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朝ドラ「虎に翼」多岐川幸四郎（滝藤賢一）のモデルは“家庭裁判所の父”宇田川潤四郎さん？「花子とアン」との意外なご縁も！

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2024/06/08 (Sat)17:06:48 ドラマ

第11週は、‘タッキー’こと多岐川幸四郎(滝藤賢一)が登場

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

いよいよ…

‘ライアン’こと久藤頼安（沢村一樹）
‘ハーシー’こと小橋浩之（名村辰）

に続いて、個性的なキャラクターが登場する。

その名も、‘タッキー’こと多岐川幸四郎（滝藤賢一）だ。

個性的なサブキャラクターで年表の1行1行をドラマチックに

公式サイトや番宣を見ると。

多岐川幸四郎（滝藤賢一）は、家庭裁判所設立準備室に異動することになった寅子（伊藤沙莉）の上司で室長。

寅子らと共に家庭裁判所設立に奔走するが、相当な変わり者という設定だ。

先日の投稿で。

ヒロイン・猪爪寅子（伊藤沙莉）のモデルとなった「三淵嘉子さん」が女性弁護士になってからの人生はいわゆる「順調な出世街道」のため…
“ドラマ” としては、それなりの工夫をしないと「年表の箇条書き」に陥りやすいと書いた。

そこで、今作の脚本家、制作統括、演出家らが考え出したのが。
個性的なサブキャラクターで年表の一行一行をデフォルメしつつ、ドラマチックに、分かりやすく描くことだと推測している。

この推測は、「新章」「裁判官編」が始まった6月3日からの第10週『女の知恵は鼻の先？』における、久藤と小橋でほぼ証明されたのではないかと思う。

そこで、前置きが長くなったが、この‘タッキー’こと多岐川室長のモデルについて書いてみる。

三淵嘉子さんが最高裁家庭局の事務官に任命された際の上司

これまた、公式には「寅子＝三淵嘉子さん」以外の “モデルやモチーフ” は認めていない（と思う）ので、あくまでも推測のレベルであることをお断りしておく。

ではまず、三淵嘉子さんの「司法史上の年表」のお話をする。

三淵嘉子さんは、日本の司法史において、昭和24年（1949）に日本初の最高裁判所事務総局家庭局（通称「最高裁家庭局）で局付の事務官に任命された女性だ。

その際の直属の上司が、のちに「家庭裁判所の父」と呼ばれる「宇田川潤四郎さん」だ。

因みに、三淵さんは翌年の昭和25年（1950）に、最高裁から命じられ、家庭裁判所の制度を学ぶためにアメリカに派遣されている。

寅子の上司となり、ともに家庭裁判所の設立準備にまい進

宇田川さんは、昭和24年（1949）1月に、初代最高裁家庭局長に就任した。

先述のアメリカ派遣で三淵さんは、アメリカには女性による法律団体があることを知り、昭和25年（1950）に女性の弁護士・裁判官・検察官に大学の法学研究者も加えて10余名で日本婦人法律家協会を設立する。

のちの昭和54年（1797）には会長に就任し、現在の協会員数はおよそ 900名。

その日本婦人法律家協会の設立の際の記念講演が、宇田川さんの「日本における少年問題」だったそうだ。

下記のNHKの公式アナウンスには次のような記載がある。

2024年度前期連続テレビ小説「虎に翼」新たな出演者発表第5弾

寅子の上司となり、ともに家庭裁判所の設立準備にまい進する。かなりの変わり者で、寅子を呆れさせるが、家裁への情熱は誰にも負けない。

宇田川さんは、朝ドラ「花子とアン」との意外なご縁も！

実は、宇田川さんも、かなり変わった人だとの記録が残っている。

例えば、日本の司法制度上にはなかった「家庭裁判所」を広く全国に普及させる広報活動に選んだのが、NHKのラジオ番組。

宇田川さんが実際に広報活動に利用したラジオ番組が、GHQの指導を受けて制作された婦人向け教育番組『婦人の時間』だ。

ここからが、表題にも書いた『「花子とアン」との意外なご縁も！』の解説だ。

昭和7年（1932）から昭和16年（1941）11月まで、JOAK（当時の NHK）のラジオ番組『子供の時間』の一コーナー『コドモの新聞』に‘ラジオのおばさん’として人気を博したパーソナリティーが、村岡花子さんだった。

村岡花子さんは、朝ドラ『花子とアン』のヒロインのモデルとなったから、知っている人もいるのでは？

その当時の村岡さんの人気は寄席芸人や漫談家に物真似されるほどで、多くの女性の憧れでもあった。

そんな村岡さんに憧れて、昭和19年（1945）に NHKに入局した女性アナウンサー・武井照子さんが『婦人の時間』の担当だった。

武井さんは、既に今でいうラジオパーソナリティーの先駆者的な存在だった翻訳家で児童文学者の村岡花子さんや…
自伝的小説『放浪記』（←森光子さんの演劇で有名な演目）で一躍人気作家となった林芙美子さんらの指導を仰いだという。

また、時々、村岡さんは『婦人の時間』にも出演されたそうだ。

今後の『虎と翼』で、ラジオ番組『婦人の時間』をモチーフにした場面があるか分からないが。

『虎に翼』と『花子とアン』も世界観がつながっているということだ。

「水行」「滝行」「ピンピン体操」を行った宇田川さん

また、書籍『家庭裁判所物語』によると、宇田川さんが「水行(成田山新勝寺では‘すいぎょう’と読む)」や「滝行(たきぎょう)」、「ピンピン体操」を行ったそうだ。

とにもかくにも、芸能界でも有名なオシャレイケメンの滝藤賢一さんが、チョビヒゲをつけてふんどしで滝行って（笑）

そもそも、滝藤さんが奇人変人なところが魅力なのに… 楽しみすぎる！

【参考文献】
三淵嘉子と家庭裁判所(日本評論社)
家庭裁判所物語(日本評論社)
三淵嘉子・中田正子・久米愛　日本初の女性法律家たち(日本評論社)

あとがき

既に「1/3」が終わっているんですね。

なんか、常にストーリーが前進し続けているので、「もう三分の一？」という気持ちです。

息切れすることなく、進んでほしいです…

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連続テレビ小説「虎に翼」（第10週・土曜日版・2024/6/8）感想

2024/06/08 (Sat)12:11:12 ドラマ

NHK総合・NHK BS・ﾌﾟﾚﾐｱﾑ4K／連続テレビ小説『虎に翼』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram

第10週『女の知恵は鼻の先？』の「土曜日版」の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

昭和２２年３月。新しい日本の憲法に希望を見出した寅子（伊藤沙莉）が向かったのは法曹会館。人事課にいたのは桂場（松山ケンイチ）だった。久藤（沢村一樹）の後押しによって司法省で働くことになった寅子は民法の改正案を読み、かつて共に法律を学んだ仲間たちを思い出す。民法が改正されれば多くの人が混乱すると語る神保（木場勝己）に、寅子は花江（森田望智）を思い出し、強く反対意見を言えない。一方、穂高（小林薫）は法の道へ導いて不幸にしたと詫び、新しい仕事を紹介しようとするが、寅子はそれを断るのだった。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

原作：なし
脚本：吉田恵里香（過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘）
演出：梛川善郎（過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのﾌﾞﾂが､ここに） 第1,2,4,7,10週
　　　橋本万葉（過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘） 第3,8週
　　　安藤大佑（過去作/とと姉ちゃん,となりのﾏｻﾗ,やさしい猫） 第5,6,9週
音楽：森優太（過去作/海の見える理髪店,あなたのﾌﾞﾂが､ここに,忘恋剤）
主題歌：米津玄師「さよーならまたいつか！」
法律考証：村上一博（明治大学法学部専任教授）
料理指導：赤堀博美（過去作/花咲舞が黙ってない,厨房のありす）
タイトルバック制作：シシヤマザキ（公式サイト新窓で開きます）
取材：清永聡（NHK解説委員:司法･事件･公文書管理･災害）
語り(本編)：尾野真千子（過去作/ｶｰﾈｰｼｮﾝ,長谷川町子物語,足尾から来た女）
語り(土曜日版)：山下誠一郎（過去作/Eﾃﾚ｢小雪と発酵おばあちゃん｣）
副音声解説：山崎健太郎（過去作舞いあがれ!,らんまん,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ）
制作統括：尾崎裕和（過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人）
※敬称略

これを「物足りない！」はイマドキでいうならカスハラ(笑)

私のブログに来てくれて、ありがとうございます。
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、私が管理人のみっきーです！

今週は、これまでと比べても、新章の第1週目であることから、かなりの情報過多。

その上で、「苦悩する寅子」「謙虚な寅子」「開眼する寅子」の七変化ならぬ三変化を描いた盛りだくさんな一週間だった。

従って、僅か「15分間のダイジェスト版」に集約するなんて、とてつもない苦労だし、所詮不可能なのだ。

だから、「本編」と比べれば内容が飛び飛びになるのは当然。

それこそ、「物足りない！」はイマドキでいうならカスハラというやつだ（笑）

そこで、私が「土曜日版」に期待したのは。

上記の「苦悩する寅子」「謙虚な寅子」「開眼する寅子」を、どの場面、どのやり取り、どのセリフを残して、「土曜日版」だけ見ている視聴者に提示して見せるのか？だ。

女性代議士・立花と、旧友・花岡のシーンの重要性

まず、予想どおりだった「苦悩する寅子」と「謙虚な寅子」は、次の場面だ。

‘ライアン’こと久藤頼安（沢村一樹）に送り込まれてきた寅子（伊藤沙莉）に、女性代議士・立花幸恵（伊勢志摩）が言い放つひと言と、久藤の返しだ。

立花「あなたもお偉い先生方に
　ビシッと言っておやりなさいな」
寅子「そうですよね…」
久藤「立花さんすばらしい人でしょう」
寅子「この人たちがいれば
　世の中は変わるんじゃないかと
　思えるといいますか…」
久藤「どうしてそんなにひと事なの？」

もちろん、細かいセリフは割愛されているが。

久藤が意図あって寅子を立花のもとへ送り込んで、その反応を見ようとしたのは見て取れる。

「苦悩する寅子」「謙虚な寅子」に「開眼する寅子」になるように動機付けをさせたのが、‘正義感の男’である花岡悟（岩田剛典）との再会の場面だ。

寅子「自分では
　何も変わってないつもりでいたけど
　やっぱり前とは違うみたい」
花岡「でも前も今も全部君だよ。
　どうなりたいかは自分で選ぶしかない。
　本当の自分を忘れないうちに。

残念ながら、「全部梅子さんの受け売りだけどね」はカットされていたが。

学生時代の寅子を知る花岡だからこその評価だ。

そして、次のひと言が「開眼する寅子」への大きなプッシュになるように編集されていた。

花岡が、久し振りに再会した‘法の世界の手ごわい先輩’こと桂場等一郎（松山ケンイチ）への吐露だ。

花岡「人としての正しさと
　司法としての正しさが
　ここまで乖離していくとは
　思いもしませんでした」

このセリフは、直接、寅子に言ったわけではない。

でも、このおもいを抱えていた花岡が言った「前も今も全部君だよ」だから、寅子の胸に響いた… という編集になっている。

「本編」では、ここまで花岡の言葉が寅子を動かしたような印象になっていない。

でも、ラストの「花岡の死」があるから、この編集もアリだと思う。

特に、「本編」を見た視聴者は花岡の言葉の重みを本編よりも強く感じたと思う。

全体的に説明も描写も不足しているしインパクトも弱いが…

そして、「開眼する寅子」は、穂高重親（小林薫）の「不幸」のひと言から始まる。

寅子「無理に法律を学び続けたわけじゃない。
　戦争や挫折で
　いろいろと変わってはしまったけれど
　でも私は好きでここに来たんです！
　それが私なんです」

正直いうと、「苦悩する寅子」「謙虚な寅子」「開眼する寅子」のいずれも、説明も描写も不足しているし、インパクトも弱い。

でもそれは、濃厚な「本編」と比べるからだ。

ダイジェスト版として冷静に見れば、「苦悩する寅子」→「謙虚な寅子」→「開眼する寅子」の段取りは踏んでいるし、違いも見えている。

ただ、何度も書くが “比べてしまうと” なのだ。

だから、「ちょっと物足りないのでは？」は心に封印して、「よくまとめた」と評価したいと思う。

あとがき

今週もですけど、「本編」を見ましょう！

それしかないですね。

かといって、「土曜日版」の尺を伸ばせば、「本編」の意味がありません。

ここは難しい判断ですが、思い切るなら「週５放送」を今作に限って「週６放送」にしてほしいくらいです。

土日が忙しいので難しいかもしれませんが。

来週から登場する‘タッキー’こと多岐川幸四郎（滝藤賢一）のことを月曜までに投稿できれば… 無理かな。

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季節のない街 (新潮文庫) 新潮社 2019-6-26

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季節のない街（第10話／最終回・2024/6/7）感想

2024/06/08 (Sat)11:03:05 ドラマ

テレビ東京系・ドラマ25『季節のない街』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram

第10話／最終回『とうちゃん』の感想。

なお、原作(小説)である山本周五郎『季節のない街』は既読。
また、2023年8月9日より、Disney+で全10話配信済みですが、そちらは未鑑賞。
しかし、名匠・黒澤明監督の不朽の名作映画『どですかでん』（東宝/1970年）は、数十回鑑賞済みで、Blu-rayも所有します。
黒澤明監督『どですかでん』 [Blu-ray DVD]

ショベルカーが街に搬入され、仮設の取り壊しが迫ってきた。徐々に立ち退き交渉に応じる住民が増えていく中、子だくさんの良太郎（塚地武雅）とみさお（前田敦子）の夫婦は断固拒否の姿勢を崩さなかったが、三木本（鶴見辰吾）らの嫌がらせを受けてしまう。そして迎えた、街の最後の日、お別れ会の最中にかつ子（三浦透子）が良太郎の子供に呼び出されるとそこには…。半助（池松壮亮）大暴れ、六ちゃん（濱田岳）大暴れ、そしてかつ子は大笑い。季節のない街、いったいどうなる！？
---上記のあらすじは、公式サイト等より引用---

原作(小説)：山本周五郎『季節のない街』
企画：宮藤官九郎（過去作/初企画作品）
脚本：宮藤官九郎（過去作/あまちゃん,俺の家の話,不適切にもほどがある!）
演出：宮藤官九郎（過去作/木更津ｷｬｯﾂｱｲう,ぬぼれ刑事） 第1,2,4,5,最終話
　　　横浜聡子（過去作/ﾊﾞｲﾌﾟﾚｰﾔｰｽﾞ2017､2018,ひとりｷｬﾝﾌﾟで食って寝る） 第3,7,8話
　　　渡辺直樹（過去作/いだてん~東京ｵﾘﾝﾋﾟｯｸ噺~,映画｢ﾄﾞﾗｲﾌﾞﾏｲｶｰ｣助監督） 第6,9話
ＣＰ：濱谷晃一（過去作/警視庁ｾﾞﾛ係ｼﾘｰｽﾞ,ｼﾞｬﾝﾇの裁き）
撮影：近藤龍人（過去作/映画｢万引き家族｣,映画｢ある男｣,映画｢怪物｣）
美術：三ツ松けいこ（過去作/映画｢海街diary｣,映画｢溺れるﾅｲﾌ｣,映画｢万引き家族｣）
衣装：伊賀大介（過去作/俺の話は長い,大豆田とわ子と三人の元夫,17才の帝国）
音楽：大友良英（過去作/あまちゃん,いだてん,しもべえ,ﾄｸﾒｲ!警視庁特別会計係）
※敬称略

宮藤官九郎氏が「僕は好きですけど」をぶっこんできた作品

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

【基本情報】
　●原作(小説)は、既読。
　●Disney+で全10話配信済みは、未鑑賞。
　●同じ原作の黒沢明監督『どですかでん』は、大好き！
　※原則、原作(小説)、映画とは比較、ネタバレやりません。

大ラスで、編集者（前原滉）が半助（池松壮亮）の書いた自伝的小説？『季節のない街』に対して。

編集者「ただコンプライアンス的に？
　がんもどき？かいわれちゃん？
　女性蔑視が引っ掛かりました。
　僕は好きですけど」

今作の Disney+での放送が 2023年8月9日より全10話だから、TBSドラマ『不適切にもほどがある!』よりも先に放送されていたから、『ふてほど』でもさらにコンプラ無視で（笑）

いや、きっと番組企画自体はもっと前からで、同時期の可能性もあるから、コロナ禍が落ち着きそうなときを見計らって、宮藤官九郎氏が「僕は好きですけど」を立て続けにぶっこんできた可能性はある。

ちょっとした欲が時に結束力にもなるし、対立の火種になる

ついに、最終回だ。

原作の山本周五郎の小説『季節のない街』、それをもとにした黒澤明監督の映画『どですかでん』とも違う結末が用意された今作の最終回。

突然街へやってきた、謎の持病「けけけけふん」がある気品ある男・島さん（藤井隆）の次のセリフから幕を開ける。

島「田中くんさ
　ここ確かにいいとこだけど
　ユートピアじゃないからね。
　仮の住まいだから。
　まともな人間
　みんな出てくんだよこんなとこ」

“この街” の住人たちは、仮設という“街”という一種のユートピアの中で団結して暮らしている。

しかし、個々の生き方は基本的に孤独であると当時に、煩雑で厄介なプライドを持ち合わせている。

孤独ゆえに親近感を求める一方で、近寄り過ぎる相手には優越感を誇示しようとする… そんな煩雑で厄介なプライドだ。

また、“この街” の住人たちは、経済的にカツカツの生活の日々であると当時に、とても低く欲望や虚栄心を持ち合わせてもいる。

その、ちょっとした「こうありたい！」「ああなりたい！」みたいなちょっとした欲が時に結束力にもなるし、対立の火種になることもある。

‘ヤリマンの亭主’こと良太郎父ちゃんの覚醒！

今回の中盤で、上記の事案について描かれた印象的な場面があった。

一つは、例の寄せ書き化した大漁旗に、かつ子（三浦透子）が何かを書こうとしたシーン。

大漁旗に、かつ子に腹を刺され生死をさまよい、弾き語りでハモられ、コケにされまくったオカベ（渡辺大知）が書いた寄せ書きだ。

縦の糸はかつ子横の糸はオカベ ♥

まるで、小学生の男子が黒板に好きな女子の名前で相合傘の落書きをするノリで、屈辱の『♪糸』の歌詞にハートマーク。

これを書いたオカベの煩雑で厄介なプライド然り、それを横目にかつ子はかつ子の煩雑で厄介なプライドで何を書いたのか？

もしかすると、それこそが、終盤の大笑いにつながり、しれ～っとアパレル店員で笑顔を振りまくかつ子の恐ろしさとしたたかさに通じるのかも？

もう一つは、熊（奥野瑛太）が沢上良太郎（塚地武雅）に放った痛烈なひと言から火蓋を切る、この上なく複雑な家庭「沢上一家」の暴走劇だ。

熊「こっちとら前科あんだぞコラ！」
良太郎「しょうもな。
　（中略）オメェの前科
　下着泥棒じゃねえか」
熊「おもしれぇウソついてやろうか。
　なぁヤリマンの亭主！あぁ!?」

‘ヤリマンの亭主’こと良太郎父ちゃんの覚醒だ！

良太郎も熊も孤独であると当時に、煩雑で厄介なプライドを持ち合わせているのだ。

そして、“街”というユートピアの中で必死に自分の尊厳を誇示し、団結しようとしている。

このあたりの描写は今作独自の表現で、住む場所や暮らしの環境は個々に違えど、愛する人、大切な人をおもう気持ちの尊さと美しさをうまく描写したと思う。

「住めば都」ではじまり、「住まば都」で終わった最終回…

結果的に “街” は壊されてなくなり、住民たちはそれぞれの暮らしを営み始める。

暮らしているうちにその土地の人情や風情を目の当たりにして、居心地がよくなることを「住めば都」という。

類似の言葉で、どんなにひどい場所でも、住み慣れてしまえば意外と居心地がよいと感じることを「地獄も住み家」という。

今作は、「住めば都」と「地獄も住み家」を合体させた概念を “街と住民”にうまく落とし込んだといえる。

ただ… 少々、ことば遊び、国語の授業のようになって恐縮だが。

「住めば都」と似た言葉に「住まば都」があるのをご存じだろうか？

「住まば都」とは、住むなら都会のほうがいい… の意味だ。

今作の結末は、「住まば都」になっている。

というか、やはり、自立して自由に生きるほうが、それぞれにとっての “都” であると。

こう捉えれば、視聴者も現状に甘んずることなく、それぞれにとっての “都” を見つけよう！というメッセージ性も感じる作品だと思う。

あとがき

今もなお、様々な災害によって、悲しみや苦しみ、失意や絶望、怒りや憎しみを抱えつつ、必死に “都” を模索している人がたくさんいると思います。

そんな当たり前のことを、今作はしっかりと再認識させてくれました。

少々取っつきにくい作品ではありましたが、見てよかったです。

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黒澤明監督映画「どですかでん」

田中邦衛(出演),頭師佳孝(出演),黒澤明(監督) 東宝

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季節のない街シナリオ

宮藤官九郎 (著) KADOKAWA 2024-4-5

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連続テレビ小説「虎に翼」（第50回・2024/6/7）感想

2024/06/07 (Fri)13:26:48 ドラマ

NHK総合・NHK BS・ﾌﾟﾚﾐｱﾑ4K／連続テレビ小説『虎に翼』
公式リンク：Website、X(旧Twitter)、Instagram

第50回／第10週『女の知恵は鼻の先？』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

穂高（小林薫）は法の道へ導いて不幸にしたと寅子（伊藤沙莉）に謝罪し、新しい仕事を紹介すると言い出す。しかし寅子はむしろこの道で生きる決心を新たにする。家制度が変わることに反対する神保（木場勝己）と議論した寅子は、民法を多くの人に知ってもらうためにどうすればよいか、はる（石田ゆり子）と花江（森田望智）にも意見を聞き、新たなヒントを得る。昭和２２年、いよいよ新しい民法が成立する。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

寅子が "凛とそびえ立つ山の如し" に感じさせる演出がこれ

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

冒頭から、寅子（伊藤沙莉）の穂高（小林薫）への「はて？」の連続投下だ。

寅子「無理に法律を学び続けたわけじゃない。
　好きでやったんです。
　好きでここにいるんです！」
穂高「佐田君」
寅子「そうです私は好きでここに戻ってきた。
　戦争や挫折で
　いろいろと変わってはしまったけれど
　でも私は好きでここに来たんです！
　それが私なんです」

ホントに、凄いのは。

いつぞやの記者会見シーン同様に、伊藤沙莉さんがセリフをしゃべっているように微塵も見えないことだ。

私の目の前に “凛とそびえ立つ山の如し” な寅子が誠心誠意を込めて語っているように見えた。

そう感じさせる演出が、主張する寅子をやや下からのアングルで見上げるように、且つ手持ちのハンディカメラで僅かに振動させるカメラワークとアングルだ。

「揺れるカメラ」には、これまで数多くの苦言を呈してきたが、その多くが「やる必要がない場面」だからだ。

でも、今回には必然性を感じる。

カメラが「穂高目線」だと、やや上から見下ろす感じになって、“凛とそびえ立つ山の如し” にならないし、視聴者に対するメッセージ性が弱くなる。

三脚固定のフィックスだと、作り物すぎて臨場感に欠ける。

そこで、寅子のすぐ背後の桂場（松山ケンイチ）と柱は絶対に見切れない画角を保持しつつ。

寅子の唇は、常に “やや上手(画面右)寄り” に固定するサイズにすることで、『[演出プチ講座] 映像の掟～画面内の人物の位置や視線（目線）の向きには意味がある～』 に書いた「上位・強者」「上昇志向、意識が高い、希望」を担保している… と思う。

ハンディカメラの選択は勇気がいる場面だが、揺れを少なめに制御することで絶妙にマッチした映像になっている。

お見事だ。

日本国憲法の条文が、寅子の心情を語るセリフになっている

SNS界隈では「イマジナリー優三さん」と呼ぶらしいが（汗）

先日の感想でも書いた、戦死した優三（仲野太賀）が語ってくる姿が、寅子と視聴者には見えちゃうというやつだ。

さすがに「３回目？」となると、いささか頼り過ぎな感は否めないが。

ただ、一定の評価をしたいのは、「回想はドラマでも物語でもない」からすると、回想シーンを何度もこする（映像を使い回す）より、ずっと良いと思う。

だって、寅子は日々成長&進化しているわけだから、寅子の脳内が生み出している「イマジナリー優三さん」だって、微妙に変化するほうが自然だからだ。

そう、言い換えるならば、思い出は時と共に少しずつ変わっていく… そう思うから。

いいや、このベンチでのシーンで秀逸で、新鮮すぎたのはこのことでない。

日本国憲法の条文そのものが、寅子の心情を語るセリフになっている点だ。

直前に投降した『朝ドラ「虎に翼」寅子、花江、よねで描かれる100年前の“同年代の女性の多様性”を考える』 で書いたことでいうなら「男性も女性も生きづらさのない社会」を憲法の条文で表現したわけだ。

これによって、寅子が自分の本心を語ることが、憲法そのものであるともいえる。

そして、このシークエンスは次の語りでくくられた。

語り「自分を取り巻く環境は
　今までと何も変わらない。
　でもこの憲法がある。
　好きで戻ってきた以上
　私が私でいるために
　やれるだけ努力してみるか…」

寅子自身も一段、いやそれ以上昇華したと同時に、 “ドラマ” の表現としても一段、いやそれ以上昇華したと思う。

それぞれの立場を尊重することが男女共の多様性なのだから

休憩後の民法改正審議会のシーンは、全てのセリフ、やり取りを転記したいくらいの名言集といっても過言でない。

もちろん、著作権上ですべてを引用するわけにはいかないので、超よかった二つをピックアップしてみた。

寅子「今も昔も思っております。
　個人としての尊厳を失うことで守られても
　あけすけに申せば
　大きなお世話であると」

寅子「名字一つで何もかもが変わるだなんて
　悲しすぎます。
　私たちは多くのものを失ったのですから。
　憲法にあるとおり
　よりよく生きていくことに
　不断の努力を惜しまずにいきませんか？」

自画自賛を承知で申せば。
先の投稿で書いた…

男性も女性も “それぞれの性の多様性” を認めること、尊重することが、「男性も女性も生きづらさのない社会」の創出の第一歩であることも見えてくるし。

このこと↑を寅子は自分事として。

さらに、花江（森田望智）が味わった悲しみと屈辱も加味した上で、「それぞれの立場を尊重することが、男女共の多様性」なのだから、「一緒にやりましょう！」と促しているのだ。

この辺の寅子自身が、憲法の特徴である民主主義、個人の尊厳、基本的人権の尊重を代弁しているくだりは、実に分かりやすくて、老若男女問わず、海外でも見られる朝ドラとして意味も意義もあると思う。

9分過ぎから都度都度盛り込まれた「猪爪家」の場面が秀逸

今回の 15分間の構成で秀逸なのは、実は 9分過ぎから都度都度盛り込まれた「猪爪家」の場面だ。

また、手前味噌になるが、先の投稿で書いた通りの展開だ。

良い意味で、男性と女性、保守派とリベラルの中間的立場、中立的なポジション、ニュートラルな立ち位置である寅子の母・猪爪はる（石田ゆり子）の三人を活用して、これまで以上に “女性の多様性” を描きつつ。

ここ、普通の、並みの朝ドラなら先日の女性代議士・立花幸恵（伊勢志摩）らの集まりで描くと思う。

そのほうが、女性たちの憤慨を分かりやすく描けるし、何よりフツーだから。

でも、「朝ドラらしからぬ朝ドラ」としては、フツーの女性の声を盛り込むことで、「民法とは、私人間（「公人と私人」のうちの「私人の間」の意味）の権利・義務にかかわる法律」を具体的に描いたわけだ。

更に、「『なお』ばっかり！」で今作らしさも繰り出した。

新章『裁判官編』の序章としては、難しさを避けながら、うまく着地点までたどり着いた… そんな感じだ。

ラストは、衝撃の… ではあるが。

あとがき

本当に丁寧に物語も、登場人物、特に寅子の心情が描かれており不満はありません。

むしろ、よくぞここまで盛り込んで魅せてきたなと思います。

みっきーの植物図鑑（第234回）

近所の公園に最低的になっていた花です。

調べたら「カシワバアジサイ（柏葉紫陽花）」だそう。

カシワバアジサイの花言葉は「慈愛」「清純な心」「美」「魅力ある人」「元気な女性」。

今回も、寅子にお似合いの花だと思います。

妄想映画｢ﾄﾗつば･ｱﾍﾞﾝｼﾞｬｰｽﾞ／ｳｨﾒﾝｽﾞ･ﾌｧｲﾄ｣

★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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