御上先生 （第7話・2025/3/2） 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『御上先生』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok

第7話『-delusion-』の感想。

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ヤマトタケルから3通目のFAXが届き波紋が広がる中、文科省では津吹（櫻井海音）に悲劇が訪れ、槙野（岡田将生）はそれを目の当たりにする。一方、椎葉（吉柳咲良）の行動が明らかとなり、学校は退学処分を下す。御上（松坂桃李）は生徒たちに、この問題が社会問題とも関わることを示唆し、向き合った生徒たちは思いもよらぬ行動に出る。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---

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原作：なし
脚本：詩森ろば（過去作/映画｢新聞記者｣,NHK鹿児島発地域｢この花咲くや｣)
脚本協力：畠山隼一（過去作/世にも奇妙な物語21,ｱﾄﾑの童）
　　　岡田真理（過去作/荒ぶる季節の乙女どもよ｡）
演出：宮崎陽平（過去作/日本沈没2021,DCU,VIVANT,ｱﾝﾁﾋｰﾛｰ） 第1～3,6話
　　　嶋田広野（過去作/ﾊﾟﾊﾟとﾑｽﾒの7日間2022版,ｱﾝﾁﾋｰﾛｰ） 第4,5話
　　　小牧桜（過去作/持続可能な恋ですか?,あのｸｽﾞを殴ってやりたいんだ） 第7話
　　　府川亮介（過去作/着飾る恋には理由があって,ﾌﾞﾗｻﾞｰ･ﾄｯﾌﾟ）
音楽：鷺巣詩郎（過去作/ｱﾆﾒ｢新世紀ｴｳﾞｧﾝｹﾞﾘｵﾝ｣,ｱﾆﾒ｢BLEACHｼﾘｰｽﾞ｣,ｱﾆﾒ｢進撃の巨人｣）
主題歌：ONE OK ROCK「Puppets Can't Control You」
教育監修：西岡壱誠（過去作/｢ﾄﾞﾗｺﾞﾝ桜2｣東大監修）
学校教育監修：工藤勇一（横浜創英中学校･高等学校元校長）
Ｐ：飯田和孝（過去作/ﾄﾞﾗｺﾞﾝ桜2,VIVANT,ｱﾝﾁﾋｰﾛｰ）
　　　中西真央（過去作/ﾌｪﾙﾏｰの料,100万回 言えばよかった）
　　　中澤美波
※敬称略

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「今後に期待します」とだけ書いて、演出には言及しない

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
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私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

決めつけはよくないが。

宮崎陽平氏嶋田広野氏以外の「日曜劇場」を担当したこのないスタッフが演出する放送回は、この脚本を正しく理解するのはもちろんのこと。

脚本の難解さだけでなく、荒削りの部分を、前2名のように軌道修正できるのか不安だった。

そして、今回の演出担当は「日曜劇場」初担当の小牧桜氏で、過去の作品群を見れば、この手の論理的展開重視の作品も初担当。
参考：小牧桜 - allcinema 

したがって、「今後に期待します」とだけ書いて、演出には言及しない。

と言いつつ、「いくらでも演出次第で、脚本の矛盾をいくらでもフォローできたのに…」と添えておく。

椎葉の自分語りは、実に秀逸で、今作らしさあふれる展開

さて、個人的に「いいね」と思った部分。

責任感が強く人にも自分にも厳しく、千木良遥（髙石あかり）と仲良しの学生・椎葉春乃（吉柳咲良）を通して、ヤングケアラー（本来おとなが担う家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもや若者のこと）の実態を軸に。

世界基準における日本の貧困率の問題提起をするだけでなく。

先日のネット記事で見かけた「祖父母が娘の初潮を赤飯でお祝いするのをやめさせたい！」の議論のつづきや。

昨今のニュースでも度々取り上げられる「後継者不在の企業や店舗の事業承継マッチング支援で支える」の是非など。

今作が、第1話から描き続けてきた「パーソナル・イズ・ポリティカル（ personal is political：個人的なことは政治的なこと）」の考え方につなげ。

御上「決して　椎葉さんだけの問題じゃない」

〈当たり前だと思っている歴史や制度も、全ての個人に通じ、個人に影響を与える〉　を提示。

最終的に、〈“人ごと” を “自分ごと” にさせるドラマ〉　へ見事に落とし込んだ。

この流れは、実に秀逸で、今作らしさあふれる展開だ。

「血を流しているのに」に詩森ろば氏の意図を強烈に感じる

ネット上の、それもブログで書くのは、なかなか勇気がいることだが書いてみる。

私が、脚本担当の詩森ろば氏の言葉選びの的確さ、大胆さ、繊細さを感じたのが椎葉春乃の次のセリフだ。

椎葉「なのに生理がくる
　私…
　生きてるんだなあって　思い知らされて
　私は
　ここで　血を流しているのに
　誰も気づいてくらないって」

もちろん、ここでの “血（＝血液）” は “経血” のことだ。

しかし、「血を流す」という表現は、比喩的にさまざまな意味を持つ。

例えば。

　1. 文学的な意味
　　・苦しみや犠牲を伴う試練の意味
　　・悲劇的な運命や激情の意味
　2. 政治的な意味
　　・自由のために血を流す」などの革命や闘争を示唆
　　・「多くの血が流された」のように戦争や紛争における犠牲を強調
　3. 思想的な意味
　　・「理想のために」的な大義のための自己犠牲の象徴
　　・「新しい時代のために」的な苦難を伴う変革の象徴
　4. 宗教的な意味
　　・「キリストが血」に代表される贖罪や殉教の象徴
　　・「○○神のために」といった信仰のための自己犠牲

今回の椎葉が言った「血を流しているのに」は、上記の文学的な意味合いと政治的な意味合いが強い上に、若干だが思想的な意味合いを含んだ重く意味深い引用になっている。

そして、私が評価したいのは、このブログのように “大きなお節介” を焼くことなく。

今作の主人公である3年2組の担任・御上孝（松坂桃李）には、〈教師は生徒を正しい道に導く存在ではなく、生徒自身に正しい道を考えさせる存在〉　を貫かせたのだ。

ここの、ある意味での「ついてこられない視聴者」は切り捨てる姿勢も、視聴者に問題提起をし、考えてもらうドラマとしては、大きな意味があると思う。

他にも良い部分はたくさんあるが、長くなるのでこの辺でやめておく。

論理的に矛盾をはらんでおり、ダブルスタンダードでは？

今回のエピソード、一言で表現するなら。

《私には少々不可解と言うか、納得感に乏しかった》

これ、昭和の時代の「学園ドラマ」のお約束＆ご都合主義なエピソードと変わらないのでは？　と思うのだ。

そう、ある児童のランドセルにあった給食費袋からお金だけが盗まれ。
貧困家庭の生徒が疑われるけど、「お母さんが給食費袋にお金を入れ忘れたんだって。ごめんね」的な展開だ。

まあ、この場合は “貧しい子が濡れ衣を着せられて可哀そう” ということだが。

じゃあ、今回、 そもそも論 《その1》 として。
　※青色は、冷静さや論理性を象徴し、物事を根本的に捉える思考を表す
　※茶色は、大地や根を象徴する色で、物事の根本や基礎をイメージ

椎葉がやったことの全ての理由を「椎葉が両親がいなくて」、「高校生がひとりで祖父母の介護をやって」、「貧困だから生理用品が買えない」から、やってしまいました…　の動機付けが、今作らしい最適解として正しかったのか！　という問いなのだ。

だって、 そもそも論 《その2》 として、 今作は、当初から、報道部の部長でジャーナリスト志望・神崎拓斗（奥平大兼）の校内新聞？で教師・冴島悠子（常盤貴子）を不倫疑惑のスクープで隣徳学院を辞職に追い込んだことを。

いかなる個人的な興味や正義感があっても、自分が一生償うべき罪であると、いまも描いているのだ。

明らかに、論理的に矛盾をはらんでおり、ダブルスタンダード（二重規範）になってしまっているのだ。

溝端が、御上や校長に厳罰化をもっと要求しても…

いやいや、 そもそも論 《その3》 として、 劇中では、いかにも軽微な印象を与えがちな「万引き」なる表現を用いているが、法律的には「窃盗」だ。

窃盗罪
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪として、１０年以下の懲役または５０万円以下の罰金（刑法２３５条）

出典：万引き・盗難事件・窃盗の違いとは？元検事（ヤメ検）の弁護士が解説｜上原総合法律事務所 

もしも、椎葉が捕まりたくないと店員に暴力などふるえば「事後強盗罪」に問われることだってあるのだ。

だから、これまでの今作を鑑みれば、 そもそも論 《その4》 として、 エリートの御上に劣等感を抱く、国家公務員試験に落ちた経歴を持つ3年の学年主任・溝端完（迫田孝也）が、椎葉がやってしまったことを、御上や3年2組の副担任で国語教師・是枝文香（吉岡里帆）への責任追及するべきだったのでは？

隣徳学院理事長・古代真秀（北村一輝）に抵抗してまで、御上の退場や椎葉の退学を声高に言ってもよかったのでは？　と。

それこそ、「壁に耳あり障子に目あり」で、あちらこちらで盗撮写真が登場する今作らしく、御上が椎葉と店側に謝罪している隠し撮り動画がネット流出して、道端の追い風になる…　なんて展開こそが、 “今どきのドラマ” なのでは？

利用したいときにだけ、「いかなる理由があっても、ダメなものはダメ」と「それなりの理由があれば無罪放免」、「広げたいときは盗撮ありき」で「集中したいとこは盗撮なし」は、ご都合主義的展開と言わざるを得ないのだが。

椎葉問題で責められるのは御上ではなく、一色や是枝や…

そして、今回の次の三大要素を盛り込んだことでの違和感もある。

　●椎葉が両親がいなくて
　●高校生がひとりで祖父母の介護をやって
　●貧困だから生理用品が買えない

それは、次の椎葉のセリフで分かる。

椎葉「おじいちゃんが
　今年に入ってから
　認知症になりました」

そう、「椎葉が両親がいなくて」は、椎葉が入学するずっと前からのようで。

「高校生がひとりで祖父母の介護をやって」も、今年からだとしても。

貧困になったのが、「いつから？」なのかが不明瞭なのだ。

しかし、最低限として、椎葉がしんどくなったのは祖父の介護が増えたからだと見て取れる。

そうなると、御上が赴任する前から “椎葉の貧困問題” はくすぶっていたと考えるのが妥当だ。

事実、劇中で是枝と養護教諭・一色真由美（臼田あさ美）は “椎葉の貧困問題” に気づいていた設定では？

今作が描いてことを正しいとするなら、責められるのは御上ではなく、一色であり、是枝であり、溝端を含めて知っていた教師全員が、《個人的なことは政治的なこと》　にリンクする流れでないと意味がないのでは？

祖母の介護やお店のこともなしでも、できたのでは？

厳しいことを書くことが私の目的でないことは、先日も書いた。

「批判・批評」でなく、より映像作品を楽しむための「感想」を書き続ける“7つ”の理由｜ディレクターの目線blog 

その立場で、外野のディレクターの端くれとして提案してみたい（今さらですけれど）

例えば、椎葉が去年あたりから急激に痩せだして、顔色も悪く、何となく周囲の教師や友だちは気づいていたけど、深入りせず放置。

それで、栄養失調か何かで倒れてしまい、そこから　〈今回の三大要素〉　につなげるのもアリだったのでは？

カロリーと栄養の不足が、 月経不順、無月経、月経痛になるから（助産師の妻・談）、生理用品のくだりにも持っていけるし。

万引きする以前に、一色養護教諭が気づく展開でもいいのだ。

そもそも論 《その5》 として、 多額だと推測できる学費は支払えるのに、バイト三昧な設定も、もう少し説明がほしかったし。

椎葉の変化で、御上と是枝が家庭訪問をし事情を把握すれば

長くなったので、まとめよう。

そもそも論 《その6》 として、 下記の三つを盛り込んで、「パーソナル・イズ・ポリティカル」をやりたいのであれば。

　●椎葉が両親がいなくて
　●高校生がひとりで祖父母の介護をやって
　●貧困だから生理用品が買えない

椎葉が痩せてきて、学校でも弁当を食べない日が多くなり、ついに休みがちになって。

御上と是枝が家庭訪問をして、上記の三つを知れば済んだのだ。

それで、御上が生徒たちに「椎葉さんのこと、みんなが考えて」でよかったと考える。

脚本が書きたいこと、描きたいこと、主張したいことは理解できる。

しかし、NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』（NHK／2024年前期）の残り2か月のときのように、“ドラマ＝人間の本質を描くこと” を作り上げることよりも、 “テーマ＝主題、作家性” を前面に押し出しすぎているのでは？

フィクションの学園ドラマとして、もっと “虚構の中の真実” を信じられるように描いてほしいのだ。

あとがき

学園ドラマとして、まずはきちんと警察に行って罪を認めた上で。

上級国民らしく、あれこれと解決策をひねり出すだけでよかったと思います。

私、20年ほど前に、皮革製品で有名なスペインのブランド「ロエベ（Loewe）」の160周年記念展覧会の広報ビデオを作りました。

その際に、イタリア人の広報担当者に「老舗こそ変化しながら生き続ける」と教えてもらったんです。

だから、「おじいちゃんの味じゃない椎の葉は」も分かるんですが、ご近所さんの協力で “おじいちゃんの味” を再現するのだって、祖父母への感謝の表れだとも思います。

私の仕事は、私一代で終わりですけれど（汗）

次回から、また巻き返していただきたいです。

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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◆関連投稿：「批判・批評」でなく、より映像作品を楽しむための「感想」を書き続ける“7つ”の理由 

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