連続テレビ小説「虎に翼」 （第101回・2024/8/19） 感想

NHK総合・NHK BS・ﾌﾟﾚﾐｱﾑ4K／連続テレビ小説『虎に翼』
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第101回／第21週『貞女は二夫に見えず？』の感想。

※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。

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直明（三山凌輝）と花江（森田望智）はそれぞれの同居に対する思いを語る。猪爪家を離れるのが寂しいと言う直明に対し、花江は同居の難しさを語る。どちらの気持ちもわかる寅子（伊藤沙莉）。直明の婚約者・玲美（菊池和澄）はいつも自分の希望よりも玲美を優先してくれる直明の唯一の頼みが同居であると話し、「お試し」で同居してみてはどうかと提案する。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------

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原作：なし
脚本：吉田恵里香（過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘）
演出：梛川善郎（過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのﾌﾞﾂが､ここに） 第1,2,4,7,10,11,14,16,19,20週
　　　橋本万葉（過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘） 第3,8,13.18週
　　　安藤大佑（過去作/とと姉ちゃん,となりのﾏｻﾗ,やさしい猫） 第5,6,9,12週
　　　伊集院悠（過去作/ｵｰﾃﾞｨｵﾄﾞﾗﾏ･FMｼｱﾀｰ｢告白の対価｣静岡局制作） 第15週
　　　相澤一樹（過去作/BSﾌﾟﾚﾐｱﾑ:善人長屋 第5話のみ,単発:月食の夜は） 第17週
　　　酒井悠（過去作/兵庫発地域ﾄﾞﾗﾏ｢あったまるﾕｰﾄﾋﾟｱ｣,FMｼｱﾀｰ｢ふたつのせかい｣） 第21週
音楽：森優太（過去作/海の見える理髪店,あなたのﾌﾞﾂが､ここに,忘恋剤）
主題歌：米津玄師「さよーならまたいつか！」
法律考証：村上一博（明治大学 法学部 専任教授）
裁判所考証：荒井史男（元名古屋高裁長官　定年退官）
風俗考証：天野隆子（過去作/ごちそうさん,花子とｱﾝ,ｽｶｰﾚｯﾄ）
旧字考証：三浦直人（明治大学大学院 文学研究科 史学専攻 日本史学専修）
医事考証：冨田泰彦（過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康）
医事考証：冨田泰彦（過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康）
ジェンダー・セクシュアリティ考証：前川直哉（福島大学 教育推進機構 高等教育企画室 准教授）
タイトルバック制作：シシヤマザキ（公式サイト ）
取材：清永聡（NHK解説委員:司法･事件･公文書管理･災害）
語り(本編)：尾野真千子（過去作/ｶｰﾈｰｼｮﾝ,長谷川町子物語,足尾から来た女）
語り(土曜日版)：山下誠一郎（過去作/Eﾃﾚ｢小雪と発酵おばあちゃん｣）
副音声解説：山崎健太郎（過去作舞いあがれ!,らんまん,ﾌﾞｷﾞｳｷﾞ）
制作統括：尾崎裕和（過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人）
※敬称略

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今週は「結婚ネタ週間、ブライダルエピソード・ウィーク

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。

室内でも熱中症の危険があるとのこと。
こまめに水分補給してくださいね。

最初に、第21週のサブタイトル『貞女は二夫に見えず？』をプチ掘り下げしておこう。

元は「貞女は二夫に見えず」で、読み方は「テイジョはニフにまみえず」で、「見えず」と書いて「まみえず」と読むのが正しい。

意味は、貞淑な女性、貞操頑固な女性は夫に操(みさお)を立て、夫が亡くなっても生涯にわたって再婚はしない… だ。

恐らく、主人公の今の立場に向けて投げかけた言葉だろう。

ということで、今週は（今週も？）「結婚ネタ週間」「ブライダルエピソード・ウィーク」になりそうだ。

舞台中継を見ているような「３人横並び」のスリーショット

時代は、「昭和30年（1955）7月」。

先週は、直明（三山凌輝）の婚約者の田沼玲美（菊池和澄）で一波乱あって。

今週は、冒頭から轟（戸塚純貴）のパートナーで、出版社で編集をしている遠藤時雄（和田正人）から始まった。

まるで、最初こそ顔のアップがあったが、その後は終始舞台中継を見ているような「３人横並び」のスリーショット。

サイズも引き目のミディアムショット（「ウエストショット」とも呼ぶ、被写体の腰から上を画面に入れ込む画角のこと）で、状況はよく見えるが、個々の表情の違いが見えづらい。
※敢えて「引き目の」と書いたのは、腰より下の太ももまで映り込んでいるから

轟が仲介役、紹介係になっているからスリーショットなのだろうが、折角表情が豊かなお三方が揃っているから、緊張や戸惑いのお芝居を味わいたかった。

それに、主人公の後頭部を何度も見せるのも良いとは思わないし。

これまで、こういう違和が生じたのは今作ではなかったのだが。

今週は、今作初担当の酒井悠氏の演出のお手並み拝見しよう

そんなことを思って、クレジットタイトルを見ていたら理由が判明した。

最近の朝ドラの傾向、恒例になってきているのが、残り２か月を切ったあたりで、NHKの「地方発ドラマ」の監督や「本編」の助監督に１週間だけ初担当させるという挑戦だ。

『らんまん』（2023年前期）では、第24週に助監督がサブと組んで担当。

『ブギウギ』（2023年後期）では、第22週に地域ドラマの演出担当を抜擢。

今週は、2018年に NHK BSプレミアムのみで放送された兵庫発地域ドラマ『あったまるユートピア』、2021年に放送されたラジオドラマ・FMシアター『ふたつのせかい』の演出を担当した酒井悠氏。

というわけで、映像作品の演出経験が少ないのかもしれない。

ただ、話数が 10回前後の連ドラでは、こういう挑戦は「？」と思うが、半年間、全20週以上もある朝ドラの場合は、才能発掘の意味でやる価値は大いにあると思う。

まずはダメ出しからはじめてしまったが、今週はお手並み拝見してみよう。

吉田恵里香氏が本気で描きたいものが分かるセリフ

メインタイトル映像明けは、ちょっぴり意外なやり取りだ。

３人がいるところへ、山田よね（土居志央梨）が戻ってきて、３人の様子を苦い顔で見ていると。

轟「前々から 時雄さんには
　佐田を紹介したいと話していたんだ」

これ、そもそも、元々は、寅子と よねと轟の人間関係のほうが先にあるわけだから。

普通のセリフ回しなら、次のように書くと思う。

轟「前々から 佐田には
　時雄さんを紹介したいと思っていたんだ」

こう書けば、轟が寅子に遠藤のことを話すつもりだったことが、よねにやっと伝わった感じがでて、よねとは、それなりの信頼関係が構築されているように見える。

でも、今回の言い回しは、轟が気にしているのが “ほぼ時雄さんだけ” の印象になる。

よねと、遠藤のことを寅子への報告しようかしまいかを相談していないような印象だ。

このことで、何が見えてくるのか？

それは、よねと轟が、本当の意味での「ビジネスパートナー」であることだ。

このひと言で、脚本担当の吉田恵里香氏が本気で “様々な結婚のカタチ” を “今作で描くつもり” であることが分かるのだ。

妄想映画｢ﾄﾗつば･ｱﾍﾞﾝｼﾞｬｰｽﾞ／ｳｨﾒﾝｽﾞ･ﾌｧｲﾄ｣

「赤系セピア」調の回想シーンについて

さて、連ドラらしい展開から、話がサブキャラから主人公に切り替わる。

まずは、回想シーンだが。

また演出に触れてしまうが、普通なら生花を強調しやすい「黄色系セピア」の映像処理をすると思う。

黄色系セピアなら、ピンク系や赤系に比べて明るく見える傾向があるから、コントラストが強く表現できるから。

でも、酒井氏の選択は「赤系セピア」だ。

赤を強調するために彩度（色の鮮やかさ）を落とす必要があり、渋い印象には仕上がるが、元の映像によってはあまり大きな変化を加えられない。

今回でも、回想シーンと現在の よねがほぼ同じ画角で直結していたが、事務所の照明がアンバー系（橙色系）だから明確に代わり映えしない。

まあ、「唐突に回想シーンを入れた感じにしたくなかった」と好意的に解釈しておこう。

脚本としての連ドラとしての見せ方も、魅せ方も巧み

よかったのは次の よねのセリフだ。

よね「こいつが私のところに来る時は
　大抵 自分の話を聞いてほしい時だ」

初回から見ている視聴者なら、とっくに気づいていることだが、語りで「ドキッ！」まで加えて強調すると、連ドラとしての連続性がしっかりと見えるし伝わる。

明るめな劇伴が、轟の「だが」と、寅子の「今更」から雰囲気が一転。

なぜ、都会のど真ん中の地下室なのに、あんなに大きくヒグラシの鳴き声が聞こえてくるのかの初歩的な疑問もあるが、ラジオドラマ風ってことで（苦笑）
※無音を音で埋めないと心配なのかも… 若手あるあるではある

演出は別にして、脚本としてはうまい具合に、「轟と遠藤」から「寅子の恋バナ」に転換した。

だって、よねが「ところで、お前、何でここに来た!?」とやっても良いのだ。

でも、上記のセリフ一つで、回想が無くても寅子とよねのこれまでの関係性が見えてくる。

この辺の、脚本としての連ドラとしての見せ方（show）も、魅せ方（fascinate）も巧みだと思う。

甘味処「竹もと」のシーンのあれやこれや…

場面変わって、甘味処「竹もと」も、窓全開で森林浴をしているかのようなミンミンゼミの大合唱（笑）
※このあとには、線路際でかき氷を食べているような音響効果もありますけどね

ここまで「真夏」を強調したいのなら、店内には行って来る航一（岡田将生）にハンカチで汗を拭く動作をやらせるくらいの演技指導があったらバランスが取れるのに。

更に、重箱の隅を楊枝でほじくるようなことはしたくないし、するつもりもないのだが、どうしても気になってしまったこと。

航一が入店する時は、寅子の真後ろに白い半そでのワイシャツを着て団子を食べる男性がいたのに、航一の手元にかき氷が届くと消滅…

きっと、同席していた向かいの女性と、隣のグレーのシャツの男性を置いて先に帰った… と好意的に解釈しておこう。

ただ、この「竹もと」のシーンも、今作が描いてきたこと、寅子と航一のキャラクターの魅力を惜しみなく描いている。

理由その１。
今作が当初から描き続けてきた「食べ物を一緒に食べることで、心が通じ合う」で、きっちりと魅せているから。

理由その２。
理屈で納得できないと先に進めない寅子と、それが分かっているから理屈を準備している航一を、分かりやすく描いているから。

理由その３。
リーガルドラマとして、ただ恋バナを盛り込むに終わらせず、ちゃんと法律を絡めて抽象的な概念である “愛” を語らせているから。

こういうのが、５分程度の尺でさらりと描けてしまうのはスゴイと思う。

寅子の「親孝行かもって」が、めっちゃリアル！

まるで、ラジオドラマのようなカエルの鳴き声から「猪爪家」。

きっと夏季休暇明けの本格再始動の月曜日だから、今週で扱うネタの紹介、３つめだ。

そう、「轟と遠藤」「寅子と航一」、そして「直明と玲美」だ。

予告編で心の準備はできていたが、思った以上に「直明と玲美」を深く盛り込んできたのには驚いた。

しかし、次の寅子のひと言で納得だ。

寅子「かわいい弟の結婚を盛大に祝う。
　これって
　死んだ お父さんとお義母さんにできる
　最後の親孝行かもって
　最近 そう思っているの」

「親孝行かなぁと」ではなく、「親孝行かもって」が実にリアルな会話に聞こえる仕掛けだ。

今週は、寅子自身の「結婚の法解釈」を楽しみにしたい

終盤は、8月14日(木)放送の第98回の感想のあとがきに書いた展開になった。

夫婦別姓という考えが一般的でなかった時代ですから、寅子が「星寅子」を名乗るのか？ も、先日の「友情結婚」と同様に、脚本の吉田恵里香氏さんが書きたいテーマでしょうし

「やはり、こういう展開になるよなぁ」である。

いや、本音はこうだ。

単純に、今週を「結婚ネタ週間」「ブライダルエピソード・ウィーク」にするのではなく。

“様々な結婚のカタチ” を ＜日本の婚姻制度＞ の今にも続く問題を “本気で今作で描くつもり” なんだ… と。

「原爆裁判」は気になるが、あちら（の史実）は８年間にも及ぶ長丁場だから、急がないという意味だろう。

まずは、ホームドラマとして「直明と玲美の結婚式」をどう描くのか？

そこへ、航一の継母・百合（余貴美子）をどう絡めるのか？

少し「お仕事としての裁判」はお休みして、寅子自身の「結婚の法解釈」を楽しみにしたい。

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あとがき

脚本家として「盛り込みたいもの」を盛り込むのは良いと思います。

朝ドラとしては、終始難しい法律談義ばかりでは疲れてしまいますしね。

また、朝ドラのヒロインが「好きだから」で結婚へ猪突猛進しないのも、優三（仲野太賀）との結婚同様に今作らして良いと思います。

ラストの “イマジナリー寅子” の登場も面白かったです。

今日、明日と、全国的に天候が不安定なので、見られるときに満月を見てみてください。
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