連続テレビ小説「ばけばけ」 （第58回・2025/12/17） 感想 「鳥取の怪談」全文2バージョン記載あり！

NHK総合・NHK BS・ﾌﾟﾚﾐｱﾑ4K／連続テレビ小説『ばけばけ』
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第58回／第12週『カイダン、ネガイマス。』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

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ヘブン（トミー・バストウ）に怪談好きであることを告げたトキ（髙石あかり）。ヘブンは興奮してトキに怪談を求め、さっそく披露することになる。「タダアナタ、ノ、ハナシ。アナタ、ノ、コトバ、デナケレバ、イケマセン」。トキに期待の眼差しを向けるヘブン。トキは部屋を暗くし、ろうそくをヘブンの目の前に置く。そして火を灯し、トキは「鳥取の布団」を語り始める。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：なし
脚本：ふじきみつ彦（過去作/ﾊﾞｲﾌﾟﾚｲﾔｰｽﾞ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記）
演出：村橋直樹（過去作/まれ,透明なゆりかご,ｻｷﾞﾃﾞｶ） 第1,2,5,7週
　　　泉並敬眞（過去作/ｽｶｰﾚｯﾄ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ） 第3,6,9,12週
　　　松岡一史（過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ） 第4,8,10週
　　　小島東洋（過去作/この花咲くや,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ） 第11週
制作統括：橋爪國臣（過去作/青天を衝け,あなたのﾌﾞﾂが､ここに,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ）
音楽：牛尾憲輔（過去作/ﾁｪﾝｿｰﾏﾝ,僕の心のﾔﾊﾞｲやつ,ﾀﾞﾝﾀﾞﾀﾞﾝ）
主題歌：ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション：北郷美穂子（NHK大阪アナウンサー）
副音声解説：山崎健太郎（過去作/舞いあがれ!,らんまん,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ,虎に翼,おむすび）
副音声日本語吹替：西地修哉（ヘブン担当）、木村はるか（リヨ担当）
タイトル写真：川島小鳥（過去作/未来ちゃん,SHISHAMOｱｰﾄﾜｰｸ）
タイトルロゴ：西沢和樹（instagram.com/nishizawa_k/）
プロデューサー：田島彰洋,鈴木航,川野秀昭｜美術：山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘｜美術進行：澤幸樹、嶋原広起｜技術：増田徹、備中正幸、酒井俊史｜音響効果：松本有加、巽浩悦、吉田亜矢｜撮影：岩崎亮、関照男｜照明：根来伴承、大西弘憲｜音声：吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗｜映像技術：前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな｜カラーグレーディング：原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋、若嶋なな｜VFX：西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規｜CG：大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉,大関聡｜美術進行：澤幸樹、嶋原広起、大塚良子,厚朴美沙子、毛尾喜泰｜装置：佐藤千織、坂口大吾、山中宏華,澤井洸、平松康、吉田隆広｜装飾：津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之｜特殊効果：奥村陵、宮崎真有｜衣装：横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和,鍛本美佐子｜メイク：堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗｜持道具：楠正由貴、森上陽子｜かつら：松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦｜特殊メイク：江川悦子、権田日和｜特殊メイク協力：荒井律子、大谷美咲、山埼佳子｜助監督：小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜｜制作担当：木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治,斎藤明日香、竹本航｜取材：川野秀昭、鈴木航｜編集：藤澤加奈子｜記録木本裕美｜時代・風俗考証：刑部芳則｜松江風俗考証：藤岡大拙｜出雲ことば指導：多々納斉,松嶋彩｜所作指導：藤間豊宏｜料理指導：広里貴子｜英語指導：塩屋孔章,ネイサン・ベリー｜英字指導：前田祐加｜眼科指導：大路正人,川村肇｜怪談ばなし指導：玉田玉秀斎｜茶道指導：有澤一男｜三味線指導(タエ)：菊央雄司｜三味線指導(遊郭)：長江浩子｜アクション指導：中村健人｜日本画指導：諫山恵実｜絵画指導：苅谷昌江｜華道指導：神前光園｜造園：堤正和、宮崎昭徳
※敬称略

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クレジットには、トキ、ヘブン、サワ、なみの4人のみ！

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

久しぶりに「アバンタイトルなし」で始まった、朝ドラ『ばけばけ』の第58回。

しかも、クレジットタイトルには、トキ（高石あかり※高＝はしごだか）、ヘブン（トミー・バストウ）、野津サワ（円井わん）、そして、なみ（さとうほなみ／ほな・いこかex.ゲスの極み乙女） の4人のみ！

4人だけで、正味「13分44秒間」を描くというのだから、昨夜に最終回を迎えた連ドラ『新東京水上警察』や『ちょっとだけエスパー』とは雲泥の差であり（苦笑）

それだけ、前回の感想にもつづったように、今週は作り手全員が意気軒昂だということだ。

俯瞰の構図は、使い方次第で、視聴者のよき刺激になる！

今回も「演出」の話から書いてみる。

メインタイトル映像明け直後、トキがヘブンに怪談「鳥取の布団」を語り聞かせる場面だ。

©NHK

実際の映像は、画面右手の襖側に寄った構図から、この引きの構図に落ち着くわけだが。

ここで注目してほしいのが「俯瞰（ふかん）の構図」である。

俯瞰の構図とは、高い位置から被写体を見下ろすように描く構図のことだ。
これにより、全体像を分かりやすく示したり、空間の広がりや奥行きを強調したりすることができたり、人物を小さく見せることで可愛らしさや親近感を演出する効果もある。
また、頭が大きく足が小さく見える特徴があり、物語の情景を伝えたり、日常の場面に新鮮さを与えたりするのに役立つのである。

今回の俯瞰の構図は、まさに物理的な空間（部屋）だけでなく、「ふたりが歩んでいく世界観の広がりや奥行き」や、「ふたりの更なる親近感」を示しただけでなく。

壁板に貼られたヘブンのメモが、どことなく怪談「耳なし芳一」における「耳だけだけ書き忘れた大量のお経」にも通じるようにも見え、実に「怪談にふさわしいシチュエーション」を創出している。

また、画面右上にある「丸窓障子」と、トキの目の目にある「ロウソク」を結んだ線（緑色）は、前回で解説した《障子によるトキとヘブンの結界（境界線）》の役割を果たしており、前回よりは「縮まった」が「まだ」であることが伝わるのだ。

先週の小島東洋氏の演出では、やたらと俯瞰の構図を多用することで、間延びしてダラダラとした印象になったのが記憶に新しい。

がしかし、使い方さえ適切にすれば、今回のように、視聴者のよき刺激になるのだ。

泉並敬眞氏が演出した「第15回」と同じ演出！

さて、3分弱の「鳥取の布団」の描写が実に秀逸だ。

劇伴も効果音も排除し、トキの息遣いや口の中の音まで聞こえるような集音で、息が詰まるような緊迫感を創出した。

これと「ほぼ同じ演出」が過去に存在したことにお気づきだろうか？

そう、第15回（10月17日放送）で、雨清水家の三男・三之丞（板垣李光人）が傳（堤真一） の激高に逆上して「なのに　おトキは…」と、これまでの思いを爆発させる  “約2分44秒間” と同じなのだ。

そして、その第15回の演出も、今週担当の泉並敬眞氏である。

「ヘルンさん言葉」の誕生秘話のような展開も！

さらに、この場面で驚かされたことがある。

それは、一気に「ヘルンさん言葉」に進んだからだ。

「ヘルンさん言葉」とは、小泉八雲（ラフカディオ・ハーン）が日本語学習中に妻・セツとの間で作り上げた、英語の影響を受けた独特の文法や表現（例: 「アリマシタ＋ナイ」＝「ありませんでした」など）が特徴の、体系化されたピジン言語のようなものだ。
　※ピジン言語とは、共通言語を持たない人々が意思疎通のために自然に作り上げた、文法が単純で語彙が限られた混合言語のこと。

これは、標準日本語の文法を逸脱しつつも、助詞の省略や独特の語彙（「ナンボ、ヨロコブ」など）が特徴で、ハーンの創作活動の基盤となり、セツとのコミュニケーションを支えた「二人だけの言葉」だった。

その「ヘルンさん言葉」の誕生秘話のような展開があったと思う。

ヘブン「?ア…　スベテ…　ワカル　ナイ」
トキ「あっ…　全て…　何もですか…」
ヘブン「?スベテ　ワカル　ナイ…　ナイ…」
トキ「全ては　分からない？」

以前から「補足記事」でも書いているとおり、今作が描くものの中に《言葉による異文化コミュニケーション》があると思う。

その最たるものが、前述の「ヘルンさん言葉」だ。

「怪談」と「ヘルンさん言葉」を、アバンなしの‘わずか3分強’に盛り込んだのは驚異的な圧縮であると同時に、メリハリの意味で秀逸すぎる…　と思う。

ちなみに、なぜ、ラフカディオ・ハーンなのに‘ヘルンさん’なのか？

英語の「Hearn」は「ハーン」とも「ハァーン」とも表記できるが、まだ英語に馴染みのない当時の日本語話者には「ヘルン」と聞こえやすかったようで、松江中学校で英語教師を務めた際も、生徒や同僚から「ヘルン先生」と呼ばれていたとの史実がある。

　・参考：ラフカディオ・ハーンはどうやって小泉八雲になった？ 「ヘルンさん言葉」を知ろう - POLYGLOTS magazine 

"トキの鳥取の布団"で、"微妙な生きた伝承"を感じ取って！

総尺の5分9秒、トキの深い深呼吸に合わせて、劇伴スタート。

画面内に無駄なものを一切入れず、「トキとヘブンとローソク」だけのシンプルな構成と構図で、嬉しそうで楽しそうに怪談を語り聞かせるトキ、一気に心を惹かれて聞き入るヘブンをじっくりと描写してきた。

もちろん、一度目と二度目の「鳥取の布団」の表現が微妙に異なる点を視聴者にも聞き取ってほしいとの狙いもあろう。

しかし、前述の「ヘルンさん言葉」も相まって、ふたりの心の距離感が一気に縮まったことを、カメラ、劇伴、演技で、美しく、且つ的確に、絶妙な味付けで表現してきた。

しかも、（前回の感想で詳細を書きましたので今回は触れません）ヘブンがトキの語り聞かせを‘おかわり’したことを盛り込むことで、ヘブンがトキという人間の「フィルター」を通して語られる、トキの感情や生活感や文化的文脈を伴った解釈の「トキの怪談」を聞きたがったことが強調された。

日本語を十分に理解できないヘブン、英語を十分に理解できないトキ、そんなふたりが「本の読み聞かせ」ではく「記憶の語り聞かせ」による “生きた伝承” まで、一気に描いたのだ。

ここで、今回にあった “トキの鳥取の布団” の2バージョンを掲載するので、微妙な “生きた伝承” を感じ取っていただきたい。

「鳥取の布団」（1回目）

　ある鳥取の　寒い寒い　雪の降る田舎町に
　貧しく幼い兄弟が２人だけで暮らしていた。
　『兄さん　寒かろう』『お前も寒かろう』
　ボロ家には　家具も畳もなく手元に　たった一枚の布団。
　２人が　その一枚の布団に体を寄せ合い　くるまっちょると
　『家賃を払え！払えねえなら　もらっていくぞ！』と
　家の大家が２人から布団を取り上げ『出てけ！』と
　吹きすさぶ雪の中に兄弟を追い出した。
　『兄さん　寒かろう』『お前も寒かろう』
　そう言いながら２人は凍え死んでしまった
　宿屋のしゃべる布団はその大家が売った　兄弟のものだった。
　かわいそうに思った宿屋の主人が寺で　お経を上げてもらうと
　ようやく…
　布団はしゃべらなくなったそうでございます。

「鳥取の布団」（2回目）

　鳥取の　とある宿屋に
　客が布団に入ると
　『兄さん　寒かろう』『お前も寒かろう』と
　布団から声がする。
　『お前も寒かろう』。
　ボロ家には　家具も畳もなく手元に　たった一枚の布団。
　体を寄せ合い　くるまっちょると
　『家賃を払え！払えねえなら　もらっていくぞ！』
　２人から布団を取り上げ『出てけ！』と
　吹きすさぶ雪の中に　兄弟を追い出した。
　かわいそうに思った宿屋の主人が
　寺で　お経を上げてもらうと　ようやく…
　布団はしゃべらなくなったそうでございます。

ちなみに、小泉八雲には確かに「3歳下の弟」ジェイムズ・ダニエル・ハーンが存在したが、兄弟は幼少期に一度会ったきりで長く断絶した。
しかし、兄の出版物をきっかけにして晩年に文通を通じて再びつながり、八雲の家族観や心情を伝える重要な記録を残している。
　・参考：ハーンと家族－弟ジェイムズ－ | 漱石・八雲教育研究センター 

であるが、本作では‘ヘブンの弟’の存在は明らかになっていない（と思う）ので、今後登場するのか、楽しみだ。

もちろん、小泉八雲が怪談「鳥取の布団」を妻・セツから聞き取り、「孤児の兄弟の悲哀」と「人情の救済」うに共感し、八雲自身の孤独な幼少期や異郷での生き方と重なて、『知られぬ日本の面影』に収録したことも、添えておく。

ゆっくり＆ゆったりだが「何も起こらない物語」らしい表現

終盤は…　スキップか～ら～の、なみ。

遊女の‘なみ’だけに「布団」からの大人の破廉恥な発想（笑）

寝起きの「布団」に、ニワトリの鳴き声。

「やっぱり聞かんで」の松野一家のコント風。

そして、サワ。

前回と今回で「実際の2日分」を描いたわけだが、なみ、家族、サワとのやり取りによって「時間経過」の様子がよく分かっただけでなく。

本作の主人公が「トキ」であることを、しっかりと強調してきたのはお見事だ。

確かに、2回分で「24時間も進んでいない」くらいのゆっくり＆ゆったりテンポではあるが、そこがまた「何も起こらない物語」らしい表現で悪くないと思う。

あとがき

怪談を通して、トキとヘブンの関係性が一気に近づいたわけですが。

お互いに「話せる相手が現れて」になったことが、このエピソードで重要だと思います。

でも、「ヘブンが怪談に惹かれる」は「ラストピースが埋まる」であり、「ヘブンが日本を離れる」のピタゴラスイッチになるわけで。

そこから、どうやって第1回で見た “未来” につながるのかも、より楽しみになりました。

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