンだ。

そもそも、「小石を蹴りながら歩く」という動作や行動に、演出的な意味づけがあるとしたら、次の4つの要素を含めることができるはずだ。

　【1】気軽さや無意識的な行動
　　特に目的もなく、リラックスした心情やぼんやりとした状態を表す。
　【2】考え事や気晴らし
　　歩きながら何かを考えている、あるいは退屈を紛らわせている印象を与える。
　【3】子供っぽさや無邪気さ
　　遊び心や幼少期を思わせる行為として捉えられる。
　【4】反抗的または不機嫌
　　つまらなさや苛立ちを軽く表現する仕草としても見られる。

こうやって、具体的に並べると、このシーンでの美路人の複雑な “4つの心情” を、たった一つの石ころに背負わせて演出していることが分かるはずだ。

さらに、大きなお世話で「美路人」の名前も紐解いてみる。

「美路人」を字義的（じぎてき＝文字や言葉の本来の意味に基づいた解釈）してみると、次のように分解することが可能だ。

　●美：美しい
　●路：道、人生の道のり
　●人：人間

そう、「美路人」から、「美しい道を歩む人」「人生の道を美しく進む人」といった象徴的な意味を想像することができるのだ。

もう一つだけ加えるなら、当ブログの「映像の掟」に準ずるなら、本来は「前向きに歩む」は登場人物は上手（かみて＝画面右）向きに歩かせる必要がある。

でも、今回は真逆の下手（しもて＝画面左）に歩かせている。

このことで、表面的な映像の意味としては「意識は低下気味、未来も暗め」なのに、石ころ蹴りで「リラックスし、未来が見えそう」となる（と思う）のだ。

もちろん、全て私の妄想だが、こう考えても辻褄は合っていると勝手に自負はしている（苦笑）

参考：[演出プチ講座] 映像の掟～画面内の人物の位置や視線（目線）の向きには意味がある～ > ディレクターの目線blog 

みっくんは"全2,390色"を色見本帳がなくても合致せせる！

今回の感想の最後に。
イベントディレクターとして、また、高校時代に知り合った妻が「学園祭舞台部の照明担当」だった夫そして、前回から気になっているのが。
みっくんが「色の数字」を言わなくなったことだ。

そこで、もしかするとご存じでない方もいらっしゃるかもしれないので、色についての本当の専門家ではないが。
仕事上、舞台装置のデザインや照明プラン作成の際に色にはこだわりがあるので、プチ解説をやってみる。

みっくんが過去の放送回で、短冊状の色見本帳を持っていたのは記憶にあると思う。

恐らく、表紙から下記のようなものであると推測はできる（推測です）

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色／色彩には、大きく2種類ある（正確には、最低でも3種類ですが）。

テレビやパソコン、携帯電話などのディスプレイ上で “自身が発光する” ことで認識される色である「RGB（Red,Green,Blue）」と。

紙などに印刷された状態で “他の光が当たる” ことで認識される色である「CMYK（Cyan,Magenta,Yellow,Key plate）」と。

舞台照明などで用いる “色のついた光を当てて” 対象物の色となる “光の三原色” とされるRGB（Red,Green,Blue）」。

ここに2種類の「RGB」が登場したが、前者は3色を混ぜると「黒」になるのに対して、後者（光の三原色）は3色を混ぜると「白」になるという違いがある。

2024年11月22日放送の第7話で、おつかいから帰宅したみっくんが牛肉の色を「7629C」とたとえた。

これは、アメリカの老舗の測色機器メーカー「パントン（PANTONE@）」社が定める「パントン・マッチング・システム（Pantone Matching System、略称 PMS）」という国際的に使用されている色見本帳の表記方法だ。

これによって、全世界で統一された色で仕事ができるというわけだ。

で、それの一つが上記で解説したAmazonの色見本帳である。

おっと、大好きな分野長くなるので、結論！

驚くことに、みっくんは、「PMS」に掲載されている “全2,390色” を記憶しており、手元に色見本帳がなくても一致させる能力を持っている設定だってこと。

私なんて、1か月前に買ったヒートテックのシャツの色だって忘れてちゃうのに（笑）

あとがき

ネット界隈では、「祥吾の素性、謎解きの結末が想定内になりそうで、がっかり」なんてのが多いようですが。

私は、そもそも今作は、いわゆる “考察系” でも、考察系厨を楽しませるような作品ではないと認識して見ているんですね。

だから、チーフ監督の坪井氏、セカンド監督の青山貴洋氏同様に「ミステリーとホームドラマが‘50:50(フィフティー・フィフティー)’で、サスペンス要素をチョイ足し」を踏襲しているし、それを私も見たいと思うので問題ないです。

むしろ、後半での、謎だらけの青年X / 柚留木（岡山天音）と洸人との車内でのやりとりの結末に納得だけできればいいなと。

柚留木「あんな人間に対して
　手をゆるめるべきじゃなかった
　橘祥吾は　相手の自由を奪い
　自分の支配下に置くことが
　愛情だと思っている人間です
　そして家族に依存していなかれば自分を保てない
　最低の人間です」
洸人「最低…　か」

祥吾が、異常偏愛者なのか分かりませんが、誰もが「最低！」と思えるだけで、ドラマとしては良いと思うんですけどね。

今日は長文でお時間を取らせちゃいました、ごめんなさい…
だって、皆様がたくさんの Web拍手やコメントをくださるので、ついつい過剰サービスしちゃいますよ。
お粗末様でした…

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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