映画「トロン：レガシー（3D 字幕版）」 感想と採点 ※ネタバレあります

映画『トロン：レガシー（3D 字幕版）』（公式）を、本日（12/17）鑑賞。初日第1回目の上映で、観客は20名ほど。

採点は、★★★★☆(5点満点で4点)。100点満点なら80点。

因みに、『トロン（1982）』は、当時劇場にて初日に鑑賞した。当時、高校生で進路を決めるのに、映像業界を意識させたきっかけになった映画の１本でもある。それだけに、相当思い入れが強い作品だから、採点は若干甘めになった。

ざっくりストーリー

デジタル業界のカリスマであるケヴィン・フリンは、7歳の息子サムを残して失踪した。20年後、サムは父からの謎のメッセージに導かれ、コンピューターの中の世界へと迷い込む。 そこは、父が創造した “理想の世界”。
しかし、そこは、独裁者クルーに支配されていた。命を狙われるサム、彼を助けるクオラという女性、そして父の行方は？ そして、人類の存亡を賭けた死闘が始まる…

予告編で、“あの世界観”に惹かれたならおススメ！

『トロン』。まだインターネットも無く、携帯電話がカバン位の大きさだった1982年に、フルCGの背景合成と、人物の映った白黒フィルムに1コマ1コマ手書きで色彩を施した映像革命と言えるSF映画。その後のあらゆるSF映画に影響を与えたと言って良いだろう。
その80年代のCGの雰囲気を上手く残しつつ、最新のCGと次世代3Dキャメラによる斬新な映像を体験するだけでも価値がある。設定などは第1作を踏襲しているが、本作で新たに追加された部分もあり、新作として観ても楽しめる。

できれば是非、第1作目を観てから劇場へ！

もし、第1作目を観ていないならば、出来れば観ておくと、もっと楽しめる。特に架空のゲームの世界に登場する衣裳や武器や乗り物の（デザインの）ルーツを知っておけば、28年のタイム・トリップを体験できる。

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今回は、4点とは言え、それなりに辛口の感想なので、「意見には個人差があるから」と寛大なお心の方のみ、右下からどうぞ。
採点の理由も含めて詳しい話はネタバレがありますので、ご注意ください。

ここからネタバレあります！

80年代、そして“第1作目”へのオマージュが素晴らしい！

左が1982年公開の『トロン』のパンフレット。先にも書いた通り、今やフルCG全盛期だし、様々なSFアクション映画が存在するが、それらのルーツが1作目である『トロン』だ。
それ以前には、こう言う映像は存在しなかった。斬新で、美しく、独創的な映像は、当時十歩も百歩も時代を先取りしていたから、日本では一部のファンの支持しか得られなかったが、確実に日本だけでなく世界の映像クリエーターたちに影響を与えた。
それゆえに、完全に最新デザインを施さず、フレーム構造や、わざと直線や曲線を組み合わせて造形したり、80年代にみんなが夢見た“未来世界”のテイストをさりげなく残しているのも、見逃せない。

“ゲームの世界に迷い込む”お話ではない！

本作では、コンピューターの世界の住人を“プログラム”、彼らから見た実在の人間を“ユーザー”と呼ぶ。この“プログラム”が実に個性的。時に真人間に見えたり、ロボットのように見えたり、幻影にも見える。
また、コンピューターの世界が、地球や国家を投影している点も面白い。とにかく、“コンピューター・ゲームの中に迷い込んだ不思議なお話”の域を超えた独特な世界観を楽しめる。

有機物の『アバター』と、無機物の『トロン：レガシー』

映画『アバター』がフルCGと最新3Dで、有機物を描いたのに対して、本作は無機物を描いたと言って良いだろう。『アバター』が森林や湖や動物を創り出したとすれば、本作は、サム以外は“プログラム”もどこか無機質的で不気味だが、美しくカッコいい。

より自然な立体感…

3Dも『アバター』で使用した次世代3Dキャメラを更に進化させたらしく、飛び出す3Dと言うより、一眼レフカメラのボケ味を強調したような自然な立体感。飛び出す量も奥行き感も、程好い。実際に3D眼鏡を外しても、極端な3D効果をつけた場面は少なく感じた。
あえて言えば、2Dと3Dの中間的な表現の味付けと言って良いかも知れない。

残念なところもある…

人間が作り出したコンピューター世界の話だから止むを得ないが、やはり世界観が閉鎖的で、ややスケールが小さい。広さや高さは無限なのだが（笑）
ディスクとライトサイクルのゲームのシーンは、CGとアクション共に見事の一言。しかし、その他のアクションシーンとなると、軍隊まで登場するのに意外にちんまりと描かれる。
それに、独裁者クルーが、現実の世界の平和を脅かす云々の件（くだり）があるが、どう現世と関わり、影響を与えるのか見えなかった。

木を見て、森を見ず…

まず、全体的に、現実の世界とコンピューターの世界が、どのような相関関係にあるのか、あまり視覚的な説明が無い。だから、なぜ出口を目指し、出口までどのような経路を歩んでいるのかわかりにくい。
また、コンピューターの世界の俯瞰図（全体図）が示されないから、どれほどの世界なのか、最後まで手探りになってしまう。「木を見て、森を見ず」と言ったところか。

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久しぶりに、期待十分で劇場入りし、興奮しながら劇場を後にしました。今回はレビューなので、あれこれ細かい点に触れましたが、この映画の正しい楽しみ方は、細かいことを気にせず、どっぷり世界観に浸ることだと思います。そうすれば、誰でも未知の世界を体感できます。
また、私のようにコンピューター・ゲームにあまり興味の無い方でも、ディズニーランドのアトラクションの中にいるような、新しい映像体験ができます。

今回は、字幕版を鑑賞しました。未来的な映像なのに、字幕の台詞は妙に古臭い表現があったり、省略しすぎな表現が目立ちました。誰かと思えば、戸田奈津子氏。
3Dでも、字幕そのものは見易いですが、戸田氏の翻訳が苦手なら、吹き替え版も良いかもしれませんよ。

最後に、父親：ケヴィン・フリン役のジェフ・ブリッジスが良い演技をしています。そして、驚くのは、ケヴィンの20年前の容姿である独裁者クルーの表情がすべてCGだということ。
日本人クリエーターが担当しているそうです。ついに、CG俳優もここまで来たかと言う印象です。

　　             　
   

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感想の趣旨について

当ブログの感想は、僭越ながら 「もっと こうしたらよいのに…」を追究 することで、広く映像作品を楽しめるようになることを目的としています。
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。

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