正直不動産2 （第5話・2024/2/6） 感想

NHK・ドラマ10『正直不動産2』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、YouTube

第5話〔全10話〕『善意の代償』の感想。

なお、原作となった漫画・大谷アキラ(漫画) 夏原武(原案) 水野光博(脚本)「正直不動産」は、既刊19巻（2023年12月現在）を完読。

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永瀬（山下智久）は中学時代の同級生・桃花（市川由衣）からマンション購入の相談を受ける。友人のためにと張り切る永瀬だが、彼女の夫・直（味方良介）は永瀬と妻の仲の良さを見て複雑な思いを抱く。月下（福原遥）は、かつて店舗を仲介したラーメン店店主・河原（田口浩正）を無給で手伝っていた。その河原に花澤（倉科カナ）が、直に神木（ディーン・フジオカ）が接触する。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：漫画・大谷アキラ(漫画) 夏原武(原案) 水野光博(脚本)「正直不動産」
脚本：根本ノンジ（過去作/正直不動産,相棒ｼﾘｰｽﾞ,ﾌﾙｰﾂ宅配便,ﾊｺﾂﾞﾒ） 2024SP,第1,2,5話
　　　清水匡（過去作/僕の姉ちゃん） 第3話
　　　木滝りま（過去作/ｶﾅｶﾅ,青春ｼﾝﾃﾞﾚﾗ）） 第4話
演出：川村泰祐（過去作/正直不動産,ﾄﾞS刑事,屋根裏の恋人） 2024SP,第1,2,5話
　　　金澤友也（過去作/正直不動産,ﾗｽﾄ･ﾄﾞｸﾀｰ~監察医ｱｷﾀの検死報告~） 第3,4話
　　　下向英輝（過去作/ｶﾅｶﾅ,青春ｼﾝﾃﾞﾚﾗ）
音楽：佐橋俊彦（過去作/正直不動産,ちりとてちん,ﾃﾐｽの剣,集団左遷!!,行列の女神）
主題歌：小田和正「so far so good」
※敬称略

今回も"読者ファースト"でない本音の"正直感想"を！

さあて、どこから褒めようか（笑）

おっと、「面白いに決まってる」「けなすつもりなし」では見ていないから！

今回も “読者ファースト” でない本音の “正直感想” を書いてみる。

とは言ったが。

一部の読者様から非公開コメントで「‘さいちん’を使ってもらえると嬉しい」とあったので、そこは “読者ファースト” で（笑）

山下智久ｻﾝと市川由衣ｻﾝの「学生服による青春回想」が無かった！

まず、細かいところから攻めていこう。

殆どの人は気にならないと思うが、私はとても良かったと思う点として。

山下智久さんと市川由衣さんが学生服を着た “中学時代の回想シーン” を盛り込まなかったことを大いに評価したいのだ。

ここ最近のドラマでは、目に余るほどに＜20歳以上の俳優が学生服を着て学生時代を演じた回想シーン＞があることに、今放送中の『君が心をくれたから』の感想で思いをぶちまけた。

興味がある人は、ぜひとも下記を読んでいただきたい。

君が心をくれたから （第1話/初回30分拡大・2024/1/8） 感想 ※「学生服による青春回想」に思うことも！ 

もちろん、38歳の山下智久さんと、37歳の市川由衣さんが中学時代を演じるなんてあり得ない… とは思う。

でも、視聴率稼ぎ、コメディ重視、話題づくりなどなどを理由に、似たような青春回想を盛り込む作品は多いのだ。

今作だって、やろうと思えがやれただろうし、やったらやったで話題になったと思う。

しかし、今作はやらなかった。

もちろん、＜やる必要がない＞から盛り込まなかったわけだが、その英断ができない作品が多いのだ。

このことで、二人の若手俳優が人気ドラマに出演するチャンスが訪れたわけだし。

だから、これからも今作のように。

「学生服による青春回想」を使わなくても、脚本や演出や演技で “青春時代” を心地よく想像させてくれる “ドラマ” を見たい。

「ラーメン店立て直しストーリー」と「山崎努リスペクト」

もう一つは、小ネタについて。

永瀬「昔『タンポポ』っていう映画に感化されてさ」

この映画『タンポポ』は1985年公開の奇才・伊丹十三監督の作品で、1953年公開の米国西部劇映画『シェーン』のオマージュ溢れる作品だ。

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美しい未亡人に心を奪われたトラック運転手が、彼女が営むさびれたラーメン屋を立て直す物語。

その長距離トラックの運転手ゴロー役が、今作で和菓子職人でインフルエンサーの石田努を演じる 山下努さんで。

因みにもう一人の運転手・ガン役は渡辺謙さんで、マドンナの女主人タンポポ役は宮本信子さん。

こんなところに、今回の「ラーメン店立て直しストーリー」と「山崎努リスペクト」が隠されているわけだ。

永瀬がミネルヴァ不動産に単独乗り込むシーンを解説

もう一つ、細かいところの良かった点。

それは、32分過ぎに‘さいちん’こと正直過ぎる不動産営業マン・永瀬財地（山下智久）がミネルヴァ不動産に乗り込んでくるシーン。

最初、誰の足か分からない状態で勢いよく前進する革靴があって。

そのあと、誰が見てもさいちんだと分かる背中越しのワンカット。

その後は、革靴のアップと、さいちんの背中を切り返して。

さいちんの顔が見えないアングルで「神木さん」だけ言わせて、顔のアップ。

ここ、明らかに “タップダンスの神木” を意識したカット割りと編集になっている。

でも、今回は今までよりも “このシーン” まで神木涼真（ディーン・フジオカ）のタップを強調していないように見えた。

それはなぜか？

演出家が、自分が描写したことに責任と自信を持っている

恐らく、今回の演出担当が、第1,2話担当の川村泰祐氏に戻ったからだ。

川村氏は、特に第2話で、神木とさいちん、ディーン・フジオカさんと山下智久さんの、高級レストランでのタップダンスによる営業術伝授を演出した人だ。

だからきっと、「視聴者の中に神木のタップは強く印象付けできているはず」だと考えたのでは？

「もう、敢えて繰り返さなくても神木の凄さと怖さは伝わっている」と確信しているからこそ。

“着実に一歩一歩前進しているさいちん” と “進化し成長する永瀬財地” を、革靴と背中で表現したと思う。

もちろん、歩き方と背中でその二つのキャラクターを、映像で見せて（show）魅せた（fascinate）のは山下智久さんの演技と存在力の賜物だ。

当たり前のように思うかもしれないが、演出担当が自分が描写したことを忘れたり、複数担当のときに連携できない作品は、今でも山ほど放送されているのが現状なのだ。

今回の脚本（演出もだが）は高度なことをやってのけた！

さて、長くなったから、本題というか、本編について書いてみる。

まず言いたいのは、今回の脚本（演出もだが）は高度なことをやってのけたと思う。

大前提に、長期固定金利住宅ローン 「フラット35」のメリットとデメリットや違法行為までしっかり解説したうえで。

“ドラマ” として “勧善懲悪モノ” の面白さを最大限に引き出した。

正直サイドのさいちんやスタマーファースト命の月下咲良（福原遥）と、虚偽サイドの神木や花澤涼子（倉科カナ）の対峙構造をきっちりと描きつつ。

さいちんを罠にはめて落とそうとする神木なんて、ちょっぴりプロがプロを騙す “クロサギ” 風だし。

更に、「月下 VS 花澤」の続きも、月下の失敗を丁寧に描きつつ、「ハイエナ店舗仲介」を解説しながら、＜本当のカスタマーファーストと何か？＞まで盛り込んだ。

さいちんが花澤の営業努力を認めたのは意外性もあって、良いエピソードだった。

ここまで盛り込んで、破綻どころか完成度が高すぎる！

まとめると。

「フラット35」と「ハイエナ店舗仲介」という難しい不動産用語を二つも盛り込んだだけでも丁寧なのに。

単純に「登坂不動産 VS ミネルヴァ不動産」だけでなく。

「永瀬 VS 神木」と「月下 VS 花澤」も盛り込んで。

おまけに、＜本当のカスタマーファーストと何か？＞のうえに。

「神木 VS 花澤」で＜正直者は報われる＞まで組み込んだのだ。

更に、Ｚ世代の新入社員・十影健人（板垣瑞生）や課長代理・藤原結弦（馬場徹）らサブキャラも効果的に活用して、世界観を広げて見せた。

ここまで作り込んできたら、褒めるしかできない…

あとがき

〔全10話〕なので、今回が折り返しになります。

ということで、ガッツリと盛り込みつつ、桐山貴久（市原隼人）に区切りをつけて、新キャラである黒須圭佑（松田悟志） を投入。

ホント、今期で一番作り込まれているし、面白いし、見応えのある “連ドラ” だと思います。

最後に、第4話の感想に＜69回＞も Web拍手をいただき、ありがとうございます。

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