季節のない街 （第1話/初回15分拡大・2024/4/5） 感想

テレビ東京系・ドラマ25『季節のない街』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram、

第1話/初回15分拡大〔全10話〕『街へいく電車』の感想。

なお、原作(小説)である山本周五郎『季節のない街』は既読。
また、2023年8月9日より、Disney+で全10話配信済みですが、そちらは未鑑賞。
しかし、名匠・黒澤明監督の不朽の名作映画『どですかでん』（東宝/1970年）は、数十回鑑賞済みで、Blu-rayも所有します。
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“ナニ”と呼ばれる大災害から12年。今なお残る仮設住宅に猫のトラと共にやってきた“半ズボンの半助”こと田中新助（池松壮亮）は、三木本（鶴見辰吾）という怪しげな男の指示で、そこに住む人々の暮らしぶりを報告する仕事を請け負う。
街で半助が初めに出会ったのは、どでんどでん…どですかでん…と電車の走行音を叫びながら街を走り回る六ちゃん（濱田岳）。その電車は彼以外の人の目には映らない。六ちゃんの母・くに子（片桐はいり）は「一人で街の外に出るんじゃないよ」と心配するのだが。
ある日六ちゃんは怪我をした少女から頼まれ、彼女をおぶって本物の電車が走る街の外へと繰り出すが思わぬトラブルへと発展することになる…。
---上記のあらすじは、公式サイト等より引用---

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原作(小説)：山本周五郎『季節のない街』
企画：宮藤官九郎（過去作/初企画作品）
脚本：宮藤官九郎（過去作/あまちゃん,俺の家の話,不適切にもほどがある!）
演出：宮藤官九郎（過去作/木更津ｷｬｯﾂｱｲう,ぬぼれ刑事） 第1話
　　　横浜聡子（過去作/ﾊﾞｲﾌﾟﾚｰﾔｰｽﾞ2017､2018,ひとりｷｬﾝﾌﾟで食って寝る）
　　　渡辺直樹（過去作/いだてん~東京ｵﾘﾝﾋﾟｯｸ噺~,映画｢ﾄﾞﾗｲﾌﾞﾏｲｶｰ｣助監督）
ＣＰ：濱谷晃一（過去作/警視庁ｾﾞﾛ係ｼﾘｰｽﾞ,ｼﾞｬﾝﾇの裁き）
撮影：近藤龍人（過去作/映画｢万引き家族｣,映画｢ある男｣,映画｢怪物｣）
美術：三ツ松けいこ（過去作/映画｢海街diary｣,映画｢溺れるﾅｲﾌ｣,映画｢万引き家族｣）
衣装：伊賀大介（過去作/俺の話は長い,大豆田とわ子と三人の元夫,17才の帝国）
音楽：大友良英（過去作/あまちゃん,いだてん,しもべえ,ﾄｸﾒｲ!警視庁特別会計係）
※敬称略

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クドカンが黒澤明監督作品で一番好きなのが映画『どですかでん』

原作(小説)は、既読。
Disney+で全10話配信済みは、未鑑賞。
同じ原作の黒沢明監督『どですかでん』は、大好き！
※原則、原作(小説)、映画とは比較、ネタバレやりません。

第1話だから、多少は原作や『どですかでん』にも触れてしまうが、ご容赦いただきたい。

映画『どですかでん』が宮藤官九郎氏が黒澤明監督作品で最も好きな映画であるのは、知る人ぞ知ることだと思う。

黒澤監督の『生きる』『野良犬』に並ぶ現代社会への風刺やメッセージを込めた名作の一つだ。

橙元々、短編集だった原作(小説)からエピソードを抽出して映画化したことに、興味を持ったのが宮藤氏で。

今回は、短編集であることをいかして、全10話の連ドラ化に至ったそうだ。

原作、映画の内容には触れないが、間違いないのは映画『どですかでん』は見る人、楽しめる人を選ぶ奇作であり名作だ。

今作が、どうなるか本当に楽しみだ。

「Don’t Think, Feel!（考えるな！ 感じろ！）」

では、見た感想。

12年前に起きた “ナニ” の災害を経て建てられた仮設住宅のある「街」がある現代が舞台。

この「街」に希望を失いやってきた主人公・半助（池松壮亮）が、「街」の住人たちの姿に希望を見出し、人生を再生していく青春群像エンターテインメント… のようだ。

見終えて、最初に感じたのは、あの映画の、あの名俳優の、あの名ゼリフだ。

「Don’t Think, Feel!（考えるな！ 感じろ！）」

これは、映画『燃えよドラゴン』（1973）でブルース・リー演じる主人公・リーが言った名ゼリフだ。

少林寺拳法の高弟で武術の達人であるリーが、覚えの悪い弟子に言う名言だ。

野暮な説明は不要だと思うが、野暮をやらないと感想が終わっちまうからやってみる（笑）

登場人物たちも全員が、何かを ""感じて いる世界観

今作の主人公は、前述のとおりに、「街」に猫のトラと共にやってきた “半ズボンの半助” こと田中新助だ。

しかし今回のメインは、「どでんどでん…どですかでん…」と電車の走行音を叫びながら街を走り回る自称‘六ちゃん’（濱田岳）だ。

六ちゃんには見える “電車” は、彼以外の目には映らない。

そして序盤で、“六ちゃん” という存在自体が「街」の住民にの目には映っていない… というか、ある意味で毒にも薬にもならぬ存在の如くであると描かれる。

終盤のトラブル解決のくだりで、住民たちの六ちゃんへの愛や、新助のメモが、六ちゃんを救うが。

ここで感じ取ったのが、「Don’t Think, Feel!（考えるな！ 感じろ！）」なのだ。

ドライブレコーダーの映像があろうが、状況証拠が揃っていようが。「街」では全員が六ちゃんを “感じている” のだ。

そして、今の六ちゃんは電車だけを “感じている” という現実。

一歩前進して「考えすぎずに、感じろ！」時代にふさわしい

令和6年は、働き方、生き方、価値観、性差などが複雑多岐に多様化した社会だ。

だからこそ、自分自身の直感や感性やセンスで、いろいろ選択がして良いし、できる時代になった。

多くの人は、利害や利得を無意識に “理性” 的に “考え” てしまうものだ。

それをすべて排除するのは難しい。

でも、積極的に、能動的に、意識的に “感じる” ことをやり。

“考える” と “感じる” のバランスをうまく保つことが、自分らしく生きる術であり、社会の中で生きていく有用な方法であるとも思う。

だから、敢えていうから「考えるな！ 感じろ！」ではなく、一歩前進して「考えすぎずに、感じろ！」になるだろうか。

「今、生きていることが奇跡であり、最高の幸せなんだ」

この先の展開が読めないからこそ、書いておきたいこともある。

第1話終了後ではあるが、今作のテーマを考えてみた。

朝ドラ『あまちゃん』（NHK/2013年度前期） 、『不適切にもほどがある！』（TBS/2024）と三部作というわけではないと思うが、３作品に共通するのが 今作における“ナニ” だ。

そうなると、必然的に感じるのが。

今年1月に妹が急逝してから特に強く感じる「今、生きていることが奇跡であり、最高の幸せなんだ」ってことだ。

そう、要するに、宮藤官九郎氏の視点で描く「人間賛歌」なのでは？ と。

感じる時代だからこその「見て感じるドラマ」になりそう

世の中に悪人はいないというような「性善説」とは異なり、弱点や悪性や失敗なども一度はすべて受け入れたうえで、人と人がかかわって生きていきましょう！ というメッセージが内包されているように感じたのだ。

奇しくも今年1月1日には、令和6年能登半島地震で甚大な被害がもたらされたばかり。

世界に目を向けても、震災、疫病、戦争や紛争など、いつ我が身に何が起こるのか分からない現代こその「今、生きていることが奇跡であり、最高の幸せなんだ」。

それを、単純に某朝ドラのように “義理と人情と歌”でまとめるでもなく。

登場人物の死や病や障がいや性差を扱って、生きづらさを切々を描くのでもなく。

悪意や攻撃性はできるだけそのままにして、それらを客観的に感じている周辺キャラクターを描くことで笑えるテイストにしつつ、更に全体の “一塊” としての「街」を細かく描写しまくることで感動と涙を誘引する。

これは、宮藤官九郎作品、クドカン脚本作品に共通する作風でもある。

第1話を見て、感じる時代だからこその「見て感じるドラマ」になりそうな気がする。

そうすると、こうやって、あれこれ考えて書くのは野暮を超えて、滑稽でしかないが（汗）

あとがき

宮藤官九郎さん以外のスタッフ、もちろんキャストも、なかなか実力者ですね。

横浜聡子さんは、テレ東『バイプレーヤーズ』の監督ですし、渡辺直樹さんは映画『ドライブ・マイ・カー』に監督補。

撮影は、映画『万引き家族』や映画『ある男』の近藤龍人さん。

音楽は、『あまちゃん』『しもべえ』の大友良英さん。

美術は、映画『海街diary』や映画『万引き家族』担当の三ツ松けいこさん。

衣装は、『俺の話は長い』『大豆田とわ子と三人の元夫』の伊賀大介さん。

そして説明するまでもない、超個性的な俳優陣が数十名も！

『街』の屋外ロケセットも、深夜ドラマの予算では無理（笑）

とにかく、「見て感じるドラマ」を楽しもうと思います。

（注）ネタバレのコメント、お控えください。

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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