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朝ドラ「ばけばけ」激しすぎる情熱! 小泉八雲が「知事令嬢の恋心」を避けた、たった一つの理由
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【忠告】
朝ドラ『ばけばけ』の先の展開のネタバレは基本的に書いてありませんが。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、妻・セツ夫妻の[史実]について触れます。
あとから「読むんじゃなかった…」がないよう、読む際は自己責任でお願いします。
 ※以下、敬称は部分的に使い分けをします。



リヨの"モデル"「籠手田淑子」と八雲に関する[史実]

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俳優・高石あかり(※高=はしごだか)さん主演でヒロイン・松野トキを、トミー・バストウさんがレフカダ・ヘブンを演じ、文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、妻セツをモデルにしたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)。

第11週『ガンバレ、オジョウサマ。』では、主人公・松野トキ(髙石あかり)の未来の夫であるレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と、ヘブンに執拗に恋心を発動する江藤島根県知事(佐野史郎)の長女・リヨ(北香那)の恋愛物語が描かれました。

そこで今回は、リヨの “モデル” である「籠手田淑子」がどんな女性で、ハーンとどんな関係だったのかについての[史実]を記してみます。

きっと、「本編」では採用されない(と思います)エピソードを知ることになるので、より今作を深読みできると思います。


知事の娘が、異国の先生に夢中になった!

松江(島根県)に英語教師としてやってきたラフカディオ・ハーン(のちの小泉八雲)は、当時この地を治めていた島根県知事、籠手田安定(こてだ やすさだ)の娘、淑子(よしこ)から熱烈に慕われていた。

安定知事は、かつて幕末の剣豪として名高い山岡鉄舟に認められたほどの武術の達人だ。

男爵(爵位の一つ)まで授かった彼の武士のような姿勢は、日本の伝統を深く愛する八雲にとって、非常に興味深いものだった。

そこで安定は、八雲が松江に来てすぐの明治23(1890)年9月、彼を自宅に招き、盛大にもてなした。


ウグイスが運んだ熱い想い。しかし関係は…

知事の邸宅での歓迎会では、琴の演奏も披露された。

これを弾いたのが娘の淑子である。

この出会い以降、二人の関係は密接になっていく。

当時の文献には、淑子が優れた才能を持ち、松江婦人会の会長も務めるほどの才媛であったこと、そして八雲に何かと世話を焼き、彼も淑子に特別の好意を抱いたことが記されている。

そして、明治24(1891)年の冬、八雲が体調を崩して寝込んでいると、淑子は見舞いの手紙と一緒に、珍しい籠に入ったウグイスを届けた。

八雲はその美しい鳴き声に心を癒され、彼女の心遣いに深く感動したと伝えられている。

八雲は淑子に丁寧な礼状を送る準備もしていたが、二人の関係はここで止まってしまった。

八雲がのちに知事に送った手紙の中で淑子のことに触れたのは、ほんの少しだけであった。

なぜ、最初に出会って熱烈な好意を寄せられたこの女性と、八雲は結ばれなかったのだろうか?


県議会に乗り込もうとしたお嬢様!

八雲が松江に来る前、淑子は地元で前代未聞の大騒動を引き起こしている。

舞台は、島根県警察が警備に使っていた蒸気船「警安号」だ。

当時、珍しかったこの目立つ船は、知事の移動に使われることはあったが、淑子までもが個人的な目的で利用するようになった。

これが「公の船の私的利用ではないか」として、明治22(1889)年11月の島根県会(議会)で激しく追及されることになる。

ある議員の調査で、淑子が海水浴に行くためにこの船に乗ったことが明らかになったのだ。

知事に代わって答弁に立った書記官は、淑子が婦人会の会長という立場を強調して乗船を要求してきたため、やむなく乗せたが、今後は注意すると陳謝した。

ところが、この報告を聞いた淑子が激怒した。


馬鹿にするにも程こそあれ、妾が婦人なればとてこのままに捨て置いては父上に対しても一家の不名誉、県会議場に起ちて言い解かんとせき立ちし由にて、一時は容易ならざる騒ぎなりしも、番外(注:議会で予定外に陳謝した書記官のこと)及警察部長の仲裁兼詫などにて、まずは事済みなりしという。
 ※出典:当時の『山陰新聞』の記事より

つまり、淑子は自分の名誉を守るため、「警察のせいにされた」と怒り狂い、県会議場に自ら乱入して反論しようとしたのである!

当時の県知事の娘といえば、誰もが敬意を払う存在だ。

そんな令嬢が公の場で激高し、議会に乗り込もうとするなど、前代未聞のできごとである。

記録には「一時は容易ならざる騒ぎ」とある。

最終的に、この事態を収めたのは、陳謝した書記官だけではない。

なんと、県警察のトップである警察部長までもが、淑子に対して「仲裁とともにお詫びを入れた」と記録されている。

当時の権力者が、一人の令嬢に頭を下げるほど、淑子の怒りと行動力はすさまじかったのだ。


駆け落ちの噂と「高慢な美人」の素顔

淑子の激しい気性はこれだけではない。

彼女はその後、長崎県の士族と結婚し、夫婦で朝鮮半島に渡り学校を開いた。

日露戦争で夫が捕虜になった際、学校を運営する日本領事館から「女性だから」と排除されそうになったが、彼女は屈しなかった。

生徒や父兄の支持を得て、領事館の圧力に逆らいながら学校を守り抜いた。

また、戦前に活躍した軍事探偵、石光真清(いしみつまさきよ)が夫妻を訪れた際の回想録には、淑子についての正直すぎる第一印象が記されている。


部屋を見回すと25、6歳かと思われる高慢な表情の美人が座っていた。妻君であると紹介された。
 ※出典:石光真清『曠野の花』竜星閣 昭和33年(1958年)

人物の観察が職業であった探偵の目に、淑子は「高慢な表情」と映ったのだ。

さらに石光は、かつて淑子が「家を出て行方不明になった」という駆け落ちの噂を聞いていたことにも触れ、「派手な噂の女主人が、こんな山奥にいることが不思議だ」と驚きを示している。

これらの事実から、淑子は「おしとやかなお嬢様」というイメージとは程遠く、「自立心が極めて強く行動的」、あるいは「高慢で我が強い」と評される、強烈な個性を持った女性であったことが分かる。


八雲が彼女を選ばなかった、切ない理由

県議会に乗り込もうとし、領事館と渡り合い、駆け落ちの噂まである、並外れた自我と行動力を持つ淑子。

八雲は、なぜ彼女の熱い好意から逃げるように身を引いたのだろうか?

八雲は非常に繊細な気質を持ち、自分自身を「深い傷を抱えた詩人」だと捉えていた。

彼は世俗的な恋愛に巻き込まれて、再び心が傷つくことを極度に恐れていたのである。

実際、八雲はアメリカの新聞記者時代にも、熱心に慕ってきた女性に対し、「変な噂を立てられたくない」という理由で、意識的に避けていたという記録が残っている。

八雲は、恋愛の渦中に飛び込む瞬間に、「傷つきたくない」「噂が怖い」「自分には荷が重い」という感情が一気に押し寄せ、惹かれつつも距離を置いてしまう「めんどくさい系ロマンチスト」であった。

淑子が示す情熱と行動力は、八雲が頭の中で理想とする「意志の強い女性」のイメージをはるかに超え、手に負えない “強すぎる現実” として彼の前に立ちはだかった。

ウグイスを贈られて感動しつつも、淑子が少しでも積極的に距離を詰めようとすると、八雲の心には「これは自分には無理だ」という警告音が響き渡り、彼は反射的に身を引く道を選んだのであろう。


あとがき

小泉八雲と知事令嬢・淑子さんの物語は、一人の繊細な芸術家と、時代の枠を超えて自分の信念を貫いた一人の強い女性の、「すれ違い」の記録として大変魅力的です。

八雲が自己の内面と向き合い、自らの弱さを自覚して行動を選んだことは、彼がどれほど誠実で論理的な人物であったかを示しています。

一方、淑子さんが議会に乗り込もうとしたり、領事館と争ったりした行動力は、当時の常識を打ち破る、現代の私たちにも勇気を与える輝かしい個性です。

この二人の生き方が、後の八雲の作家活動や、淑子さんの波乱に満ちた人生へとつながっていると考えると、この出会いはまさに運命的であったと言えるでしょう。

お互いを高め合うことはなかったかもしれませんが、彼らが残した記録は、私たちに「自分らしく生きることの難しさと尊さ」を教えてくれていると感じます。

ドラマで描かれるフィクションの奥に、こうした史実を知ることで、物語がより深く、温かく感じられると思います。

読者の皆様の “ドラマを楽しむ” ためのお役に立てれば幸いです。


参考・出展

『小泉セツとハーンの物語: ー小泉八雲「怪談」誕生のひみつー』三成清香(著)少年写真新聞社 新窓で開きます
『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』工藤美代子(著)毎日新聞出版 新窓で開きます
『ヘルンとセツ』田淵久美子(著)NHK出版 新窓で開きます
『セツと八雲』小泉凡(著)朝日新聞出版 新窓で開きます
『小泉八雲とその妻セツ 古き良き「日本の面影」を世界に届けた夫婦の物語』青山誠(著)KADOKAWA 新窓で開きます
『面白すぎて誰かに話したくなる 小泉八雲とセツ』伊藤賀一(著)リベラル社 新窓で開きます『八雲の妻:小泉セツの生涯』長谷川洋二(著)今井書店 新窓で開きます
『小泉八雲と妖怪』小泉凡著(著)玉川大学出版部 新窓で開きます
『怪談・骨董』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『日本瞥見記(上・下)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『東の国から・心)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『思ひ出の記』?小泉節子(著)・小泉八雲記念館(監修)ハーベスト出版 新窓で開きます
『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』?NHK出版(編)NHK出版 新窓で開きます
『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』?櫻庭由紀子(著)内外出版社 新窓で開きます
■「詳述年表ラフカディオ・ハーン伝」板東浩司(著)英潮社
■「小泉八雲: 思い出の記・父八雲を憶う」小泉節子,小泉一雄(著)恒文社
■https://archive.org/details/kottojapanese00hearrich KOTTO
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.79571/page/n13/mode/2up KWAIDAN
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45846/page/n11/mode/2up Out Of The East
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami0lhear Glimpses of unfamiliar Japan vol.1
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami02hear Glimpses of unfamiliar Japan vol.2
■「松江に於ける八雲の私生活」桑原羊次郎(著)山陰新報社
『ラフカディオ・ハ-ンのアメリカ時代』?エドワード・ラロク ティンカー(著)木村勝造(訳)ミネルヴァ書房 新窓で開きます
■『小泉八雲事典』?平川祐弘(監修)恒文社
『夢の途上: ラフカディオ・ハーンの生涯〈アメリカ編〉』?工藤美代子(著)集英社 新窓で開きます
『評伝ラフカディオ・ハーン』?E.スティーヴンスン(箸)遠田勝(訳)恒文社 新窓で開きます
『小泉八雲 日本を見つめる西洋の眼差し』筑摩書房編集部(箸) 新窓で開きます
『明治時代の人生相談』山田邦紀(著)幻冬舎 新窓で開きます
■富田旅館の証言(国立国会図書館サーチ〈NDLサーチ〉 新窓で開きます
レファレンス協同データベース 新窓で開きます
島根郷土資料刊行会編「西田千太郎日記」 新窓で開きます
国立国会図書館蔵書「小泉八雲全集 第1-17巻」 新窓で開きます
名古屋大学「人事興信録」データベース 新窓で開きます
書陵部所蔵資料目録・画像公開システム - 宮内庁 新窓で開きます



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拍手[27回]

緊急取調室 5th SEASON

テレビ朝日系・木曜ドラマ『緊急取調室 5th SEASON』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)InstagramTicTok

第8話『紫の旗』の感想。



警察学校で射撃訓練中、宮本健太郎(大橋和也)の拳銃が暴発し、中里美波(森マリア)に命中するという前代未聞の事態が発生したのである。過失か故意かを巡り、真壁有希子(天海祐希)ら「緊急事案対応取調班」が取調べに着手するが、宮本は黙秘を続け、監視映像も決定的瞬間を欠いていた。梶山勝利(田中哲司)は射撃場全体の映像提出を求めるも滝川隆博(玉山鉄二)は拒否。やがて宮本が突然「狙って撃ちました」と自白し、有希子はその心理を探ろうとする一方、美波の言葉に梶山が疑念を抱き、捜査一課の渡辺鉄次(速水もこみち)と監物大二郎(鈴木浩介)が学生聴取を開始するが、教場には異様な緊張が漂い…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---


原作:なし
シリーズ原案:井上由美子(過去作/緊急取調室シリーズ)
脚本:井上由美子(過去作/緊急取調室1~4,ハラスメントゲーム,BG~身辺警護人~)
演出:常廣丈太(過去作/緊急取調室1~4,BG~身辺警護人~) 第1,2,5,8
   本橋圭太(過去作/緊急取調室1~3,DOCTORSシリーズ) 第3,4,6,7
音楽:林ゆうき(過去作/緊急取調室,DOCTORS~最強の名医,あさが来た)
主題歌:緑黄色社会「My Answer」 ※敬称略




どう好意的に、どう否定的に見ても“ただの引き延ばし”

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私が神経質であり、ツッコミを入れるのも野暮だと思うが。

凶器としての「鉄砲」と、飲食物としての「てっぽう」をかけるのはシャレとしていかがなものだろう?

言葉遊びを全否定しないが、今作だからこその “品格” を守るべきだったような。


それさておき、どう好意的に、どう否定的に見ても “ただの引き延ばし” でしかない。

もちろん、ゲストも、ドラマ『BOSSシリーズ』(フジテレビ/2009,2011)で天海祐希さんと共演してした玉山鉄二さんと、大橋和也(ex.なにわ男子)さんのダブル体制であり。

次回が『最終回』で、その直後には鳴り物入りの『劇場版』が控えているから、ただの引き延ばし” もやむを得ないとは思う。


ただ、いつもの『キントリ』と比べれば、明らかに引き延ばしによる悪影響で、テンポもよくないし、キレもないのは困ったものだ。

まあ、作り手もそれが分かっているから。終盤になってかつてのスペシャル版に登場した生駒亜美(比嘉愛未)と酒井寅三(野間口徹)を投入して、勢いをつけて終了… そんなところだ。

まあ、何となく「どこかで見たような」内容ではあるが。

生駒と酒井を再投入するアイデアは大いに評価できる。

やはり、『劇場版』の前に『最終回』でもう一歩弾みをつけてほしいからだ。


あとがき

最終回が「やっぱり、こんな感じだよね」にならないことだけを期待します。

その出来次第で、劇場版を見に行くかどうかのモチベーションが変わりますので。


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拍手[9回]

連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第54回第11週『ガンバレ、オジョウサマ。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


ヘブン(トミー・バストウ)が自分の過去をリヨ(北香那)や錦織(吉沢亮)に語っていた頃、トキ(髙石あかり)は胸のモヤモヤの答えもわからずサワの元にいた。そこに司之介(岡部たかし)が合流し、サワもリヨの応援をすることになってしまい、トキのモヤモヤが加速する。一方、ヘブンの話は過去の結婚生活に差し掛かっていた。かつてある女性と結婚していたと語るヘブンはそこで自分が犯してしまった過ちを告げる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10
   小島東洋(過去作/この花咲くや,ブギウギ) 11
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
副音声日本語吹替:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋,鈴木航,川野秀昭|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘|美術進行:澤幸樹、嶋原広起|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田亜矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉,大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子,厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華,澤井洸、平松康|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛元美佐子、横山智和,鍛本美佐子|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦|特殊メイク:江川悦子、権田日和|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治,斎藤明日香、竹本航|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉,松嶋彩|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章,ネイサン・ベリー|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人,川村肇|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳
※敬称略




全体的に、腑に落ちないエピソード…

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前回に続いて「ヘブンの過去」「ヘブンの告白」である。


錦織「誰とも 深く関わらない…
 恋人でも 友人でも 誰でも。
 そう決めたんです」
ヘブン「オリヨサン…。ゴメンナサイ」

これに対して、特に感想はない。

ようするに、ヘブン(トミー・バストウ)が “通りすがり” と言った理由が分かっただけであり。

視聴者も、リヨ(北香那)や家族も納得できた… というだけである。

「二日間も割いて描くことか?」と正直思うが(苦笑)

ドラマとして、連ドラとして、主人公・松野トキ(高石あかり※高=はしごだか)の夫になるべき人物の過去だから、盛り込むことは間違っていない。

あとは、トキが結婚するまでの間に “この事実” を知るのかどうか? だけだ。

きっと、これまでの今作の表現方法から察すれば「回想シーンの再利用」は必ずやるだろうから、盛り込むとは思うが。

で、だったら、あえてリヨ絡みではなく、「トキとの恋バナの中で描けばよくなくない?」と思うのが本音だが。

う~ん、ここで盛り込むこと、大人の事情含めて、腑に落ちないエピソードである。


《ヘブンがチェア(メジロ)を野に放つ》シーンの重要性

但し、今作らしい… というか、今作にとって意味や意義のある描写もあった。

それが、終盤にあった《ヘブンがチェア(メジロ)を野に放つ》場面だ。

解説するのは野暮だが、もともと通りすがりのような小鳥を鳥籠に入れて飼うこと、それがヘブンの最初の妻・マーサ(ミーシャ・ブルックス)自身と重なるし。

ヘブンのモデルである小泉八雲が幼少期を過ごしたアイルランドには土着信仰との融合が進んでおり、日常文化の中に精霊信仰が残った。

これが、いわゆる「アニミズム(自然のすべてに霊が宿ると考える見方)」である。

すでに劇中に、蛇と蛙(渡辺江里子&木村美穂 ex.阿佐ヶ谷姉妹)が登場してることからも、今後に描かれる可能性は高い。

このように連携して考えれば、《ヘブンがチェア(メジロ)を野に放つ》は実に自然な描写)であり。

《小泉八雲を題材にした朝ドラ》としても、実に、のちに、印象的な場面になるように思う。

また、チェアが飛び立った後、チェアの鳴き声からカラスの鳴き声に切り替わる演出も悪くないことも添えておく。


誰の心にも印象的に残るように作り込むのがプロの仕事

あとは、特筆すべきことないのだが、気になった点を書いてみる。

今回のエピソードが、全体的にメリハリがないのは百も承知だ。

個人的には「回想部分」でもう少しメリハリをつけてほしかったが、人種差別、黒人差別を朝ドラでむやみに強調するのは躊躇したくなるのは理解できる。

しかし、ラスト数分間の、今作の主人公・トキのシーンはもっとメリハリをつけるべきだった。

確かに、好意的な脳内補完をするなり、好意的に見ていない視聴者でも察しがよければ、“トキの勘違い” には気づくと思う。

しかし、今作は老若男女問わず楽しめように作るべき「朝ドラ」だ。

だったら、ここは、丁寧に「誰もが見て分かる」をやるべきだった。

いや、ここ、トキとヘブンの心理的な距離がグッと近づいた大事なシーンだからこそ、誰の心にも印象的に残るように作り込むのがプロの演出家のやるべき仕事だったと思う。

まっ、演出担当して4回で、ようやく “妙な画角の構図” が1カットもなかっただけでも良しとするしかないか…(困)

野暮のついでに、ヘブンがトキに湯たんぽを壊すのを否定したのも‘アニミズム思想’の一環であると思う…


あとがき

今回のアバンは、今週で最短時間の「2分24秒」でした(笑)

意外だったのは、前回のラストが「心配なおトキ」だったのに、今回の冒頭では一気にコミカルに振ってきたこと。

二日間連続で “しんみりムード” にならないための配慮だったんでしょうか?

映像的には、回想シーンが多めだったので分かりやすかったのはよかったと思います。

でも、回想シーンは、ドラマでも物語でもないので、多用は禁物です。

次回は、これでひとまず「リヨ退場」ですかね、どう描くのか楽しみではあります…


お知らせ

昨日と本日、下記の「補足記事」を投稿しました。

今週登場したサブキャラのモデルの秘話ですので、お楽しみください

朝ドラ「ばけばけ」花田旅館の女中・ウメ(野内まる) のモデル「お信」がいなければ、八雲とセツは出会わなかった… 巡り合いがつなぐ人情の物語 新窓で開きます

朝ドラ「ばけばけ」再考…ハーンが“禁じられた結婚”を選んだ理由と、セツとマティに見える意外な共通点 新窓で開きます


厳選『ばけばけ』で描かれない秘話の解説リンク集
・八雲×セツ「万物に霊が宿るアニミズム思想」 → こちら 新窓で開きます
・八雲×セツの松江婚“日本語で恋” → こちら 新窓で開きます
・八雲漂着“英→米→松江の道程” → こちら 新窓で開きます
・三之丞(板垣李光人)モデル“静かなる光” → こちら 新窓で開きます
・八雲×セツ 松江借家の“ギクシャク” → こちら 新窓で開きます
・雨清水タエ(北川景子)モデル“栄華→没落” → こちら 新窓で開きます
・錦織(吉沢亮)モデル“八雲+セツとの友情” → こちら 新窓で開きます
“本当は中年女中”→若いセツ、乱入 → こちら 新窓で開きます
・妾か女中か?“八雲が求めた女中の条件” → こちら 新窓で開きます
八雲はモラハラ夫?“繊細で偏屈な素顔” → こちら 新窓で開きます
・八雲はレストラン経営経験者で料理好き! → こちら 新窓で開きます
・絵がうまかった八雲の妻との絵手紙交流 → こちら 新窓で開きます
・八雲が大好きなビールおつまみは和菓子 → こちら 新窓で開きます
・明治時代は離婚多発と国際結婚ブーム → こちら 新窓で開きます
・リヨ(北香那)実話はウグイス贈答時期違う → こちら 新窓で開きます
・八雲先生が"英語"で伝えた日本の文化 → こちら 新窓で開きます
※他のリンクは下記↓の折り畳みの中!

文中の方言風の創作セリフは、下記のサイトを利用しています。
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拍手[24回]

朝ドラ「ばけばけ」再考…ハーンが“禁じられた結婚”を選んだ理由と、セツとマティに見える意外な共通点
Image created with DALL・E

【忠告】
朝ドラ『ばけばけ』の先の展開のネタバレは基本的に書いてありませんが。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、妻・セツ夫妻の[史実]について触れます。
あとから「読むんじゃなかった…」がないよう、読む際は自己責任でお願いします。
 ※以下、敬称は部分的に使い分けをします。



マーサの“モデル”である「マティ」についての[史実]

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―――ここまで、ごあいさつ―――

俳優・高石あかり(※高=はしごだか)さん主演でヒロイン・松野トキを、トミー・バストウさんがレフカダ・ヘブンを演じ、文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、妻セツをモデルにしたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)。

第11週『ガンバレ、オジョウサマ。』では、主人公・松野トキ(髙石あかり)の未来の夫であるレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と、ヘブンの最初の妻・マーサ(ミーシャ・ブルックス)の結婚秘話が描かれました。

そこで今回は、マーサの “モデル” である「マティ・フォウリ(通称:マティ」がどんな女性で、ハーンとどんな関係だったのかについての[史実]を記してみます。

きっと、「本編」では採用されない(と思います)エピソードを知ることになるので、より今作を深読みできると思います。


第一章 シンシナティで名声を得た青年記者ハーン

ラフカディオ・ハーンはアメリカ・オハイオ州シンシナティで新聞記者として頭角を現し、『シンシナティ・インクワイヤラー』で最も評価の高い記者と見なされる存在へと成長した。

正規教育をほとんど受けていなかったにもかかわらず、文学への深い興味と独学によって得た筆力を背景に、次々と読者を惹きつける記事を生みだした。

ところがいまから150年前にあたる明治8(1875)年、黒人との混血であったマティ・フォウリとの関係が原因となり、新聞社を辞する事態に追い込まれるのだ。


第二章 下宿屋で芽生えた関係と、ティンカーが記した献身

ハーンとマティの出会いは明治5(1872)年頃、マティはシンシナティのプラム街125番地にある下宿屋で料理人として働き、ハーンはそこに住み込んでいた。

のちに、作家であるエドワード・L・ティンカーは二人の関係を次のように記した。


「疲れて帰宅するハーンのために食事を温め、濡れた衣服を乾かし、病に伏した彼を献身的に看病した。ハーンはその親切を母のように感じ、やがて深く感謝するようになった。」
 ※出典:Edward Larocque Tinker

こうした行為は、家族から離れて育ったハーンにとって大きな意味をもった。

偏見の強い社会にあって、肌の色を理由に距離を取る姿勢をハーンが示さなかった点も、当時としては特異であったのだ。


第三章 “語りの力”を備えた娘マティ

明治8(1875)年9月の記事で、ハーンは名前を明記せずにマティと思われる娘を描写している。

地方出身でたくましく、働き者であり、驚くほど表現豊かな語りをもつ人物として紹介された。

読み書きを習う機会が少なかったにもかかわらず、幽霊譚をはじめとする体験談を印象深く語る力があったのだ。

その語りの巧みさは、後にハーンが怪談に関心を深める素地となったのは言うまでもない。


第四章 混血として生まれたマティと、社会が抱えた差別

マティは安政元(1854)年、ケンタッキー州メイスヴィルで白人農場主と黒人奴隷のあいだに生まれた。

南北戦争期には白人家庭で働き、14歳で一児を出産したのちシンシナティへ移住した。

ハーンが彼女と知り合った当時、奴隷制度は廃止されて約10年しか経っておらず、黒人や混血に対する差別は日常的に残っていた。

弱い立場の人々に共感しやすかったハーンにとって、こうした社会的風潮は強い違和感を伴うものであったのだ。


第五章 法律が禁じた結婚、それでも二人が踏み切った理由

明治7(1874)年6月、ハーンとマティは牧師のもとで結婚式を挙げた。

しかし当時のオハイオ州では白人と黒人(および混血)との婚姻は法律で禁じられており、式を断る牧師もいた。

最終的に黒人の牧師が二人を受け入れたが、役所が婚姻登録を認めなかった可能性が高い(とされる)。

24歳の若い記者と22歳の混血の女性によるこの決断は、差別の構造に抗う行為として歴史に残るのだ。

既出のティンカーは当時の様子を次のように記している。


「恩義を感じたハーンは、周囲の反対を押し切り結婚を選んだ。その行動は人々を驚かせ、マティ本人をも驚かせた。」
 ※出典:Edward Larocque Tinker

ハーンの選択は、のちに日本でセツと結ばれる際にも表れる“社会的弱者への眼差し”と重なる部分がある。


あとがき

ハーンがアメリカで禁じられた結婚を選んだ背景には、差別的な社会への反発と、相手の境遇に寄り添う姿勢があったことが分かります。

この姿勢は、のちに日本でセツと築いた関係にも通じる一貫した価値観であり、『ばけばけ』で描かれる人物像を理解するうえで強い説得力をもつ部分だと感じます。

ドラマで描かれるフィクションの奥に、こうした史実を知ることで、物語がより深く、温かく感じられると思います。

読者の皆様の “ドラマを楽しむ” ためのお役に立てれば幸いです。


参考・出展

『小泉セツとハーンの物語: ー小泉八雲「怪談」誕生のひみつー』三成清香(著)少年写真新聞社 新窓で開きます
『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』工藤美代子(著)毎日新聞出版 新窓で開きます
『ヘルンとセツ』田淵久美子(著)NHK出版 新窓で開きます
『セツと八雲』小泉凡(著)朝日新聞出版 新窓で開きます
『小泉八雲とその妻セツ 古き良き「日本の面影」を世界に届けた夫婦の物語』青山誠(著)KADOKAWA 新窓で開きます
『面白すぎて誰かに話したくなる 小泉八雲とセツ』伊藤賀一(著)リベラル社 新窓で開きます『八雲の妻:小泉セツの生涯』長谷川洋二(著)今井書店 新窓で開きます
『小泉八雲と妖怪』小泉凡著(著)玉川大学出版部 新窓で開きます
『怪談・骨董』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『日本瞥見記(上・下)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『東の国から・心)』小泉八雲(著)・平井呈一(訳)恒文社 新窓で開きます
『思ひ出の記』?小泉節子(著)・小泉八雲記念館(監修)ハーベスト出版 新窓で開きます
『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』?NHK出版(編)NHK出版 新窓で開きます
『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』?櫻庭由紀子(著)内外出版社 新窓で開きます
■「詳述年表ラフカディオ・ハーン伝」板東浩司(著)英潮社
■「小泉八雲: 思い出の記・父八雲を憶う」小泉節子,小泉一雄(著)恒文社
■https://archive.org/details/kottojapanese00hearrich KOTTO
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.79571/page/n13/mode/2up KWAIDAN
■https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.45846/page/n11/mode/2up Out Of The East
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami0lhear Glimpses of unfamiliar Japan vol.1
■https://archive.org/details/glimpsesofunfami02hear Glimpses of unfamiliar Japan vol.2
■「松江に於ける八雲の私生活」桑原羊次郎(著)山陰新報社
『ラフカディオ・ハ-ンのアメリカ時代』?エドワード・ラロク ティンカー(著)木村勝造(訳)ミネルヴァ書房 新窓で開きます
■『小泉八雲事典』?平川祐弘(監修)恒文社
『夢の途上: ラフカディオ・ハーンの生涯〈アメリカ編〉』?工藤美代子(著)集英社 新窓で開きます
『評伝ラフカディオ・ハーン』?E.スティーヴンスン(箸)遠田勝(訳)恒文社 新窓で開きます
『小泉八雲 日本を見つめる西洋の眼差し』筑摩書房編集部(箸) 新窓で開きます
『明治時代の人生相談』山田邦紀(著)幻冬舎 新窓で開きます
■富田旅館の証言(国立国会図書館サーチ〈NDLサーチ〉 新窓で開きます
レファレンス協同データベース 新窓で開きます
島根郷土資料刊行会編「西田千太郎日記」 新窓で開きます
国立国会図書館蔵書「小泉八雲全集 第1-17巻」 新窓で開きます
名古屋大学「人事興信録」データベース 新窓で開きます
書陵部所蔵資料目録・画像公開システム - 宮内庁 新窓で開きます



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拍手[19回]

もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう

フジテレビ系・水曜22時枠『もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第10話『さらば八分坂』の感想。


トラブル続きの舞台「冬物語」を終えた久部三成(菅田将暉)は、ジャズ喫茶「テンペスト」で憧れの蜷川幸雄(小栗旬)と対面し、熱い演劇論と激励を受けて感無量となる。蜷川は風呂須太郎(小林薫)とも親しく語らい、久部の知らぬ場で交流を深める。深夜のWS劇場では、久部と浅野大門(野添義弘)がジェシー才賀(シルビア・グラブ)と対峙し、ラジカセから逮捕されたトニー(市原隼人)の声が流れ始め…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---


原作:なし
脚本:三谷幸喜(過去作/古畑任三郎シリーズ,王様のレストラン,鎌倉殿の13人)
演出:西浦正記(過去作/コード・ブルー-ドクターヘリ救急救命-,ブラックペアン シーズン2) 第1,2,3,6,7,10
   三橋利行(過去作/監察医 朝顔2,コンフィデンスマンJP,わたしの宝物) 第4,9
   下畠優太(過去作/真夏のシンデレラ,ブルーモーメント,明日はもっと、いい日になる) 第5
   西岡健太郎(過去作/放課後カルテ) 第8
音楽:得田真裕(過去作/俺の話は長い,家売るオンナシリーズ,アンナチュラル)
主題歌:YOASOBI「劇上」
※敬称略




劇場をめぐる混迷と久部の暴走

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―――ここまで、ごあいさつ―――

12月10日(水)に放送された‘もしがく’こと『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)は、いよいよ最終回へと向かう第10話。

久部三成(菅田将暉)が抱く憧れの象徴として、実在の演出家・蜷川幸雄(小栗旬)が初めて姿を現した。

蜷川幸雄は現実世界でシェイクスピア作品に継続的に取り組んだ演出家であり。

『冬物語』は 2009年に上演された蜷川のシェイクスピア演出シリーズの一作である。
 ※出展:蜷川幸雄演出 彩の国シェイクスピア・シリーズ 冬物語|演劇@定点カメラ 新窓で開きます

この史実に裏打ちされた評価が、劇中の久部を大きく舞い上がらせるのだ。

久部は、WS劇場の用心棒・トニー安藤(市原隼人)が残したカセットテープを利用してWS劇場のオーナー・ジェシー才賀(シルビア・グラブ)に揺さぶりをかけ、厳しい売り上げノルマを撤廃させることに成功する。

結果として、劇場の賃料は大幅に下がり、久部は劇場を自由に使える環境を得る。

だが同時に、倖田リカ(二階堂ふみ)の思惑が入り込み、支配人の支配人・浅野大門(野添義弘)を追い出す方向へ久部を誘導していく。

リカに惹かれ、影響を受けやすい久部は、自らの願望と恋愛感情に引きずられ、これまで以上に危うい選択を重ねていく。彼の視界は狭まり、劇場を持つという夢も、どこか歪んだ形で実現してしまう。

がしかし、この近視眼的になってしまった久部の存在こそが、人生の表も裏も結果的に人前(客前)に晒すことであり。

今作のタイトルにもある “この世は舞台” の “怖さや奇妙さ” に連結するのだ。


「実在|非実」の境界を破る存在としての“蜷川幸雄”

このドラマは、「八分坂」という架空の地域を舞台にしつつ、実在の人物の要素を抽象化したキャラクターを配置する構造で成立してきた。

駆け出しの放送作家・蓬莱省吾(神木隆之介)のように “実在の誰か(=三谷幸喜)” を想起させつつも、あくまで創作上の存在に留まる人物が中心である。

にもかかわらず、ここで唐突に実在の〈演出家・蜷川幸雄〉が登場した。

これは、今作がドラマとしての世界でこれまで避けてきた境界線を越える行為であり、物語運営の基盤そのものを揺さぶる転換点となる。

そしてこの “境界突破” は、劇中で語られる久部の弱点を突く舞台監督・伴工作(野間口徹)の次の指摘と密接に結びつくのだ。


伴「(久部は)自分というものがない。
 人の影響を受け過ぎる」

リカの企て、伴の助言、周囲の空気。

どれも久部を容易に揺らす。

そこに、現実世界で圧倒的な存在感を持った演出家・蜷川幸雄の評価が加わることで、久部の内側にはこれまでにない葛藤が発生する。

この “かき乱し” を実在の人物が担うことは、物語としてきわめて説得力がある。

久部を堕落させないための “支点” として、蜷川が登場したように見えるのである。

この説得力の創出は、架空の人物では困難である(と思う)。


“おとこ”から生まれた男と蓬莱の位置づけ

一方で、八分坂にある無料案内所のおばば(菊地凛子)の謎めいた言葉は、蓬莱の出自と重ねられた。


おばば「男から生まれた男に気をつけろ(字幕ママ)」

蓬莱の母の名が〈乙子(おとこ)〉であるという情報を受け、久部は予言の意味を理解し始める。

蓬莱は、(前述のとおり)三谷幸喜氏の若い頃をモデルにしたキャラクターであることはご承知のとおりだ。

久部を観察し、時に突き放し、時に支える立ち位置にいるが、その存在は観察者にとどまらない。

蜷川が “実在側から境界を越えてきた” のなら、蓬莱は “創作側から境界へ迫る” かのような振る舞いを見せるのだ。

また、この二人の対比は、久部が直面する “影響の壁” を浮き彫りにする。

久部は蜷川の存在感に惹かれつつ、蓬莱の視線から逃れられず、二つの力に揺さぶられる立場に追い込まれていくわけである。


“ノイズ”が転機に変わる瞬間

「ノイズを恐れない姿勢」は、蜷川幸雄の演劇観にみられる実在の思想である。

蜷川は舞台上で起きる逸脱や混乱を否定せず、それらを作品の力に転換するスタイルで知られた。

現在の〈演出家・蜷川幸雄〉像は、すでにその信頼度が高い歴史的評価に裏打ちされている。

ドラマはその特徴を引用し、久部の混乱に “価値” を与えようとしているのだ。

しかし、問題は久部自身である。

彼はノイズを楽しむキャラクター設定ではなく、ノイズに飲まれて暴走する側の人間として描かれている。

だからこそ、そこに蜷川という “実在の基準点” が差し込まれたとき、久部の物語は一度リセットされるのだ。

そして、この瞬間こそ、ドラマの核心である。

蜷川は “ノイズ” ではなく “転機” として機能するという。

そのキャラクターを蜷川と縁が深い小栗旬さんが演じることで、その効果はさらに増幅されるのだ。


あとがき

蜷川幸雄という確かな史実をもつ人物が登場したことで、物語は一段深みを増しました。

久部の弱さや暴走が単なる混乱に終わらず、転換点として描かれる構造は非常に魅力的です。

「実在|非実在」の境界をあえて越える大胆さも機能しており。

終盤に向けて物語がどのように収束するのか楽しみです。

FODで次回放送分を先行配信しているようですが、ネタバレ関連のコメントは厳禁で願います。


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フリーランスのホテル宴会(婚礼含む)&映像ディレクター"みっきー"が、テレビ、映画、CM、ディズニー、音楽などエンターテインメント全般の感想を綴ります。愛するが故に、記事により毒を吐きますがご勘弁を。


  • 管理人 自己紹介
【ハンドルネーム】
みっきー
【性別】
男性
【職業】
宴会/映像ディレクター(フリーランス)
【自己紹介】
東京下町生まれ千葉県在住。
ホテル音響照明映像会社を経て、2001年独立。
ホテルでイベント、パーティー、
映像コンテンツ等の演出を手掛ける。
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