連続テレビ小説「おちょやん」 （第88回・2021/4/7） 感想

NHK総合・連続テレビ小説『おちょやん』（公式サイト）
第88回／第18週『うちの原点だす』の感想。


※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。

---

昭和２０年７月、大空襲以降も大阪には大規模な空襲がやってきていた。そんな中、最近の千代（杉咲花）の様子がおかしいことに気が付く一平（成田凌）とみつえ（東野絢香）。たまに夜中に家に居ないことがあり、昼間にうたた寝をすることも。その態度からみつえは、千代が誰かと密会していると疑う。一方で、寛治のことで悩んでいた千代を支えなかった一平のことを責め立てる。ある夜、こそこそ出て行く千代。一平が後をつけると…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

●作：八津弘幸 ●脚本協力：吉田真侑子 ●演出：小谷高義（敬称略）

第14週から視聴モードを「好意的な解釈」から「様子見」に格下げしております。

まえがき

前回の感想では、感想を待っていて下さった読者さんには申し訳ないが、冒頭で「久し振りにこれと言った感想は浮かばない」と書いてしまった。本当に申し訳ない。と言うことで、今回は、少しきちんと書いてみようと思う。

もっとアバンでしっかりと「空襲」を印象付けるべきたった

と言うことで、まず今回のファースト・カットについて。3秒ほどの灰色の夜に怪しげな雲と三日月が浮かぶ空のカットから今回は始まった。1.5秒ほど最初は無音で、そのあとから空襲警報が被って来た。そして、千代（杉咲花）の家で、うとうとしている一平（成田凌）に繋がった。

私は、こう思う。今回で視聴者に真っ先に印象付けなければいけないのは、「昭和20年7月、大空襲以降も大阪には大規模な空襲がやって来ていた」ことだと思う。だったら、もっとファースト・カットで、空襲の怖さを映像で印象付けるべきでないかと思う。

しかし、今週の（もう、本作の… と、言っても良いのだが）演出家は、著作権フリー素材みたいな汎用性のある「月夜」の “静止画みたいな映像” を使った。朝ドラは紙芝居ではない。だったら、思い切って、CG制作で良いから、灰色の夜空に暗雲が立ち込めて三日月が見えなくなるような動画を作るべきだったと思う。

こう言う、小さなことだがやれば効果覿面の “一手間” をやらずに、一平の衣装にアイロンを掛ける方の “一手間” に時間を割くから、いつまでも「戦中」が伝わって来ないのだ。

そして、その直後に、千代が夜空を見上げるカットがあって、先述の “静止画みたいな映像” に、爆撃機が小さく映って、良く見ると雲も動いている。あんなコントラストのない映像では、高齢者がどこまで見えるのか？ もっと、しっかりと「空襲」を印象付けるべきたったと、本気で思う。

主題歌明けは、"空襲"ではなく"コント"を描くとは!?

さて、主題歌明けこそ、何とか空襲を描き続けて欲しいと願ったが、願いは無残にも撃沈させられた。まさかの、「千代が浮気しているのでは？」と言う “コント”。

不謹慎と言われるかも知れないが、フィクションのドラマの話だから多めに見て頂きたい。 こんな展開にするなら、冒頭で千代の家が、もろに空襲に遭って、外に投げ出されるような被害を受けた方が良かったと思う。家から焼け出されて、みつえ（東野絢香）たちとも、離れ離れになってしまうような。

何なら、焼け野原に放り出された中で、千代たちが福助（井上拓哉）の遺体を見つける、それ位はやっても良かったと思う。

脚本と演出が雑だから、戦中にも、空襲の怖さも見えないし、伝わらない!

なのに、本作は、突然に猫の餌やりから、千代と一平の何かの芝居。良く聞くと、一平が、ソ連に亡命した百合子（井川遥）と小暮（若葉竜也）への餞に作った「人生双六」の一場面の再現だった。これ、百歩、いや千歩、いや一万歩譲って「野良猫から人生双六」をやりたいなら、「浮気コント」は必要なかった。冒頭の空襲も必要なかった。

ファーストカットで、真夜中の野良猫。そこへやって来る千代。一人芝居をやっている千代のもとへ一平がやって来て、夫婦で「人生双六」。で、千代の「怖いんだす」で、空襲警報が鳴って、オープニング映像。そして、主題歌明けに大空襲で家族バラバラ。この方が、戦争の悲惨さを簡単に伝えることが出来たと思う。

なのに、唐突に、これまた千代の女優や芝居への思い入れの強さを延々と描く。空襲警報も鳴らない。演者の顔のアップばかりを繋げる編集で、より呑気な夫婦に見えちゃう。ホント、脚本と演出が雑だから、戦中にも、空襲の怖さも見えないし、伝わらないのだ。

夫を戦死で失ったみつえに「みつえ 落ち着き」って!?

そして、戦中になってから、なぜか芝居や女優を語り始めた千代には何ら不幸は訪れずに、先日の菊（いしのようこ）と福松（岡嶋秀昭）の夫婦が犠牲になったのに続いて、今度は7分過ぎに福助の戦死の知らせが届く。

私は、こう思う。みつえが夫・福助の戦死を知り、息子は懸命に父の死を「お国のため」と許容しようとし、妻は「もっと、もっと夫とやりことが…」と泣きじゃくる。そこへ千代は「みつえ 落ち着き。落ち着き」と宥める。これ、私にはピンと来なかった。

真夜中に自分の感情を抑えられずに野良猫を遊んでいた千代なのだから、ここは、「みつえ 思いっきり 泣き…」と、みつえの感情を受け止める千代にして欲しかった。それをしないから、自分は好き勝手、他人には抑制させる自己チューな主人公に映るのだ。

脚本家のデリカシーの無さに呆れてしまった…

みつえは、数日間、部屋に籠って寝込んでしまった。そこへ、みつえを心配したシズ（篠原涼子）と宗助（名倉潤）がやって来る。このシーン、全体的に私にはピンと来なかった。

まず、シズと宗助がみつえの部屋に入るのを、千代の許可が下りないとダメなような感じになっていたことだ。いや、そもそも「ご寮さんと旦さん 来てくれはったで」と千代は言っていたが、シズと宗助は「みつえの実の両親」なのだから、言うなら「お母さんとお父さん」と言うべきだし…

確かに数日寝込んでいる娘の部屋に入るのを躊躇する気持ちもなくもないだろうが、シズの性格、特に「岡安」の最後の日でのお茶子たちへのぶっきらぼうな態度からすると、千代を跳ね除けて、「みつえ どないしたんや」と部屋に突入するのが、連ドラの “連続性” を担保することでは？

その上、千代が、しばらく二人がみつえの傍にいてくれることに対して、「よかったなあ」と言う。これ、「よかった」ことだろうか？ このシーンで納得いかないことは、まだまだ続く。みつえが「誰にも会いとうない」と言ったのに対して、千代は「せっかく来てくれはったんやし…」と、か～るくお説教。

流石に怒り心頭のみつえが「あんたに うちの気持ちなんか分かへん！」と。「ほっといて」と泣くみつえに、今度はシズが「ええかげんにしなはれ！」と、娘を激高。もう、そのあとの台詞は書かないが、シズが実の娘が夫を戦死で亡くしたやるせない気持ちを慮るのではなく、みつえを心配している千代を気遣うと言うトンでもない展開。

いくら、シズが千代に一方ならぬ思い入れがあるにしても、この状況で娘より千代に気遣うのはピンと来ないどころか、脚本家のデリカシーの無さに呆れてしまった…

戦争に悲惨さや苦しさ、やるせなさが、画面から一切伝わらない

その後は、みつえを放置して、千代の世間話を聞くシズと宗助。もう、どうでも良いのだが。それでも、普通にきれいな服を着て、お茶を飲みながら四方山話を呑気にやってるって。

戦中でしょ？ 空襲でしょ？ 知り合いが次々と戦死しているんでしょ？ そう言う戦争に悲惨さや苦しさ、やるせなさが、画面から一切伝わらない。むしろ、セミの鳴き声が聞こえて、会話の内容を無視すれば、ある夏の午後に、主人公たちが深刻な世間話をしているようにしか見えない。

主人公へ共感も応援も出来ない状態を作ってしまった脚本家と演出家の罪は重い

12分頃、千代が「お金やったら払いますさかい」と言うのも、相当気になったが。それ以上に気になった場面があった。

それは、「元女優かなんか知らんけどな あんたらが ちやほやされて ええ気になってた間も うちらは泥まみれで畑仕事してたんや。あんたらも ちょっとは 世の中の役に立つことしてみいな」と玄関先で追い払われる場面だ。

普通なら、この農家の女性に反感や怒りを覚えると思うが、『おちょやん』に於いては「その通り！」と、思えてしまう。こう言う、主人公がやって来たこと、やっていることに対して、共感も応援も出来ない状態を作ってしまった脚本家と演出家の罪は重いと思う。もう、余程のことをやらない限り、すり込まれた印象は変わることはないと思うから…

最後のシーンまで、戦中らしさは皆無で終了…

終盤で、林のようなところ歩きながら、芝居の台詞を千代が喋る場面がある。ああ言うのも、私には孤独感と言うより、呑気に見える。

例えば、これまで何度も空襲が来ているのだから、自宅を含めたご近所の割れた窓ガラスを掃除しながら台詞を言うとか、ごみの片づけをしながらとか、先日少し書いたが、葬列に手を合わせながらとか、何か戦争や空襲に繋がるような工夫をするべきだったと思う。

あとがき

今回の主人公を見ると、主人公だけ戦争や空襲の “蚊帳の外” にいるように見えます。だって、自分の芝居のことしか考えていませんから。まだ、これまでも「千代が芝居のことしか頭に無かった人」の印象が強ければ、それ程でもありませんが、寛治が登場したあたりから急変したので、違和感しかありません。

こんな状態なら、早く戦後になってしまって、道頓堀の復興を描いた方がマシだと思いますが…

管理人・みっきー お薦めする商品を、Amazonと楽天市場から安心して ご購入して頂けます! 「水のように」NHK朝の連続ドラマ小説「おちょやん」のモデル・浪花千栄子の唯一の著作である自伝的エッセイを復刊 浪花千栄子 朝日新聞出版 2020-11-6 ￥1,430(記事投稿時) Amazonで購入 Kindleで購入 楽天ブックスで購入 楽天koboで購入

管理人・みっきー お薦めする商品を、Amazonと楽天市場から安心して ご購入して頂けます! 連続テレビ小説「おちょやん」オリジナル・サウンドトラック(CD) サキタハヂメ バップ 2021-1-27 ￥3,300(記事投稿時) Amazonで購入 楽天ブックスで購入

管理人・みっきー お薦めする商品を、Amazonと楽天市場から安心して ご購入して頂けます! 連続テレビ小説 おちょやん Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド) 八津弘幸(著),NHKドラマ制作班(監修),NHK出版(編集) 2020-11-27 ￥1,320(記事投稿時) Amazonで購入 Kindleで購入 楽天ブックスで購入 楽天koboで購入

〔お願い〕

読者の皆様も大変な状況とは思いますが。コロナ禍で仕事激減の折、勝手なお願いで恐縮でございますが、Amazonと楽天市場からお買い物する際は、当blogのリンク経由で買って下さると、皆様のおかげで私にポイントが貯まる上に、何よりもブログを書き続けるモチベーションアップになります。引き続き、皆様のご協力をお願い申し上げます。 m(_ _)m

「楽天市場」からのおすすめ商品や企画


「Amazon」からの最新のお知らせ

トラックバックは、下記の「ミラー & TB用ブログ」へお願いします。
【FC2ブログ】http://dmesen.blog71.fc2.com/blog-entry-12282.html

---

【これまでの感想】

第1週『うちは、かわいそやない』
1 2 3 4 5 土
第2週『道頓堀、ええとこや～』
6 7 8 9 10 土
第3週『うちのやりたいことて、なんやろ』
11 12 13 14 15 土
第4週『どこにも行きとうない』
16 17 18 19 20 土
『おちょやん　よいお年を！』
第5週『女優になります』
21 22 23 24 25 土
第6週『楽しい冒険つづけよう！』
26 27 28 29 30 土
第7週『好きになれてよかった』
31 32 33 34 35 土
第8週『あんたにうちの何がわかんねん！』
36 37 38 39 40 土
第9週『絶対笑かしたる』
41 42 43 44 45 土
第10週『役者辞めたらあかん！』
46 47 48 49 50 土
第11週『親は子の幸せを願うもんやろ？』
51 52 53 54 55 土
第12週『たった一人の弟なんや』
56 57 58 59 60 土
第13週『一人やあれへん』
61 62 63 64 65 土
第14週『兄弟喧嘩（げんか）』
66 67 68 69 70 土
第15週『うちは幸せになんで』
71 72 73 74 75 土
第16週『お母ちゃんて呼んでみ』
76 77 78 79 80 土
第17週『うちの守りたかった家庭劇』
81 82 83 84 85 土
第18週『うちの原点だす』
86 87

---

感想の趣旨について

当ブログの感想は、僭越ながら 「もっと こうしたらよいのに…」を追究 することで、広く映像作品を楽しめるようになることを目的としています。
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。

【すべてのコメントの「非公開希望」について】
コメント非公開希望の方は、お手数ですが「非公開希望」と書いてくださると助かります。

【すべての投稿されたコメントについて】
当blogの『無断転載禁止＆まとめサイトへの引用禁止、コメント，トラックバック＆リンク・ポリシー』に基づき、不適切な書き込み（読む人を不快にさせる内容、誹謗中傷、特定の個人への攻撃）は、恐れ入りますが管理人の判断で、非公開、または削除させていただく場合もございます。何卒ご理解・ご協力くださいませ。

【Amazonアソシエイト、楽天アフィリエイト、忍者AdMaxについて】
商品リンクや広告は「成果報酬型広告」です。
私に少しポイントが入りますが、商品の値段は変わりません（謝）

｢共感!｣｢納得!!｣なら"Web拍手"と一緒にﾎﾟﾁｯと…
｢違うでしょ?｣｢怒!!｣でも意思表示でﾎﾟﾁｯと…
押していただけると､うれしいです♪

◎Web拍手のために、こんな下まで来てくだり、本当にありがとうございます（感謝）