ライオンの隠れ家 （第4話・2024/11/1） 感想

TBS系・金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』
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第4話『誕生日は幸せな日』の感想。

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山梨県で橘 愛生（尾野真千子）らしき遺体が見つかったニュースにショックを受けたライオン（佐藤大空）は高熱を出し、洸人（柳楽優弥）により小児科に連れて行かれる。洸人と美路人（坂東龍汰）は、ライオンが最近誕生日を迎えていたことを知り、仲間と共に内緒の誕生日会を計画する。一方、記者の楓（桜井ユキ）は事件の新事実を得るため、刑事の高田（柿澤勇人）に近づく。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---

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原作：なし
脚本：徳尾浩司（過去作/おっさんずﾗﾌﾞｼﾘｰｽﾞ,恋はDeepに,六本木ｸﾗｽ）
　　　一戸慶乃（過去作/ﾄﾞﾗﾏ初）
演出：坪井敏雄（過去作/妻､小学生になる｡,さよならﾏｴｽﾄﾛ） 第1,2話
　　　青山貴洋（過去作/ｸﾞﾗﾝﾒｿﾞﾝ東京,ﾕﾆｺｰﾝに乗って,ﾏｲ･ｾｶﾝﾄﾞ･ｱｵﾊﾙ） 第3,4話
　　　泉正英（過去作/TOKYO MER,ﾕﾆｺｰﾝに乗って,王様に捧ぐ薬指）
音楽：青木沙也果（過去作/ﾕﾆｺｰﾝに乗って,すきすきﾜﾝﾜﾝ!）
劇中絵画協力：太田宏介,太田信介（ギャラリー宏介株式会社 ）
自閉症スペクトラム症監修：伊庭葉子,宮本一哉（株式会社Grow-S さくらんぼ教室 ）
警察監修：古谷謙一
タイトルバック監修：Vaundy
主題歌：Vaundy「風神」
自閉スペクトラム症監修：伊庭葉子（特別支援教育士）
Ｐ：佐藤敦司（過去作/大恋愛~僕を忘れる君と,ｲﾝﾊﾝﾄﾞ,俺の家の話）
※敬称略

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「障がい」の表記について

当ブログでは、人や人の状態を表す場合、原則「障がい者」「障がい」と表記としています。
※法令、条例、規則などからの引用や固有名詞は対象としていません

サスペンスがいい塩梅に薄まった"ホームドラマ"へ正常進化

「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです！
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私のブログをご訪問いただき、心から感謝申し上げます。
―――ここまで、ごあいさつ―――

前回の感想の締め括りに、次のように書いた。

この調子で、謎解きよりも、普通に “ドラマ” として楽しませてほしい

と同時に、第3話に続いくことになった演出担当の青山貴洋氏の演出については。

青山氏が得意とする作風は、ひと言で表すなら、徹底的に登場人物らの心の描写を施した “ザ・ホームドラマ” だ。

そして、この第4話… である。

結論から言えば。

私の期待どおりに、青山貴洋氏の演出が冴えた、サスペンス要素がいい塩梅に薄められた “ザ・ホームドラマ” へ正常進化した… だ。

今回の感想は、放送順の劇中に登場した映像とセリフを中心に深掘りしていく。

休日なので何かと忙しいとは存じますが、今回の感想は長編です（笑）

冒頭の洸人のナレーションが絶妙！

序盤も序盤、山梨県で発見された女性の遺体が、行方不明となっている橘 愛生（尾野真千子）の可能性があるというニュースを見てしまった‘ライオン’と名乗る男の子（佐藤大空）が、ショックから高熱を出してしまう。

そのライオンの “背中” を見て市役所に勤務している小森洸人（柳楽優弥）が言うモノローグだ。

洸人(M)「その背中は
　これ以上 踏み込んでくるなと
　言っているようだ」

まず、「この背中」でなく「その背中」となっていることで、このモノローグが洸人が目の前のライオンを見た心情描写ではなく。

あくまでも、今作の ＜語り＝ナレーション＞、水先案内人としての、これまで描いてきたことのひとつの集大成であり。

このあとに書くつもりの、洸人と、弟のアート事務所でアーティストとして働く、自閉スペクトラム症の美路人（坂東龍汰）との “過去” につながる ＜暗示＞ になっている。

いや、ドラマの構成上で暗示にしたいから、あえてモノローグをナレーションにしているのだ。

そしてこのモノローグこそが、第4話を全ての登場人物の “背中＝過去”を描く物語であると象徴もしているのだ。

今作の"ミステリアスガイ"を巧みに暗示したセリフ

さて、子どもの熱発により、物語は、ある意味で生活感あふれるトラブルに見舞われたサスペンス仕立てで進んでいく。

もちろん、ここでのサスペンス仕立ては、今作の “縦軸” とは全く別物ものだ。

そこで、絵面（えづら＝視覚的な印象・面白さ）で緊張をほぐす巧みな作戦が次だ。

洸人と同じ福祉課の同僚・貞本洋太（岡崎体育）の次のひと言だ。

洋太「隠し子か あぁ ミステリアスガイ」

劇伴も一気にコミカル調に切り替えた上に。

このセリフの直後に劇伴が止まり、本当の意味での “ミステリアスガイ” である…

そう、山梨県で建築会社を経営している橘家の次男で、建築会社「たちばな都市建設」に勤務する、妻子が行方不明中の橘祥吾（向井理）の物語へも切り替わった。

しかし、この “ミステリアスガイ” のくだりも長くは続けず。

もう一人の “ミステリアスガイ” である‘ライオン’へと切り替わる。

初診の受付での一コマ "問診表記入" がよきアクセントに

次に面白い、いや うまいなぁと思うのが。

病院受付「それでは こちらに
　ご記入をお願いいたします」

なんてことのない、初診の病院の受付での一コマだ。

しかし、前段のナレーションで「これ以上 踏み込んでくるな」と描いた後だけに。

洸人が、(当然だが)空欄だらけの問診票を目の当たりにして、ライオンの年齢など何も知らないことに改めて気づかされる。

そして、年齢の記入欄から、今回の後半の見どころになるライオンの誕生日へリンクするのだ。

そう、ここが、いわゆる「起承転結」の「承」のど頭ということになるのだ。

そして、この解説どおりに、「承」らしく、次々と展開していく。

美路人らしさを、同僚の小野寺で描く楽しさ

今回、私としては少々残念だったのが、美路人のくだりが少なめだったこと。

もちろん、無かったわけでなく、ピンポイントで美路人らしさが溢れる描写があった。

その一つで面白かったのは、美路人らしさを描くのに本人ではなく。

みっくん’こと美路人と同じ会社で働く同僚で自閉スペクトラム症のアーティスト・小野寺武宏（森優作）を活用した点だ。

小野寺「みっくんのお兄さん
　遅刻の記録 更新中です」

時間に超正確で、兄を信じ切っている美路人が、同僚の小野寺に自分が一番気にしていることを指摘されたからか、小野寺をチラ見するくだりだ。

小野寺にはなんの悪気もないからこその、みっくんの “チェッ!”って感じが愛らしい。

そして、そこからの…

美路人「お迎え 来られない？
　お兄ちゃん お迎え 来られません」

映像は、自宅近くを歩く美路人の “背中” へと切り替わるのだ。

今回は "背中" を利用した映像効果が随所で光った

次のポイントは、今作の全体の構成に関すること… と言うべきだろうか。

‘寅じい’こと小森兄弟を暖かく見守る定食屋「とら亭」の元店主・吉見寅吉（でんでん）のセリフだ。

寅吉「お前さんは 今日は いつもと違う
　ルーチーン ばっかりだな」

そう、美路人を中心に物語を動かすと、どうしても言動の特性から “ルーティーン化”、パターン化に落ちりやすくなる。

だから、こうして “いつもと違うルーチーン”を盛り込むことで、物語が新鮮にもなるし、いつもと違うから物語の歯車も回るのだ。

そして、この「とら亭」での場面で注目してほしいのが、次の寅吉のセリフの際のカットだ。

寅吉「お前らの時も 大変だったもんな」

カメラは、みっくんのナメで、奥に寅吉の構図だ。
※「ナメ」とは、カメラ手前に被写体の一部を入れる構図のこと。

そう、ちゃんとここで、序盤で強調しておいた “背中＝過去”にリンクさせてきたのだ。

当然この直後のシーンは “お前らの大変な時” の一コマだ。

そしてさらに、 美路人が成長して、他人のことを気遣えるようになったことまで強調した。

やはり、家族の、その一員の成長を描くことも “ホームドラマ” のだいご味だし、見る側の楽しみだ。

そこを、今回もきっちりと、みっくんの進化で盛り込んできたのは、巧みな構成だ。

今回の、ライオンの病気の使い方は決して悪くない

今回の「起承転結」の「転」のはじまりが、次の美路人のひと言だ。

美路人「お誕生日は幸せな日です」

ちょっと脱線するが。

昨日、下記の投稿をした。

NHK連続テレビ小説「おむすび」：朝ドラが“リアルな大災害”を扱うたびに思うこと 

その中で、奇しくも放送日の「11月1日」が、1月に急逝した3歳年下の妹の誕生日だと書いた。

お互いに60歳近くになっても誕生日とクリスマスのプレゼント交換をやっていたのが、私と妹だった。

だから、今年は「お誕生日は幸せな日です」と、簡単に言えない日になってしまったのだ。

だから、私は、地上波ドラマでは「やたらと “死や余命”“病気や障がい”を盛り込むな！」と声高に叫ぶわけだ。

その一方で、今作のように、今回はライオンの病気を扱ってはいたが、それが家族にとっての最高の幸せの瞬間である “家族の誕生祝い” につながるなら大いに評価する。

いや、みっくんの『相棒』の右京さん並みの推理力にも脱帽だし（笑）

ドラマの中の虚構だとしても、登場人物らの誕生日会を見て、ようやく私の心が救われた…

そんな気分になった瞬間だ。

世間の評価や評判はどうでもいい。

私は、このドラマを最後まで応援したい。

あとがき

最後は、ライオンとみっくんがふたりで、疲れ切った洸人の心をほぐすようにおなかに “手当て” してましたね。

妻が現役の助産師なので、ちょっぴり医学うんちくを。

病気や傷の処置をすることを「手当てする」と言うように、看護や看病と関連があります。

「手当て」という言葉は、もともと「（不足した）人手を充てる」が転じた言葉です。

がしかし。

新生児や未熟児ケアをする助産師や看護師が、保育器の赤ちゃんに “触れる＝手を当てる” ことで、生存率が上がるとされたことから、看護やケアすること、その原点を “手当て” と呼ぶようになったそう。

その意味でも、今回のライオンとみっくんの “手当て” は、なによりも洸人のケアになったと考えます。

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