連続テレビ小説「ばけばけ」 （第30回・2025/11/7） 感想

NHK総合・NHK BS・ﾌﾟﾚﾐｱﾑ4K／連続テレビ小説『ばけばけ』
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第30回／第6週『ドコ、モ、ジゴク。』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

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ヘブン（トミー・バストウ）は錦織（吉沢亮）と一緒に借家へ引っ越しをしていた。新居に満足気なヘブンだったが、いまだ女中が決まらないことに、いらだちをおぼえる。一方、三之丞（板垣李光人）と再会したトキ（髙石あかり）は、松江を離れたはずのタエ（北川景子）と三之丞が再び戻ってきた経緯を聞くことになる。トキはその帰り道に再び、物乞いをするタエの姿を目にするのだった。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：なし
脚本：ふじきみつ彦（過去作/ﾊﾞｲﾌﾟﾚｲﾔｰｽﾞ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記）
演出：村橋直樹（過去作/まれ,透明なゆりかご,ｻｷﾞﾃﾞｶ） 第1,2,5週
　　　泉並敬眞（過去作/ｽｶｰﾚｯﾄ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ） 第3,6週
　　　松岡一史（過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ） 第4週
制作統括：橋爪國臣（過去作/青天を衝け,あなたのﾌﾞﾂが､ここに,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ）
音楽：牛尾憲輔（過去作/ﾁｪﾝｿｰﾏﾝ,僕の心のﾔﾊﾞｲやつ,ﾀﾞﾝﾀﾞﾀﾞﾝ）
主題歌：ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション：北郷美穂子（NHK大阪アナウンサー）
副音声解説：山崎健太郎（過去作/舞いあがれ!,らんまん,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ,虎に翼,おむすび）
タイトル写真：川島小鳥（過去作/未来ちゃん,SHISHAMOｱｰﾄﾜｰｸ）
タイトルロゴ：西沢和樹（instagram.com/nishizawa_k/）
プロデューサー：田島彰洋,鈴木航｜美術：山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘｜美術進行：澤幸樹、嶋原広起｜技術：増田徹、備中正幸｜音響効果：松本有加、巽浩悦、吉田亜矢｜撮影：岩崎亮、関照男｜照明：根来伴承、大西弘憲｜音声：吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二｜映像技術：前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな｜カラーグレーディング：原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋｜VFX：西垣友貴、神戸大樹、山田茂人。北島規｜CG：大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉｜美術進行：澤幸樹、嶋原広起｜装置：佐藤千織、坂口大吾、山中宏華｜装飾：津村政幸、横田浩之、長洲史雅｜特殊効果：奥村陵、宮崎真有｜衣装：横山智和、中村みのり、鍛元美佐子｜メイク：堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗｜持道具：楠正由貴、森上陽子｜かつら：松本誠也、丹波峯子｜特殊メイク：江川悦子、権田日和｜特殊メイク協力：荒井律子、大谷美咲、山埼佳子｜助監督：小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介｜制作担当：木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ｜取材：川野秀昭、鈴木航｜編集：藤澤加奈子｜記録木本裕美｜時代・風俗考証：刑部芳則｜松江風俗考証：藤岡大拙｜出雲ことば指導：多々納斉｜所作指導：藤間豊宏｜料理指導：広里貴子｜英語指導：塩屋孔章｜英字指導：前田祐加｜眼科指導：大路正人｜怪談ばなし指導：玉田玉秀斎｜茶道指導：有澤一男｜三味線指導(タエ)：菊央雄司｜三味線指導(遊郭)：長江浩子｜アクション指導：中村健人｜日本画指導：諫山恵実｜造園：堤正和
※敬称略

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今回の最後にあった「次週予告」の編集の妙

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

「本編」の感想の前に「次週予告」についての感想を書いてみる。
　※「次週予告」の内容には触れませんのでご安心を。

私、この『ばけばけ』‘も’今のところ全放送回を録画保存している。

しかも、あとから見た際に「1本」に見えるように、メインタイトルと予告編を編集でカットして保存している。
　※もちろん、配役名やスタッフ名を確認するために「あり」も保存してます！

それをやっているから気づいたこと。

それは、今回の最後にあった「次週予告」の編集の妙である。

トキのアップに“予告の劇伴”が〈音先行〉して入ってきた

通常の編集は「本編」が終わると同時に「次週予告」が映像と劇伴（音楽）が同時に切り替わる。

しかし今週は、本編のラストカット、すなわちトキ（髙石あかり）の顔のアップに “予告の劇伴” が〈音先行〉して入ってきたのだ。
　※「音先行」とは、シーンの変り目で画が変わる前に音が先行する音楽上の演出技法（前のシーンの終わりに次のシーンの音が入る）

「音先行」では様々な効果が期待できるが、特に有効なのが次の三つである。

　●期待感・引き込み効果（視聴者の注意を一気に次シーンへ引き付ける）
　●シーンのつながりを自然にする（回想シーンを挿入する際に使う効果）
　●場面転換をスムーズにする（音が先行すると滑らかな印象を与える）

今回の目的は「期待感・引き込み効果」だろう。

なぜなら、前回の感想で書いたとおり、今作は全125回／25週（予定）で「約1/4」は「31.25回」となり、まさしく次週こそが、「起承転結」の「起」の‘キング・オブ・最終章(週)’なのだ。

さらに（あとで詳しく書きます）メインである「トキの物語」が「起」のクライマックスをやっているのに…
今週は「サブキャラの物語」を挟み込むという “意味不明な展開” にしていることを、脚本家や演出家や制作統括自身も “分かってやっている” と思う。

想像するに、本来は「今週と来週」が “ひと塊” の‘キング・オブ・「起」の最終章’なつもりなのだ。

その “ひと塊感” の創出のための〈音先行〉と考えれば妥当なのでは？

当然「スズメの涙ほどの努力」ではあるが、「大人の事情」でサブキャラの物語を挟み込まなければいけなかったと好意的に解釈すれば、「スズメの涙に込めた執念」といえる。

今週は今一つだったので、次週にこそ期待しようと思う。

私がトキの立場だったら、三之丞に声はかけられない…

ここから「本編」の感想だ。

冒頭から「サブキャラの物語」である。

メインである「トキの物語」では、トキがヘブン（トミー・バストウ）の住み込み女中になるかどうかのクライマックスをやっているのに…　である。

しかし、冒頭の生活に窮する三之丞（板垣李光人）に声をかけ、さらに物乞いとなったタエ（北川景子）を見かけてしまった…　とまで言葉で発してしまうトキを見て感じたことがある。

《私がトキの立場だったら、声をかけられない…》

自分の生みの母であり弟であり、かつては公私ともに世話になりまくった親戚であり勤め先の一家に対して、私だったら見て見ぬふりをすると思う。

しかし、トキは三之丞と目を合わせ、近づき、声をかけた。

そう、実は「三之丞にタエの話までしちゃうトキ」によって、これまで描かれたトキ以外の「描かれていないトキ」の設定が見えてくるのだ。

少し長くなるので「次章」につづく…

トキが三之丞に声をかけるのが自然に見える構造とは？

このような複雑で感情的なエピソードにおいて、主人公が「声をかける」行動を自然に見せるためには、以下のような設定が考えられる。

物語の倫理軸や人間関係の深さを支える設定だ。

1.過去に「恩を返しきれていない」と感じている人物
　●トキはかつて雨清水家に助けられた経験があり、今でも「借りがある」と思っている。
　●たとえば、借金返済や就職、婿取りの際に援助を受けたが、感謝を十分に伝えられなかったという後悔がある。
　●そのため、見かけた瞬間に「今こそ返すべき時だ」と直感的に動く。

2.「家族の絆」にこだわる人物
　●屈折した出自の経験から「血縁や育ての恩」を強く信じている。
　●実弟であり元社長である三之丞に対しても、心のどこかで「家族だから見捨てられない」という信念がある。
　●その信念が、社会的な距離や過去の確執を超えて行動を起こさせる。

3.「人の尊厳」に敏感な人物
　●主人公自身がかつて極貧や差別を経験しており、「物乞い」という行為に対して強い共感や痛みを感じる。
　●そのため、見知らぬ人であっても声をかける可能性があるが、今回は「かつての身内」であるため、なおさら放っておけない。
　●この設定は、主人公の倫理観や社会的な感度を際立たせる。

4.「過去を清算したい」と思っている人物
　●かつて雨清水家とは出自や会社倒産などが、トキは距離を置いていた。
　●しかし、偶然の再会とその悲惨な状況を見て、「今こそ過去を乗り越えるべきだ」と決意する。
　●この設定は、ドラマ的な緊張感と感情の揺れを生みやすい。

5.補助的な背景設定（自然さを高める要素）
　●トキは現在、‘ある程度（タエや三之丞よりマシ）’の社会的成功を収めている（だからこそ「助ける余裕」がある）。
　●主人公は「見て見ぬふりをする人間ではない」と周囲に思われているが、実は内心では葛藤している。
　●主人公が声をかけた後、周囲（同僚や家族）から「なぜそんなことを？」と問われることで、主人公の価値観が浮き彫りになる。

こうした設定を組み合わせることで、「見て見ぬふりをするのが普通」という状況の中で、主人公が声をかける行動が「自然かつドラマ的に説得力のあるもの」になると思う。

えっ？「さすがに好意的に解釈しすぎでは？」の声も聞こえてきそうだが、こういう解釈をすることで主人公の描かれていない人物像を掘り下げることもできる…　ということである。

視聴者がどちらを見ているのか分かりやすい構成

「本編」の感想に戻ろう。

メインタイトル映像明けは、アバンタイトルと打って変わって明るい雰囲気だ。

と同時に、アバンは「トキの物語（若干幅は広いですが）」、タイトル明けは「ヘブンの物語」と切り分けることで、視聴者がどちらを見ているのか、どっちを見ればよいのか分かりやすい構成だ。

それにしても、前回（第29回）へのWeb拍手も反応も、ヘブンの「ワタシ…　ニンキ　ナイ…」に超共感である（笑）

今回は、三之丞が数日前にトキの家を訪れたと描いた…

場面変わって、シリアスな「トキの物語」である。

場所は、私には意外に感じた花田旅館の中だ。
ヘブンの世話をしていた花田旅館の女中・ウメ（野内まる）が給仕をしていたし、格子戸の外には「花田旅館」の暖簾が見えていた。

細かいことは書かないが、《トキが再会場所に花田旅館を選ぶ》からも “トキの人柄” が見えてくるのだが。

このシーンで最も良かったのは、前回で私がこき下ろした《トキが心配しないのは、人間としてどうなの？》に連結することだ。

前回も書いたが、「トキが生きている世界」と「トキの家族や知り合いが生きている世界」と「トキと疎遠になっている人たちが生きている世界」がリンクしているように描けるのが “秀作ドラマ” の絶対要素なのだ。

で、今回は、三之丞が数日前にトキの家を訪れたと描いた。

そう、これこそが、トキが生きている世界」と「トキの家族や知り合いが生きている世界」と「トキと疎遠になっている人たちが生きている世界」がリンクしているように描いた…　なのだ。

次の回になってしまったが（だから、一気に描けと書いたわけですが）、「トキは雨清水家を心配しない」があっても、同じ放送回で「少なくとも三之丞はトキを気にしていた」と描けばプラマイゼロになったのだ。

前述したとおり、やはり作り手の意図は前回と今回も “ひと塊” だと思う。

女中ウメがトキと三之丞の会話に割り込むタイミングの妙

めっちゃ小さなことだが。私の備忘録として書いておきたい。

それは、三之丞がトキに自分の現状に至るまでの経緯を話している途中に、一つだけの湯呑みを持って割って入ってくる女中・ウメのタイミングだ。

たかだか一人分のお茶を入れて持ってくるだけにしては、時間が長すぎる。

当然推測できるのは、花田旅館の主人・平太（生瀬勝久） とウメが二人の会話に聞き耳を立てて、タイミングを計っている様子だ。

雰囲気的には「とうとう…　松江に帰ってきたんだ」あたりで平太がウメに「いま行きなさい」と言った感じで。

「物乞い」のセリフのタイミングでウメの表情が見える構図のカット。

これだけでも、かなりうまい演出だと思うが。

髙石あかりさんと板垣李光人の存在感と演技力に依存する

私が「なるほど」と思った演出は、長く続くかなりシリアスな劇伴を止めるきっかけである。

それが、ウメの「あっ　すんません　失礼しました」だった。

演出的には「三之丞の事実の吐露」はシリアスに盛り上げたいが、「トキの提案」は明るくほんわかさせたい…　だと思う。

でも、シリアスな劇伴のままではできないし、急に明るい劇伴に帰るのも不自然だ。

そこで選択したのが、「髙石あかりさんと板垣李光人の存在感と演技力に依存する」だ。

身長160cmの髙石さんが、165cmの板垣さんより身長（座高）を高く見せるように‘踵を立て気味で正座’させた。

さらに注目してほしいのは、「和室の丸窓」の造作も「右上がり」になっており、いまのトキと三之丞の関係性を表している点だ。

ついつい、三之丞の厳しい現状に注力しがちになると思うが、セリフの内容や芝居をより効果的に魅せる演出もあったということだ。

©NHK

物乞いをするタエの前を素通りするトキの顔のアップは秀逸

終盤の数分間は、「ヘブンの引っ越し」以来のほのぼのシーンだ。

確かに、「トキがヘブンの女中になる」を進めずに「何を描いているの？」ではある。

しかし、ラスト直前に「しじみ汁」と「あ～！」を盛り込んだことで、少なくとも「トキの物語」「松野家の物語」に、「三之丞の物語」「タエの物語」「雨清水家の物語」が一体化したのは間違いない。

特に秀逸だったのは、物乞いをするタエの前を素通りする「トキの顔のアップ」を真正面で受けたアングルでしっかり見せたことだ。

真正面受けしたことで、トキが「真っすぐに前だけを見て進む人」であることを強調したのだ。

この「見る見るうちに表情が変わるトキ」の約51秒間（約5秒間のフェードアウト含む）によって “トキの決意” が見事に映像化されたのだ。

そう、これこそが、“ドラマ”  なのだから 《映像で見せて（show）魅せる（captivate）べき！》の具現化である。

あえて「トキの瞬き」を生かす編集＆演出技法

そして、錦織（吉沢亮）を見つめるトキの “瞬き(まばたき)” で、「次週予告」の〈音先行〉が始まる。

一般的なドラマ撮影において「瞬きはNG」、撮り直し対象である。

しかし、こんな重要なカットで瞬きを残したのだから、演出家の強い意図があるはずだ。

少し専門的になるが続けてみる、

一般的に「意図的に瞬きを採用する」には下記の〈6つの意図〉でやることが多い。

　●「気づき」や「目覚め」の瞬間
　●「混乱」や「戸惑い」の表現
　●「感情の揺れ」や「涙をこらえる」場面
　●「冷静さ」や「無感情」の演出
　●「夢と現実の境界」や「時間の飛躍」
　●「演技」や「嘘」の兆候

しかし、特殊な用例として、瞬きを「間」としてとらえ “観客の呼吸” にする「装置」として使うやり方がある。

視線のリズムが変わることで、観客も「何かが変わった」と感じ取る。

つまり、主人公の内面だけでなく、観客の感情の導線を整えるための演出でもあるだ。

瞬きを「間」として“観客の呼吸”の「装置」に使う演出

もう一つは、演出家から視聴者への「問」として使う方法だ。

演出家や俳優が意図的に瞬きを入れることで、観客にこう語りかけているようにも見えるのだ。

「ここで一度、あなたも目を閉じてみて。何を感じましたか？」

つまり、瞬きは観客の感情や思考を促す “問い” のようなものにもなり得るし。

実際に、「なぜ、トキは決意したのか？」と「次週どうなるのか？」の二つの「問」を引き出したと思う。

いろいろと問題もある一週間だったが、金曜日を見て「まだまだ期待できる」と思ったラストだった。

あとがき

前回の内容を受けまして、急きょ昨夜にタエさんのモデルの人物の物語を投稿しました。

三之丞のモデルの人物の投稿と合わせて、週末の読み物にしていただけたら幸いです。

朝ドラ「ばけばけ」雨清水タエ（北川景子） のモデル・小泉セツの実母・チエ――名家に生まれ、極端に落ちてゆく人生の行き着いた底｜ディレクターの目線blog 

朝ドラ「ばけばけ」雨清水三之丞(板垣李光人)モデル・小泉藤三郎――旧家の肩書と生の現実、その乖離が導いた孤独の終着点｜ディレクターの目線blog 

※文中の方言風の創作セリフは、下記のサイトを利用しています。
恋する方言変換 | BEPPERちゃんねる 

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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感想の趣旨について

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