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朝ドラ「ばけばけ」親友との涙の別れに隠された切ない小泉八雲の熊本移住の真実と、クビになった車夫の誤算
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【忠告】
朝ドラ『ばけばけ』の先の展開のネタバレは基本的に書いてありませんが。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、妻・セツ夫妻の[史実]について触れます。
あとから「読むんじゃなかった…」がないよう、読む際は自己責任でお願いします。
 ※以下、敬称は部分的に使い分けをします。



「妻を助ける美談」ではなく、高給目当てで移住を決めた!?

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―――ここまで、ごあいさつ―――

俳優・高石あかり(※高=はしごだか)さん主演でヒロイン・松野トキを、トミー・バストウさんがレフカダ・ヘブンを演じ、文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、妻・セツをモデルにしたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)。

第20週『アンタ、ガタ、ドコサ。』では、主人公・トキと夫・ヘブンや家族らの熊本移住が描かれました。

移住理由は、トキが世間から「ラシャメン疑惑の騒動」で困っているのをヘブンが助ける「美談」となっていました。

そこで今回は、熊本移住を決意した小泉八雲が「愛する妻を助ける美談」ではなく金欠が理由で高給目当てで移住を決めたという[史実]をもとに記してみます。

きっと、「本編」では採用されない(と思います)エピソードを知ることに」なるので、より今作を深読みできると思います。


急転直下! 小泉八雲、松江離任の真相

小泉八雲が松江から熊本へ移った経緯は、単に寒さが厳しかったからとか、妻セツのためだけといった綺麗な理由だけでは説明しきれない。

史実をたどると、八雲が島根県を離れる決断をしたのは、驚くほど急な展開だった。

熊本行きが確定したのは明治24(1891)年10月上旬で、そのわずか1カ月後(同年11月15日)には松江を出発している。

当時は9月に新学期が始まったばかりで、契約も5カ月以上残っていたのだ。

現代の感覚でいえば、学期が始まってすぐに仕事を放り出すような、周囲にとって非常に困る行動だったといえる。


恩師を笑顔で送り出した松江の人々の本音

それほど強引な退職だったにもかかわらず、松江の人々が八雲を責めたという記録は見当たらない

これには当時の学校の格付けが大きく関係している。

八雲が次に赴任する熊本の第五高等中学校は、卒業すれば試験なしで帝国大学へ進学できる超エリート校であり、一地方の中学校に過ぎない松江中学校とは立場が全く異なっていた。

さらに決定的なのは給料の差である。

松江での月給100円(現在の貨幣価値でおおよそ30万~50万円前後)に対し、熊本では2倍の200円(現在の貨幣価値でおおよそ60万~100万円前後)という破格の条件が提示されていた。

これほどの出世と高給を前にしては、引き留めること自体が野暮であり、円満に送り出すのが最も賢い選択だったというのが当時の実情である。


驚くほどお金に無頓着だった八雲の金銭感覚

当時、松江で月給100円といえば、家族を持つ他の教師が45円ほどで十分に暮らせていた時代において、かなりの高額である。

それなのに、なぜ八雲はさらに高い給料を求めて熊本へ向かったのか?

その背景には、彼の極端にルーズなお金の使い方がある。

妻のセツは、八雲がいかに金銭管理に疎かったかを次のように回想している。


その宿に行ってみると、二人は海に出かけていて留守だった。お金は靴下の中に突っ込んだまま放り出されており、中から銀貨や紙幣がはみ出していた。夫は生まれつきお金にこだわらない性格で、その様子はとてもおかしなものだった。勘定も苦手で、そうした世渡りの才能は全く持ち合わせていなかった。

 ※出典:小泉節子「思い出の記」『小泉八雲』恒文社 1976年所収


妻セツが面白がった夫の「世俗に疎い」才能

靴下からお金がこぼれていても気にしない八雲の姿を、セツは怒るどころか、どこか楽しそうに語っている。

彼女は夫に「俗才」、つまり世の中でうまく立ち回るための計算高さがないことを、むしろ彼の特別な個性として受け入れていた。

八雲の浪費癖は筋金入りで、東京へ移ってからも美術品の展示会へ行けば、セツが値段の高さを心配してブレーキをかけようとしても、全く耳を貸さなかったようである。


「あなた、あの絵をどう思いますか」と夫が聞くので、私は「値段が高すぎますね」と答えた。お金のことを考えずに買おうとするのを恐れて、そう返事をした。すると夫は「いいえ、お金の話をしているのではない。絵の話だ。あなたは良いと思うか」と言い、「美しい、良い絵だと思う」と私が答えると、「あなたが良いと思うなら買おう。この値段はまだ安い。もっと多く支払おう」と言い出した。気に入ると、提示された価格よりもたくさんのお金を払いたがった。

 ※出典:小泉節子「思い出の記」『小泉八雲』恒文社 1976年所収


現代の「推し活」にも通じる八雲の独特な購入術

八雲の買い物の仕方は、非常に巧妙である。

彼は「買っていいか」と許可を求めるのではなく、「どう思うか」と感想を聞く。

相手が良いと言った瞬間に、それを購入の正当な理由にしてしまうのである。

さらに、定価よりも高い金額を払おうとする態度は、作品の真の価値を理解しているという自負の表れでもあった。

セツは後年、自分が「高い」と言って反対したにもかかわらず、夫が勝手に買い物を進めた様子を弁明するように書き残しているが、そこには深い愛情とあきらめが混ざり合っている。


夫婦漫才のような掛け合いと三十反の浴衣事件

二人の関係は、まるでボケとツッコミが確立された夫婦漫才のようであった。

ある時、呉服屋へ行った八雲は、セツが止めるのも聞かずに大量の浴衣を買い込もうとした。


あれもこれも買おうと言って、品物を引き寄せる。そんなにたくさんは必要ないと言っても、「でも、たったの1円数十銭だ。いろいろな浴衣を着てほしい。見ているだけでも楽しい」と言って、結局三十反(約三十着分)も購入し、店の店員を驚かせたこともある。

※出典:小泉節子「思い出の記」『小泉八雲』恒文社 1976年所収

八雲は単価が安いことを理由に大量買いを正当化し、さらに「君のために買うのだから」という理屈でセツを押し切ったのだ。

彼は学生に自腹で本を贈るなど、あればあるだけ使ってしまう性格であり、アメリカ時代の極貧生活の反動もあって、入ってきたお金を使い切ることで満足感を得ていたようである。


200円の誘惑と最後まで揺るがなかった夫婦の絆

このように、常に財布が空になるまで散財し、その上でセツの大家族まで養おうとしていた八雲にとって、熊本からの「月給200円」というオファーは、喉から手が出るほど欲しいものだったに違いない。

彼の無計画なまでの楽天性と、苦労を重ねてきたセツの包容力が見事に噛み合っていたからこそ、この夫婦は最後まで円満でいられた。

八雲がこの世を去ったとき、遺産はほとんど残っていなかったというが、お金に振り回されながらも笑いの絶えない日々を過ごした彼にとって、それは一つの幸せな形の結末だったと言える。


あとがき

小泉八雲という人物が、単なる高潔な文豪という枠に収まらず、非常に人間味あふれる魅力的なキャラクターであったことがよく分かりました。

特に、お金に無頓着な八雲と、それを「俗才がない」と肯定的に捉えて寄り添ったセツさんの関係性は、現代の私たちが見ても非常に理想的なパートナーシップだと感じます。

朝ドラ『ばけばけ』でこのエピソードがどのように描かれるのか、二人の賑やかな共同生活を想像すると、今から放送がとても楽しみになりますね。

ドラマで描かれるフィクションの奥に、こうした史実を知ることで、物語がより深く、温かく感じられると思います。

読者の皆様の “ドラマを楽しむ” ためのお役に立てれば幸いです。


参考・出展

『小泉セツとハーンの物語: ー小泉八雲「怪談」誕生のひみつー』三成清香(著)少年写真新聞社 新窓で開きます
『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』工藤美代子(著)毎日新聞出版 新窓で開きます
『ヘルンとセツ』田淵久美子(著)NHK出版 新窓で開きます
『セツと八雲』小泉凡(著)朝日新聞出版 新窓で開きます
『小泉八雲とその妻セツ 古き良き「日本の面影」を世界に届けた夫婦の物語』青山誠(著)KADOKAWA 新窓で開きます
『面白すぎて誰かに話したくなる 小泉八雲とセツ』伊藤賀一(著)リベラル社 新窓で開きます『八雲の妻:小泉セツの生涯』長谷川洋二(著)今井書店 新窓で開きます
『小泉八雲と妖怪』小泉凡著(著)玉川大学出版部 新窓で開きます
『怪談・骨董』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『日本瞥見記(上・下)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『東の国から・心)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『思ひ出の記』小泉節子(著)・小泉八雲記念館(監修)ハーベスト出版 新窓で開きます
『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』NHK出版(編)NHK出版 新窓で開きます
『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』櫻庭由紀子(著)内外出版社 新窓で開きます
■「詳述年表ラフカディオ・ハーン伝」板東浩司(著)英潮社
■「小泉八雲: 思い出の記・父八雲を憶う」小泉節子,小泉一雄(著)恒文社
■https://archive.org/details/kottojapanese00hearrich KOTTO
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.79571/page/n13/mode/2up KWAIDAN
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45846/page/n11/mode/2up Out Of The East
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami0lhear Glimpses of unfamiliar Japan vol.1
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami02hear Glimpses of unfamiliar Japan vol.2
■「松江に於ける八雲の私生活」桑原羊次郎(著)山陰新報社
『ラフカディオ・ハ-ンのアメリカ時代』エドワード・ラロク ティンカー(著)木村勝造(訳)ミネルヴァ書房 新窓で開きます
■『小泉八雲事典』平川祐弘(監修)恒文社
『夢の途上: ラフカディオ・ハーンの生涯〈アメリカ編〉』工藤美代子(著)集英社 新窓で開きます
『評伝ラフカディオ・ハーン』E.スティーヴンスン(箸)遠田勝(訳)恒文社 新窓で開きます
『小泉八雲 日本を見つめる西洋の眼差し』筑摩書房編集部(箸) 新窓で開きます
『明治時代の人生相談』山田邦紀(著)幻冬舎 新窓で開きます
■富田旅館の証言(国立国会図書館サーチ〈NDLサーチ〉 新窓で開きます
レファレンス協同データベース 新窓で開きます
島根郷土資料刊行会編「西田千太郎日記」 新窓で開きます
国立国会図書館蔵書「小泉八雲全集 第1-17巻」 新窓で開きます
名古屋大学「人事興信録」データベース 新窓で開きます
書陵部所蔵資料目録・画像公開システム - 宮内庁 新窓で開きます
『父小泉八雲』小泉一雄(箸)小山書店 新窓で開きます
『小泉八雲「見えない日本」を見た人』畑中章宏(著)光文社新書 新窓で開きます
『ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに』牧野陽子(著)中公新書 新窓で開きます
『さまよえる魂のうた 小泉八雲コレクション』小泉八雲(著)、池田雅之(編)ちくま文庫 新窓で開きます
『小泉八雲と松江―異色の文人に関する一論考』池野誠(著)島根出版文化協会 新窓で開きます



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連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第95回第19週『ワカレル、シマス。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


ヘブン(トミー・バストウ)の本当の思いを知ったトキ(髙石あかり)は、松江を離れ、熊本に行くことを決意する。それから数日、トキとヘブンは松江の人々へ別れの準備を進める。トキは長屋を訪れサワ(円井わん)との別れの時間を過ごす。一方、錦織(吉沢亮)、庄田(濱正悟)が見守る中、ヘブンは中学校で生徒たちに松江を離れることを告げる。激しく動揺する生徒たちに、庄田からさらに驚きの知らせが告げられる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7,13,14,19
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9,12,15,18
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10,16
   小島東洋(過去作/『ばけばけ』助監督) 第11
   小林直毅(過去作/『ばけばけ』助監督) 第17
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
副音声日本語吹替:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、川野秀昭、田中陽児|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、毛尾喜泰|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田直矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲、武井美晴|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規、眞弓敬司|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉、大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子、厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華、澤井洸、平松康、吉田隆広、布川紗生、大島櫻子|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之、高浪隆史、三好勇作、石井千尋|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和、鍛本美佐子|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦、栗野洋子|特殊メイク:江川悦子、権田日和|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜、大野陽平、小峰陸矢、上野香織、佐伯木乃実、畝岡歩未、増田愛海、野曾原明香|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治、斎藤明日香、竹本航、徳岡美紀、奥山温子|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録:木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉、松島彩|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章、ネイサン・ベリー、米倉リエナ|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人、川村肇|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳|書道指導:今口鷲外
※敬称略




冒頭から面白いアングルと構図

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―――ここまで、ごあいさつ―――

今回も、今週の演出担当である本作チーフ監督・村橋直樹氏の演出術について書いてみる。

冒頭から面白いアングルと構図があった。

冒頭、長屋を訪れたトキ(高石あかり※高=はしごだか)とサワ(円井わん)のカットでは、カメラはしゃがんだサワの目線の低い位置から、中央の狭いエリアに二人を配置して全体を捉えている。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

次のカットのカメラは長屋の二階に据えて、上からトキとサワを捉える構図だが、「別れを惜しむ二人」の場面だから、カメラ手前に格子戸を置いて、トキとサワを異なる「枠」に収めることで、二人の立場の違いを映像で表現している。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

で、ここで注目するのは、画面にある「白い手拭い」だ。

るのだ。

もちろん、近景をサワ、遠景をトキとすれば、手拭いは中景となって、立体感を生み出して両方のカットにさりげなく「白い手拭い」を映り込ませることで、カメラの角度が全く違う二つのカットが連続しているように見せる役割も果たしている。

何気ない二つのカットだが、よく考えられていると思う。

それにしても、「熊本」と「川のあっち側」を擬人化して、お互いの親友にエールを送るというのは、これまた面白い脚本のアイデアだ。


シーン頭のカメラを「校外」「屋外」の設定にすると

メインタイトル映像明けも興味深いカットで始まった。

いつも書くことだが、シーン(場面)が変わった最初のカットは、できるだけ「5W1H」が分かるようにするべきだ(と思っている)。
 ※「5W1H」とは、英語の6つの疑問詞の頭文字を使って、物事を分かりやすく伝えたり、調べたりするときの考え方のひとつ。

その意味では、このカットだけでは完全に「5W1H」の全てが分かるわけではないが、学校での始業前で、長袖、厚手の服を着る季節で、天気が良い日でないことは分かる。

小さな情報だが、映像で提示すべきテレビドラマとしては、「情報が見て分かる」のは実は大切なことなのだ。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

そして、私があえてこのカットに注目したのは、カメラが「屋外」にある「設定」で撮影されていることだ。

一般的に考えると、「学校で雨が降っている」を映像化したい場合、カメラは廊下にあって、その廊下沿いの窓ガラスに雨が当たっている情景を作ると思う。

そうすれば、撮影する場所を「校内」だけにすることができるからだ。

しかし、今回のようにカメラを「校外」「屋外」の設定にすると、この直前(メインタイトル映像前)が「屋外のシーン」だったから、映像的に馴染むのだ。

そう、メインタイトル映像明けに、唐突に屋内のシーンにならないで済むのだ。

細かいことだが、「ほぼ全編がスタジオセット撮影」である本作だからこそ、映像劇な閉塞感を排除する目的でも「屋外風に見せる」のは有効な作戦なのだ。


「次第に強まる雨、雨音」には、どんな効果があるのか?

ついに、ヘブン(トミー・バストウ)が松江を離れること、庄田(濱正悟)が次期校長になること、錦織(吉沢亮)のつらい真実が、生徒たちに告げられた。

である。この場面で印象的なのは「次第に強まる雨、雨音」

映像表現において「雨」「雨音」にはたくさんの役割がある。

今回で使われた「次第に強まる雨、雨音」には、どんな効果があったのか?

一つは「感情・心理の可視化」である。
登場人物の孤独、不安、悲しみ、葛藤などの “内面の揺れ” を外側に自然現象として示すと同時に、心情の重さや沈み込みを、雨の湿度や暗さで補強する効果があった。

二つ目は「空気感・世界観の演出」だ。
静かな雨は “内省的” “停滞” “静謐”といったムードをつくるし、雨音はリズムとして働き、シーンのテンポや緊張感を調整する。

三つめは「物語の転換点の予兆」だ。
雨は「変化の前触れ」として使われることが多く、物語の節目を示す象徴として機能する今回では、これらすべての効果を期待して、演出として「雨を降らせた」だろうし、しかも「屋外設定」にすることで、強調したのだ。

また、「次第に強まる雨、雨音」には、人物の感情が “抑えきれず膨らんでいく” 様子を外的に示したり、物語がクライマックスへ向かうことを視覚・聴覚的に強調するし、小雨→土砂降りという変化は、物語が “後戻りできない段階” に入ったことを象徴する。

今回では、これらすべての効果を期待して、演出として「雨を降らせた」だろうし、しかも「屋外設定」にすることで、強調したのだ。

そして、ある意味で、冒頭に提示した「窓に当たる雨のアップ」がネタ振りであり、その後が “回収” になって、エピソードとして固まり感の創出に成功したと思う。


「明治24年11月15日」なる日付テロップについて

さて、本作では誠に珍しく「明治24年11月15日」なる日付テロップが入った。

ちなみに、(興味がない人もいるでしょうあ)[史実]では、熊本到着日は 1891年(明治24)11月19日だ。

これは、『小泉八雲全集』(第一巻・年譜)、『小泉八雲伝』(平川祐弘)、『ヘルン先生の松江日記』 などで 「11月19日、熊本着」 と明記されている事実である。

そして、当時の交通事情(松江→宍道→三次→可部→呉→船で門司→鉄道で熊本)を考慮して「4~5日間」が旅行期間であると考えられており。

主要な説は「11月15日、松江出発」となっている。

というわけで、「なぜ、ここだけ史実に寄せるの?」「わざわざ明記するの?」とは思う(引っ越し期間は描かないと思うので)。

しかし、これまた[史実]を紐解けば、錦織のモデル「西田千太郎」は生まれつき体が弱く、八雲と一緒に仕事をしていた時期から、すでに結核という重い病と闘っており、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が松江を出発する際も体調が優れずに見送りに行けなかったのは、本作のとおりであり。

ハーンの人柄を慕っていた200人を超える教え子たちが、早朝から自宅の門の前に集まり、恩師との別れを惜しんだり。

船着き場では、彼らの熱烈な「万歳」の声が響き渡る中で船出を迎えたのも、ほぼ本作の描写のとおりだった(と思う)。

もちろん、ハーンと西田の交流も、熊本時代以降も続いたのである。


ここ数週間、ヘブンのバディがトキではなく錦織だから

ラストの「虫の音」が悲しく響いたわけだが。

掛け値なしで書けば、やはり「もっともっと、トキとヘブン、トキと知り合いとの別れを見たかった」となるし。

別れだけなく、「生まれ親しんだ松江を離れる決意をする主人公としてのトキを見たかった」のが正直なところだ。

そう感じさせる最大の原因は「物語を錦織主導にしすぎ」だからである。

あえて厳しく書くなら、「錦織が動くから、物語が動く」が第一で、第二に「ヘブンが動くから、物語が動く」となって、肝心の「トキが物語をけん引する」が最弱化しているから、《ほぼトキ不在》で物語が進行して見えるのだ。

まあ、こういっては何だが、ここ数週間の描写では、ヘブンのバディが‘トキ’ではなく‘錦織’に仕立てられているからしょうがない。

できれば、ヘブンが熊本移住で悩んでいる際に‘トキ’がよき相談相手して描いてほしかったのに、そこをやらずに言い合いばかりになったのが《ほぼトキ不在》の元凶だろう。

まあ、前回でタエ(北川景子)や勘右衛門(小日向文世)たちから、「トキが周囲の人に相談しにくい状況下だった」ことは言及があるので、ある意味で《トキは蚊帳の外状態》なのは、好意的に脳内補完はできるが。

それでも、「もう少しトキを描いてほしかった」というのは残るが。


あとがき

少し厳しいことも書きましたけど、先々週から比べたら次第に良くなっているとは思います。

ただ、やっぱり、できれば、もっと、「主人公のトキを描いてほしい」とは思いますね。

それと、また封印状態に入ってしまった「怪談」も、ぼちぼち描いてほしいです。

でもこれで、しばらくは錦織が何かと登場するのは減ると思いますので、コミカル&シリアスなホームドラマが戻るのに期待します。

で、明日の「ダイジェスト版」ですけど、このまま編集したら、《ほぼトキ不在》になるので、お手並み拝見です。


厳選『ばけばけ』で描かれない秘話の解説リンク集
●八雲×セツ「万物に霊が宿るアニミズム思想」 → こちら 新窓で開きます
●三之丞(板垣李光人)モデル“静かなる光” → こちら 新窓で開きます
●錦織(吉沢亮)モデル“八雲+セツとの友情” → こちら 新窓で開きます
●妾か女中か?“八雲が求めた女中の条件” → こちら 新窓で開きます
八雲はモラハラ夫?“繊細で偏屈な素顔” → こちら 新窓で開きます
●八雲先生が"英語"で伝えた日本の文化 → こちら 新窓で開きます
"禁じられた結婚"とセツ・マティの共鳴 → こちら 新窓で開きます
※他のリンクは下記↓の折り畳みの中!

文中の方言風の創作セリフは、下記のサイトを利用しています。
恋する方言変換 | BEPPERちゃんねる 新窓で開きます


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拍手[37回]

プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮

フジテレビ系・木曜劇場『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)InstagramTikTok

第6話『人気配信者が廃墟で失踪・・・ 幽霊保険!?』の感想。



深山リサーチのオフィスで、天音(玉木宏)らは、心霊配信者アンディ(アントニー)が日本の廃病院で消息を絶つ瞬間を映した映像を目撃する。依頼は“幽霊保険”案件であり、母親から保険適用の申請が出されたという。真相解明のため、天音、凛(岡崎紗絵)、沙月(結城モエ)は岩鬼村の廃病院へ向かうが、佐久間(渡部篤郎)らも捜索に加わり、疑念と不安が交錯する中、廃病院への潜入が始まる…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---


原作:なし
脚本:大石哲也(過去作/遺留捜査シリーズ)
演出:星野和成(過去作/未来への10カウント,シッコウ!!~犬と私と執行官~) 第1~3,6
   守下敏行(過去作/相棒,元科捜研の主婦) 第4,5
音楽:得田真裕(過去作/俺の話は長い,家売るオンナシリーズ,アンナチュラル)
主題歌:東京スカパラダイスオーケストラ「崖っぷちルビー (VS. アイナ・ジ・エンド)」
※敬称略


一話完結のドラマとしては一貫性を欠いただけ

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―――ここまで、ごあいさつ―――

「最後まで見た自分に金メダルをあげたい!」そんな気分である。


とにかく、今回の感想は「どこから書けばよいのか分からない!」レベルだ。

まず、冒頭はコミカル路線で始まったにもかかわらず、それを突中で捨てて、事件要素を持ち込んで、大きく方向転換しているのが大問題だ。

その結果、序盤での「心霊騒動」における積み重ねを自ら否定する形となっている。

よって、心霊騒動の要素も時間稼ぎ以上の役割を果たしていない状況だ。

これ、後半の「娘の失踪事件」を本気で描くつもりであれば、最初から「娘の失踪事件」を絞るべきでは?

逆に、コミカルをやりたいなら最後まで貫くべきだったのでは?

きっと、脚本の構想段階では「心霊スポット騒動と失踪事件をくっつけて」なんて書き始めたのだろう。

しかし、全体の尺が埋まらないため、序盤のコミカル要素を増やし、途中から本来の路線に引き込んだため、結果的に「ニコイチ」になったと推測はできる。

でも、結局終わってみれば、一話完結のドラマとしては一貫性を欠いただけである。

もちろん、「オリエント保険」の敏腕秘書・濱名沙月(結城モエ)を生かしたいのであれば、「いじめ保険」を扱った第4話のように、秘書を中心に据えた展開にすべきだったのは、後の祭りである。

最後に、次回の感想の投稿がなかったら継続視聴をやめたという意味です。


すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”

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【これまでの感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 


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拍手[6回]

連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第94回第19週『ワカレル、シマス。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


ヘブン(トミー・バストウ)を松江に残らせるため、錦織(吉沢亮)は連日、あの手この手とアプローチを続ける。一方、トキ(髙石あかり)はサワ(円井わん)の言葉がずっと引っかかっていた。気持ちが揺れる中、トキはタエ(北川景子)の元を訪れ、三之丞(板垣李光人)と再会する。久しぶりに母と弟と過ごす時間に、トキの松江に残りたい思いが高まる。そんなトキに、タエと三之丞がかけた言葉は?
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7,13,14,19
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9,12,15,18
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10,16
   小島東洋(過去作/『ばけばけ』助監督) 第11
   小林直毅(過去作/『ばけばけ』助監督) 第17
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
副音声日本語吹替:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、川野秀昭、田中陽児|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、毛尾喜泰|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田直矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲、武井美晴|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規、眞弓敬司|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉、大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子、厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華、澤井洸、平松康、吉田隆広、布川紗生、大島櫻子|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之、高浪隆史、三好勇作、石井千尋|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和、鍛本美佐子|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦、栗野洋子|特殊メイク:江川悦子、権田日和|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜、大野陽平、小峰陸矢、上野香織、佐伯木乃実、畝岡歩未、増田愛海、野曾原明香|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治、斎藤明日香、竹本航、徳岡美紀、奥山温子|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録:木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉、松島彩|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章、ネイサン・ベリー、米倉リエナ|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人、川村肇|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳|書道指導:今口鷲外
※敬称略




《今回は描くべきことが多い》からテンポがよく小気味よい

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前回の感想では、今週の演出担当である本作チーフ監督・村橋直樹氏の演出術について、少し厳しいことを書いた。

それは、今週の映像表現が、少々であるが《雰囲気重視》《ムードや映え優先》になりすぎており、本来はもっと丁寧に描くべき部分(主人公の本音描写など)が蔑ろになっているのでは? という指摘であった。

でも、きょうの木曜日の演出は、前3日間とは少々異なっていた。

それは、村橋氏が得意としてきた「間合いを多めに取る」「セリフをしゃべらないキャラで魅せる」が、脚本の内容に合わせて最適化されているのだ。

そう、アバンタイトルから「テンポがいい」「小気味よい」と感じるのだ。

その理由であるが、(想像の域ではあるが)《今回は描くべきことが多い》だからだと思う。

というのは、本作のメインタイトル映像には、そもそも、月曜日用の「長尺版(1分38秒)」と、火~金曜日向けの「短縮版(1分18秒)」の「2種類」存在し、なぜか今週は3日間連続で「長尺版」だったのだ。

しかし、木曜日のメインタイトル映像は通常に戻っての「短縮版」ということは、そう《今回は描くべきことが多い》と推測できるわけである。

よって、直前の3回のように《雰囲気重視》《ムードや映え優先》を “やっている場合でない” という裏事情が予想でき、その結果として「軽快な」「歯切れよい」となったと思うのだ。


間合いを十分に取るのは、1話に二度にとどめておくべき

前3回分と異なる点はまだある。

メインタイトル映像明けで、人目を気にしてショールを頭から被るトキ(高石あかり※高=はしごだか)と錦織(吉沢亮)が本屋で偶然に出会うシーンがあった。

これまでの錦織は「騒動は一応落ち着いた」と描いてきたのに、今回では「騒動は落ち着いた」けど、トキの「心の傷はまだ癒えていない」と、先週からの状況の変化を描いたのだ。

その後も、久しぶりの「ママさん」からの、自ら料理をするようになったタエ(北川景子)、荷おろしの仕事をするようになった三之丞(板垣李光人)の状況の変化を描いた。

見栄えのよろしくないタエが作った昼食、汚れが指に染みついているような三之丞の手としわくちゃの封筒など、タエと三之丞の変化だけでなく、懸命に生きよう、前に進もうとする心意気まで見て取れる細部の演出だ。

しかも、今回ではだいぶ削られた《雰囲気重視》《ムードや映え優先》だが、タエの次のセリフの直後にだけは、たっぷり生かした。


タエ「いいんですよ。
 自分のために… 正直に生きて」

やはり、間合いを十分に取るのは、できる限りピンポイントで1話中に一度か、多くて二度にとどめておくべきだと思う。

そのほうが、今回の《タエの優しい言葉に勇気をもらうトキ》が、他の部分から際立つと思うのだ。


先週からのモヤモヤを、勘右衛門のセリフがうまく払拭

そして、トキとヘブンたちの熊本移住に関して、タエと三之丞に続いて、意思表示をする気持ちに変化した勘右衛門(小日向文世)の登場だ。

ここで、少しだけ脱線してみる。

おそらく、一部の読者、視聴者の中には、例の「ラシャメン疑惑騒動」は熊本に移住したって「知られたらまた起こる」と思っていたのでは?

もちろん、私が投降した「補足記事」を読んでくださった読者様なら「そうではない」ことはお分かりだと思う。
 ※参考:朝ドラ「ばけばけ」愛する妻を守るための決断と誤算~八雲に「熊本は大嫌いだ」と言わせたジゴクの3年間~|ディレクターの目線blog 新窓で開きます

しかし、普通に『ばけばけ』を見ているなら、熊本でだって「異人男性と結婚した富裕層の妻」は‘ラシャメン’ではないかと疑念を持たれると思うはずである。

その辺のモヤモヤを、次の勘右衛門のセリフが、うまく払拭したと思う。


勘右衛門「それは 熊本も どこも同じじゃ。
 だけん… 一緒におらん方がええ」


週5回放送の朝ドラとしては、華麗なまでの「起承転結の転」

今回で、いいや、今週の展開の中での「次回の金曜日を控えた木曜日」としての内容でよかったのは、次の勘右衛門のセリフから開幕した終盤の約3分間だ。


勘右衛門「ペリー お主は うそが嫌いなんじゃろ?」

ヘブンの “嘘が嫌い” を上手に組み込んで、ヘブンの本心を隠しながら描いてきた4日間の集大成というか、まとめである。

と同時に、週5回放送の朝ドラとしては、華麗なまでの「起承転結の転」と言えよう。


ヘブン「ワタシタチノ コト ダレモ シラナイ…。
 クマモト… イキマショウ」
勘右衛門「おじょ… ペリーと行きなさい」


虫の声、虫かご、秋風に舞う枯れ葉、夕景で描いたもの

松野家の涙なみだのやり取りを見守る錦織含めて、今回で二度目の《雰囲気重視》《ムードや映え優先》だ。

手持ちカメラで、被写体を寄り気味でとらえて臨場感を創出し。

「虫の声」「虫かご」「秋風に舞う枯れ葉」、そして「夕景」によって、《人の記憶や感情を描く》ことに成功している。

例えば、「虫の声」や「虫かご」では、夏の終わりの寂しさ、成長、別れを表現できる。

「虫かご」と「舞う枯れ葉」では、“季節の循環” を象徴する映像になる。

そして、「夕景の中の虫の声」と「秋風に舞う枯れ葉」によって、ノスタルジックな気配を強く出せる。

もちろん、「虫かご」には〈子ども時代の名残〉〈何かを大切にしていた記憶〉〈手放すことへのためらい〉が内包されており。

枯れ葉には〈心の揺れ〉〈過ぎ去る季節〉〈何かが終わる気配〉。

虫の声には〈音による記憶の刺激〉〈夏の終わりや子ども時代の記憶の呼び起こし〉の役割もある。

これら象徴的な要素を盛り込んで、まさに‘きれい’に総括したと思う。


あとがき

ラストの3分間を含めて、《映像で見せて(show)魅せる(captivate)べき!》をやり切りましたね。

さらに、《日常がふと特別に変わる瞬間を映し、心を動かすのがドラマ》としても成立したと思います。

1回1回を抽出する(明日が残っていますが)と、あれこれ気になる点はある今週ですが、全体を俯瞰で見れば、やっぱり村瀬演出らしい “メリハリとコミカルを生かした演出” によって、「熊本編」のための巧みな踏み台になったと思います。


厳選『ばけばけ』で描かれない秘話の解説リンク集
●八雲×セツ「万物に霊が宿るアニミズム思想」 → こちら 新窓で開きます
●三之丞(板垣李光人)モデル“静かなる光” → こちら 新窓で開きます
●錦織(吉沢亮)モデル“八雲+セツとの友情” → こちら 新窓で開きます
●妾か女中か?“八雲が求めた女中の条件” → こちら 新窓で開きます
八雲はモラハラ夫?“繊細で偏屈な素顔” → こちら 新窓で開きます
●八雲先生が"英語"で伝えた日本の文化 → こちら 新窓で開きます
"禁じられた結婚"とセツ・マティの共鳴 → こちら 新窓で開きます
※他のリンクは下記↓の折り畳みの中!

文中の方言風の創作セリフは、下記のサイトを利用しています。
恋する方言変換 | BEPPERちゃんねる 新窓で開きます


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連続テレビ小説「ばけばけ」

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第93回第19週『ワカレル、シマス。』の感想。


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松江を離れたいと錦織(吉沢亮)に告げたヘブン(トミー・バストウ)。翌朝、迎えの時間を過ぎても現れない錦織に、ヘブンは不安をおぼえる。そんな中、やっと現れる錦織。出迎えたトキ(髙石あかり)とヘブンは、錦織の姿に驚く。一方、タエ(北川景子)、勘右衛門(小日向文世)、三之丞(板垣李光人)は熊本に行きたいヘブンの提案について話し合う。タエと勘右衛門の話は、次第にトキの様子に変わっていく。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
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   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10,16
   小島東洋(過去作/『ばけばけ』助監督) 第11
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タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
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プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、川野秀昭、田中陽児|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、毛尾喜泰|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田直矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲、武井美晴|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規、眞弓敬司|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉、大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子、厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華、澤井洸、平松康、吉田隆広、布川紗生、大島櫻子|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之、高浪隆史、三好勇作、石井千尋|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和、鍛本美佐子|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦、栗野洋子|特殊メイク:江川悦子、権田日和|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜、大野陽平、小峰陸矢、上野香織、佐伯木乃実、畝岡歩未、増田愛海、野曾原明香|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治、斎藤明日香、竹本航、徳岡美紀、奥山温子|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録:木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉、松島彩|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章、ネイサン・ベリー、米倉リエナ|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人、川村肇|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳|書道指導:今口鷲外
※敬称略




女性らしい色気を強調しない作風の中でのレンズフレア演出

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今回の感想も、演出のプチ解説から始めよう。

メインタイトル映像明け、縁側沿いの部屋で衣類を畳んでいるトキ(高石あかり※高=はしごだか)が姿見に映っている、本作『ばけばけ』では珍しく、女性らしい色気を幻想的に映し出したカットがあった。

この “色気を幻想的に” に一役買った照明(正しくは、撮影、および編集効果)が、下図で黄色で印をつけた「レンズフレア」である。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

レンズフレアとは、カメラのレンズ内部で光が反射・散乱することで生まれる光のにじみであり、映像表現としてよく使われる効果である。

映像編集ソフトを使えば簡単に作ることができ、光源の位置や明るさを調整することで自然な仕上がりになるし。
使い方次第で映像の雰囲気を大きく変えられる便利な効果だ。

カメラの動きに合わせて、黄色い丸の中のレンズフレアが微妙に動いて見え隠れするのが見て取れると思う。

それにしても、本作は「遊郭」「遊女」を取り扱う割に、いわゆる女性らしい色気を強調しない作風だ。

当然、「朝ドラだから」が大きな理由だろうし、あまりやりすぎると「妾」という現代では通用しにくい立場も強調しかねないとの判断もあろう。

そんな中での、今回のレンズフレアによる演出は、私にはとても印象的に映った。

昨日、2026年2月7日に本作がクランクアップしたとの公式発表があり、「このまま本作は無難に終わるのかなぁ」なんて諦めていたから、こういうちょっとしたチャレンジでも嬉しいものである。
 ※情報源:『ばけばけ』の撮影がクランクアップ - 「ばけばけ」さまざまなトピックスを紹介 - ばけばけ - NHK 新窓で開きます


トキのラシャメン疑惑騒動」のその後の様子が描かれた

5分過ぎ、「ついに、明瞭に!」である。


タエ「まだ… 収まっていないのです」

前々回、前回と、「ショールを被って外出するトキ」でやんわりと(厳しく言えば「中途半端」に)描いてきた「トキのラシャメン疑惑騒動」のその後を、ようやく3日目(3回目)で盛り込んできた。

もちろん、私が投降済みの下記の「補足記事」を読んでくださった読者様なら「続いてるんでしょ?」と分かったと思う。
 ※参考:朝ドラ「ばけばけ」ドラマと違う!? 史実のセツが耐えた「ラシャメン」という差別的な言葉と愛の脱出劇!|ディレクターの目線blog 新窓で開きます

しかし、さすがに「ショールを被って外出するトキ」だけでは、騒動がどの程度収まっているのか想像の域を出なかったと思う。

その意味で、この度の描写で、ようやくスッキリである。

と同時に、第88回(2月4日放送)で、サワを心配したサワ(円井わん)となみ(さとうほなみ/ほな・いこかex.ゲスの極み乙女) が駆けつけた際に、タエ(北川景子)、勘右衛門(小日向文世)、三之丞(板垣李光人)は来なかったことも、納得できた。

そして、いつも言うように、「主人公が生きている世界」と「主人公が生かされている世界」と「主人公が生きているから成立する世界」がリンクしているように描くことは、ドラマの世界観として重要なことだ。

タエと三之丞、勘右衛門が、トキと同じ時代を生きている限りは描くべきなのだ


「苦悩している」しかないから、トキの本心が見えない!

今回の脚本と演出で、最も評価したいのが、「トキの本心が見えた(分かった)こと」だ。

よく考えればわかることだが、今週は月曜日から、様々な登場人物の心情を描いてきている。

トキとヘブン(トミー・バストウ)に始まって、司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)、錦織(吉沢亮)と江藤知事(佐野史郎)だけでなく、かなり脇役的存在のサブキャラクターまで心の内を描いてきた。

しかし、冷静に考えれば、“ドラマ” としては “ヘブンの本心” そのものが明瞭に描かれていたとは言い難いのだ。

よって、当然の如く、“トキの本音” も明瞭とは言えなかったのだ。

但し、ヘブンの本心については、第70回(2026年1月9日放送)の家族対面式の場面で「嘘はダメ」」と宣言したから、熊本に行きたい理由が「冬の松江が寒すぎてジゴク」以外もあることは、容易に想像できる。

しかし、トキの本音に至っては「悩んでいる、迷っている」という表現しかないから、今一つ見えてこなかったのだ。

だって、私だって、貴方だって「松江が好きだから」「故郷を離れたくないから」だけで、愛するヘブンに反発し続けるのには納得できなかったと思う。

いや逆に「生まれた町でラシャメンと揶揄され続けるなら、遠くに逃げたい!」と思うほうが自然だと思って見ていたのでは?

「なぜ、このような受け取り方にならざるを得なかったのか?」の答えは簡単だ。

トキが《苦悩すると口数が増えるタイプ》とするのは難しい

「兎にも角にもヘブンに反対するトキ」という表面的な描写を優先させたから、内面的な描写が蔑ろになっただけ… である。

もっと正確に言えば、ヘブンと錦織の関係の描写を盛り込みすぎたために、トキのパートが薄まっただけ… だったのだ。

このことは、月曜日から評価してきた今週の村橋直樹氏の「間合いを多めに取る」「セリフをしゃべらないキャラで魅せる」をやりすぎたために、《雰囲気重視》《ムードや映え優先》によって、トキの本音描写が他の部分より貧弱になってしまったのだ。

視点を変えれば、他のキャラクターよりも「出番が多く」「セリフも多い」トキは、《雰囲気重視》《ムードや映え優先》の中に埋没してしまった… そういうことだ。

もちろん、「トキは、苦悩しているから口数が多い」という表現になっていると受け止めることもできる。

人間の「悩み」や「苦しみ」と “口数” の関係は、実は一方向ではなく、大きく二つのタイプに分かれることが多い。

多くの人は、「内側に意識が向く」「エネルギーが落ちる」「‘話しても伝わらない’と諦める」から《口数が減るタイプ》になる。

しかし、「不安を言語化して整理しようとする」「誰かに理解してほしい欲求が強まる」「沈黙が不安になる」の人は《口数が増えるタイプ》となり、これが “トキ” だ。

そして、脚本家も演出家も制作統括も、トキは《苦悩すると口数が増えるタイプ》として描いている。

しかし、さすがに、現状の表現では、多くの視聴者がトキは《苦悩すると口数が増えるタイプ》として受け取るのは難しいと思う。

もちろん、私は好意的に脳内補完しているから、分かったつもりで見ているが。

逆に、この辺が受け入れられずに、今作を評価しない人がいるのも、やはり頷けるのだ。

まあ、不安だろうが嬉しかろうが、トキは《どんな時でも口数が多いタイプ》と思っておけば間違いない! と思う(笑)

あとがき

サワが親友として、もっとハッキリ言ってもよかったと思いますね。

それと、「なぜ、トキは、ヘブンと話し合わないの?」とも思います。

どうも、今週の《雰囲気重視》《ムードや映え優先》の演出志向が、あらゆる描写を曖昧にし始めているような気がしてきました。

まっ、「脚本は明確に描いているのに」とは言えないですけど。

「トキとヘブンの夫婦の物語」として “ふたりの会話” を盛り込んだほうがスッキリしたと思います。

もちろん、万能な演出なんて、そう簡単にできませんけどね。

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私 結婚できないんじゃなくて、しないんです
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わたしを離さないで
私のおじさん~WATAOJI~
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