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連続テレビ小説「カーネーション」

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』公式
第7週『移りゆく日々』 『第41回』の感想。


 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


【第41回】
大繁盛の末松商店は、糸子(尾野真千子)が分かりやすく描いたスタイル画をつけるサービスを始めたことで、夜まで客の列が途切れなくなる。糸子は岸和田に洋服が広まってきたと判断し、自分で洋裁店を開く決意を固める。しかし、相変わらず酔っ払って帰った善作(小林薫)は許そうとせず、激しい言い合いに。殴られても引き下がろうとしなかった糸子だが、善作と顔を合わせることに耐えられず、いったん神戸の松坂家へ身を寄せる。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---

糸子は "ブレイクスルー思考" の発達した女性だ!

そう言えば、数回前から季節が移っているなと思っていたが、今回の冒頭で「もうすぐ正月」と言う季節感を入れて来た。もう少し、季節の表現を入れたら良いのに。そんなことを考えていたら、あっと言う間に糸子が洋服を注文した客にスタイル画を渡すサービスを始めていた。ここが良いんだよね。

前回(第40回)の感想で、「糸子に関わる女性たちが、新しい時代に即していく」ことや「糸子が周りの女性たちを洋服を着せることで、内面も変えて行く」ことを重ねて描いていると書いた。前回は、そう言う風に描かれていると言うところで止まっていた。しかし、今回はそれを少し進めて、そのことを糸子が気付いたことを描いた。

糸子(M)「何でやろ? そうか この岸和田にも
     やっと 洋服を着る人が増えてきたっちゅう事や。
     あかん 今や。
     もう お父ちゃんが 何言おうが 迷てる場合ちゃう。
     うちは 今 始めなあかん」

この↑糸子のモノローグがいい。「何でやろ?」と言う自分への質問で始まり「今 始めなあかん」と自分で結論を出している。誰かに相談するでなく、自問自答して自己解決。そう、糸子は “ブレイクスルー思考” が発達した女性なのだ。

ご存知の方も多いと思うが、“ブレイクスルー思考” とは、自分の目の前にある問題や障害そのものに価値を見出して、全てを “順調な試練” として受け止めることで、問題や障害を楽々と突破して自らどん欲に吸収しながら成長していくような発想法のこと。糸子はその発想法を、パッチ店に働きに出た頃から自然に身につけた。

「負けたくない」とか「 “糸子のだんじり” を手に入れたい」と言う強い気持ちが、糸子の “ブレイクスルー思考” を発達させたのだと思う。そのことが、この自問自答のモノローグでしっかりと表現されたと言う訳だ。

きっと、本作の、いや朝ドラ史に残る名場面に違いない…

そして、クリスマスケーキの晩。糸子が稼いだお金で買って来たクリスマスケーキのローソクの炎を、小原家の女性たちが賑やかに吹き消す。その微笑ましい様子を、疲れた面持ちの糸子がガラス戸に寄り掛かって、ぼんやり見てる。それに気付いた母・千代。首を横に振り心配ないと言わんばかりの糸子。

どうやら、糸子は疲れ切っていると言う描写でなさそうだ。明らかにそう演技指導もされている。そこへ、善作が帰宅。また、酔っ払ってる。クリスマスケーキにケチをつける善作に、糸子が自分で洋裁店を開く決意を固めたことを話す。いつになく、冷静な糸子だ。そう、糸子も成長したのだ。

そして、この糸子の切った啖呵が、善作を爆発させる。

糸子「悪いけどな お父ちゃんより
   今は うちのが よっぱど この家 支えてるんや!」
善作「何やと!」
糸子「殴りたいんやったら殴ったらええ!
   けど 商売は…商売だけは うちがしたいように させてもらう!」
善作「このガキが!」

こうなるのは百も承知だ。前回の感想で書いた通り、予定調和の展開だ。しかし、そうなったからと言って落胆させず、むしろインパクトのあるサプライズに昇華したのはなぜだろう。

恐らく、演者たちの物語を真剣に描こうと言う演技だ。善作役の小林薫さんは恐らく手加減せずに、糸子役の尾野真千子さんを引っ叩いた。その証拠に、引っ叩いたカットのあとの糸子の左の頬に善作の人差し指と中指の痕が赤く腫れていたから。俳優に役が憑依して描かれた虚構の中の真実。だから、怖い。だから、恐ろしい。

そして、カメラも止まらない。芝居も続く。子役らも演技を続ける。「カット」の声が掛るまでの緊張感の持続。見ているこちらにも緊張感が伝わって来る。そして、麻生祐未さんと正司照枝さんの素晴らしい演技で、極度の緊張感がじわりじわりとほぐされていく…。だから、心にズンと響くのだ。

きっと、本作の、いや朝ドラ史に残る名場面に違いない…

2秒近い長めの暗転が、糸子の成長を描いた!

糸子「堪忍! しばらくお父ちゃんと 顔合わせたない。
   神戸のお祖父ちゃんとこ いさしてもらう」

この言葉を残して、糸子は家を出る。家を出た後のカットもいい。糸子が家を一度も振り返ることなく、クリスマスツリーナメの糸子の後ろ姿が小さくなっていくだけを見せてゆっくりとフェードアウト。そして、2秒近くの長めの暗転を挟んで、カットインで神戸の松坂家へ場面転換。

この2秒近い長めの暗転が、糸子の目の前の壁を “順調な試練” として受け止める時間の始まりと捉えるのはどうだろう。ここんとこず~っと自分の身の回りしか見ていなかった糸子にとって、久し振りの松坂の家の変化も、ゆったりと流れる時間も、糸子にとっては壁を楽々と突破して自らどん欲に吸収しながら成長するための大切なものなのだ。

だから、ここに長くは居られない。糸子は “ブレイクスルー思考” が発達した女性だ。だから、すぐに帰る。糸子にとって、戦場であり、夢を叶える場所へ。だから、糸子は松坂家への一区切りをつける。

糸子「この人らは うちを守ってくれる人らやのうて
   うちが守っちゃらなあかん人らなったんや。
   ここは もう うちが甘えられる場所やない」

お見事! これ傑作の放送回だ。

あとがき

糸子の心情の変化に絞り込んで、15分間を使い切った…そんな見事な15分間でした。結構な量のモノローグに頼った構成になっていましたが、糸子以外の登場人物たちの台詞がしっかりと状況説明をしているので、不満はありません。劇伴も最小限に抑えて、あくまでも俳優の演技で魅せてくれました。お見事!

最後に。前回の感想に 136回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。第41回は、心に残る回ですね。ここまで完成度が高いのかって思わせてくれました。NHK番組表によると、明日の 16:20から第42回と第43回の放送予定になっています。

ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレをコメントに書いている人が、多くて困っています。ホント、ネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※しばらくの間、テンプレです(謝)

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  • カーネーション 第41回
はし 2018/05/31(Thu)23:02:15 編集
今日は、いつにも増して主人公糸子の心情がとても良く描かれた回でしたね。

ただ、話の輪郭をはっきりさせるためとはいえ、一方の父親の描かれ方がちょっと可哀想だったなと、私は思うのです。脇道的な感想ですが。
いくら毎日飲んで帰ってくるとはいえロクデナシ認定まではされていないのですから、父親が帰宅すれば(台詞にもあった様に)お帰りと出迎えるものでしょうし、喧嘩の後に父親が一人2階に上がれば少なくとも母親は糸子に一声かけたら追って上がるものではないかと思うのです。父ちゃんよりも家を支えてると、それを言っちゃあおしまいよ的な事まで言われて。
自分の商売道具を(思い付きとはいえ)殆どはたいてミシンを買い与えたり、商売を学んでこいと外に娘を働きに出したりしている位なのですから、その時人が集まったから儲かったということではなく、後々を考えて商売の仕組みとして意識して形にする事が出来たのか、ということ位まで考えて、商家の父親として娘の自立のタイミングを計っていたと私は思うのです。毎晩酔っ払う勢い任せな短気な設定は致し方ないし、大きな話の流れもありますけれど、今日はちょっとだけ父親が気の毒に思えてしまいました。脇道的な感想ですが。「オヤクソク」の範囲内、ですかね。
勿論、良く出来たドラマなので、今後父親上げの場面がまたある事とは思いますけれど。
  • Re:カーネーション 第41回
みっきー 2018/06/01 14:10
☆はしさん
コメントありがとうございます。

まあ、ドラマですから、明確な対立構造を描くのが、
話を単純化する意味でも、先に進める意味でも必要だったと思います。

確かに、善作の本当の気持ちの描写も必要でしょうが、
15分間と言う枠を考えると、第41回ではあれがパンパンだったような…
  • 父親の意識も変遷している
trintaro 2018/06/01(Fri)13:31:32 編集
父親の描き方が辛辣すぎるように感じられるかもしれませんが、私は必然的な描写なのかなと思いました。
父親にとって糸子とは、「庇護するつもりで抱擁していたら腹を食い破って出てこようとする怪物」なのではないでしょうか。
幼少の頃は「いずれ女になるもの」として、父親から愛情をかけて庇護されている様子が描かれていました。「女」という木枠からはみ出そうとする糸子には当然制裁が加えられますが、それでも糸子が屈することはありません。糸子を愛していて、糸子と共存したい父親は、そこから少しずつ譲歩していくことになります。
男社会の中で男としてのアイデンティティを喪えれば、父親の内面は崩壊してしまいます。男社会は糸子にとって抑圧であるばかりでなく、父親にとっても抑圧なのです。自分の矜恃を必死で守りながら、父親は自分を納得させる形で「自分と世界に関する解釈」を変えていきます。強くて優しい父親から、厳しい商売の師、そして優秀な娘を育てあげて後半生を謳歌している粋な熟年男。滑稽で哀れかもしれませんが、それ以外に父親の採れる選択肢は無いのです。
祖母と母親は、そういう父親の変遷・自己欺瞞に気づいているのでしょう。それでも目の前の暴力にもみくちゃにされて、家の秩序を保つことに日々追われています。糸子と妹たちは、こうした父の内面の危機に気づいていません。だから「酒ばかり飲んで、稼ぎもしない」という表層だけを捉え、父親を批判的な目で見ているのでしょう。
これほど極端ではありませんが、今も「糸子」を抱えている家庭で繰り返されている悲喜劇ではないでしょうか。
そういうヒリヒリする「摂理」をじっくり描いている「カーネーション」はすごいと思います。毎日、悶絶しながら観ています。
  • Re:父親の意識も変遷している
みっきー 2018/06/01 14:08
☆trintaroさん
コメントありがとうございます。

善作の描写を辛らつだなんて全く感じません。
むしろ、時代を考えれば、
実は女性のことを考えている男性だと。

ただ、自分の気持ちの表現の仕方が下手な男…の印象です。
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