御上先生 （第4話・2025/2/9） 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『御上先生』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok

第4話『-fate-』の感想。

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冴島（常盤貴子）と国家公務員採用総合職試験会場での殺人事件の関係が明るみに出たことにより、神崎拓斗（奥平大兼）は責任を感じて冴島のパート先を訪れるも、すでに辞職済みであった。一方、教室では御上の提案により生徒たちが議論を開始する。また、隣徳学院に「ヤマトタケル」と名乗る者から一通のFAXが届き、是枝文香（吉岡里帆）はついに自身の答えへと至る。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---

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原作：なし
脚本：詩森ろば（過去作/映画｢新聞記者｣,NHK鹿児島発地域｢この花咲くや｣)
脚本協力：畠山隼一（過去作/世にも奇妙な物語21,ｱﾄﾑの童）
　　　岡田真理（過去作/荒ぶる季節の乙女どもよ｡）
演出：宮崎陽平（過去作/日本沈没2021,DCU,VIVANT,ｱﾝﾁﾋｰﾛｰ） 第1～3話
　　　嶋田広野（過去作/ﾊﾟﾊﾟとﾑｽﾒの7日間2022版,ｱﾝﾁﾋｰﾛｰ） 第4話
　　　小牧桜（過去作/持続可能な恋ですか?,あのｸｽﾞを殴ってやりたいんだ）
　　　府川亮介（過去作/着飾る恋には理由があって,ﾌﾞﾗｻﾞｰ･ﾄｯﾌﾟ）
音楽：鷺巣詩郎（過去作/ｱﾆﾒ｢新世紀ｴｳﾞｧﾝｹﾞﾘｵﾝ｣,ｱﾆﾒ｢BLEACHｼﾘｰｽﾞ｣,ｱﾆﾒ｢進撃の巨人｣）
主題歌：ONE OK ROCK「Puppets Can't Control You」
教育監修：西岡壱誠（過去作/｢ﾄﾞﾗｺﾞﾝ桜2｣東大監修）
学校教育監修：工藤勇一（横浜創英中学校･高等学校元校長）
Ｐ：飯田和孝（過去作/ﾄﾞﾗｺﾞﾝ桜2,VIVANT,ｱﾝﾁﾋｰﾛｰ）
　　　中西真央（過去作/ﾌｪﾙﾏｰの料,100万回 言えばよかった）
　　　中澤美波
※敬称略

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正義と悪、逃れられない運命、避けられない事実と真実

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私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

前回の感想で、今作は次のようなドラマであると書いた。

〈“人ごと” を “自分ごと” にさせるドラマ〉

そして、第3話で、今作が描いている世界の教師像が提示された。

〈教師は生徒を正しい道に導く存在ではなく、生徒自身に正しい道を考えさせる存在〉

そして今回のサブタイトルは『-fate-』だ。

直訳すれば「運命」となるが、ご存じの通り、「運命」を表す英語は他にもある。

私の浅い知識でも、「良い運命は destiny」「ラッキーで幸運は fortune」「宿命や定めは lot」などがあり。
今回は「悪い運命の fate」で、かしこまった表現だと「doom」となる（と思います）。

というわけで、この第4話では、これまで描かれてきた数名分の「悪い運命の fate」の “続き” を描いたわけだ。

で、その中でもメインで描かれた悪い運命の持ち主が。

序盤では、明るく自分の意見を持っているが、クラスでは少し孤立気味の帰国子女・倉吉由芽（影山優佳）。

中盤から、父親が元教師で]考え込みがちな真面目な性格の元吹奏楽部・東雲温（上坂樹里）だ。

倉吉に、帰国子女として「原爆の是非」を論じさせる展開で、「正義と悪」「逃れられない運命」「向き合わざるを得ない事実と真実」を丁寧に提示して。

その流れで、やや唐突だが、前回からの引き継ぎ事項である「教科書検定の是非」につなげた。

このスムーズな流れもなかなかだが。

今回で注目したいのは、他にある。

味方が多いと、自分の意見が正しいと錯覚してしまうもの…

一つめは、帰国子女の東雲の次のセリフだ。

東雲「大した知識もない
　しかも　アメリカ育ちの私の意見が
　日本人全体の意見に
　なっちゃうんだな～って思って」

当然、見た人の数だけ受け取り方は違うと思うが。

ふと私の頭に浮かんだのは、昨今の “インフルエンサー” の影響力の危うさだ。

SNSで多くのフォロワーを抱えて活躍する人 “インフルエンサー” が発した意見が正しいものとされ、それが大多数の相違であるような風潮とでも言おうか。

逆に、発信する側としては、ついつい味方（敵の反対の意味）が多いと、自分の意見が正しいと錯覚することもある。

これにつながるキャラクターが、前回からの東雲だ。

御上が"生徒に正しい道を考えさせる存在"として向き合った

二つめは、そんな自分の正義を持つ東雲に、主人公である東大卒のエリート文科省官僚で官僚派遣制度によって私立高校への出向が命じられた3年2組の担任・御上孝（松坂桃李）が言う次のセリフに注目だ。

東雲「じゃあ　どうしろっていうんですか」
御上「僕に指示　出されたい？
　嫌だよね」

最近では、自分がやりたくないための言い訳に「〇〇界隈」なんて言い回しで、同志を集めて「間違っていない」とする雰囲気もあるし。

自分がされたらいやなことを「○○○○ハラスメント」と名付けて、これまた同志を集めて「やったら犯罪です」とする空気が充満している。

時代とともに、人の考え方、人とのかかわり方も変わるから、否定するつもりはない。

しかし、上記の二つを冷静に捉えると、この東雲と御上のやり取りが秀逸なことが見えてくる。

ともすれば教室内で孤立状態になりそうで逆ギレ気味であると同時に、何とか逆転したいと念じる東雲の立場と。

東雲の立場を踏まえた上で、逆転のヒントを与えるのではく、いつもの　〈生徒自身に正しい道を考えさせる存在〉　で向き合った点だ。

この後の展開は、いかにも “ドラマの中の優秀な生徒たちだから” な展開になるが。

それはそれで、フィクションは「虚構の中の真実」を映像で見せて（show）魅せる（fascinate）べきだから間違っていないのだ。

せっかくの知的で分析的なアプローチの今作らしさが…

特に不満はないが、「ディレクターの目線blog」として敢えて言うなら。

演出担当が、今作は初担当の嶋田広野氏に交代したことで、ややあざとい考察系ドラマのにおいを漂わせてしまった点だ。

これは、嶋田氏が直前に担当したTBSテレビ系・日曜劇場『アンチヒーロー』の第7話（2024/5/26放送）の感想に書いた通りの理由だ。

それは、“思わせぶりなカメラワーク” が多すぎる！　に尽きる。

個々のカット事例を挙げるのは大変だから避けるが。
簡単に言うなら、「次に何かが起こりそう…」なアングルや編集が目立ちすぎるという意味だ。

ディベート、文科省副大臣の視察の場面などは、これが顕著だった。

また、（悪いことばかりではないですが）比較的、顔のどアップが少なくて、少し寄ったB.S.（バストショット＝胸から上の画角）が連続しがちで、映像的なテンポに欠けるカット割りと編集になっていたことも付け加えたい。

それでなくて、脚本が、さすがに唐突に　《教科書検定》　を盛り込んだだけで、ちょっぴり話題づくり？　な大人の事情”が感じ取れる構成だ。

その脚本を、演出で「このあと、何かが動き出しそう…」を強調してしまうと、せっかくの知的で分析的なアプローチの今作らしさを損なうと思う。

まあ、過去の担当作品から想像すれば、チーフ監督の宮崎陽平氏でないと難しいかもしれないが。
頑張ってほしい。

これ、今作の登場人物に言わせちゃう？

最後に「これ、今作の登場人物に言わせちゃう？」と思ったのは、後半で、東雲がディベートで学習したことを、御上に語るセリフだ。

東雲「日本人は
　テーマを　すぐ　ぶらしちゃうって
　テーマって　何度でも　そこに
　立ち返るためにつくるのになって」

もちろん、「日本人は」の部分を「日本のテレビドラマは」に置き換えるもよし。

「朝ドラのお○すびは」に置き換えれる人は、爆笑と失笑ができる。

と同時に、これを書くことができる脚本家の作家としての矜持もすごいものがあると思う。

あとがき

主題歌であるONE OK ROCKの「Puppets Can't Control You」の素晴らしいですが。

鷺巣詩郎さんが手がける劇伴も気に入っています（現在、予約可）。

例えば、報道部の部長でジャーナリスト志望・神崎拓斗（奥平大兼）が、国家公務員採用総合職試験会場殺人事件の犯人・真山弓弦（堀田真由）に面会したい旨を手紙にしたためる場面に流れる劇伴。

おどろおどろしいイントロで始まって、神崎がペンを手にしたところから「仰げば尊し」のアレンジ版であることが分かりますよね。

あの辺のセンスとか、いいなって。

早速、予約しました。楽しみです。

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