コード・ブルー～ドクターヘリ緊急救命～1st SEASON （第10話・2017/8/17 再放送） 感想

©フジテレビ

フジテレビ系・月9『コード・ブルー～ドクターヘリ緊急救命～1st SEASON』（公式）
第10話『揺れる心』の感想の第2弾。
なお、過去の2008年放送の『1st SEASON（便宜上こう呼ぶ）』、2009年放送の『新春スペシャル』、2010年放送の『2nd SEASON』はすべて鑑賞済み。

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　藍沢（山下智久）は、森本（勝村政信）、冴島（比嘉愛未）とともにドクターヘリで出動し、電気の配線工事中に転落した患者を搬送する。患者は、約10メートルの高さから落ち、ショック状態になっていた。
　藍沢は、待ち受けていた白石（新垣結衣）や緋山（戸田恵梨香）らとともに、運び込んだ患者の処置にあたった。だが、藍沢は、挿管に手間取るなど、正確で迷いがない日ごろの姿とはどこかようすが違っていた。一方、FASTと呼ばれる超音波検査を担当していた白石も、胸部の出血を見落としていることを緋山に指摘されてしまう。
　同じころ、脳外科の西条（杉本哲太）は、黒田（柳葉敏郎）の息子・健一（今井悠貴）のオペを開始する。しかし、健一の脳腫瘍は言語中枢に近い場所にあるため、オペは困難を極める。
　そんな中、白石は、救急救命部部長の田所（児玉清）に辞表を提出する。田所は、一応それを預かり、ここで逃げたら戻れなくなる、と白石に告げた。
　その夜、翔北救命センターに急患の受け入れ要請が入る。妊娠36週目の妊婦が本棚の下敷きになったのだという。患者はすでに何件かの病院を断られていた。三井（りょう）は患者を受け入れることを決め、藍沢、緋山とともに準備を急ぐ。妊婦は骨盤を骨折していた。処置にあたった藍沢は、母体を優先することを決意するが･･･。
---上記のあらすじは[FOD]より引用---

実は『1』では、"脇役の活躍" がしっかり描かれてる

『1』の再放送を見ていて、ふと感じたのが、緊急処置室や病室のシーンで、名も無きと言っては失礼だが、救命センターの看護師長・大原澄子（池田貴美子）と救命センターの看護師・村田香織（金田美香）ら顔の売れた俳優以外の脇役の活躍がしっかり描かれていることに気付いた。

今回でも、器械出しのナース役や麻酔科医役、救命士役などにも、実際の救命救急の現場ような役割と台詞が与えられているから良いのだ。7～8名の顔の売れてる俳優だけでの医療ドラマはつまらない。そう言う点は、アメリカのER系ドラマなんかは、巧みに群像劇と個人的な部分を描き分けて、上手いと思う。

「医者になったんだよ」と言った藍沢の気持ち…

序盤で描かれた藍沢（山下智久）と祖母・絹江（島かおり）のリハビリや病室ののシーンも本放送当時（2008年）はあまり気にしていなかったが、数年前に私自身の実父が、屋外での転倒がもとで二週間ほどの入院をしたら、そのまま中程度の認知症になり、息子の私のことを認知できなくなった。

息子が分からないショックと、リハビリを一生懸命にさせて早く退院させようとした、あの時のショックや焦る気持ちを、本作でこうして描いていたんだと言う新発見。私の父は幸いにも亡くなる少し前に認知症が軽度になり、私のことを認知してくれたが。藍沢の「医者になったんだよ」と言う気持ち、痛いほど分かる。

「黒田の家族」を徹底的に描く脚本と演出が素晴らしい

脳外科の西条（杉本哲太）が、黒田（柳葉敏郎）の息子・健一（今井悠貴）の脳外のオペを開始するくだりも感動的だ。健一の脳腫瘍が言語中枢に近い場所にあるため、一時的に麻酔を解き、黒田が健一へ話し掛けながらオペを進めるシーン。医師生命を絶たれた黒田に、“父親” と言う役目が与えられた。

これによって、黒田の出番が作れるのは当然だが、本作で数々扱って来た “親子の物語” の集大成として「黒田の家族」を描くと言う見事な脚本のアイデア。視聴者にも劇中の登場人物たちにも初めて見せる「黒田脩二」の父親の顔。そんな黒田を見て、西条が言うこの↓台詞が

西条「残りは、オペが終わってからゆっくり話せ。
　　　家族だけで…。俺が必ず話をさせてやる」

あとは、西条に託すしかない黒田が、健一を心配しながら手術室をあとにする姿も印象的だ。それに演出もいい。妙にこのあとの手術シーンで尺を取らずに、さっと手術後に繋いで、西条の「父親のことは健一君は知らないままでいいんですか？」に直結して「黒田の家族」を徹底的に描く編集。この潔さが好きだ。

白石を引留める緋山が、前回を超えているのも丁寧な描写

前回に続いて、意地でも白石（新垣結衣）を辞めさせたくない緋山（戸田恵梨香）のシーン。前回よりも引き留める気持ちに拍車が掛かっており、その気合いの入り具合のバランスが絶妙に良くて、更に緋山ならではの台詞になっている。

緋山「言っとくけど、辞めさせないよ、ここ。
　　　私が辛い時にね、慰めて貰う相手が必要なの。
　　　めんどくさい患者を押し付ける相手や、
　　　くだらない恋バナを朝まで聞かせる相手もね」

この↑台詞の最後の部分がが、『3』で引用されている訳だが、この時点でその “くだらない恋バナ” が不倫とは想像もしなかった。

冴島の "めちゃくちゃ」" は、ここから引用したのか?

そこへ、冴島（比嘉愛未）もやって来て、白石にもの申す訳だが…

冴島「私も辞めさせませんから。
　　　ストレス発散で、いじめる相手が必要なんです」
緋山「さすが。私より、めちゃくちゃ」

冴島が、ストレス発散で同僚をいじめるなんてことは無いだけに、緋山が驚く訳だが、もしかして、この「めちゃくちゃ」だけが『3』に引用されて、冴島が妊娠と結婚するって設定を作ったのか？どうやら『3』の脚本家・安達奈緒子氏は、『1』の第10話はご覧になったようだ。中途半端な引用はしないで欲しいのだが…

3人のｶｯﾄに白石のｾﾘﾌを音先行させたｴﾚﾍﾞｰﾀｰのｼｰﾝに注目

藍沢と白石がエレベーターに乗ってるシーン。緋山、冴島、藤川（浅利陽介）の心配するカットに白石の台詞が先行してエレベーター内に行くのも、しっかり5人を一括りとして描こうと言う意思の表れ。最初にエレベーター内の2人が映ってからでは、5人のまとまり感が薄めるから。

藍沢「いいな」
白石「えっ？」
藍沢「辞められるヤツは。
　　　俺にはこれしかない。他には何もないんだ」

前回のラストで、誰もよりも先に病棟を飛び出して大雨の中の白石を追い掛けた藍沢のプライドと孤独が複雑に入り混じったこの↑台詞もズシンと響く。この辺の、実家が病院と言うキャラクターは『3』にも登場するが、あまりに次元が違うお坊ちゃまのために、このような感動的なシーンにはならない。当然だが…

「母体優先」を聞いた時の一瞬顔が曇る三井のｶｯﾄが大事

終盤の、妊娠36週目の妊婦が本棚の下敷きになり、妊婦は骨盤を骨折。処置に当たった藍沢は、母体を優先する判断を下すエピソード。前回で、かつて自らの判断ミスで胎児と妊婦の命を救えなかったトラウマに1つの決着が着いた三井（りょう）の表情が一瞬曇る1カットが素晴らしい。あれが無いと、前回の意味がないから。

白石の覚醒を描きつつ、実は黒田の覚醒も描く匠の技

救急搬送の患者が多過ぎて、人手不足のため片手の黒田も処置の現場へ出る。しかし、一度辞めると口にした白石の生真面目な性格と内向的で自己主張が苦手な性格が災いして、ただ黒田を見ているだけと言うのも、ちゃんと筋が通ってる。

そして、黒田が落とした薬品ボトルを拾ったところで、白石のスイッチが再び入る。ここの演出や編集が巧みと感じるのは、白石が覚醒する瞬間の表情のカットが無いこと。黒田が落としたボトルのアップに白石の手と足が同時にフレームイン。次は黒田の驚きの表情のアップになる。その直後は既に覚醒済みの白石に繋がる。

突然覚醒した白石に驚く黒田の表情で数秒間繋いで、白石の振り返りの表情で覚醒完了を描くって演出。要は、白石の覚醒を黒田で描いたってこと。これによって、白石と共に黒田の医師生命も覚醒したって印象になる。実際の映像も、このカットのあとから、黒田の指示で処置が進んで行く。これ、結構 "匠の技" だと思うが。

藍沢の「すいません、遅れて」が、視聴者の心情を代弁…

医師として苦悩する藍沢が、黒田に相談するシーン。これまで全てを自分の中に溜め込んで生きて来た藍沢が弱音を吐く印象的なシーンだ。

藍沢「昨日、判断に迷いました。
　　　今までの俺なら、
　　　何も考えずに母体を優先さしてました。
　　　でも…。昨日は両方救おうとした」
黒田「救えたじゃないか」
藍沢「結果論です。両方死んだかもしれない」
黒田「何が言いたい？」
藍沢「この病院に来るまでの俺は、
　　　迷いなんてありませんでした。
　　　でも、今は迷いだらけです。
　　　先生の腕も今までの俺なら、
　　　単なる処置の1つでしかなかった。
　　　心が痛むこともなかった。今は直視できません。
　　　先生、名医って何ですか？」
黒田「その答えは、たぶん現場にしかない」

そして、黒田の最後の台詞で「終わり」にしても、十分盛り上がるのに、本作はこの台詞のあとに消防庁からの着信応答の画面と音をカットインして、視聴者を感動の中から救命の現場へ一気に引き摺りだす。劇伴はずっと同じでこちらは感動を引き摺ったまま、映像だけがどんどん進んで行く。まるで、置いてけぼりだ。

しかし劇伴のクライマックスで、出動できない黒田のアップが1カット入ることで、自分がまだ感動に浸ったままで良いのだと気付かされる。藍沢の「すいません、遅れて」こそ、視聴者の今の気持ちを代弁していると捉えるのは無理があるだろうか。これで視聴者は藍沢と一緒に災害現場にフライトできると言う訳だ。お見事！

あとがき

最終回直前だからと言って、“わざとらしい” とか “あざとい” 盛り上げエピソードは一切排除して、登場人物たちの日常業務を普通に描くだけで、自然と盛り上がるのは脚本、演出、俳優の三位一体の成せる技ですね。流石『1st SEASON』です。明日の最終回も内容は知ってるのに、見逃せません。そして、『3』でも、こう言う感想を書きたいです。

             

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