ディレクターの目線blog

《残された時間》を描いているのに緊迫感が欠落した演出

まず、いつもどおり、個人的な事情抜きの感想。

前回までは、これ見よがしに “残り３か月”を強調しまくった、あざとい展開だった。

しかし今回は、妙な感じだった。

展開自体はそれなりに騒動が盛り込まれて緩急があるのに。

雅彦（木梨憲武）の声が異常に大きい以外、演出がほぼ一本調子。

良くいえば、驚き期間が終わって、淡々と現実を受け入れ始めたのを描いている。

キューブラー・ロスの「死の受容のプロセス」に例えるなら。

「否認と孤立」「怒り」「取り引き」が終わって、「抑うつ」「受容」へ向かいつつあるってことだ。

因みに、今の妹の死に対する私は「なぜ、妹が！」「私のほうが死ぬべきだった」という時期。

話を今作に戻そう。

要するに、脚本にはそこそこメリハリがあるのに、演出にメリハリが乏しいってこと。

そのために、ホント全体がダラダラしており、１．５時間くらいに感じてしまった。

《残された時間》を丁寧に描写するべき作品なのに、その緊迫感が欠落しているのは本末転倒の演出である。

父と娘を同一現場にいる場面がここまで少なくていいの!?

脚本も褒められたものではない。

最も意味不明だったのは。

序盤の旅行シーンを除いて、《余命３か月の父》がほとんど描かれなかったことだ。

確かに前回で、父と娘の意思疎通が図られたから、ケンカは少なくなって当然だ。

ただ、そもそも今作は “ダブル主演” である上に。

瞳（奈緒）の行動原理は、完全に雅彦（木梨憲武）の “死ぬまでにやりたいことリスト” の６つになっているのだから、ここはしっかりと “雅彦の思い” を描写すべきでは？

いや、「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を同時にしっかり描きつつ。

自分と相手のリストをかなえてあげたいと思う “父と娘の３か月” を描かないと意味がないのでは？

「お互い、相手の真意が分かってきたから、そっと見守り始めた」との脚本の意図は分からなくもない。

だとしても、こんなに瞳の婚約者・一馬（濱田岳）の描写に拘るのか？の答えは導き出せない。

父と娘を同一現場にいる場面がここまで少なくて、本当の意味で《父と娘の物語》と言えるだろうか！

本人も家族も死の期限が分かっているなら、もっと《３か月》を大切にしなよ（描きなよ）

ここからは、超個人的な意見。

瞳って、一応看護師の上の助産師資格保持者でしょ？
だったら、父親が心配でしょうがないなら、宿で酒飲むな！
いつなんどき、緊急事態が起こるかもしれないんだから！

で、助産師が医療用麻薬を知らないって？？？

すがりたい気持ちは分かるが、令和の助産師が食事療法って？

それを言っちゃうと、劇中の助産院いろいろと古すぎない？

最後の最後に、本音を書く。

本人も家族も死の期限が分かっているなら、もっと《３か月》を大切にしなよ（描きなよ）

なんの前触れも予兆もなく…

自分が遺体になることだって…

大切な人が遺体で帰って来ることだって…

いつでも誰にも現実に起こるんだから！！！

あとがき

ちょっと感情的になりすぎました（反省）

演出の松本佳奈さんに届くと信じて書きます。

松本佳奈さんの演出はこれまで書いて来たように大いに評価しています。

特に、自然な照明、衣装選びのセンス、そして人間描写の暖かな眼差しなどなど。

いずれも、若手演出家の中では群を抜いていると思います。

ただ、今後は演技指導に力を入れてほしいです。

特に、自発的に演技を作り込んでいかないタイプの俳優さんには、的確な演技指導をしてほしいです。

その演者の個性を引き出すのではなく、演じる登場人物の魅力を最大限に引き出す演技指導をやってほしいのです。

残念ながら、奈緒さんは若干、木梨憲武さんにはほぼそれができていないと思います。
次回作に期待します。

もう一人の演出担当、穐山茉由さんの映像も見たいので次回も見ますが、感想は内容次第です。

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拍手コメント返信(2024/1/29):「不適切にもほどがある！(第1話)」※“正しい”の多様性を再考する良き機会だと思う理由

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第1話

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[16回]

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2024/01/29 (Mon)12:22:58 拍手返信

ご来訪の上、拍手とコメントをありがとうございます！

いつもドラマや映画の感想へ、ご賛同のWeb拍手やコメントをいただきまして、ありがとうございます。

時には厳しいコメントも頂きますが、ブログ更新の励みになっております。

なお、"Web拍手のコメント"へ返信をする機能がないため、このような「お返事ページ」でお返事をいたします（謝）

[拍手投稿] てぃわんさん（2024-01-29 11:28:08）
不適切にもほどがある！（第1話/初回15分拡大・2024/1/26）感想

ミッキーさん、こんにちは。しばらく民放のドラマを観てませんでしたが、号泣の「俺の家の話」以来のクドカンTBSと聞いて、さっそく観ました！なんといっても阿部サダヲだし、「ひよっこ」以来ごひいきの磯村くんも出るので楽しみに。

爆笑しまくりの楽しいドラマでしたが、ネットで「やっぱり昭和は良かった！コンプラはダメ」みたいな意見が多くてうんざりです。

クドカン、そんなつもりで書いているとは信じられないんですが。だって86年の描写も、そこまでひどくなかったでしょ？と笑えるくらい大げさだし、2024年の描写も大げさ。昔のパワハラセクハラ体質もひどいし、今のハラスメントやコンプライアンスを勘違いしている人たちもアホ、ってことじゃないかと思うんですよね。

昭和体質な小川がどう変わっていくのかが楽しみです。あのタブレット注文がうまくいかなくて、テーブルにしめさばがたくさん並んでいるシーンなんてめちゃくちゃ笑いました。その調子で頑張ってほしいドラマです！

※当方にて適宜改行を入れさせていただきました。

↓ここから管理人返信↓

もうね、“ドラマ” と “現実” の区別がつかない…

リアルもフィクションも全部十把一絡げ（じっぱひとからげ）な＜令和人間＞へのクドカン流の警告でもあり、皮肉を込めまくったのが今作じゃないですかね。

だから、当然「昭和」も「令和」も誇張して描く。

デフォルメするから “フィクション” に見えて、フィクションだから笑え飛ばしても平気だし、重く受け止めるのもアリなわけだと思います。

とにかく、一億総警察、監視社会、全員が間違い探しだらけで…

「正しいことをやらない、やれない人」はツッコんで、バカにして、こき下ろす社会。

その反面、昭和は、良くも悪くも「俺は俺、私は私」であり、流行には偽物でも右に倣えの中流意識で道の真ん中を歩けた時代で。

スマホも携帯電話もネットもない時代だからこそ、人伝の噂話こそが世界基準だった曖昧な時代の良さが見えたような気がしました。

私なんて「脳内は昭和のまま」なので、パッドでの注文は未だに不慣れです…

「死ぬこと以外かすり傷」的な考え方って必要だと思います…（笑）

皆様、またのご来訪を心よりお待ちしております。

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[25回]

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連続テレビ小説「ブギウギ」（第82回・2024/1/29）感想

2024/01/29 (Mon)11:05:44 ドラマ

NHK総合・連続テレビ小説『ブギウギ』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram、YouTube

第82回／第18週『あんたと一緒に生きるで』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

昭和２２年１月。愛助（水上恒司）が大阪の療養所にいるまま、スズ子（趣里）は静かな正月を迎える。二人は、手紙のやり取りをしてお互いを支え合っていた。妊娠しているスズ子だったが、看護師の東（友近）の付き添いで、ジャズカルメンの稽古を開始する。一方、愛助はトミ（小雪）に、スズ子と結婚して生まれてくる子供の父親になりたいと話をするが…。そして、二人は離れ離れのまま、ジャズカルメンの幕が切って落とされる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

原作：なし
脚本：足立紳（過去作/六畳間のﾋﾟｱﾉﾏﾝ,拾われた男 Lost Man Found） 第1～8,11,12,17,18週
　　　櫻井剛（過去作/表参道高校合唱部!,あなたのﾌﾞﾂが､ここに） 第9,10,13～16週
演出：福井充広（過去作/てるてる,家族純情きらり,ﾐｽ･ｼﾞｺﾁｮｰ） 第1,3,8,13,14週
　　　二見大輔（過去作/半分､青い｡,なつぞら,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ） 第11,12,18週
　　　泉並敬眞（過去作/まんぷく,ｽｶｰﾚｯﾄ,ｶﾑｶﾑｴﾌﾞﾘﾊﾞﾃﾞｨ） 第2,7,9,17週
　　　鈴木航（過去作/あさが来た,べっぴんさん,ｽｶｰﾚｯﾄ） 第4,5週
　　　盆子原誠（過去作/ｶｰﾈｰｼｮﾝ,とと姉ちゃん,おちょやん） 第6,10,15,16週
音楽：服部隆之（過去作/王様のﾚｽﾄﾗﾝ,翔太の寿司,のだめｶﾝﾀｰﾋﾞﾚ,HERO）
歌劇音楽：甲斐正人（過去作/映画｢蒲田行進曲｣(松竹/1982)劇伴担当）
舞台演出：荻田浩一（過去作/元宝塚歌劇団所属の演出家）
ロゴ・OP映像：牧野惇（過去作/東京ﾊﾟﾗﾘﾝﾋﾟｯｸのｵ-ﾌﾟﾆﾝｸﾞ映像）
主題歌：中納良恵・さかいゆう・趣里「ハッピー☆ブギ」
語り：高瀬耕造（NHK大阪アナウンサー）
「土曜日版」ナレーション：北郷三穂子（NHK大阪アナウンサー）
制作統括：福岡利武（なつぞら,青天を衝け）
　　　　　櫻井壮一（過去作/おちょやん,あなたのﾌﾞﾂが､ここに）
※敬称略

山下の家族を登場させたら良いと思うが

ウチのブログに来てくれて、ありがとさん。
（私のブログに来てくれて、ありがとうございます。）

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、ウチが管理人のみっきーやで！
（「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、私が管理人のみっきーです！）

先日、山下（近藤芳正）の家族（娘や孫）がいるなら利用して、世界を広げるべきと書いたが。

どうやら、登場させるつもりなさそうだ。

お笑い芸人の新キャラは＜二人も＞必要以上に推す割(くせ)に… だ（苦笑）

だって、山下が出産経験のある娘に付き添いを頼むとか。

いっそ、友近さんを山下の娘で看護師設定して、近藤芳正さんと本格的コント仕立てにしたら良かった… まあ、いいや。

"生きている人間" を描こうという演出意図が伝わった

気になったことを「まあ、いいや」と処理できたのには理由がある。

それは、演出家が交代したことで、先週の “イッツアスモールワールド＝ちっぽけな世界” に変化があったから。

アバンタイトルはそうでもなかったが。

全体的に、室内から室内への転換、スタジオセットからスタジオセットへの転換なのは変わらない。

例えば、大阪の療養所への転換は、愛助（水上恒司）が操作するレコードプレーヤーのアップで。

産院は、医師が触診するスズ子（趣里）のお腹のアップで。

病室では、トミ（小雪）を愛助の背中向きにし、更に立ちと座りで高低差をつけて、奥行きだけでなく立場の強弱も表現。

更に先週は（恐らく）一度も無かった？ 病室前の廊下を使った “病人(本人)には見せたくない表情” を盛り込んだ。

そのほかにも、短絡的に手紙のアップから始めずに、門の外に郵便物を取りに行く様子を入れ込んだりと。

“生きている人間” を描こうという演出意図が伝わってきた。

申し訳ないが、脚本だけみれば、先週同様に「セリフの列挙」「出来事の箇条書き」で、何ら変化はない（困）

しかし、映像として、“生きている人間” が話して動いていることが伝わるだけで、不思議と “物語” に見えてくるのだ。

逆にいうなら、物語に見えるから、スズ子たちが劇中で生きているように映るのだ。

こういう演出ができるディレクターがいるのは、今作にとって朗報だと思う。

序盤の稽古風景と、中盤の愛助愛聴のレコードが良かった

さて、もう少し褒めてみよう。

今回で思いのほか良かったのが、序盤の稽古風景と、中盤の愛助愛聴の『ラッパと娘』のレコードだ。

繰り返しになるが、戦後の日本のエンターテインメント業界を描くドラマなら、やはり “歌” の要素は、短い尺でも良いから盛る込むべき。

先週はそれをやらなかった。

別に稽古やレコードでなくても良いのだ。

それこそ、スズ子の鼻歌でも、街中で流れるラジオでも、ご近所さんの話題でも、やっぱり “歌” を感じさせる表現は工夫して盛り込んでほしい。

死よりも"生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ"を強調

そのほかにも、評価したい描写はある。

新年の挨拶に来た山下とスズ子が囲んだちゃぶ台の上の、数枚の読んだままの年賀状や。

縁側で愛助からの手紙を読むスズ子の目前には、ぶら下がった洗濯物が風でゆらゆら。

その直前でも、郵便箱を開ける音や、手紙を開く音、小鳥のさえずりなどの生活音や効果音が劇伴に埋まらないように調整されていた。

その後の舞台『ジャズカルメン』の中継場面も、アップを減らして引きの画を多めにし、あくまでも “舞台の成功” を強調した。

やはり、第1話のナレーションで “未婚の母” と種明かしをしているのだから、愛助がどうなるのかは推して知るべしだ。

だからこそ、そう奇しくも昨日私が投稿した下記の記事にも通じること…

妹が亡くなって１週間… 生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ http://dmesen.blog71.fc2.com/blog-entry-14787.html

そう、「生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ」ということなのだ。

だから、スズ子が、愛助が、昭和のエンターテインメント業界に “生きている” ように＜映像で見せて（show）魅せる（fascinate）べき！＞で。

そのことを重んじる脚本と演出になっているのは正しい描写なのだ。

月曜日でこれだけ正しく描写できるなら、多少気になることも不問にできるレベルだ。

今週は期待できそうだ。

あとがき

セリフだらけ、アップだらけ、室内だらけだったら、テレビドラマにする意味がないです。

やはり、生きているキャラクターが見えて喋って語って、動いて歌って踊るから意味も価値もある。

今週の演出担当は、付き人・小夜（富田望生）と愛助が絡んだ第11,12週担当の二見大輔さんなので、歌とあまり関係ない週でしたから、やる気が出たのかも（笑）

今回、今週はそのことをやってくれそうなので、一気に巻き返してくれるのを期待したいですね。

みっきー's ブギウギ（第29回）

先週は、ちょっとシリアスな感じになってしまった「みっきー's ブギウギ」（謝）

今回は、久し振りにお菓子ネタです。

昨日は先々週亡くなった義伯父(ぎはくぶ)の話… ではないです。

昨日は遺産相続のお話があって妻方の親族会議がありまして。

まあ、とにかく疲労困憊したわけです（笑）

そこで、妻と帰宅途中にスーパーに寄って、「みたらし団子」と「磯部団子」を買いました。

まっ、それだけのことなんですど（汗）

やっぱりお団子にはコーヒーより渋めの緑茶ですよね。

と言っても、我が家は日本茶販売の「宇治抹茶入り緑茶ティーバッグ」なんですけど。。。苦いのが苦手な私も味わえる日本茶です。

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結びに

ほんなら、また来てな。
それでは、また来てね。

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さよならマエストロ～父と私のアパッシオナート～（第3話・2024/1/28）感想

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[26回]

これまでの感想を読む

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2024/01/29 (Mon)09:18:02 ドラマ

2024/01/30 18:00 記事更新

TBSテレビ系・日曜劇場『さよならマエストロ～父と私のアパッシオナート～』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram

第3話『田園コンサートの奇跡』の感想。

俊平（西島秀俊）はコンサート開催を提案するが、市の圧力でホールが使えなくなった。さらに、オケ内で口論が勃発。チェロの蓮（佐藤緋美）はミスを責め立て、トランペットの大輝（宮沢氷魚）が練習を途中で抜けてしまう。険悪な雰囲気の中、俊平は思わぬ場所での演奏を提案する。一方で、俊平は晴見フィルの活動を妨害するようなことをさせられる響（芦田愛菜）を案じ…。
---上記のあらすじは、公式サイト等より引用---

原作：なし
脚本：大島里美（過去作/花燃ゆ,凪のお暇,妻､小学生になる｡）
演出：坪井敏雄（過去作/凪のお暇,ｶﾙﾃｯﾄ,わたﾅｷﾞ,妻､小学生になる｡） 第1～3話
　　　富田和成（過去作/ﾏｲﾌｧﾐﾘｰ第5話のみ）
　　　石井康晴（過去作/逃げ恥,ﾗｽﾄﾏﾝ-全盲の捜査官-,ﾌｪﾙﾏｰの料理）
　　　元井桃（過去作/※地上波ﾄﾞﾗﾏ演出歴なし）
音楽：菅野祐悟（過去作/ﾃｾｳｽの船,危険なﾋﾞｰﾅｽ,罠の戦争,ゆりあ先生の赤い糸）
撮影監督：神田創（過去作/怪奇恋愛作戦,ｶﾞｰﾙｶﾞﾝﾚﾃﾞｨ,罠の戦争,鎌倉殿の13人）
音楽監修：広上淳一（東京音楽大学教授）
全面協力：東京音楽大学
料理監修：vita（過去作/下剋上球児,いちばんすきな花,ゆりあ先生の赤い糸,ﾏｲ･ｾｶﾝﾄﾞ･ｱｵﾊﾙ,ﾌｪﾙﾏｰの料理,ﾄｸﾒｲ!警視庁特別会計係,うちの弁護士は手がかかる）
主題歌：アイナ・ジ・エンド「宝者」
※敬称略

「障がい」の表記について

当ブログでは、人や人の状態を表す場合、原則「障がい者」「障がい」と表記としています。
※法令、条例、規則などからの引用や固有名詞は対象としていません

テレビドラマ、『日曜劇場』として気になった３つのこと

今回は、これまでの経緯をうまく捉え、 “連ドラ” の一話として良くできていた。

だが、その前に、テレビドラマ、『日曜劇場』として気になったこと。

１つは、画面処理について。

今回劇中で幾度かスマホの文字を視聴者に読ませる表現が含まれたが。

昨今の多様な視聴環境を考えたら、洋画や海外ドラマのようにテロップ処理を入れたらどうかと？

２つめは、今作こそ視覚障害者に向けた解説放送、音声による文字情報の読み上げをやってほしかったなと。

今回の “ピッチ” の件なんて、聴覚に鋭敏とされる方々だからこそ劇中キャラと共感できた部分だったかもしれないと思うから。

だって、『日曜劇場』枠は『ラストマン―全盲の捜査官』で前例、成功例があるわけだから、積極的に採用して良いと思う。

【追記 2024/01/30 18:00】
読者様からの情報で「解説放送あります」との情報をいただきました。私は私のHDD録画データに録音されていないので「なし」と思いました。
調べると「ネット配信版」に【解説放送版】がありました。

【解説放送版】さよならマエストロ～父と私のアパッシオナート～ | 無料見逃し配信中！＜TBS FREE＞

訂正、加筆いたしました。

３つめは、25分過ぎで響（芦田愛菜）が夏目俊平（西島秀俊）に反発するシーンのハンディ(手持ち)カメラ映像って必要だったの？ということ。

芦田愛菜さんの迫真の演技は認めるし、それを強調したい演出意図、営業的作戦は理解する。

だが、あのような “手振れの映像” で響きの動揺を描写するのは、意味付けや技術を “逃げ” で使っているのと同じことでは？

あそこは、前後のカット同様にカメラを三脚に固定して、芦田さんの演技だけに集中したほうが得策だったと私は思う。

全体の構成、流れにあまり矛盾がなかった

さて、ここからは良かった部分を褒めよう。

まず良かったのは、全体の構成、流れにあまり矛盾がなかったことだ。

序盤でのプロオーケストラのフルート奏者・倉科瑠李（新木優子）が俊平に。

倉科「早速新メンバーと不協和音起きてますね」
俊平「それもまた… 面白い音です」

ここが良いのは、主人公が “メンバー間に不協和音” が起こることを予測し、期待し、利用しようとしていることを明確に表現したことだ。

次の解釈は今作というより私の拙い音楽経験によるもので一般論とは違うと思うが。

不協和音は、同時に鳴ると不調和で融合しない不安定な感じの和音のことで。

不協和音のままではとにかく落ち着かないため、何とか協和音につなげて安心したくなる。

従って、楽器等のチューニングを合わせるのは大前提だが。

不協和音の次に協和音を置いて、響きを安定させるのが王道（だと思う）。

で、今回では幼い頃から音楽の才能に恵まれ周囲の期待を背負って挫折した・チェリスト・羽野蓮（佐藤緋美）がピッチが合わせられないトランぺッター・森大輝（宮沢氷魚）にやったのが “それ” だ。

映像（音響）表現として、もう少し分かりやすくしても良かったと思うが。

まあ、本当にちょっとしたニュアンスの部分だから、リアルを考えたら妥当ではあるが。

テレビの中と外の"融合"であり、簡単にいえば"共感の共有"

もう一つ良かったのが、ピッチの悪さに当然気づいている倉科が羽野に告げるひと言だ。

倉科「何で… わざわざひん死の晴見フィルに来たわけ？
　理由は一つでしょ？何かが起こりそうだから私はね」

かなり漠然とした言い回しだが、今作の進む方向を提示しているとも受け取れる。

いや、ほとんど結末は見えているし、想像の域を出ないとは思う。

でも、だからこそ “何かが起こりそうだから” 視聴者も見続けるのだ。

そう、これが、テレビの中と外の融合であり、簡単にいえば “共感の共有” だ。

このことによって、視聴者が楽団員の一人になり、夏目家の一員の気分で楽しめる… というわけだ。

ベートーヴェン先生の教えが音楽を愛する人々を変えていく

最後に、私が最も好きだったセリフと映像部分。

道の駅でのゲリラライブに自転車で向かう響のモノローグだ。

響(M)「私を頑固で人間嫌いだと思う人々
　本当のことをあなたたちは知らない
　私は人々から遠ざかり
　孤独な生活を送らねばならなかった
　私はどうしても言えなかったのだ
　もっと大きい声で話してください
　私は耳が聞こえないのですからと
　ああ神の摂理よ
　喜びの一日をもう一度私にください」

まず、このモノローグが直後のデュオ演奏でのチェロの羽野の心情の鏡になっているのはお分かりのとおりで。

演奏直後の二人が顔を見合わせるカットで、トランペットの大輝にもつながることが分かるし。

更に最後まで見れば、響にもつながっていることが分かる。

そう、ベートーヴェン先生の教えが、思いが、人生が音楽を愛する人々を変えていくことを、先述の「何かが起こりそうだから」にリンクさせているわけだ。

なかなか、巧みな構成だと思う。

大島里美氏の人の心の描写のうまい脚本が光った

映像的、ドラマ的には、作り手たちの目論見も、SNS等の話題性も。

親が超有名なミュージシャンである “二世俳優” の共演… と、なるのだろう。

もちろん、音楽がテーマの作品だから、音楽一家の一員同士の共演は悪くない。

しかし、それ以前に、プロレベルとデキる素人の不協和音を丁寧に描いたのは大いに評価できる。

そこに主人公の役割がきちんといかされて、不協和音を協和音に改善したもマエストロの役割を描いた点で実にいい。

この辺は、『凪のお暇』『妻、小学生になる。』などを手掛けた大島里美氏の人の心の描写のうまい脚本が光ったと思う。

あとがき

今回の不協和音のくだりで、既視感が漂っていた『リバーサルオーケストラ』との違いが明確になったと思います。

どちらかというと “一発逆転” 的な展開が見所だった『リバオケ』とは違い。

コツコツと一人ひとりの変化を描写して積み上げる感じですもんね。

恋バナもほぼ無いですし。

これまでよりも、遅い反抗期の娘と情けない父のくだりも薄まって。

個々の努力が大きな実を結ぶという『日曜劇場』らしい作品になってきたと思います。

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イノセンス(Innocence) ／ケニー・G

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【これまでの感想】
第1話第2話

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[25回]

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妹が亡くなって１週間… 生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ

2024/01/28 (Sun)13:25:06 徒然日記

1月23日(火)、荼毘に付されました

長文ですが、よろしかったら読んでみてください。

先々週の金曜日（1/19）の夜、突然、姪から電話で「お母さんが危篤になっちゃった。お兄ちゃんたち、病院に来れる？」と。

急いで千葉県から埼玉の病院に着いたのが、電話から２時間後。

容体が落ち着いたので、妹の旦那さんだけ残して、私たち夫婦は姪を自宅に送ってそのまま帰宅。

妻と「ひと眠りして病院に行こう」と話していると、妹の旦那さんから「3時55分、逝(い)きました」との電話。

看護師の妻が言うに「難病だけど、全身性エリテマトーデスは死に直結するような病気じゃないんだけど」と。

ところが、全身の免疫力が低下する病気なので、ほかの感染症にかかると結構厄介だそうで。

結果的に、臓器不全で亡くなりました。

それから、粛々と葬儀の段取りが決まって。

1月23日(火)、荼毘に付されました。

実は今秋が父の十三回忌で、来秋が母の七回忌。

そう、12年間で、両親と妹を失いました…

「お父さん、お母さん、妹をそっちに連れて行っちゃうの早過ぎるよ…」ですよね。

長男最優先な封建主義の家で、つらい思いをした妹…

妹は私の３つ年下で、50代半ばでした。

中学生くらいまでは同じ部屋の二段ベッドの上と下で寝ていましたが。

仲が良くないきょうだいでした。

というのも、我が家は古い封建主義の家で何事にも「長男（＝私）最優先」でした。

妹はいつも「お兄ちゃんはできるのに…」と比較されたので、私のことを大嫌いだったと思います。

また、小学生の妹は天然パーマなのを何度も学校から指導を受け、うんざりしていたのは覚えています。

小学生時代のつらさを中学にぶつけまくったスケバン時代

私は小学校では優秀で（笑）それでいじめに遭い、中学は越境入学（他区の公立中学）しました。

３つ下の妹は地元の中学に入学して、兄と完全に離れたわけです。

当時は、80年代の校内暴力が盛んなころで、小学校への怒りを中学にぶつけていた（と思います）

まあ、当時は東京の下町○○区では有名なスケバン長でした（汗）

坊主頭に学ランで電車通学していた私は駅からの帰り道で、何度も映画やドラマに出てくるようなヤンキーたちに見つかると「○○さんのお兄さんですよね、お疲れ様です」って道を開けてもらったものです。

しかし、封建主義の権化だった祖母たちが亡くなると、自然とスケバンは治まりました。

結婚を機に、幸せな人生が始まって…

二十歳を過ぎたころからは、急にきょうだいが仲良くなって、母が経営するスナックを一緒に手伝いましたね。

そのお店のお客さんとして来ていたのが、妹の旦那さんでした。

妹の13歳上で、私の10歳上で。

周囲の人は、「旦那さんが先に死ぬんだから不幸になるよ」なんて言ってましたね。

妹は、「私が看(み)取るから大丈夫。一緒に年をとりたいんだよね」と聞く耳持たずで。

その後、私は10歳も年下の義弟からも「お兄さん」と呼ばれることになりました。

妹夫婦には一人娘が生まれて、子どもがいない私たち夫婦にとっては、「疑似長女」となりました。

その姪も2020年春に結婚が決まりましたが、このあたりから何となく歯車が狂い出した気がしますね。

コロナ禍を境に、きょうだいで会う機会がめっきり減って

コロナ禍の影響で、姪の結婚式は３度にわたって延期され、結局結婚式は開かれず仕舞いで。

でも、姪っ子はお母さん大好きっ子なので、妹の家から徒歩10分のところに新居を構えました。

その後、2021年5月に姪に子どもが生まれて、私にとっては「姪孫（てっそん）」「大姪（おおめい）」となり。

私は逆に「伯祖父（おおおじ）」になりました。

そのころは、妹は幼稚園の給食の調理補助、姪は高齢者施設の職員で家には乳飲み子がいて、私の妻は看護師ってことで。

コロナやインフルにかかると周囲に迷惑をかけるので、直接会うことはほとんどなくなりました。

ちょうど、母が亡くなり実家も手放したので “象徴的に会う場所” がなくなったのもあるんですけどね。

だから、妹と会うのは「サザンオールスターズのライブの時」くらいになってしまったわけです。

アナログな妹は手紙や葉書、お花やプレゼントをくれました

そうそう、妹は生涯パソコン、携帯電話、スマホを持ちませんでした。

パソコンはともかく、携帯もスマホも… です。

本人曰く「別に困らない。私の近くには誰かいるもん」って。

ですから、よく手紙やハガキ、お花やプレゼントをくれました。

必ず、手書きのイラスト付きのメッセージカードを添えて）くれました。

で、妹が私と妻にくれた最後のハガキが年賀状になってしまいました。

個人情報が含まれるので全部はお見せできませんが、一部をご紹介させてください。

先日妹は、富士山とお日様と満月が大好きだった… と書きましたが、病室から見える富士山が嬉しかったのだと思います。

姪っ子は「お兄ちゃんはどうでもいいけど、○○には会いたがっていたよ」と聞きました。

前述のとおり、妹は偉そうな兄と比較されるのが大嫌いだったので、私が結婚したとき「優しいお姉ちゃんができて本当にうれしい」と言っていたんですよね。

本当につらいし悔しいけれど、楽しい思い出は忘れない

私以上のサザンファンだった妹、きっともっとサザンのコンサートに行きたかったと思います。

最後に一緒に行ったのが、5年前の40周年ツアーの東京ドームのアリーナ席でした。

コロナもあって、孫ともっともっと遊びたかったと思います。

骨上げのとき、姪孫が「ばーば、来ないの？」と何度も言っていたのがかわいそうで。

私は火葬場の庭園で、妹の遺影を持って姪孫と鬼ごっこをやりました。

これからは、妹の分まで遊んであげたいなと思いますね。

50代半ばって、本当に早いですよ。

担当医にだって「２週間ほどの入院で退院できますよ」と言われたのに、１か月後には帰らぬ人に。

年明けには完治して、夫婦で老後をエンジョイしてほしかったです。

最愛の娘と、その夫と、孫と、たくさんの思い出を作ってほしかったです。

もちろん、私ももっとたくさんの昔話をしたかったし。

妻と一緒にコンサートや旅行にも行きたかったです。

還暦のお祝いもやりたかったし。

なによりも、自宅に帰れると思って治療していたのに、帰ることができなかったのが本当につらいし、悔しい。

でも、希望をもって治療を頑張ったこと、一生懸命に生きたこと、たくさんの笑顔をくれたことは忘れない…）

悲しい時間があるから楽しく幸せな時間が本当にありがたい

私は心と体の健康のために、心療内科と内科と整形外科医から「朝起きたらウォーキングをしなさい」と指導されています。

不眠症から脱却できたのも、毎日15分間の朝散歩がきっかけで。

今は、大雨と台風の日以外は毎朝 50分から１時間の早歩きウォーキングを続けています。

その時は、基本は無心で、たまに音楽を聴いたりします。

でも、妹の死のあとは、何を聴いても息が詰まった感じになるし、妙に悲しくなって、立ち止まるようになりました。

しかし、父のときも、母のときもそうだったように…

私は、妹の死の悲しさとずっと生きていくって分かってます。

だって、父の死だって12年たっても忘れられないですから。

もちろん、母の死も。

だから、悲しいのは当たり前で。

悲しい時間があるから、楽しい時間や幸せな時間が本当にありがたいんです。

「故人を阿弥陀様の力でどうか極楽へ」という願いを込めて

それこそ、仕事とか趣味とか何かに夢中になっているときは、悲しみはおろか、大切な人の死だって忘れて没頭します。

逆に、仕事や私生活がうまくいかないときは、大切な人の死を思い出して、「死んだら楽になるかな？」「もう誰も助けてくれないなぁ」と落胆します。

結局、私なんて、身勝手な人間なのです。

そのことを自覚していれば、人生を平均化するつもりで「笑う門には福来る」と思えるし、そう思うようにしています。

母が亡くなってから続けているのが、朝のウォーキングから帰ったら、家の前でお日様に向かって「南無阿弥陀仏」を10遍唱えます。

我が家は先祖代々「浄土宗」で、浄土宗では「十念」と呼びます。

「南無阿弥陀仏」の意味や解釈は諸説ありますが、私は和尚様の教えどおり、普段は「私は阿弥陀様にすべてお任せします」といった意味で。

誰かが亡くなったときは、「故人を阿弥陀様の力でどうか極楽へ」という願いを込めて唱えます。

そうすると、言葉では言い表せない気持ちがちょっぴり解放された気持ちになります。

しばらく、続けるしかなさそうです…

「生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ」と再確認

今年、元旦に令和6年能登半島地震が発生しました。

家族が、友人が、知り合いが、亡くなった人も多いと思います。

それこそ、世界に目を向ければ、世界のどこかで今も紛争やテロ、災害や飢餓が起こっていて。

国も政治も宗教も肌の色も性別も年齢も関係なく、愛する人、大切な人が突然亡くなることは、残念ながら現実に起こり得ることです。

そんなことが自分の身近で起きた時に「人は死ぬんだ」ということが、胸にグサッと突き刺さります。

と同時に、「生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ」と再確認します。

どうして、自分はこうやって妹の死をブログで語るのか？

先日も、下記の投稿をしました。

未明に、いとしの妹が旅立ちました…

そして今回も。

どうして、自分はこうやって妹の死をブログで語るのか、考えてみました。

理由の一つに、先日も書いたとおり、文字でアウトプットする（テキストで一度まとめる）ことで心の整理ができると思うからです。

でも、更に考えると、愛する人、大切な人を失ったとき…

残された者が自分の人生をどう生きるのか？

亡くなった人と生きるはずだった、生きたかった年月をどう生きるのか？

それを考えることが、亡くなった人を思うことであり、その人への祈りでもあるのかなと。

肉体はなくなっても、妹の命、魂は私の中で生きているんです。

話せないし、会えないし、語りかけもしてくれないけれど。

妹と過ごした時間は消えないし、いつでも私の中に生きていて、思い出すことできるんです。

家族が病に臥(ふ)せたり、病を得て、闘病の果てに旅立っていくことは、誰の身にも起こることだと思います。

でも「悲しい」「寂しい」「悔しい」と思うと同時に、妹と過ごしたかけがえのない時間があったことをこうやって伝えることで…

「生きていることが何よりも尊く奇跡なんだ」とお伝えできるんじゃないかと思うんです。

あとがき

結局、な～んもまとまりませんでした。

でも、また少し、心の整理ができました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

最近買った、ケニー・Ｇの新譜『イノセンス』を聴きながら書きました。
サザンを聴きながらだと悲しすぎて書けないので…

ララバイ(子守唄)をテーマに掲げた作品集で、思い出の数々が思い浮かぶような不朽の名作や新曲が詰まっています。

最近ちょっぴり疲れているなと思う方に是非おすすめします。

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最後になりますが、妹も大好きな、昨年サザン45周年で桑田佳祐さんが言った下記の言葉なので、場違いに感じるかもしれませんが残させてください…

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”