午後LIVEニュースーン 午後4時台・「虎に翼」取材担当者がドラマの裏側を語る“第12週の寅子と家裁がやったこと”

©NHK

『虎に翼』の取材担当者さんがドラマの裏側を語るコーナー

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

以前に少しだけ書いたが、今回は少し丁寧に触れようと思う。

『午後LIVE ニュースーン』は、NHK総合テレビで2024年4月1日から平日 15時10分から17時57分に放送されている『NHKニュース』の報道・情報番組だ。

ネット記事では、「とにかく低視聴率でしょうがない」といった類の話題ばかり目につくが、今回はそこには触れない。

この番組の４時代に、NHK連続テレビ小説『虎に翼』の取材担当者さんがドラマの裏側を語るコーナーがあり、

私は、放送開始当時から興味深く見ている。

その取材担当者というのが、毎回の感想の「スタッフ一覧」に書いている、この人だ。

取材：清永聡（NHK解説委員:司法･事件･公文書管理･災害）

清永 聡（きよなが　さとし）さんは、昭和45年（1970）生まれで、NHK解説委員室・解説主幹。

担当分野は司法・事件・公文書管理・災害。

脚本執筆準備用の "アイデア提供" をやられた人では？

ということで、恐らく、脚本を書く以前のプロット作成に携わった方だと思う。

プロットとは、あらすじのようなものだが。

脚本を執筆し始める際に、できるだけ円滑に脚本家が書けるようにと、制作統括や様々な協力スタッフが持ち寄った大量のアイデアを整理整頓し。

「どんな世界観で、どのような舞台の上で、どのような登場人物が何をはじめ、最後はどうなるのか？」をざっくりとまとめたものだ。

恐らく、当該の清永氏は、このプロット作成と、脚本執筆準備用の、いわゆる “アイデア提供” をやられた人だと推測している。

その理由は、毎回の解説の中で、「こういう史実がもとになっています」「本当はこういう設定があります」など、脚本や本編映像では語られない部分、削除された部分を解説してくれるから。

更に、清永氏の言葉のあちこちから「本当は、ここを描いてほしかった」「あそこは、こうやって映像になればよかった」が見受けられるのだ。

気になった部分のいくつかが清永氏の解説で明瞭になった

前置きが長くなったので本題だ。

今週の第12週『家に女房なきは火のない炉のごとし？』（6/17～6/21）の内容について。

ここからは、私が投稿済みの感想を既に読んでいただいている…との前提で書かせていただく。

第12週は、これまでの11週分とはだいぶ完成度が低いというか、少々雑な印象を受けた１週間だった。

その気になった部分のいくつかが清永氏の解説で明瞭になったので、書いてみようと思ったのだ。

劇中の【五大基本性格】は、史実では【家裁の五性格】

まず、多岐川（滝藤賢一）が「おうちDE水行」をやるために寅子（伊藤沙莉）を自宅に呼んで、汐見（平埜生成）に【五大基本性格】を書き残すように命じるくだり。

多岐川のモデルである初代最高裁家庭局長・宇田川 潤四郎さんが、自宅で水行をやって、部下に書き残せたのは事実。

でも、その場に、寅子のモデルである三淵 嘉子さんがいた事実はなし。

そして、劇中の【五大基本性格】は、史実では【家裁の五性格】だ。

本編では箇条書きで終わってしまったが、少し細かく書くと次のようになる。

　●独立的性格：地裁とは異なる裁判所
　●民主的性格：親しみある国民の裁判所
　●科学的性格：事件処理に科学的手法
　●教育的性格：教育者の自覚を持つ
　●社会的性格；自治体などと積極的に連携

これ、ここまで説明されて、やっと分かると思う。

そして、この【家裁の五性格】で注目すべきは、家庭裁判所という新しい組織らしい設定というか性格付けだ。

やはり、これまでの裁判所は「威厳のある場所」だったから、「親しみある」なんてことはなかったのだ。

また、裁判所で働く人たちは「司法官」というプライドがあって、「教育者」ではないと思っていたのだ。

そこを、根底から見直しましょうというのが【家裁の五性格】であり、多岐川の五大基本性格】だった。

職員が孤児を自宅に招き、更生させたという事実をドラマ化

更に、設立直後の家裁の取り組みについて。

ここも、劇中ではほぼ説明がないまま、「映像を見て分かってね」という感じだったが（困）

それは、寅子が戦災孤児・道男（和田庵）の身を案じ、自宅でしばらく預かって、いわゆる更生をさせて社会復帰させたくだりのことだ。

そもそも、家裁には「少年部」と「家事部」があるのは、少年審判所所長・壇（ドンペイ）と家事審判所所長・ 浦野（野添義弘 ）が合併に関して争っていたのが描かれていたのでお分かりだと思う。

そして、設立直後の家裁は、本編のような時代だった。

そこで、次のような役割分担が課せらせていた。

少年部は、戦災孤児を町工場や個人商店で「補導委託」させ、そこで働き手としてなじめば引き取ってもらい働き続けるなどのフォローをやっていた。

劇中では相当削除されていた点として、清永氏が語っていた。

ドラマのモデルの三淵嘉子さんが 戦災孤児を連れ帰った という事実はありません。

ただ当時の家庭裁判所の職員とか調査官の手記などには 戦災孤児の引き取り手がなくて しばらく家に連れ帰ったっていう 語り残しがたくさんあるんです。

要するに、当時は身寄りのない戦争孤児の引き取り手を何とか探そうとしていたが、預からり先が見つからない。

そこで、家裁の職員らの多くが孤児たちを自宅に招き、知り合いなどの協力を得ていたという事実を、今作がドラマ化したわけだ。

"道男が笹ずしで頑張りました"という結果だけが必要だった

清永氏が、こうも語っていた。

町工場とか一般の商店に補導委託として引き取ってもらう。
そのまま試験観察を行って働き手となじめばそのまま、そこで働き続けるそういうことをやってたんです。
ドラマの道男君もドラマでの紹介は、ごく一部だったんですが。
実際は、笹山さんおすし屋さんのところで補導委託をしてもらって生活の指導をしてもらって。
その結果保護処分は必要ないということで不処分。そのまま笹ずしに就職と。
あれは実はそういう設定があったもの。

このことから分かるのは、道男が上野でやっていた盗みなどの犯罪行為がどう処罰されたのかよりも。

「道男は、笹山（田中要次）を紹介されたイントロ部と、笹ずしで頑張りましたというエンディング」だけが必要だったということだ。

だって、この番組で放送されたダイジェスト版では、道男と花江（森田望智）のことも削除、道男の家出も削除、寅子が道夫を説得したのも削除。

残っていたのは、よね（土居志央梨）が寅子に「二度とくんな」と、病床のはると抱擁する道男、号泣する寅子、はるの（石田ゆり子）生前の回想くらいなのだ。

こうしてみると、今週で描きたかったメインは…

「寅子が道夫を更生させました」と「家族の一員となった道男を含めた家族に看(み)取られて、はるは天国に旅立ちました」の三点だということだ。

脚本と演出を誤れば「道男の物語」になりかねない元ネタ

ここで、清永氏の発言で聞き逃せないのが次だ。

戦災孤児はこんなふうにして自分たちの力で 多くは苦境を乗り越えていくしか なかったっていうことなんですね。

要するに、脚本も演出も、必要以上に道男を掘り下げて（強調して）描写すれば、必然的に「自分の力で苦境を乗り越えていく道男」のエピソードになる “元ネタ” だったということなのだ。

奇しくも、今作の脚本と演出は、それをやっちまったのだと思う。

今週は「裁判官編」の「少年部」で、来週は「家事部」 　●来週「裁判官編：家事部パート」

もうすぐ終わるから、我慢してほしい（汗）

これは、来週に関係するので読んでおいて損はない。

今度は、家裁のもう一つの役割「家事部」について。

家事部は、行方不明の民間人などの「失踪宣言」や、親を亡くした子供の「養子縁組」、樺太などから引き揚げてきて戸籍を失った人の「就籍許可」などを行っていた。

そこで、次のような役割分担が課せらせていた。

まとめると、家庭裁判所の仕事、役割は ＜戦争で被害を受けた人たちの救済＞ だってことだ。

これらすべてを踏まえれば、次のようになると考えられる。

　●今週「裁判官編：少年部パート」
　●来週「裁判官編：家事部パート」

やはり、どうしても「箇条書き風」になるのは、やむを得ないと思う。

あとがき

これから、第12週の「土曜日版」を見ます。

清永氏の発言にあったような ＜戦争で被害を受けた人たちの救済＞ が中心に再編集されるのか？

寅子の仕事、道男の更生、はるの死が、ミックスされるのか？

今週は相当に盛り込みすぎだったので、編集者とディレクターのお手並み拝見となりそうです。

見逃し配信情報

番組名：午後ＬＩＶＥニュースーン　午後４時台・「虎に翼」取材担当者がドラマの裏側を語る

6/21(金) 午後4:05-午後5:00
配信期限 :6/28(金) 午後5:00 まで

NHKプラスのリンク 

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