大豆田とわ子と三人の元夫 （第7話・2021/5/25） 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・火9ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』（公式サイト）
第7話『第2章スタート! 最後の恋のはじまりは突然に』の感想。
また、本作は昨夏に全話を撮影終了しているため、要望などは基本的に書きません。

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とわ子（松たか子）は「しろくまハウジング」の株をオーナーが外資系ファンドに売却しようとしていることを知る。そうなれば、コスト削減の一環として人員整理が考えられる。とわ子は社員を守るために何をすべきか悩んでいた。そんなとわ子のことを心配し、慎森（岡田将生）と鹿太郎（角田晃広）が続けざまにとわ子の家を訪問。一方、八作（松田龍平）は店の仕事を休んでいて…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：なし
脚本：坂元裕二（過去作/東京ﾗﾌﾞｽﾄｰﾘｰ､問題のあるﾚｽﾄﾗﾝ､ｶﾙﾃｯﾄ）
演出：中江和仁(過去作/映画｢嘘を愛する女｣､きのう何食べた?) 第1,2,6話
　　　池田千尋（過去作/プリンセスメゾン､まどろみバーメイド） 第3,4,7話
　　　瀧悠輔（過去作/僕はどこから） 第5話
音楽：坂東祐大（過去作/美食探偵 明智五郎）
ナレーション：伊藤沙莉（過去作/ひよっこ､これは経費で落ちません!､いいね!光源氏くん）
挿入歌：「Ils parlent de moi feat. Maika Loubte」
　　　　　「All The Same feat. Gretchen Parlato, BIGYUKI」
主題歌：STUTS & 松たか子 with 3exes（Sony Music Labels）
　　　　「Presence I (feat.KID FRESINO)」(第1.2話)
　　　　「Presence II（feat. BIM, 岡田将生）」（第2,7話）
　　　　「Presence III（feat. NENE, 角田晃広）」（第3話）
　　　　「Presence IV（feat. Daichi Yamamoto, 松田龍平）」（第4話）
　　　　「Presence V（feat. T-Pablow）」（第5話）

脚本は数学的な考え方によって構築される方が面白い

なるほど。前回で、とわ子（松たか子）の存在感を無くしたエピソードを終盤まで積み重ねて、最後の最後で かごめ（市川実日子）の急死。そして、1年後。どんな展開、どんな会話劇、どんな人生を描くのかと思いきや。

まさか、第7話にして数学的な思考回路を利用して、物語を構成していることを、若干ネタバレさせて来るとは（単なる、私の想像の域だが）、なかなか手の込んだ脚本だ。やはり、脚本は数学的な考え方によって構築される方が面白いと思っている私にとって、これまでで最も満足度が高かった。

本作が"今一つ人気が出ない理由"を"高校数学"で考えてみた

それは、38分頃に、小鳥遊大史（オダギリジョー）が、かごめへの気持ちの整理が出来ないとわ子に「中国剰余定理」を使って証明しようと数式を書き始めて、ふと言った次の台詞だ。

大史「同様の議論が帰納的に回せればいいんですけどね」

この “議論を帰納的に回す” と言う台詞にピンと来たのだ。なぜ、本作が面白いのに、意外と視聴率が低く、「分かり難い」とか「何が面白いのか理解できない」と言った意見が多いのかと。

それは、前回までの本作の脚本は、高校数学で習う「帰納法」並びに「枚挙的帰納法」で書かれているのに、一部の視聴者が「演繹法」を用いて、作品を理解しようとしているからではないかと。

脚本家の中の"不思議な法則"を無意識に推測して見ることが出来る人は楽しめる

まあ、ここで高校数学の授業をするつもりはないが。ちょっとだけ解説すると。

「帰納法」とは、個別的事例から普遍的な法則を見出そうとする論理的推論の方法のこと。特徴は、様々な事実から導き出される傾向から、結論へ結び付けるプロセス。また、「帰納法」に似た「枚挙的帰納法」は、ある特殊な命題から一般的な命題を導く推論方法のこと。帰納法に似ているが、事実を対象として、ある事実から一般的事実を導くやり方。

そう、本作は、一見バラバラに見えるエピソードを、時間軸や人間関係の順番や強弱に影響を受けずに、脚本家の中にだけある “不思議な法則” に従って並べて描く。そして視聴者は（無意識に）、その様々な与えられた情報の傾向から “不思議な法則” を見つけ出し、本作が何を伝えたいことを推論して楽しんでいるのだ。

だから、脚本家の中の “不思議な法則” を推測しながら見ると言う楽しみ方が出来ないと、面白く感じない。

以下の「演繹法」に共感すれば、本作を楽しめる

でも、普通のドラマの多くは、「演繹法」的なアプローチで視聴者に分かり易く、脚本家の言いたいことを描く。因みに、数学に於ける「演繹法」は、誰しもが知っている普遍的な事実を前提として、そこから結論を導き出す方法のこと。例えば、こんな感じ…

　●＜前提1＞犬は哺乳類である
　●＜前提2＞哺乳類には血液が流れている
　●＜結論＞（多分）全ての犬には血液が流れている

お分かりだろうか。これを本作に当て嵌めると、例えば次のようになる。

　●＜前提1＞離婚した夫は、元妻のことが気なる人が多い
　●＜前提2＞元妻のことが気なる人は、元妻を振り回すことが多い
　●＜結論＞（多分）全ての離婚した夫は、元妻を振り回す傾向にある

こんな感じ。「いやいや、全部が全部そうじゃないでしょ？」と思う人は、本作を楽しめない。でも、「大豆田とわ子と三人の元夫の関係だったら、あり得るね」と思える人は楽しめちゃう。まあ、こんな感じだ。

人はいつでも "その時" に戻ることが出来る…

そして、今回で私の心に響いた台詞は、公園で亡くなったかごめへの心の整理が追い付かないとわ子に、大史が言ったこと。

大史「時間って べつに 過ぎてゆくものじゃなくて
　　　場所っていうか その… 別のところにあると思うんです。
　　　人間は現在だけを生きてるんじゃない。
　　　5歳 10歳 20歳 30 40
　　　そのとき そのとき 人は懸命に生きてて
　　　それは べつに 過ぎ去ってしまったものなんかじゃなくて。
　　　だから あなたが 笑ってる彼女を見たことがあるなら
　　　彼女は今も笑ってるし。
　　　5歳のあなたと5歳の彼女は 今も手をつないでいて。
　　　今からだって いつだって 気持ちを伝えることができる。
　　　人生って 小説や映画じゃないもん。
　　　幸せな結末も悲しい結末も やり残したこともない。
　　　あるのは その人が どういう人だったかっていうことだけです。
　　　だから 人生には2つルールがある。
　　　亡くなった人を不幸だと思ってはならない。
　　　生きてる人は幸せを目指さなければならない。
　　　人は時々寂しくなるけど 人生を楽しめる。
　　　楽しんでいいに決まってる」※字幕ママ

これ、時計が刻む時間とは、実は、「空間化された時間」であると言う、ノーベル学賞も受賞したフランスの哲学者「アンリ＝ルイ・ベルクソン」（1859～1941）の考え方に基づいているように思う。要は「時間に秒単位などの “刻み” は無く、流れを持った空間として存在する」ってこと。

だから、大史は、人はいつでも “その時” に戻ることが出来る… と。そして、「人生の2つのルール」も良かった。生きていることの意味や生き方を考えさせてくれた。

あとがき

プライベートとビジネスで、あれだけ違った感じの人って、これまた不思議ですね。ビジネスではあんなに現実的なのに、プライベートでは哲学的で詩人でもある。なんか、第7話からの「第2章」は一段格上げして面白くなったように思います。

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