連続テレビ小説「虎に翼」 （第70回・2024/7/5） 感想 ※穂高先生が最高裁判決に書き記した反対意見を全文掲載！

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第70回／第14週『女房百日　馬二十日？』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

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祝賀会の翌日、穂高（小林薫）と寅子（伊藤沙莉）はお互いの立場から遠慮せずに想いをぶつけ合う。寅子は栄二（中本ユリス）に向き合い、彼の言葉を引き出そうとする。栄二は寅子の言葉をきっかけに、頼りたい人の存在を思い出す。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：なし
脚本：吉田恵里香（過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘）
演出：梛川善郎（過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのﾌﾞﾂが､ここに） 第1,2,4,7,10,11,14週
　　　橋本万葉（過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘） 第3,8,13週
　　　安藤大佑（過去作/とと姉ちゃん,となりのﾏｻﾗ,やさしい猫） 第5,6,9,12週
音楽：森優太（過去作/海の見える理髪店,あなたのﾌﾞﾂが､ここに,忘恋剤）
主題歌：米津玄師「さよーならまたいつか！」
法律考証：村上一博（明治大学 法学部 専任教授）
裁判所考証：荒井史男（元名古屋高裁長官　定年退官）
風俗考証：天野隆子（過去作/ごちそうさん,花子とｱﾝ,ｽｶｰﾚｯﾄ）
旧字考証：三浦直人（明治大学大学院 文学研究科 史学専攻 日本史学専修）
医事考証：冨田泰彦（過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康）
医事考証：冨田泰彦（過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康）
ジェンダー・セクシュアリティ考証：前川直哉（福島大学 教育推進機構 高等教育企画室 准教授）
タイトルバック制作：シシヤマザキ（公式サイト ）
取材：清永聡（NHK解説委員:司法･事件･公文書管理･災害）
語り(本編)：尾野真千子（過去作/ｶｰﾈｰｼｮﾝ,長谷川町子物語,足尾から来た女）
語り(土曜日版)：山下誠一郎（過去作/Eﾃﾚ｢小雪と発酵おばあちゃん｣）
副音声解説：山崎健太郎（過去作舞いあがれ!,らんまん,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ）
制作統括：尾崎裕和（過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人）
※敬称略

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前回での「寅子の反乱」が…

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

室内でも熱中症の危険があるとのこと。
こまめに水分補給してくださいね。

前回での「寅子の反乱」が、昨夜になっても思った以上にネット上で賛否を呼んでいるのに驚いた。

当ブログの見解は、読者のてぃわんさんからの拍手コメントにお応えするかたちで昨夜投稿済み。

もしも、読んでおられない方がいたら、今回の感想は「既読」を前提で書くので、読んでいただきたい。
※「FCブログ」さんにある分家「緊急時＆トラックバック用ブログ」には掲載していない。

拍手コメント返信（2024/7/4）：虎に翼(第69回) ※私は寅子が“ブチ切れ”た理由をこう解釈しました(長文です) 

今回は、久し振りに３時間要した大作です（笑）

「この先を見れば分かるから」と説いているようなアバン

冒頭から実に面白い。

きっと、脚本家も演出家も「ネットが荒れる」を十分に想定しているに違いない。

僅か 39秒間の短めのアバンタイトルに、今回の予告編というべき興味深いイントロをもってきた。

まずは、職場の机に突っ伏して動かない寅子（伊藤沙莉）で、反省の念を描き。

多岐川（滝藤賢一）の「あれは 法曹界の歴史に残る」で、寅子の反省が無意味なほどの騒動であることを強調し。

勢いよく扉を開ける寅子を凝視する穂高（小林薫）で “何かが起こりそうな予感” を漂わせた。

もう、この「39秒間」だけで、前回の「寅子の反乱」が、穂高も寅子もただただ言葉の選択、感情表現のやり方が、少し間違っていただけで。

法律家としての恩師と弟子のような信頼し合いや。

女性の社会進出を理想に掲げる同志のような分かり合いが伝わってくるし。

テレビの向こうから「この先を見れば分かるから」と、やさしく説いていいるように私には見えた。

なかなか、ニクいアバンタイトルだ。

まずは、寅子らしく自身の言動には責任を持っていると提示

本編も実にいい。

今回は「各自で考えて！」と投げ出すつもりはない。

でも、セリフの引用が多くなるのはご容赦願いたい。

だって、私にとっての名ゼリフは備忘録に残したいからだ。

穂高「私は 古い人間だ。
　理想を口にしながら
　現実では 既存の考えから
　抜け出すことができなかった。
　だが 君は違う。
　君は既存の考えから飛び出して
　人々を救うことができる人間だ。
　心から誇りに思う」

教え子から暴言を吐かれた穂高が、寅子に最初に投げかけたのは、意外にも、いや穂高ららしい “素直な謝罪” だ。

そして、このくだりで最大に注目したいのが、次の寅子のひと言だ。

寅子「昨日のことは撤回はしませんが」

寅子らしく自身の言動には責任を持っていると提示したわけだが。

これ、寅子の性質として当然だとするだけでなく、裁判官としても、至極当然だ。

寅子は多くの人から愛される理由は…

そして、私が、このセリフを評価したいのは。

寅子は自分の言動の全てに “責任” を持っていることが分かるからこそ、寅子を信頼できるのだと確信できるからだ。

少しだけ脱線する。

私は、人に愛される人の共通点は、容姿や性格が良いのもあると思うが。

「責任が持てる人」「責任感のある人」であると思っている。

そして、「責任が持てる人」「責任感のある人」には、必ず “安心感” や “信頼感” が備わっており。

その “安心感” や “信頼感” こそが、愛される源であると思うのだ。

で、前回の穂高の発言は認めることはできないと改めて伝えた上で、寅子が言う。

寅子「先生の教え子であることは
　心から誇りに思っています」

ちゃんと、尊敬の念は真摯に伝える。

だから、「寅子は多くの人から愛される」のだと思う。

相思相愛の師弟関係だからこそ、本音どうしの衝突と和解

この前段までが一区切りだ。

穂高の立ち位置が、寅子の対面から傍の机に移動して、寅子に背中を向けるところから、今度は穂高が本音を吐露するシチュエーションになる。

流れ始める劇伴は、少し明るめでゆったりとしたヴァイオリンの音がほのぼのな感じで。

穂高「これ以上 嫌われたくない」

背中を向け手でしか言えない… このセリフこそが、今の穂高の本当の気持ちなのだろう。

そして、すっきした表情の穂高が、寅子へエールを送る…

穂高「佐田君 気を抜くな。
　君も いつかは古くなる。
　常に自分を疑い続け 時代の先を歩み
　立派な出涸(でが)らしになってくれたまえ」

これがあるから、これ用意しているから、関係者は昨日に “言い訳” をやらなかったと解釈している。
※私の知らないネット上で、あったかどうか知らないが。
それは、ともかく。

寅子と穂高の間にも “安心感” や “信頼感” があるということだ。

だから、互いを人間として愛することができる。

そんな、相思相愛の師弟関係だからこそ、本音どうしの衝突と和解だ。

前回の終盤で、巧みにトラブルを盛り込んで。

次回（今回）の序盤（メインタイル抜きで、約3分半）で、スッキリと解決。

ホント、連ドラとしての構成としてもお見事だ。

こういう良作を、トラブル依存症候群（人間描写が蔑ろにしてまで、物語の構築を騒動ばかりに依存するドラマづくりのこと：「騒動至上主義」改め）のドラマ制作者に見て学んでほしいものだ。

調停シーンの映像は、正に「愛の裁判所」のビジュアル化！

5分過ぎからは、今週描き続けている日本人男性・梶山裕司（菟田高城）とフランス人女性・梶山ルイーズ（太田緑ロランス）の離婚調停における、一人息子である栄二（中本ユリス）の親権問題だ。

寅子と調停員の根本（清水伸）と長峰（福田温子）の顔は見ているがピンぼけで。

後頭部と背中しか見えない栄二にピントが合っている構図だ。

そして、寅子のアップ、栄二のアップでカットバックすることで、よい意味での「寅子と栄二の対峙構造」が始まるのが分かるという演出だ。

この演出が秀逸なのは、栄二に話しかける寅子までピンボケのまま進行したことだ。

これによって、「栄二＝視聴者」になると当時に、栄二にとっては「目の前の３人が誰にも見えない＝いるけど、いないのと同じ存在」であることが伝わる。

そして、やさしい言葉を栄二にかけるのか？ という場面で。

栄二にとって、自分の将来（誰の育てられるのか？）を案ずるばかりだった（と思う）大人たちとは一線を画したことをいう寅子。

寅子「あなたは犯した罪と向き合わなければならない」

このセリフをきっかけに、寅子と調停員たちにピントが合って…

寅子「でも それと同時に あなたが生きて
　大人になるまで 見守り 育てることは
　私たち大人全員の責任なの」

このあとの展開、やり取りも全文掲載したいくらいだ。

寅子らしく、いいや、寅子だからそこその、優しさ、愛情、思いやりがたくさん詰まった言葉の数々。

それらによって、頑なだった栄二の心が少しずつほぐれていく。

寅子の提案に大きくうなずいた栄二にも、寅子の “安心感” や “信頼感” が伝わった… そういうことだ。

そして、このやりとりこそが、以前に多岐川が主張した「愛の裁判所」ということになる。

補足として。

多岐川幸四郎のモデルである、「家庭裁判所の父」と呼ばれた宇田川潤四郎さんが、家庭裁判所のことを「愛の裁判所」と呼んだのが史実で。

寅子のモデルである三淵嘉子さんも、次のように語っている。

「家庭裁判所は愛の裁判所ということができませう」
※「法律のひろば」1949年４月号「愛の裁判所」より

多岐川「しょうがない 人は いずれ死ぬ」

10分過ぎ…

語り「穂高先生は眠ったまま
　穏やかに亡くなられました」

甘味処「竹もと」にて、山盛りのあんこに日本酒に。

退任記念の祝賀会に出席していた桂場（松山ケンイチ）、久藤（沢村一樹）、多岐川らが、穂高の弔いに集まっている。

もちろん、この場面で「やたらと “死や余命”“病気や障がい”を盛り込むな！」なんて無粋はいわない。

多岐川「しょうがない 人は いずれ死ぬ。
　だから いつ死んでもいいように
　我々は全力で生きて
　全てを出し切るしかないのさ」

“死や余命”を盛り込むなら、きちんと「生きることの大切さ」も描くべき、ただそれだけなのだ。

まあ、こういう当然のことをやらない、やれない、やろうともしないプロが山ほどいるわけだが。

これまでの桂場と「竹もと」との関係を全てが凝縮された！

そして、酒に弱い桂馬が酔った勢いで理想を語りだす。

多岐川も、上手に桂場を煽る。

さりげなく、「俺たち」に寅子も入っていて。

桂場「周りに何と言われようと
　己の描く理想のために
　虎視眈々こしたんたんと突き進むしかない！
　だから泣いてる暇なぞない！」

虎視眈眈とは、敵や相手のすきを狙って、じっくりと機会をうかがうこと。
虎が目前の獲物に狙いを定めて、鋭い目つきで観察する習性から生まれた言葉だ。

そして…

桂場「トラコが虎視眈々？（字幕ママ）」

無粋だが、ちゃんと「虎」が入った四文字熟語になっているのが、脚本家の強いこだわりであり。

この「竹もと」でのやり取りが、これまでの、特に桂場と「竹もと」との関係を全てが凝縮されている。

こういうのこそ、あからさまな伏線と回収とは別物の、巧みに設定をいかした展開というのだ。

本当に、抜群な15分間だった。

穂高先生が最高裁判決に書き記した反対意見を全文掲載！

最後に、これをおまけに書いておこうと思う。

語り「穂高先生が最高裁判決に書き記した
　反対意見は 次のようなものでした」
穂高(M)「この度の判決は　道徳の名の下に
　国民が 皆 平等であることを
　否定していると言わざるをえない。
　法で道徳を規定するなど許せば
　憲法14条は壊れてしまう。
　道徳は道徳。法は法である。
　今の尊属殺の規定は
　明らかな憲法違反である」

ここまで盛り込むとは、凄すぎる！

あとがき

“トラつば・アベンジャーズ” の出番なし。

前回と今回は、寅子が法律家を目指した原点に直結するエピソードだったということです。

それだけに、序盤の、その昔に寅子を見出した穂高と、成長した寅子のやり取りは秀逸でした。

後半の “愛の裁判所” の部分も、セリフが徹底的に精査されており、言葉数の少ない栄二の心情まで伝わりました。

演出、特に映像と劇伴も、やり過ぎず足りなすぎずのいい塩梅で、俳優陣の見事なお芝居を＜映像で見せて（show）魅せる（fascinate）べき！＞ を完遂してくれました。

更に最後には、来週以降へのネタ振りまで収めて。

これで文句を言ったら罰が当たると思います（笑）

妄想映画｢ﾄﾗつば･ｱﾍﾞﾝｼﾞｬｰｽﾞ／ｳｨﾒﾝｽﾞ･ﾌｧｲﾄ｣

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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