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朝ドラ「ばけばけ」小泉セツと‘最初の夫’銀二郎(寛一郎)のモデル…前田為二:激動の時代に翻弄された二人の軌跡(結婚、離婚、再会)
Generated with Microsoft Copilot (AI)

【忠告】
朝ドラ『ばけばけ』の先の展開のネタバレは基本的に書いてありませんが。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、妻・セツ夫妻の[史実]について触れます。
あとから「読むんじゃなかった…」がないよう、読む際は自己責任でお願いします。
 ※以下、敬称は部分的に使い分けをします。



セツと「前田為二」が離婚に至る過程や再会についての史実

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―――ここまで、ごあいさつ―――

俳優・高石あかり(※高=はしごだか)さん主演でヒロイン・松野トキを、トミー・バストウさんがレフカダ・ヘブンを演じ、文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、妻セツをモデルにしたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)。

第12週『カイダン、ネガイマス。』の第60回(2025年12月19日放送)では、主人公・松野トキ(高石あかり※高=はしごだか)に、最初の夫であった山根銀二郎(寛一郎) から一通の手紙が届く場面が描かれました。

そこで今回は、セツと銀二郎の “モデル” である「前田為二」との離婚に至る過程や、離婚後の再会についての[史実]を記してみます。

きっと、「本編」では採用されない(と思います)エピソードを知ることになるので、より今作を深読みできると思います。


侍の家系と厳しい生活の現実

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻となるセツは、もともと松江藩の士族である稲垣家の娘であった。

彼女が最初に結婚したのは、明治19(1886)年のことである。

相手の前田為二は、旧鳥取藩士の次男であり、稲垣家に婿養子として迎えられた。

当時の日本は明治維新による大きな変化の中にあり、かつての武士階級であった稲垣家も、経済的に非常に苦しい状況に置かれていた。

為二は婿養子という立場から、家計を支えるために懸命に働いたが、稲垣家の借金や生活苦は深刻であった。

こうした家計の困窮に加え、夫婦間の性格の不一致や、婿養子としての肩身の狭い立場なども重なり、二人の関係には次第に深い溝ができていった。

明治19(1886)年、ついに為二は再起を期して大阪へと向かい、家を離れることになった。


明治23(1890)年の離婚とそれぞれの道

為二が大阪へ去った後も、正式な籍は残っていたが、生活が元に戻ることはなかった。

セツと為二が法律上で正式に離婚を成立させたのは、明治23(1890)年のことである。

この年はちょうど、小泉八雲が英語教師として松江に赴任してきた年でもあり、セツは離婚直後に八雲と出会うことになる。

一方、大阪に渡った為二は新しい生活を始めた。

セツの回想録では苦境が描かれているが、別の記録では商売を始めて成功したとも伝えられている。

史料によって異なるため、彼の人生は一面的には語れない。

しかし、セツは為二との辛い別れを経て、自立して生きる決意を固めていた時期に、運命的な再婚相手となる八雲と出会うことになる。

武士の家系に生まれた彼にとって、慣れない世界で生き抜くことは容易ではなかったはずだが、彼は彼なりに新しい時代に適応しようと努めていたのである。


牛込での再会と語り継がれる記憶

二人が別れてから長い年月が流れた明治時代後半、東京の牛込で生活していたセツのもとを、為二が突然訪ねてきたことがあった。

セツは八雲と結婚し、幸せな家庭を築いていたが、かつての夫の来訪に非常に驚いた。

この時の様子について、セツは後に自身の思い出の中で次のように述べている。


「ある時、前の良人の前田という人が、ひょっこり牛込の家を訪ねて参りました。私は驚きましたが、いくらかのお金を与えて帰しました。それが、その人を見た最後でございました」

 ※出典:小泉セツ『思い出の記』

この再会において、セツの目には為二が落ちぶれた姿に見えたかもしれないが、それはあくまで彼女の主観によるものである。

為二がどのような思いで彼女を訪ねたのか、その真意は今となっては分からない。

しかし、この一瞬の再会を最後に、二人の人生が再び交わることはなかった

それぞれの場所で、明治という激動の時代を精一杯に生き抜いた二人の、静かな終止符であった。


あとがき

前田為二さんについての史実を整理すると、単なる放浪ではなく、当時の武士階級が直面した厳しい社会状況が見えてきますね。

セツさんも為二さんも、それぞれが自分の人生を必死に切り開こうとしていたことが伝わり、歴史の重みを感じます。

過去の苦難を乗り越えて八雲さんを支えたセツさんの強さは、こうした経験から育まれたものだったのかもしれません。

ドラマで描かれるフィクションの奥に、こうした史実を知ることで、物語がより深く、温かく感じられると思います。

読者の皆様の “ドラマを楽しむ” ためのお役に立てれば幸いです。


参考・出展

『小泉セツとハーンの物語: ー小泉八雲「怪談」誕生のひみつー』三成清香(著)少年写真新聞社 新窓で開きます
『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』工藤美代子(著)毎日新聞出版 新窓で開きます
『ヘルンとセツ』田淵久美子(著)NHK出版 新窓で開きます
『セツと八雲』小泉凡(著)朝日新聞出版 新窓で開きます
『小泉八雲とその妻セツ 古き良き「日本の面影」を世界に届けた夫婦の物語』青山誠(著)KADOKAWA 新窓で開きます
『面白すぎて誰かに話したくなる 小泉八雲とセツ』伊藤賀一(著)リベラル社 新窓で開きます『八雲の妻:小泉セツの生涯』長谷川洋二(著)今井書店 新窓で開きます
『小泉八雲と妖怪』小泉凡著(著)玉川大学出版部 新窓で開きます
『怪談・骨董』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『日本瞥見記(上・下)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『東の国から・心)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『思ひ出の記』?小泉節子(著)・小泉八雲記念館(監修)ハーベスト出版 新窓で開きます
『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』?NHK出版(編)NHK出版 新窓で開きます
『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』?櫻庭由紀子(著)内外出版社 新窓で開きます
■「詳述年表ラフカディオ・ハーン伝」板東浩司(著)英潮社
■「小泉八雲: 思い出の記・父八雲を憶う」小泉節子,小泉一雄(著)恒文社
■https://archive.org/details/kottojapanese00hearrich KOTTO
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.79571/page/n13/mode/2up KWAIDAN
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45846/page/n11/mode/2up Out Of The East
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami0lhear Glimpses of unfamiliar Japan vol.1
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami02hear Glimpses of unfamiliar Japan vol.2
■「松江に於ける八雲の私生活」桑原羊次郎(著)山陰新報社
『ラフカディオ・ハ-ンのアメリカ時代』?エドワード・ラロク ティンカー(著)木村勝造(訳)ミネルヴァ書房 新窓で開きます
■『小泉八雲事典』?平川祐弘(監修)恒文社
『夢の途上: ラフカディオ・ハーンの生涯〈アメリカ編〉』?工藤美代子(著)集英社 新窓で開きます
『評伝ラフカディオ・ハーン』E.スティーヴンスン(箸)遠田勝(訳)恒文社 新窓で開きます
『小泉八雲 日本を見つめる西洋の眼差し』筑摩書房編集部(箸) 新窓で開きます
『明治時代の人生相談』山田邦紀(著)幻冬舎 新窓で開きます
■富田旅館の証言(国立国会図書館サーチ〈NDLサーチ〉 新窓で開きます
レファレンス協同データベース 新窓で開きます
島根郷土資料刊行会編「西田千太郎日記」 新窓で開きます
国立国会図書館蔵書「小泉八雲全集 第1-17巻」 新窓で開きます
名古屋大学「人事興信録」データベース 新窓で開きます
書陵部所蔵資料目録・画像公開システム - 宮内庁 新窓で開きます
『父小泉八雲』小泉一雄(箸)小山書店 新窓で開きます



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2025/12/19 14:38 記事更新
連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第60回第12週『カイダン、ネガイマス。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


トキ(髙石あかり)はヘブン(トミー・バストウ)のために、大雄寺に「水あめを買う女」を聞きに訪れる。花田旅館では、夜な夜なヘブンと怪談を語る喜びを平太(生瀬勝久)たちに伝え、トキは幸せの最中にいた。そんなトキの元に、錦織(吉沢亮)がヘブンのために怪談を話してほしいと頼みにやってくる。既に話し始めているとうれしそうなトキに、錦織はある不安を告げる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9,12
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10
   小島東洋(過去作/この花咲くや,ブギウギ) 第11
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
副音声日本語吹替:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋,鈴木航,川野秀昭|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘|美術進行:澤幸樹、嶋原広起|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田亜矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉,大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子,厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華,澤井洸、平松康、吉田隆広|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和,鍛本美佐子|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦|特殊メイク:江川悦子、権田日和|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治,斎藤明日香、竹本航|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉,松嶋彩|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章,ネイサン・ベリー|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人,川村肇|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳
※敬称略




トキはひとり“”で生きているわけではない…のだから

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―――ここまで、ごあいさつ―――

メインタイトル映像明けから、いい感じだ。

当ブログでは、時々書かせていただく‘三つ’のことがある。

《主人公が‘その世界’にいること、‘その世界’に受け入れられていること、そして主人公がいるから‘その世界’が成り立っていること… この三つが重なっているとき、ドラマは深くなる》

《主人公が‘その世界’の中にいて、‘その世界’から意味を与えられ、主人公の存在が‘その世界’をつくっている… この関係がきちんと描かれていることが、よいドラマの条件である》

《主人公がどんな場所にいて、どんな人たちに支えられ、主人公がいることでその世界が動いている… この三つがつながっていることが、ドラマにとって大切である》

この 良作ドラマであるための三つの掟” に準ずれば、今回で描かれた《トキと朝田旅館との関係》は実にいい感じだと思う。

やはり、トキ(高石あかり※高=はしごだか)はひとりで生きているわけではないのだ。

たとえば、最近は描かれる機会が減ったが、ヘブン(トミー・バストウ)の朝食は花田旅館の女中・ウメ(野内まる)が毎朝運んでいるから、少なくとも「毎日、トキとウメは会話をしている」わけであり。

朝田旅館とトキの父・司之介(岡部たかし) は牛乳配達が縁で、これまた「毎朝会話がある」と考えられるのだ。

よって、さりげなく、トキがヘブンの夕餉と夜食を花田旅館に取りに行くのを描くは、前述の “良作ドラマであるための三つの掟” において正しいし。

女将のツル(池谷のぶえ) とウメが客に挨拶するくだりが入るだけで、「もうすぐ春の夕刻」であることが提示されたのも、《ドラマは常に「5W1H」を意識すべし!》の観点でも百点満点だ。

その意味で、もう少し‘厳冬を乗り越えた雨清水家’を盛り込んでほしい… ので、今後に期待しよう。


トキが怪談を語るほど、ヘブンは日本を離れ(られ)ない!?

物語は、ある意味でも核心に迫っていく。


錦織「君が 怪談を語れば語るほど
 滞在記は完成に近づき 先生は…
 ここから いなくなる ということになる」

私たち視聴者は、第1回(9月29日放送)で “トキとヘブンの未来” を見ている。

ヘブンはトキを「ママさん」と呼び、書棚には完成された何冊もの本が並び、ヘブンがトキのおでこにキスをするほどの仲良し夫婦であることが、すでに提示されているのだ。

よって、錦織(吉沢亮)が言った「先生は ここから いなくなる」は厳密にいえば‘嘘’である。

でも、だ、か、ら、本作が面白いのだ。

ヘブンはそう簡単に‘いなくならない’ことが分かっているから、この先どうやって‘日本に長居するのか?’が楽しみでしょうがなくなるのだ。

トキが怪談を語れば語るほど、実はヘブンは日本を離れ(られ)ない!

そうなると考えるだけで、楽しいではないか。


絶妙な間と静かな劇伴だけで“トキ”を感じるという仕掛け

ここ↓、本当に絶妙に微妙な表現をやってきている。


ヘブン「ワタシ…
 キク… スキデス。
 アナタノ ハナシ… アナタノ カンガエ…
 アナタノ コトバ… スキデス」

見よう、聞きようによっては、上記のヘブンのセリフは “ほぼプロポーズ” である(笑)

しかし本作の劇中では、ヘブンのトキに対する恋心のようなものを表現されていない。

では、一方のトキのヘブンに対する恋心はどう表現されているのか?

その答えが、このセリフのあとに出てきた「フフッ… はい」までの “約30秒間” もの “恥じらうトキ” だ。

ラストピースで完結してしまう淋しさと悲しさ、言葉を超えたコミュニケーションが通じる楽しさや面白さ、世話をする側とされる側を超越しつつある複雑な心境と心情… である。

それが、幾重にも折り重なったトキの気持ちを、ほぼ無言のお芝居で見せて(show)魅せて(captivate)きた。

副音声の解説も「うつむく、微笑むトキ。襷(たすき)を外す」だけ。

あとは、視聴者全員が「絶妙な間」と「静かな劇伴」だけで “トキの気持ち” を感じるという仕掛けだ。

怪談は「滞在記のラストピース」ではあるが、「ヘブンの来日期間を決めるラストピース」ではない!

そういうことだ。


語りの力量に大きく委ねるヘブンの気持ちは視聴者に通じる

昨今のテレビドラマや映画、漫画やアニメも、視聴者の理解力不足を補完するためにやたらと説明過多になっているのが実情だ。

しかし本作は、決して説明過剰状態に陥ってはいない

むしろ、逆行するかのように、内容の把握を視聴者に大きく委ねている。

そして、その「見聞きする人に大きく委ねる」ことことが、“トキが語り聞かせる怪談” とつながる

と同時に、ヘブンの立場に立てば「語り部の力量に大きく委ねる」が、私たち視聴者の本作、本作の作り手たちにつながるのだ。


貴方がトキやヘブンの立場になって“三つの違い”考えよう

さて、ここで「体験コーナー」をやってみたい。

「体験コーナーって何?」だろう(笑)

「体験コーナー」とは、読者である貴方がトキ、またはヘブンの立場になって “三つの違いは何なのか?” を疑似体験しながら考えよう! という試みだ。

では、始めよう!

これまで、怪談「鳥取の布団」は、第58回に「2バージョン」放送され、「水あめを買う女」は先日の住職版と今回(途中まで)の全2バージョンが放送された。

当然、それぞれに微妙に違いがあるので、まずは下記の「2×2バージョン」を読み比べていただきたい


「鳥取の布団」(1回目)

 ある鳥取の 寒い寒い 雪の降る田舎町に
 貧しく幼い兄弟が2人だけで暮らしていた。
 『兄さん 寒かろう』『お前も寒かろう』
 ボロ家には 家具も畳もなく手元に たった一枚の布団。
 2人が その一枚の布団に体を寄せ合い くるまっちょると
 『家賃を払え!払えねえなら もらっていくぞ!』と
 家の大家が2人から布団を取り上げ『出てけ!』と
 吹きすさぶ雪の中に兄弟を追い出した。
 『兄さん 寒かろう』『お前も寒かろう』
 そう言いながら2人は凍え死んでしまった
 宿屋のしゃべる布団はその大家が売った 兄弟のものだった。
 かわいそうに思った宿屋の主人が寺で お経を上げてもらうと
 ようやく…
 布団はしゃべらなくなったそうでございます。

「鳥取の布団」(2回目)
 鳥取の とある宿屋に
 客が布団に入ると
 『兄さん 寒かろう』『お前も寒かろう』と
 布団から声がする。
 『お前も寒かろう』。
 ボロ家には 家具も畳もなく手元に たった一枚の布団。
 体を寄せ合い くるまっちょると
 『家賃を払え!払えねえなら もらっていくぞ!』
 2人から布団を取り上げ『出てけ!』と
 吹きすさぶ雪の中に 兄弟を追い出した。
 かわいそうに思った宿屋の主人が
 寺で お経を上げてもらうと ようやく…
 布団はしゃべらなくなったそうでございます。

「水あめを買う女」(2回目)

 これは 初代藩主 松平直政公の頃のお話。
 そのころ 大雄寺の東側に小さな飴屋があったそうで…
 『ごめんなさいませ』
 ある夜更けに 一人の痩せこけたまるで かげろうのような女が
 『水飴を下さいませんか?』と店を訪れた。
 そしてそれは毎晩続きました。 店主は…

  ※放送分はここまで

「水あめを買う女」 (1回目・住職バージョン)

これは 初代藩主 松平直政公の頃のお話。
 そのころ この大雄寺の東側に
 小さな飴屋(あめや)があったそうで…
 『ごめんなさいまし』
 ある夜更けに 一人の痩せこけたかげろうのような おなごが
 『水飴を下さい』と店を訪れました。
 店主は 毎晩訪れてくる おなごの顔色が
 日に日に悪くなっていくのが気になり
 ある晩そ?っと後をつけてみたところ
 おなごは なんと…
 この墓の前で ふっと消えたのです。
 すると 墓の下から 突然
 『おぎゃあ おぎゃあ』と赤子の泣き声が聞こえてきました。
 『えらいことだが!
 店主は 慌てて 寺の者たちを呼び
 急いで 墓を掘ると…
 そこには あの女の亡骸(なきがら)が
 そして 傍らには 産まれたばかりの
 赤ん坊がおるではありませんか。
 おなかに子を宿したまま亡くなった母親が
 幽霊となって水飴を買いに店を訪れていたのです。

 ※参考までに追記します…


2つの「鳥取の布団」と「水あめを買う女」、実は微妙に語り部の意図が異なる!

早速、私の「トキ or ヘブンの体験記」を書いてみる(笑)

【1回目 鳥取の布団】
 ・物語の構成(流れ)時系列順(過去の悲劇 → 現代の怪談)
 ・主な特徴:兄弟の悲しみや大家のひどさを強調する「悲話」の形

【2回目 鳥取の布団】
 ・物語の構成(流れ)倒置法(怪奇現象 → 過去の理由)
 ・主な特徴:宿屋の不気味なシーンから始まり、後で理由を明かす「ミステリー・怪談」の形

【2回目 水あめを買う女
 ・物語の構成(流れ)歴史的な伝説や民話の趣
 ・主な特徴:時代設定や場所が具体的で、主要人物がかげろうのような女


トキはヘブンの反応を見て、より興味を引く形に変化させた

ではなぜ、読み手(語り手)は変えたのか?

書き手が内容や構成を変えた理由を、論理的に三つの視点から推測してみよう。

一つめは、相手に与える「感情」をコントロールするためだ。

1回目は、最初に兄弟の貧しさを詳しく語ることで、読み手に「かわいそう」という同情心を強く持たせようとしている。

2回目は、最初に「声がする布団」という謎を出すことで、読み手に「なぜ?」という恐怖や興味を持たせようとしている。

二つめは、物語の「信憑性(本当らしさ)」を高めるためだ。

2回目の「水あめを買う女」では、「松平直政公」「大雄寺」といった具体的な名前を出すことで、単なる作り話ではなく「この町で本当に起きたことだ」と信じ込ませる効果を狙っている。

三つめは、怪異の対象を「物」から「人」へと移すためだ。

1回目と2回目は、布団という「物」がしゃべる不気味さに焦点を当てている。

しかし、3回目(2回目の「水あめを買う女」)は、布団ではなく、幽霊という「人(の姿をしたもの)」を登場させて、布団の怨念というテーマから、女性の切ない事情(この後語られるであろう、子への愛情など)を描く「情緒的な物語」方向転換しようとしたと考えられる。

このように、トキはヘブンの反応を見て、より興味を引く形に変化させていった結果だと考えられないだろうか。

こんなドラマの楽しみ方もある… ということだ。


あとがき

こういう表現が適切か分かりませんが、「いい塩梅で引き延ばしに成功している」と思います。

前述のとおり、トキとヘブンが夫婦になるのは、第1回でも[モデルの人物の史実]でも既定路線ですね。

その点は、たとえば前作『あんぱん』と同じですが、『あんぱん』は結婚するまでを雑に描いて、結婚後は拙速に進めて沈没しました。

しかし本作は、丁寧すぎるくらいにトキとヘブンの恋愛感情に至る過程を描いています。

さらに、サブキャラをうまく組み込んで、先述した「三つの世界」も描き続けています。

来週も(予告編には触れません)も、うまく引き延ばしてくれそうで楽しみです。

今週は仕上がりがよいので「ダイジェスト版」も期待できそうで何よりです!

※来週の予習のお供に↓どうぞ(笑)
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拍手[34回]

緊急取調室 5th SEASON

テレビ朝日系・木曜ドラマ『緊急取調室 5th SEASON』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)InstagramTicTok

第9話/最終回6分拡大『蒼い銃弾』の感想。



警察学校の射撃訓練中に宮本健太郎(大橋和也)が中里美波(森マリア)へ発砲する事件が発生し、真壁有希子(天海祐希)らキントリが取調べるも動機は不明のままである。学生全員が口を閉ざす中、宮本がSAT式の構えで撃った事実が判明し、標的は滝川隆博(玉山鉄二)だった可能性が浮上する。有希子は滝川の過去を探り、取調べに踏み切るが…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---


原作:なし
シリーズ原案:井上由美子(過去作/緊急取調室シリーズ)
脚本:井上由美子(過去作/緊急取調室1~4,ハラスメントゲーム,BG~身辺警護人~)
演出:常廣丈太(過去作/緊急取調室1~4,BG~身辺警護人~) 第1,2,5,8,最終
   本橋圭太(過去作/緊急取調室1~3,DOCTORSシリーズ) 第3,4,6,7
音楽:林ゆうき(過去作/緊急取調室,DOCTORS~最強の名医,あさが来た)
主題歌:緑黄色社会「My Answer」 ※敬称略




物語のテンポに関する問題

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―――ここまで、ごあいさつ―――

今回のエピソード、よく見なくても分かるが「同じような場面」が「何度も繰り返され」て、テンポが悪くなっていた。

特に警察学校を訪問するシーンが多すぎたため、むしろ「一度で済まないのは能力が低いのでは?」と思わせてしまったと思う。

こんなことなら、無理に「前編・後編」の2回に分けるのではなく、1回の放送時間を少し長くして(90分拡大版とか)1話にまとめた方が、中身の濃い作品になったと思う。

もちろん、背景には、出演者のスケジュール調整など制作上の都合があったのかもしれない。

しかし、CMの多さも重なって、物語に集中し続けるのが難しいかったというのが本音である。


演出と構成のアイデア不足

それでも「どうしても物語を2回に分けるたい!」のであれば、見せ方を工夫すべきだった。

たとえば、前編では犯人の正体を完全に隠し、影で暗躍する「謎の教官」として扱う方法だ。

謎解きもの王道のように、物語の終盤でようやく「黒幕」が登場する形にすれば、視聴者は「犯人は誰だろう?」と最後までドキドキしながら楽しめたはずでは?

「最初から焦らせる作戦」ではなく、「前編を状況説明編」「後編を解決編」と明確に分けるだけで、作品の雰囲気はガラリとよくなったと思う。


脚本の違和感

さて、ドラマファンならお気づきではないだろうか?

本作全話の脚本担当の井上由美子氏の作風である。

それは、《連ドラにおいて、最終回に向けて “ドラマ” としての緊張感と高揚感を生み出すのが得意》だ。

しかし、明らかに本作においては、井上氏の作風が生かされていないと感じる。

おそらく、そもそも『5th SEASON』は劇場版上映の都合で制作された経緯があるので、前回と今回ももともとは「1話用」だった可能性がある。

それを大人の事情で前後編に強引に引き延ばしたために… である。

いっそ、劇場版公開直前に「最終回スペシャル」として一気に描いていたら違った印象になったと思う。

キントリファンだけに、つくづく残念である。


あとがき

最終回の一番の見どころは、下記の二人のゲストだったように思います。

一人目は、第4シーズンおよび2022年放送の新春スペシャルでキントリの捜査に協力した捜査一課刑事・山上善春(工藤阿須加)の妻で、警視庁警備部に所属する山上彩矢を演じた長屋晴子(ex.緑黄色社会)さん
私は事前に出演予定を知らなかったので「似てるなぁ」と思って見ていました。

二人目は、こちらは事前情報で知っていた、小日向文世さんのご子息・小日向星一さんが真壁有希子(天海祐希)が訪れる交番の警察官・大山耕平役で出演。
以前にもドラマで見ましたが、今回は意外と重要人物で笑顔が印象的でよかったです。

このサプライズがなかったら…(困)


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拍手[16回]

連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第59回第12週『カイダン、ネガイマス。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)の怪談語りから一夜明けた。二人ともまだまだ話したりない、聞き足りない!ヘブンは学校を休むと言い出すほど。また夜に怪談を話す約束をとりつけ、二人はそれぞれ仕事に取り掛かる。中学校では錦織(吉沢亮)が正木(日高由起刀)からヘブンが怪談に関心があると聞かされる。錦織はトキに協力を依頼しようと思うが、それはヘブンの帰国を早めることだと気づいてしまう。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9,12
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10
   小島東洋(過去作/この花咲くや,ブギウギ) 第11
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
副音声日本語吹替:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋,鈴木航,川野秀昭|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘|美術進行:澤幸樹、嶋原広起|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田亜矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉,大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子,厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華,澤井洸、平松康、吉田隆広|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和,鍛本美佐子|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦|特殊メイク:江川悦子、権田日和|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治,斎藤明日香、竹本航|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉,松嶋彩|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章,ネイサン・ベリー|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人,川村肇|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳
※敬称略




徹底的に《映像で見せて(show)魅せる(captivate)》

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当ブログでは、前々回の感想から、トキ(高石あかり※高=はしごだか)とヘブン(トミー・バストウ)の間にある《障子によるトキとヘブンの結界(境界線)》について言及してきた。

前々回では、障子によってふたりの “心の壁” にわずかな風穴があいたことが表現され。
前回では、前々回よりも大きな穴、いや広い間口が開かれたことが表現されたと書いた。

そして、今回で注目したいのは下図の場面だ。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

(偶然だと思いますが)縁側沿いの障子の影によって〈結界(境界線)〉がつくられて、それをあたかも “トキが飛び越える(踏み越える)” ような動作で表現されていたのだ。

さらに映像をよく見ると、トキが「紐でぶら下がっているメモ紙群」まで “ひょいとくぐって” 二本目の結界まで踏み込んでいる(揺れています)。

要するに、怪談「鳥取の布団」の語り聞かせによって、一気に距離が縮まり、関係性に変化が生まれたことを、“トキが‘二つ’の境界線を越える” という象徴的な映像で提示したのだ。

これ、まさに《映像で見せて(show)魅せる(captivate)》であるのだ。

もちろん、この、トキとヘブンの大きな関係性の変化を、トキに日常的な動作(作業)をさせながら描いたことも、忘れてはいけない秀逸な点である。

昨今の朝ドラ、に限らず “ドラマ” において、演技が稚拙な出演者が多いことや撮影時間短縮のため《重要なシーンは手足の動きを止めて話させる》が非常に多発しているのだ。

しかし今回は、高石あかり(※高=はしごだか)さんは自然な動作で画面手前から奥に移動し、トミー・バストウとのやり取りをこなした… しかも、カット割りせずに。

〈これをやる、やれる…〉ことも、評価したいところである。


「子捨ての話」が、三つめの怪談として実にふさわしい理由

さて、1週間に三つも盛り込むとは思わなかったのが、今週三つめの怪談「子捨ての話」である。

この度の「子捨ての話」が、三つめの怪談として、実にふさわしいと思う。

その理由は、最も「ヘブンの出自や育ち」を(劇中に)引き出すのに有用だと思うからだ。

要するに、「ヘブンがトキの怪談を聞く」という行動によって、「子捨ての話」だと「トキがヘブンの話を聞く(聞き返す)」のに最適だと思うのだ。

実際に本作では、「トキがヘブンの話を聞く(聞き返す)」から、さらに「トキが自分の思いを語る」まで展開させている。

そう、今作らしく、怪談を媒介にしたトキとヘブンの “程よいコミュニケーション” になっているのだ。

これは「うまくやったなぁ」と思う。


八雲の作品に「子捨ての話」という題名の怪談は存在しない

チミナ…(笑) 小泉八雲の作品に「子捨ての話」という題名の怪談は存在しない(事実です)。

ただし、内容や構造がよく似た話は、八雲の著作の中に存在する。

代表例が、『知られぬ日本の面影』に収録された「六部殺し」である。

「六部殺し」では、「人が犯した罪」「子どもや家族に向けられた行為」が「後になって強く報いとして返ってくる」という構造で描かれている。

また、八雲著の『怪談』に収録された複数の短編には、「死者の声が残る」「幼い魂の記憶が消えない」といった表現が繰り返し用いられている。

これらは、八雲の出自や暮らしに基づく八雲作品に共通する重要な特徴だ。

よって、おそらくネット界隈では「‘子捨ての話’は『六部殺し』が元になっている」という説もあろうが、私は支持しない。


夏目漱石『夢十夜』第三夜のほうに類似点が多い

一方、怪談ではないが、夏目漱石『夢十夜』第三夜のほうに類似点が多いと思う。

漱石の「第三夜」はこんな話だ。


盲目の六歳の子を背負って夜道を行く夢を見る。子は大人のように語り、行き先を指示する。不気味さから森に捨てようと急ぐうち、子は父の過去を映す鏡のような存在だと悟る。森の杉の根で、百年前に自分が盲目を殺した記憶が蘇り、その瞬間、背の子は石のように重くなる。(筆者の記憶による)

第三夜には、次の要素が明確に描かれている。

 ・夜に子どもの声が聞こえる
 ・すでに死んだ子どもが、父親に語りかける
 ・月の光が象徴的に使われる

「死んだ子どもが現れ、言葉を交わす」という構図は、今回の「子捨ての話」と非常に類似性が高いと判断できる。

ではなぜ、本作で「子捨ての話」が使われたのか? について簡潔に書いてみる。

一つは、「人を怖がらせる話でない」「‘子捨て’の題材が八雲的である」から。

二つめは、本作中でトキが語る怪談は「心を許した相手にだけ話す物語」という位置づけであることから、怪談「鳥取の布団」よりも “重苦しい怪談” を語ること自体で、ふたりの距離の縮まりを表現したいから。

三つめは、怪談に登場した「出雲の国の持田(もちだ)の浦という村」という設定が、前述の「鳥取」よりも “身近” な土地を示すため、ドラマ設定と整合性が取れやすいから。

なお、実際に「持田の浦」は存在しないが、歴史的には『出雲国風土記』などに地名として登場し、今でも「持田」という地名は松江市周辺に残っており、水辺の集落(浦)として記録されていた可能性はある。


あとがき

序盤のトキとヘブンのやり取りの背後に「親子風のこけし」が映り込んでいましたよね。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

終盤の「子捨ての話」では「男子市松人形」が登場。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

解説するまでもないですが、男子市松人形は、男児の健やかな成長を願う守り人形であり、災厄を代わりに受ける「身代わり」としての意味を持ちます。

一方、「親子のこけし」には、子どもの健やかな成長や子宝を願う「お祝い」の意味が込められています。

一部地域では「子消し(水子供養)」説がありますが、文献的な根拠が薄い俗説です。

このように、小道具の使い方も計算され尽くされており、見応えがあると思います。

ゆっくり、ゆったりとした感じではありますが、確実に前進しているのが伝わり、ますます面白くなってきたと思います。


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拍手[45回]

もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう

フジテレビ系・水曜22時枠『もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第11話/最終回30分拡大『思い出の八分坂』の感想。


久部三成(菅田将暉)は大門(野添義弘)とフレ(長野里美)を追い出しWS劇場を手に入れ、倖田リカ(二階堂ふみ)との関係も順調であった。案内所のおばば(菊地凛子)の予言通り「一国一城の主」となったが、植木の枯れに不吉を感じさせる兆しが現れる。劇場は「冬物語」から「ハムレット」へと演目を変え、久部が主役を務めるも観客は大瀬六郎(戸塚純貴)のレアティーズに熱狂し、久部は困惑する。楽屋ではリカが自信を失い、久部の励ましも届かず…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---


原作:なし
脚本:三谷幸喜(過去作/古畑任三郎シリーズ,王様のレストラン,鎌倉殿の13人)
演出:西浦正記(過去作/コード・ブルー-ドクターヘリ救急救命-,ブラックペアン シーズン2) 第1,2,3,6,7,10,最終
   三橋利行(過去作/監察医 朝顔2,コンフィデンスマンJP,わたしの宝物) 第4,9
   下畠優太(過去作/真夏のシンデレラ,ブルーモーメント,明日はもっと、いい日になる) 第5
   西岡健太郎(過去作/放課後カルテ) 第8
音楽:得田真裕(過去作/俺の話は長い,家売るオンナシリーズ,アンナチュラル)
主題歌:YOASOBI「劇上」
※敬称略




不吉な予言とマクベスの影

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WS劇場を手に入れた久部三成(菅田将暉)は、かつて「一国一城の主になる」という予言を的中させた八分坂にある無料案内所のおばば(菊地凛子)から、新たな言葉を授けられた。

それは、男性(おとこ)から誕生した人物が久部の成功を阻むという奇妙な警告だった。

この設定は、ウィリアム・シェイクスピアの有名な悲劇である『マクベス』を下敷きにしていると考えられる。


「女の股から生まれた者でマクベスを倒せる者はひとりもいない」

 ※出典:ウィリアム・シェイクスピア『マクベス(Macbeth)』

劇中では、この有名な一節を逆手に取るような形で、母親の名前が「乙子(おとこ)」である蓬莱省吾(神木隆之介)という人物を創作し、物語に緊張感を与えている。

主人公である “久部” の名前自体も、この戯曲のタイトルである「マクベス」を連想させるものであり、彼がたどる運命が悲劇的なものになることを予感させていた。


崩れゆく支配人の王国

権力を手にした久部であったが、その運営は決して順調ではなかった。

ライバルへの対抗心から企画した舞台『ハムレット』は、主要な演者が芝居の素人だったり、集中力を欠くなど、当初から暗雲が立ち込めていた。

追い詰められた久部は、周囲の信頼を裏切るような行為を重ね、次第に孤立していく。

人々の心が離れ、誰もいなくなった状況は、まさに〈王座にいながら誰にも支えられなかったマクベス〉の姿そのものである。

最終回で、劇場を去る決意をした久部に老婆が贈った言葉もまた、シェイクスピアの別の作品からの引用であった。


「親愛なるブルータスよ、我々の運命が人の下に甘んじているのは、星(運命)せいではなく、我々自身(の行い)にあるのだ」

 ※出典:ウィリアム・シェイクスピア『ジュリアス・シーザー(The Tragedy of Julius Caesar)』

この言葉は、自分の人生を決めるのは〈天の定め〉ではなく、〈自分自身の行動〉であるという厳しい教訓を久部に突きつけている。


舞台の幕が降りた後の八分坂

物語の舞台となった八分坂は、劇場の閉鎖とともにその表情を変えていった。

かつて久部が初めてこの場所を訪れた時とは逆に、街の明かりが次々と消えていく映像効果は、ひとつの物語が終わりを迎えたことを象徴している。

この世界そのものが大きな劇場であり、そこで役割を終えた久部は、自分にとっての本〈当の休息場所〉を求めて舞台を下りることになった。

それから2年が経過した後の世界では、かつての夜の街は若者で賑わう明るい街へと姿を変えていた。

かつての仲間たちは、派手な舞台ではなく、静かな公民館の一室で心から演劇を楽しんでいる。

配達員として働く久部が、再びシェイクスピアの本を手に取る場面で物語は締めくくられた。


「終わりよければすべてよし」

 ※出典:ウィリアム・シェイクスピア『終わりよければすべてよし(All's Well That Ends Well)』

この言葉通り、苦い経験を経て新しい一歩を踏み出す久部の姿は、観る者に爽やかな印象を残した。


あとがき

本作は、シェイクスピアの古典的な悲劇を “現代の渋谷” という舞台に見事に融合させていました。

主人公が挫折を経験しながらも、最後には自分なりの新しい生き方を見つける姿は、見ている私たちに勇気を与えてくれましたね。

歴史ある名作の言葉が、現代の若者の成長物語として新しく生まれ変わった、とても斬新なドラマであったと感じます。

でも、さすがに、全体の構成、登場人物の多さ、初動の展開の遅さ、表現を含めた回りくどさ… など、今どきの(特に若年層の)視聴者には受け入れにくかったかと思います。

せめて、シェークスピアに意味を持たせすぎた内容を、シェークスピアに馴染みのない多くの視聴者には響くように分かりやすくすべきだったように思います。


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