Eテレ【名作照明ドラマ】「ハルカの光」〔全5回〕 （第3話・2021/2/22） 感想

NHK Eテレ・Eテレ【名作照明ドラマ】『ハルカの光』（公式）
第3話の感想。

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「エクラ」にボクサーの左京（駿河太郎）が来店する。集中できない時はろうそくの火を見て練習すると言う左京。彫刻家イサム・ノグチ作の照明に注目した彼に、ハルカ（黒島結菜）はその制作秘話を語る。翌日、左京の忘れ物を届けにジムを訪れたハルカは、会長の娘・愛子（内田慈）から意外な話を聞く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

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原作：なし
脚本：矢島弘一（過去作/コウノドリ2、健康で文化的な最低限度の生活）
演出：松原弘志（過去作/中島美嘉「Helpless Rain」PV､秦基博「青い蝶」PV） 第1,2,5話
　　　長澤佳也（過去作/映画｢春待つ僕ら｣や｢風の電話｣のﾌﾟﾛﾃﾞｭｰｻｰ） 第3,4話
毎週予告および告知CMの｢語り｣：小手伸也（過去作/ｺﾝﾌｪﾃﾞﾝｽﾊﾟﾝJP､ SUITS/ｽｰﾂｼﾘｰｽﾞ）

アバンに、ボクシング映画の金字塔『ロッキー』と『レイジング・ブル』を引用するとは!

毎回、本作のオープニングや、エンディングでは洒落た演出が施されて来た。第1話では、映画『ティファニーで朝食を』の主人公にハルカ（黒島結菜）を見立てた。第2話の冒頭ではEテレの「ピタゴラスイッチ オープニングテーマ」が使用された。

だが、今回のオープニングは映画ファン、特にボクシング映画好きなら「おぉ！」と唸ってしまうような演出になっていた。まず、映像はモノクロ映画風で、まるで映画『ロッキー』のような雰囲気。でも、BGMが、あのお馴染みの「ロッキーのテーマ」ではなかった。

 

雄大なクラシック曲が使われていたが、あの楽曲こそ、映画『ロッキー』と並ぶ、ボクシング映画の金字塔とも言えるマーティン・スコセッシ監督の1980年の作品『レイジング・ブル』（原題 Raging Bull）の冒頭のタイトルが流れるシークエンスで使用された劇伴は、ピエトロ・マスカーニ作曲の歌劇「カヴァリレア・ルスティカーナ」の間奏曲「Intermezzo Sinfonico」なのだ。

そして、本作のタイトルバックのBGMは、皆さんご存知の「ロッキーのテーマ」で、タイトルの文字の出し方も映画『ロッキー』風のアレンジだった。僅か1分20秒ほどのアバンタイトルだが、演出家の “ボクシング映画への愛” が凝縮された演出だったのだ。

Raging Bull (Opening Sequence) HD - YouTube

イサム・ノグチ氏による上質な和紙を使用した照明彫刻「AKARI」

今回、「エクラ」に来店して来たのは、ボクサーの左京（駿河太郎）。集中できない時は、ロウソクの火を見て練習すると言う左京の目に留まったのが、世界的彫刻家イサム・ノグチ氏による上質な和紙を使用した照明彫刻「AKARI」。

イサム・ノグチはアメリカで生まれ、2歳で来日し、私生児として育った。しかし、大学時代では「ミケランジェロの再来」と賞され “天才” とされた。

そして、戦後のイサムは禅の庭や伝統技術に触れ、自然を取り入れた作風を開拓し、「彫刻はもっと身近で、役に立つものであるべき」と訴えたが、戦後間もない日本ではイサムの思想は受け入れられず、でも、ドラマでハルカが語ったように、最終的にイサムは自分の考えを貫いて、今も作品は生き続けている。

ハルカは、頑張っている人に「頑張れ」と言わない人…

このハルカと左京の会話のシーンの最後に、ハルカが左京を応援する台詞が印象的だった。

ハルカ「頑張っている人に『頑張って下さい』って言うの 私 嫌なんです」

この、頑張っている人に「頑張れ」と言うべきか、言わぬべきか？ と言うのは、10年前の東日本大震災の直後から、今も心理学やメンタル関連では議論されていること。私は、受け取る人次第だと思っているが、ハルカは「言いたくない人」なのだ。きっと、その裏には、ハルカが1年近く仮設住宅で暮らした過去が影響しているのかも知れない。

いずれにしても、これまで何となく明るく元気な印象だったハルカが、真剣な表情で言った “この一言” が、ハルカと言う登場人物を掘り下げるキーワードになった。

「ロッキーのテーマ」を鼻歌で口ずさむハルカに"恋"の予感…

翌朝だろうか、映画『ロッキー』を知らなかったハルカが、左京の忘れ物の白いタオルの洗濯物を干しながら「ロッキーのテーマ」を鼻歌で口ずさんでいた。ちょっぴり “ハルカの恋” を感じさせる爽やかな映像が、とても私の心を和ませた。

一体、ハルカにとって “頑張る” とは何なんだろう…

「頑張っている人に『頑張って下さい』って言うの 私 嫌なんです」と、左京のきっぱり言ったハルカが、完全にやる気を失っている左京にかけた言葉が印象的だった。

ハルカ「頑張ってるフリする生き方なんて かっこ悪いですよ！」

奥深い台詞だ。辛い練習を「楽しんで下さい」と言ったハルカがは、頑張っている人に「頑張って」とは言わないが、頑張るフリをする人間はかっこ悪いと言う。本作では、ハルカのこれまでの人生について小出しにしか描かれていないために、先のように、こう言う台詞が、ハルカを掘り下げるアイテムになる。一体、ハルカにとって “頑張る” とは何なんだろう…

吉岡徳仁氏によるテーブル照明「ToFU LED（トーフ）」

2つ目に紹介された名作照明は、2020東京オリンピック聖火リレートーチのデザイナー吉岡徳仁氏によるテーブル照明「ToFU LED（トーフ）」だ。2000年頃に「灯具をすべてアクリルに埋込む」と着想したが、まだ当時はハロゲンランプの時代で実現不可能。それをLED照明の時代になって、やっと具現化したのが「ToFU」。

原始的で素朴で繊細な独特の世界観が名作照明たる由縁だ。どこかを照らすのでなく、吉岡氏の頭の中の着想を具現化した光る芸術だ。だから、それ以外の役目はない。でも、「作れなかったものが、今、存在する」と言う意義がある。この辺を、自暴自棄になっている左京に照らし合わせる脚本が上手いと思う。

「ウィ・ウィル・ロック・ユー」が「伝説のチャンピオン」との両A面である妙…

そして、左京のトレーニングが始まった。夕方のランニングシーンの劇伴は、皆さんご存知、イギリスのロックバンド、クイーンの楽曲「ウィ・ウィル・ロック・ユー（We Will Rock You）」。バンドの演奏にも拘らず、ドラム・ベースを使わずに観客の手拍子と足拍子でリズムを作ると言う、アーティストと観客が一体とならないと完成しない曲だ。

なにか、ランニングをする左京をハルカと西谷（古舘寛治）が応援しているようにも聞こえた。また、この選曲の妙は、この楽曲がシングル「伝説のチャンピオン」との両A面でリリースされたと言う事実。そう、右京が本当の意味で “伝説のチャンピオン” になるかどうか… なのだ。

エミネムの「ルーズ・ユアセルフ」と映像が見事にリンク!

ハルカと「ToFU LED（トーフ）」に励まさせた左京が、夕景の街をランニングするシーンで使われた劇伴が、米国のラッパー、エミネムの楽曲「ルーズ・ユアセルフ（"Lose Yourself"）」。

エミネムの半自叙伝的映画『8 Mile』の主題歌で、ハングリー精神が全面に描かれ、歌詞の直訳は「自分を見失うな！」と言う感じだが、雰囲気は「今のチャンスに賭けろ！」と自分自身を鼓舞する感じだろうか。

しかしドラマは、ハルカの言葉に心を入れ替えた左京の晴れ舞台のリングのシーンではなく、意外にも最後のスパーリング練習を見て貰うと言う “ビルの屋上の特等席” だった。距離の離れたビルの先の左京をとらえる引きの画と、ビルの屋上で見守るハルカの寄りの画のカットバックが、ハルカと左京のスパーリングにも見えて来た…

あとがき

何度もリングに沈み掛けますが、立ち上がる左京は、恐らくはるかに言われた通り、「練習を楽しんだ」と思います。だって、そうしなければ、自分の存在を再び照らすことは出来ないのですから。

また、ハルカが「ToFU LED（トーフ）」の説明をしている時に言った、「だって ここに存在しているんだから」が、良かったです。人は自分らしく存在していることが一番大切だとハルカは思っている… そんな風に見えました。

今回は最初から最後まで選曲のセンスが抜群で、映像と音楽と台詞と演技が見事に合致していました。まさか、名作照明とボクシングで秀逸なヒューマンドラマが出来るとは！

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第3話で最初に紹介された名作照明は、世界的彫刻家イサム・ノグチ氏による上質な和紙を使用した照明彫刻「AKARI」シリーズの1つ。少し崩したシルエットが、より彫刻らしい表情を見せてくれるのが特徴。今回は手軽な価格の小ぶりな「1N」をご紹介します。

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第3話で2つ目に紹介された名作照明は、2020東京オリンピック聖火リレートーチのデザイナー吉岡徳仁氏によるテーブル照明「ToFU LED（トーフ）」です。

吉岡氏が、2000年頃に「灯具をすべてアクリルに埋込む」と言うアイデアがありましたが、まだ当時はハロゲンランプの時代で実現不可能でした。それを、LED照明の採用によって具現化したのが「ToFU」。原始的で素朴で繊細な独特の世界観が名作照明たる由縁です。

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第2話で紹介された名作照明は、“光の魔術師” や “光の詩人” 等の異名を持つ照明デザイン界の巨匠で40年にも亘り、独自のランプや照明デザインを行ってき照明デザイナー、インゴ・マウラーによるテーブルランプ「ワン フロム ザ ハート」です。

赤いハートの形をしたシェードの中に光源が入っており（小さなワニも隠れています）、上部にハート形の鏡が付いており反射して美しい陰影を生み出す仕掛けになっています。置き場所は壁際がおススメです。

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第1話に登場した照明器具は、フィンランドの建築家・建築家のAlvar Aalto（アルヴァ・アアルト）が手掛けた「A330S Golden Bell（ゴールデンベル）」。「金の鐘＝ゴールデン・ベル」の名が示すように、金属製の鐘のような美しさと滑らかなシルエットが特徴です。1937年発売当初から人気のロングセラー商品でもあります。

シンプルなデザインなので、いろいろは場面で使える上に、単体で楽しむのも素敵ですが、カウンターやダイニングテーブルの上に複数並べると、グッとお洒落な空間になります。

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