連続テレビ小説「ばけばけ」 （第31回・2025/11/10） 感想

NHK総合・NHK BS・ﾌﾟﾚﾐｱﾑ4K／連続テレビ小説『ばけばけ』
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第31回／第7週『オトキサン、ジョチュウ、ＯＫ？』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

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ヘブン（トミー・バストウ）の女中になる決意をした、トキ（髙石あかり）。錦織（吉沢亮）の立ち会いの元、トキはヘブンに女中になる挨拶をするのだが、まさかのヘブンに断られてしまう。困惑するトキと錦織に、ヘブンは「アナタ、ブシムスメ、チガウ！」と怒りをあらわにする。なんとか誤解をとき女中となることが認められたトキだったが、家族には言えるわけもなく、花田旅館で働くことになったと告げる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：なし
脚本：ふじきみつ彦（過去作/ﾊﾞｲﾌﾟﾚｲﾔｰｽﾞ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記）
演出：村橋直樹（過去作/まれ,透明なゆりかご,ｻｷﾞﾃﾞｶ） 第1,2,5,7週
　　　泉並敬眞（過去作/ｽｶｰﾚｯﾄ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ） 第3,6週
　　　松岡一史（過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ） 第4週
制作統括：橋爪國臣（過去作/青天を衝け,あなたのﾌﾞﾂが､ここに,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ）
音楽：牛尾憲輔（過去作/ﾁｪﾝｿｰﾏﾝ,僕の心のﾔﾊﾞｲやつ,ﾀﾞﾝﾀﾞﾀﾞﾝ）
主題歌：ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション：北郷美穂子（NHK大阪アナウンサー）
副音声解説：山崎健太郎（過去作/舞いあがれ!,らんまん,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ,虎に翼,おむすび）
タイトル写真：川島小鳥（過去作/未来ちゃん,SHISHAMOｱｰﾄﾜｰｸ）
タイトルロゴ：西沢和樹（instagram.com/nishizawa_k/）
プロデューサー：田島彰洋,鈴木航｜美術：山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘｜美術進行：澤幸樹、嶋原広起｜技術：増田徹、備中正幸｜音響効果：松本有加、巽浩悦、吉田亜矢｜撮影：岩崎亮、関照男｜照明：根来伴承、大西弘憲｜音声：吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二｜映像技術：前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな｜カラーグレーディング：原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋｜VFX：西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規｜CG：大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉｜美術進行：澤幸樹、嶋原広起、大塚良子｜装置：佐藤千織、坂口大吾、山中宏華｜装飾：津村政幸、横田浩之、長洲史雅｜特殊効果：奥村陵、宮崎真有｜衣装：横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和｜メイク：堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗｜持道具：楠正由貴、森上陽子｜かつら：松本誠也、丹波峯子｜特殊メイク：江川悦子、権田日和｜特殊メイク協力：荒井律子、大谷美咲、山埼佳子｜助監督：小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大｜制作担当：木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治｜取材：川野秀昭、鈴木航｜編集：藤澤加奈子｜記録木本裕美｜時代・風俗考証：刑部芳則｜松江風俗考証：藤岡大拙｜出雲ことば指導：多々納斉｜所作指導：藤間豊宏｜料理指導：広里貴子｜英語指導：塩屋孔章｜英字指導：前田祐加｜眼科指導：大路正人｜怪談ばなし指導：玉田玉秀斎｜茶道指導：有澤一男｜三味線指導(タエ)：菊央雄司｜三味線指導(遊郭)：長江浩子｜アクション指導：中村健人｜日本画指導：諫山恵実｜造園：堤正和
※敬称略

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基本的に、「突飛な構図」は多用すべきでない…と思うが

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

©NHK

私の好みではないが…　世間では上記↑のような構図を好きな人が多いように思う。

特に、今週の演出担当で今作のチーフ監督である村橋直樹氏が多用する、カメラの位置を極端に上か下に据えて、三角形の構図に登場人物を収容する構図のことだ。

もちろん、全否定はしないし、「映像を作ってるぅ～」感じが素人ウケするのは間違いないし。

でも、このような「突飛な構図」は多用すべきでないというのが持論である。

なぜなら、この類の「飛び道具」はピンポイントで使ってこそ効果が期待できるわけで、あちこちに使うのは「奇を衒いたいだけ」にしか見えないからだ。

ではなぜ、今回取り上げたのか？

“4つの区域”にそれぞれのキャラクターの存在を固定

今回に限っては “使い方が正しい” からである。

カメラを畳スレスレの低位置に構え、画面中央のヘブン（トミー・バストウ）を “巨人” に見えるように煽る構図を主体にして。

立場が低い人物を置くのにふさわしい下手（しもて：画面左）下の最も低い位置にトキ（髙石あかり）を配置。

ヘブンとトキの “上下関係” を崩さぬように、（ある意味で）部外者である錦織（吉沢亮）は画面の端でふたりを見下す配置。

キャプチャー画像の「黄色い線」で区切られた “4つの区域” にそれぞれのキャラクターの存在を固定している。

ここで注目してほしいのは、最も下手の「トキの背後の空間」だ。

ここが、そう、〈まさかヘブンに断られてしまう〉の存在場所なのだ。

この真っ黒な部分が画面にあるから、上手（かみて：画面右）の最も明るい部分との光のコントラストが生きて、トキの不安と葛藤が “さらに深くなる” 予感をさせているのだ。

したがって、今回に限ってはこの構図が最適解だと思う。

神経質にならざるを得ないシーンを、うまく乗り越えた

今回で最も良かったのは、〈誤解が解かれ女中になることが認められたトキ〉までを一息に描いたことだ。

しかも、妙な説明や語りを利用せず、全てをトキとヘブンと錦織の “やり取り” だけで描き切った。

そもそも、この場面は‘令和’として非常に繊細な問題であるルッキズム（外見至上主義）に隣接する表現にならざるを得ない神経質なシーンなのだ。

過敏反応する視聴者にとっては「外見で人間を判断するの!?」となりかねないくだりなのだ。

しかし、そこを今回はうまく乗り越えたと思う。

《ラストサムライの孫》の使い方が秀逸！

本来であれば、分かりやすいのは “ヘブンが武士の娘と認める女性像” を参考例として、画像や映像でインサートしてもよいくらいの場面なのだ。

でも今作は、あえて［史実］におけるピエール・ロティの『お菊さん（原題：Madame Chrysantheme）のような「異文化の女性像」を提示せずに、《ラストサムライの孫》で（良い意味で）“強引に” 乗り越えたのだ。

この〈外国人視点の異文化の日本女性〉を提示せず、視聴者に〈日本人も共通の武士の娘〉を思い浮かばせる手法によって、これから描かるであろう “異文化交流” を簡素なものにしたと思う。

要するに、文学的、歴史的、文化的な少々難しい視点をあえて排除し、「《ラストサムライの孫》ならいいよ」の簡潔な着点に転換したのだ。

老若男女問わず楽しめる朝ドラの脚本や演出としては、正しい選択だと思う。

なお、終わったことなので［史実］を知りたい人は下記に詳しく書いてある…

憧れの“士族の娘”と違う“骨太女中”に憤慨!? 

他にも注目してほしい演出が…

他にも、なかなか良い演出があった。

ヘブンに雇われることが決まったトキが自宅に帰って、母・フミ（池脇千鶴）に‘ウソ’を語るくだり。

ヘブンがトキに給金の封筒を手渡した瞬間から流れ始めたピアノソロ風の悲しげな劇伴が、シーンをまたいで松野家にも引き継いだ編集のことだ。

トキの “家族には言えるわけもなく” の心情が、俳優らの絶妙な芝居と相まって、「ヘブンの家」から「松野家」に行くにしたがって増大していることが的確に伝わる演出だ。

封筒に触れる音、紙幣がこすれる音、文書籠のカタコト音を強調する音響効果も、トキの指先の緊張感すら伝わってくる。

書くまでもないが、次のフミのセリフの時点では劇伴が終わり、フミのセリフ単独にすることで、トキの “家族には言えるわけもなく” の心情がより一層深く重く辛くなっているのもいい演出である。

フミ「ヘブン先生には　あんまり関わらん方が…」

「おじ様…　申し訳ございません」が刺さる演出

私が今回で「ベストショット」と思ったのは次のカットだ。

©NHK

中央の二等辺三角形の中に、トキと三之丞（板垣李光人）。

トキは画面奥で小さいが、ピントが合って光が当たる…　一方で三之丞は最手前でピンボケで顔も見えない構図。

で、トキが奥から近づいて来るに従い、表情が見えるワンカット。

その直後はこのカットを真逆になって三之丞の顔が見えるカット。

脚本的な展開には、少々強引で唐突感は否めないが。

このカット割り、切り返しによって、“実の姉と弟のやり取り” であることが強調されると思うのだ。

だからこそ、次のひと言が刺さる…

トキ「おじ様…　申し訳ございません」

そう、トキにとっては「おじ様」である…　と。

おそらく、この先も、トキが自分の給金で三之丞とタエ（北川景子）を救うのだろう。

で、だいぶあとで、真実が…　と。

この辺は、朝ドラが “ホームドラマ” でもあるからこそ、大切に見守りたい部分であり。

そのために、印象的な構図を使ったのは大いに評価できる。

あとがき

一般的に「朝ドラの月曜日」は「状況説明の日」になりがちですが、今回は “ほぼ説明なし” でした。

先週の感想では、今週が「起承転結」の「起」の最終週になるのでは？　と書きましたが、むしろ今週は「承」の第1週のつもりなのかもしれません。

物語を一気に「トキの物語」として強調し、「トキとヘブンの物語」の序章に組み立ててきたと思います。

これで全体の「1/4」が終了ですが、いい感じで次の「1/4」に進みそうで何よりです。

厳選『ばけばけ』で描かれない秘話の解説ﾘﾝｸ集

・八雲×セツ「耳で読む異文化」 → こちら 
・八雲×セツの松江婚“日本語で恋” → こちら 
・八雲漂着“英→米→松江の道程” → こちら 
・三之丞(板垣李光人)ﾓﾃﾞﾙ“静かなる光” → こちら 
・八雲×セツ 松江借家の“ギクシャク” → こちら 
・雨清水タエ(北川景子)ﾓﾃﾞﾙ“栄華→没落” → こちら 
・錦織(吉沢亮)ﾓﾃﾞﾙ“八雲＋セツとの友情” → こちら 
・“本当は中年女中”→若いセツ、乱入 → こちら 
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