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2017/11/14 19:30 記事更新
※誤字脱字、内容の修正等は随時行う予定
コウノドリ[2]

TBSテレビ系・金曜ドラマ『コウノドリ[2] 命についてのすべてのこと』公式
第5話『長期入院 ママがあなたにできること』の感想。
なお、原作:鈴ノ木ユウ「コウノドリ」(漫画)は未読。


サクラ(綾野剛)は妊婦・瑞希を診察。早産になりやすい状態のため、すぐに入院してもらうことになる。不安を隠せない瑞希だが、先に入院していた同室の妊婦・ひかるが話し掛けてきて、2人は仲良くなる。一方、下屋(松岡茉優)が緊急の帝王切開を担当して生まれた赤ん坊の両親が病院を訪れる。赤ん坊は超低出生体重児で、手術が必要な状態だ。だが、両親は出産時の病院側の対応に不満があり、手術に同意しないと言う。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---


脚本:坪田文(過去作/コウノドリ 第7,8話) ※第1,3話
   矢島弘一(過去作/毒島ゆり子のせきらら日記) ※第2,4話
   吉田康弘(過去作/プラージュ) ※第5話
演出:土井裕泰(過去作/コウノドリ、重版出来!、逃げ恥) ※第1,2,5
   山本剛義(過去作/Nのために、夜行観覧車) ※第3,4話
   加藤尚樹(過去作/コウノドリ、ホワイト・ラボ)

まえがき

一部の読者の皆さん、たいへんお待たせしました。先週末は敬愛するミュージシャン・桑田佳祐さんの東京ドームライブに2日間参戦のため、先週はいつもの濃厚な感想を書けませんでした。心身共に充実した状況で、先日の感想で書き足りないかった部分を全力でフォローする、今や恒例?となった濃厚な感想の第2弾です。早速書きます。
※第4話の濃厚版より、約1.15倍の超長文です(謝)

アバンから、実力派女優が妊婦役を演じることにホッとした

瑞希「えっ!? 今から 入院? 帰れないんですか?今日」

診察室でサクラに、既に子宮口が開いており早産になりやすい状態のため、すぐに入院を促される妊婦・西山瑞希で始まった第5話。斬新だ。これまでは、アバンタイトルにそれなりの尺を割き、視聴者を十分に惹きつけておいてから、本編に入っていたケースが多かったから。

瑞希のお腹の中の赤ちゃんは「27週5日」の未熟な状態。僅か1分数秒のアバンだが、サクラの優しさと丁寧さ、助産師・小松の姉御肌と人懐っこさ、そして瑞希の妊娠に対する知識量と真面目さと素直さを、さらりと視聴者に伝えた。

また、西山瑞希 役の篠原ゆき子さんは、知る人ぞ知る脇役の女優さんだが、良い意味で多くの方には「どこかで見た人」のはず。前回のゲストだった安めぐみさんと木下優樹菜さんが、私や一部の世間から演技面で評判が良くなかったから、やはり実力派女優が妊婦役を演じることに、ホッとしたのは私だけでないはずだ。

ゲスト俳優が実力派揃いで見応え十分! これも本作の魅力!

主題歌明けの1stシーンは病室の引きの画。カメラが上手(画面右)の空きベッドから下手の妊婦・七村ひかるのベッドへパーン。これだけで、瑞希がひかると同室になるのが分かる。また、ひかる 役の矢沢心さんも脇役で活躍する女優さんで、さばさばしたイメージの良い人。夫の保 役の平原テツさんの演技も自然で好印象。

とにかく、私は当blogでは専門外なので演技には基本的に言及しないが、志田未来さんや高橋メアリージュンさんを始め、本作のゲスト俳優さんは、みんな演技派揃いで見応えがあり、その点も本作の大きな魅力だから、触れない訳にはいかない。

因みに、瑞希の夫・寛太 役の深水元基さんには、11月3日に第一子となる元気な男の子が無事に生まれたそうだ(公式ブログより)。ガタイが良く強面で無口。殺し屋の風貌で皆を怖がらせるが、作るプリンは絶品のパティシェ役の時とは違うデレデレの横顔を赤ちゃんの顔を見ることが出来るぞ。

"普通に産まれる事が奇跡" と "死産も立派な出産" を描く

場面は変わってNICU。前回で研修医・吾郎の成長を目の当たりにしたからなのか、下屋がとても落ち着いた表情で吾郎に声を掛け、新生児科医の白川に先日自分が緊急カイザー(24週)をした赤ちゃんの様子を聞きに来たところから、もう1組の夫婦が登場だ。そして、夫の大松憲次郎(矢島弘一)からこんな↓台詞がいきなり飛び出す。

憲次郎「どっちにしろ
    障害が残る可能性が高いってことですよね。
    正直…手術をしてまで助けてほしいとは思えません」

翔太に薬が効かないため動脈管が閉じず、早期手術が望まれるが親が手術を認めない…そう言う設定だ。実は、我が家の周産期医療従事者によれば、「障害が残るなら」を理由に手術を承諾しない親は日常的にいるそうだ。その度に今作の今橋のように必死に説得するが拒否する夫婦が多い事実を描いたシーンだ。

まるで「折角、赤ちゃんが生きて産まれたのに信じられない」を絵に書いたように下屋が大きな瞳をカッと見開く。やはり、“普通に産まれることが奇跡” だと言うこと。今回は、これと “死産も立派な出産” であることの2つが、丁寧に感動的に描かれる訳だ。

「ゾンビ」から強面の夫の登場への "落差" が面白い

場面は瑞希たちの病室。これから出産をしようとする妊婦たちが『ゾンビ』の映画の話題で盛り上がるのが、何とも平和で幸せな雰囲気を作り出す。そこへ、先述の瑞希の夫が登場して、今度は不穏な雰囲気。ここまでひかるが「入院生活は退屈」と言っていたために、ひかると視聴者に同時にメリハリを与えるって訳。

第4話の感想で、『ドクターX』は傍観型、『コウノドリ』は疑似体験型ドラマだと書いたが、正にこんな小さな部分にも入院患者の疑似体験が隠されているのだ。

因みに。今回は因んだ書き込みが多くて恐縮だがここでプチ情報を。下屋たちがプリンを食べながら「ゴルゴ13」の話題で盛り上がるシーンがある。実は、今年は「ゴルゴ13」がビッグコミック(小学館発行)にて連載50年を迎える記念の年で、今月末まで全国を特別展(公式サイト)が巡回開催中だ。

漫画を一切読まない私が、なぜこの情報を知り得たのか?実は、私が敬愛するスーパーギタリスト・山本恭司氏が特別展の公式テーマ曲「13th Shot」を手掛けているのだ。11月27日(月)まで大阪文化館・天保山で開催中。近くの方は訪れてみては如何だろう?これもある意味、体験型である(笑)

産婦人科部長がいないから、サクラと四宮の存在が光り輝く!

瑞希が入院して2週間が経過した。前回の感想で、周産期医療センターンのセンター長の今橋が、「産婦人科」でなく「新生児科」の部長である設定が患者のためなら危ない橋を渡ることも辞さない “サクラの魅力” が、更に光ると言う巧みな仕掛けであると書いた。今回の序盤でのカンファレンスでも、それが的確に活かされる。

鴻鳥「誰も下屋を責めてないよ」
今橋「鴻鳥先生の言うとおりです。
   下屋先生の対応は 間違っていない。
   ただ 大松さんは 我が子が 何らかの障害とともに
   生きていくかもしれないという事実に
   戸惑っているんだと思います。
   手術してまで助けてほしくなかった
   おなかの中で 自然に みとるという
   選択肢もあったんじゃないかって。
   そこまで言ってるからね」
鴻鳥「下屋 もう一度 大松さんに会うべきじゃないか?」

普通のドラマなら、いや多くの周産期医療センターのようにセンター長が産婦人科部長なら、今橋は下屋の直属の上司だから最後のサクラの台詞は今橋が言えば済む話だ。しかし、本作には産婦人科部長なる登場人物が存在しない。だから、サクラの、四宮の存在が光り輝く訳。

カンファレンスの後半で、「手術をすれば 救える命なんですよ」と興奮気味に発言する白川には、新生児科の白川の所属長として「白川先生 もう少し 冷静になって」と、明確に先の下屋への「下屋先生の対応は 間違っていない」と違う指導をするでしょ?この設定、何気にスゴイよ。分かるかなぁ…

プリンが四宮と下屋を繋ぐ架け橋になるのもいい感じだ

今橋「翔太君から 親御さんを奪わないためにも」

そして、カンファの終盤でのこの↑今橋の一言が全員の心に響き、そして下屋には “医師としての深い迷いの入り口” となり、その事に気付く四宮のカット。カンファが終わり、さっきのプリンが四宮と下屋を繋ぐ架け橋になるのもいい感じ。

四宮「大松さんのカイザー
   お前 後悔してんじゃないだろうな?
   もし そうだとしたらナンセンスだぞ」
下屋「どうしてですか?」
四宮「目の前に 車にひかれて死にそうになってる人間がいたら
   誰だって 助けるだろ。
   その命を救ったあとに 障害が残るかなんて
   誰も考えちゃいない。
   緊急オペってのは そういうもんだ」
下屋「はい」

ほら、四宮が自然に輝くでしょ。そして、「賞味期限切れ」のオチで、下屋も視聴者も一瞬だけ緊張がほぐれる。ホント、よく出来てるよ。

"あかり" の悲しい運命が、サクラの台詞で静かに動き出す…

14分過ぎ、ひかりのエコー検査。そしてついに、瑞希と夫の寛太とお腹の中の “あかりちゃん” の残酷な運命の歯車が、この↓サクラの台詞で静かに回り出す…。

鴻鳥「西山さん 赤ちゃんの心拍が 確認できません」

瑞希へはカメラはゆっくりと寄って行くカットで、何も知らずに待合室で小冊子「これからはじまる赤ちゃんとの生活のために」を読んでいる寛太は、引きと寄りの2カット。何か不穏なものを感じ取った瑞希と事の重大さを知らない寛太の対比がよく表現された。

そして、今度はプリンからジャムパンに変わって、視聴者だけが一瞬だけ緊張がほぐれると思わせて、提供テロップの背景映像で、瑞希と寛太が泣きじゃくるシーンと空きベッドと絶叫の出産シーンが放映されることで、巧みに視聴者を焦らしてCMを見せる作戦。作戦は言い過ぎかも知れないが、これがテレビドラマの正しい作り方だ。

IUFD… 産科医も助産師もこの説明が一番辛いと言う

CM明けは、看護師の真田知香の「IUFDだって」で物語は再開。IUFD、つまり子宮内胎児死亡(妊娠22週以降に子宮内で赤ちゃんが亡くなること)が、四宮にも確認される。突然、同室の瑞希のベッドが空いたことに不安を隠せないひかり。四宮と下屋が死因を探すが該当する記録はない。

そして、正式にサクラからIUFDであること、亡くなった赤ちゃんをいつまでもお腹の中に入れておくことは母体にも危険を及ぼすことがあること、そして明日、(陣痛を誘発し)分娩になることが説明される…。産科医も助産師もこの説明が一番辛いと言う。

「光」の使い方が光る、照明演出にも注目して欲しい

ここからは「光」の使い方が光る照明演出が続く。まず、サクラの説明を聞き終えた瑞希と寛太が二人きりになると、瑞希は「ごめん」を何度も何度も繰り返してはむせび泣く。そんな妻をそっと抱く寛太。窓から差し込むカーテン越しの光が、まるで “天から降り注ぐ光” のように天井に映るのが印象的なシーンだ。

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

その夜。当直でないのに帰ろうとしないサクラ。部屋全体は青白い蛍光灯色の照明なのに、下屋にも若干当たってはいるが、特にサクラにだけパソコンの明るい画面が反射している体で、アンバー系(琥珀色)の柔らかな照明が当てられ、緊張と熱意が表現された。

瑞希の個室タイプの病室では、白熱電球のようなホッと和むような暖色系の明かりが、忍び泣く瑞希の背中と、寛太の辛い表情を映し出す。人間ドラマ、人生ドラマでもある本作らしい照明演出だ。

ノックアウト気味のサクラが丁寧に礼節をもって説明するシーンがいい

CM明け、場所は恐らくLDR。瑞希へサクラから今回の分娩の最終説明が行われると、瑞希がやり場のない気持ちを、サクラに言っても無駄なのは重々承知の上でぶつけるようなシーンが続く。サクラにぶつけることで自分を責めようとする瑞希の気持ちが痛々しくて堪らない。

瑞希「何で 赤ちゃん 死んじゃったんですか?
   病院に入院してて 何で 助からなかったんですか?」

そんな瑞希の気持ちを察して、まるで打ち続けられるサンドバッグのように佇むしかない産科医の下屋、助産師の小松、看護師の平井、そしてサクラ。そんなボロボロになったサクラが、1つ1つ丁寧に言葉を選んで、丁重に且つ礼節をもって接することで、瑞希と寛太の心が少しずつ解放されていく。

鴻鳥「僕も 昨日から ずっと考えています。
   何でだ?何でだろう?って。でも…分からないんです。
   妊娠初期からずっと経過を見てきて
   西山さんが ご夫婦で嬉しそうに
   検診に来られていたことを覚えています。
   入院して 1カ月 赤ちゃんのために
   頑張っていたことも知っています。
   しかし、僕には 今回のことを
   予測することができませんでした。
   結果として こうなってしまい申し訳ありません」

泣き崩れる瑞希。支える寛太。ただそれを見るしかないサクラのアップで、静かにこのシーンは終わる。

その場にいない助産師の声での "魅せる演出" を感じよう!

いよいよ瑞希の陣痛が促進してきて、分娩が始まる。ここでの助産師の小松と看護師の平井の会話が、両者の立場、2人の分娩に対する考え方、医療従事者としての経験値の差を上手く表現している。陣痛に苦しむ瑞希に小松が「西山さん 頑張って ねっ 頑張ってよー」と励ましの声を掛けると、傍らの平井がこう↓言う。

平井「小松さん そんなに頑張れって言ったら
   西山さん つらいですよ」

すると、間髪を入れずに小松がこう↓応える。

小松「何でよ?
   子供を産む母親に頑張れって言って 何が悪いの?
   西山さん ごめんね。私は 器用な助産師じゃないからさ
   いつもどおりのお産のお手伝いしかできないの。
   だってさ このお産 暗くしたくないじゃない?
   ねっ?もうすぐ あかりちゃんに会えるからね。
   一緒に頑張ろうね ねっ?
   はい 一回 深呼吸して はい ふーっ…」

助産師らしい台詞だ。傍らで手を出さずに見ているサクラの立ち位置も見事だ。そして、力む瑞希のアップにこの場にいない助産師の「赤ちゃん 生まれますよー」の声が被って来る。次のシーンの下屋が担当する別の夫婦の分娩時の助産師の声だったと言う音先行の編集だ。

隣の部屋を見るような下屋のカットだけででは、夫婦の数だけ、赤ちゃんの数だけ、違ったお産があると言うことだけしか描けない。しかし、演出の土井裕泰氏は、助産師の声を音先行させたことで、産婦人科病棟では壁一枚隔てて違ったお産が行われていることまで描いた。これは “魅せる演出” と言わざるを得ない。

「西山洋菓子店」の回想シーンも "魅せる演出" だ!

土井氏の “魅せる演出” も、まだまだ続く。瑞希の出産シーンに今度は瑞希たちが経営する「西山洋菓子店」の回想シーンを挿入して来た。それもカメラはドアのガラス越しだから店内の声は聞こえないのに、2人の会話を被せて来た。これも音を使った演出だ。

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

透き通るガラスのショーケースに丁寧にホールケーキを並べる寛太。ショコラのガラス瓶を並べる瑞希。産まれてくる赤ちゃんの名前を話し合っていたと言う訳だ。これはこじ付け的な解釈かも知れないが、最初は店の外にいる視聴者が2人の幸せそうな会話を耳にして店内に入ってしまったと言う “疑似体験” になっているとは考え過ぎだろうか。

産声を上げることなく、あかりちゃんは生まれた…

場面がLDRに戻ると、産声を上げることなく、赤ちゃんが生まれた。とても静かに、あかりちゃんが生まれた。すっごくカワイイ女の子として、あかりちゃんは生まれた。そして、囁くような優しい声でサクラが瑞希と寛太に声を掛ける…

サクラ「おめでとうございます」

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

シーンは病院の屋上へ。雲一つ無い青空でなく、雲の隙間から青い空が覗くような情景が、如何にもこの場面でのサクラの心を表している…

四宮「原因は?」
鴻鳥「赤ちゃん 胎盤 さい帯も診たけど
   やっぱり 分からなかった」

そして、西山夫婦は赤ちゃんの解剖を望まなかったことが、サクラの口から四宮に伝えられる。実際、IUFDの原因をはっきりさせることは解剖をしても難しい場合が殆どだ。だから、この辺の説明は少しあった方が良かったかも知れない。このあとの西山夫妻とあかりちゃんの最初で最後の一夜を2人の我儘に見えないためにも…

瑞希に寄り添い話し掛ける、小松の台詞が素晴らしい!

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

おっぱいが張る痛みとあかりちゃんを失った痛みに苦しむ瑞希。掛ける声も無い寛太。そんな瑞希に寄り添い話し掛ける小松のこの↓台詞が素晴らしい。助産師が、女性の一生に寄り添う仕事であり、命がずっと繋がっていく中で、特に女性に深く関わる仕事であることを示す素敵な台詞だ。

小松「おなかの中で亡くなってしまったあかりちゃんは、
   西山さんの戸籍に残してあげられないんだ。
   だからね だっこでもいいし もく浴をしてあげてもいい、
   絞ったおっぱいをあげてもいいし、
   写真をいっぱい撮ってあげてもいい。
   手形や足形をとってもいいし、
   髪の毛や 爪を 切って残してあげてもいい。
   あかりちゃんと一緒に過ごせる間に、
   あかりちゃんのためにも してあげたいと思うこと、
   もしあったら うちらは何でも協力するから。
   もちろん 無理にってことではないけどね」

こんなこと、助産師にしか言えない…と思う。瑞希を全力で援助しようとする小松の心が、寡黙な寛太の心を動かす。

寛太「あの… 二人でお風呂 入れてやってもいいですか?」

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

小松のもく浴の指導の下、瑞希と寛太のもく浴が始まる。その様子をサクラ、下屋、白川が静かに見守る。カメラは最初、引きで客観的に始まるが、ベビーバスの斜め下から瑞希と寛太を見上げるようなカメラアングルがとても印象的。あんな角度から実際には見えないのだから…

寛太「気持ちよさそうだな。
   やっぱり あかりは美人だから 俺似だな」
瑞希「何 言ってんの。私に似てるに決まってるでしょ。
   こんなにカワイイんだから」

寛太を演じる深水元基さんの表情を抑えた込んだ演技も素晴らしい。でも、出番の多さやメインの妊婦役と言う意味で、瑞希を演じた篠原ゆき子さんの、時に感情を爆発させ、時に感情を押し殺し、ふと優しい笑顔を見せる演技に恐れ入った。テレビの中の「西山瑞希」が苦しみもがきながら我が子の存在を忘れんとする姿が見えた瞬間だ。

下屋の成長は、ずっと見続けていたい…

西山夫妻のもく浴を見て、そしてサクラの「気持ちよさそうですね」の言葉を聞いて、下屋の心も動く。「患者さんに寄り添うって どういうことだろうね」と一礼して病室を出る下屋は、緊急カイザーの大松夫妻に再度手紙で事後説明をしようとする。そこに四宮がやって来る。

四宮「まさか 手紙で詫びる気か?」
下屋「私… 赤ちゃんの命のことだけを考えて、
   大松さんご夫婦の気持ちを
   置き去りにしてしまったかもしれません。
   お二人の時間が 緊急カイザーの日から止まったままなら、
   もう一度 時計の針が動きだすように
   自分が すべきことをしたいんです。鴻鳥先生のように」
四宮「言っておくが サクラが西山さんに頭を下げたのは、
   西山さんの感情の圧を下げるためだ」
下屋「わかってます」
四宮「死産の4分の1は 原因不明なんだ。
   俺達にだって 分からないこともある。
   できないことだってある。
   俺なら 絶対に頭を下げない。
   次の出産に向けて 綿密な計画を練るだけだ」
下屋「手紙… 止めないんですか?」
四宮「お前は もう 研修医じゃないからな」

このシーンも、本作に産婦人科部長なる登場人物が存在しないからこそ、四宮の指導がぐっと活きて来る。やはり、下屋の成長はずっと見続けていたい…そう思う。

瑞希役女優が創出した "虚構の中の現実" に魅了された

ひかるの隣の空きベッドに新たな妊婦・松永 真美(広山詞葉)が入っている。ひかるが、ナースステーションに書類を持って来た瑞希を見つけて声を掛ける。何の悪気も無いひかるは、個室に移った瑞希を心配してあれこれ聞き出そうとする。そんなひかるに合わせるように嘘をつく瑞希を見てはいられない。

そして、ひかるは出産後に「西山洋菓子店」を訪れると約束する。来店を断る訳にもいかない。来店されれば嘘がバレる。でも、嘘をつき続けるしかないと判断した瑞希が、今自分が出せる最大の幸せの言霊をのせた言葉をひかるに送る…

瑞希「元気な赤ちゃん 産んでね」

なんか、篠原ゆき子さんに「瑞希」が憑依してしまったようにしか見えなかった。あの苦しみの中から絞り出した笑顔、背筋をピンと伸ばさないと発せない大きな声、脱力した後ろ姿、すべてが「西山 瑞希」そのものだ。違和感など一切ない篠原さんが創出した “素晴らしき虚構の中の現実” に魅了された。

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

矢沢心さんの迫真の演技が心を打つ…

瑞希の様子を “空(から)元気” と察したひかるが腰をさすりながら、ナースステーションの前を通り過ぎる時に、あかりちゃんが亡くなったことを看護師たちの会話から知ってしまう。驚くひかる。泣きながらひかるが病室に戻ると、隣の真美が「点滴って 邪魔ですよね」とひかるに零すと、ひかるが…

ひかる「そのくらい 我慢しなさいよ」

ひかるは、点滴スタンドに顔をうずめて泣きじゃくる。さっきの瑞希の「元気な赤ちゃん 産んでね」が、どれだけ瑞希にとって辛い一言であったか?そして、知らなかったとは言え、自分が瑞希に言った全ての言葉を悔やむひかる。矢沢心さんの迫真の演技が心を打つ…

「祈りの部屋」から退院までの描写が秀逸過ぎる!

場面は閉店後のライブハウス「ブルースアレイジャパン」。どうしてもピアノが弾きたくなったサクラがやって来て、1曲演奏を始める。映像はライブハウスから、ナースステーションで千羽鶴を折る小松らナースたち、サクラ、そして「祈りの部屋」と室名札に書かれた部屋に今橋が入って行くシーンへ繋がっていく…

中には、あかりちゃんを抱いた小松らナースやドクターたちがいる。あかりちゃんの顔を笑顔で見る…。曲が転調したところで、小松が大きなケーキを持って入って来る。白いクリームの上に赤と緑で彩られたケーキに、ホワイトチョコのプレート。そこにはチョコでこう↓書かれている。

あかり おめでとう
ママ ありがとう
パパより

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

寛太が、あかりと瑞希への感謝を込めて作ったケーキだったのだ。コットの中のあかりちゃんとケーキが並んで置かれる場所には、天窓から明るい日差しが降り注ぐ。

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

そして病院の正面玄関前。いよいよ退院の時だ。

瑞希「先生 お世話になりました」
鴻鳥「退院 おめでとうございます」

瑞希、寛太、サクラ、小松、四宮、下屋、白川、吾郎、今橋、平井、真田。この場にいる11人全員が深々と頭を下げる…。

吾郎「亡くなった赤ちゃんも 正面玄関から送るんですね」
今橋「ご家族が希望されたからね」

今橋の台詞は少々説明っぽいが、死産の場合、出生時間より24時間は火葬することが出来ない。役所も死産届は届け出の受理するが、戸籍原本には記載しない。だから病院は、お母さんとお父さんが亡くなった赤ちゃんとどのように退院したいか、出来るだけ希望に沿うようにしている訳だ。

あかりを抱いて自分たちの店に帰って来る瑞希と寛太。カメラが厨房の奥からドンと引いた画の中にポツンと映る親子3人の図が、印象的だ。

緊急カイザーをした妊婦と下屋の心が通った瞬間

場面はペルソナ病院のNICU前の廊下。壁に掲示された「NICU卒業生からのメッセージ」を見る女性。未熟児や障害を持って生まれた赤ちゃんたちの元気に育った写真やお母さんたちの育児報告などを見ている。その女性は、下屋が緊急カイザーをした妊婦の大松 美世子だ。下屋が詫びつつ説明をしようとすると、美世子が遮ってこう↓言う。

美世子「下屋先生 私も 主人も 先生を恨んでいません。
    先生は お医者さんとして 翔太のために
    最善を尽くしてくれたんですよね。
    ありがとうございました」
下 屋「大松さん…」
美世子「白川先生」
白 川「はい」
美世子「今日は… 翔太の手術の話を詳しく聞きたくて来ました」
白 川「分かりました。どうぞ 中へ」

もはや、私がどうこう言う場面でもなかろう。保育器の中で小さな心臓を懸命に動かして震える翔太に会いに行く美世子の姿を見て、涙ぐむ下屋。また下屋が一人前の産科医へ一歩近づいたのだ。

そして、ひかるが産気付く。夫と2人の子供たちも駆け付ける。そこに、産声が被って、画面は一旦ホワイトアウト(徐々に白くなっていく)。全てが上手く行ったと言う映像的な表現だ。これがフェードアウト(徐々に黒くなっていく)と再び何かが起こりそうな印象になってしまうのだ。

全てを受容した瑞希を、1枚のメッセージカードで見事に表現

そして、赤ちゃんが無事に生まれたひかるの家。キッチンテーブルの上にクール宅急便のバッグが置いてあり、ひかるが中から取り出すと見覚えのある「西山洋菓子店」の白い箱。中を開けると6個のプリンと、薄いピンク色の1枚のメッセージカード。そこには瑞希の手書きでこう↓書いてある。

ひかるさん、
おめでとう。
西山瑞希

コウノドリ[2] 「第5話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
©TBS

あかりちゃんのことを、始めは「否認・孤立」し、「怒り」を医師らにぶつけ、何とかならないかと「取引」をするが、これだけ頼んでもダメかと「抑うつ」状態になるが、最後はすべてを「受容」した瑞希になったことを、1枚のメッセージカードで表現したのはお見事。

是非、キューブラ・ロスの「死ぬ瞬間」を読んで欲しい

因みに、人間は自分以外の「死」を受け入れる、所謂「看取り」には5段階があるとされる。これは、精神科医エリザベス・キューブラー・ロス(Elisabeth Kubler-Ross;1926~2004年)が、1969年に出版した『死ぬ瞬間』に書かれている。もし、興味があるならば7年間になるが、私の書評を参考にして頂きたい。

『コウノドリ』が好きなら、また医療系ドラマが好きなら、一度読んでおいて損はない。但し、学術的にはこのキューブラー・ロスによる「5段階モデル(死の受容モデル)」には批判もあるが、概ね理解しやすいと思うので、是非とも一読を。

【書評】「死ぬ瞬間―死とその過程について」エリザベス キューブラー・ロス (著)

救命医の加瀬が登場すると、ドラマの緊張感が倍増する

そして、ラストシーンはペルソナ病院の救命救急センターの救急入口前。既にサクラと下屋が救急車の受け入れ態勢でいるところに、救急救命科医の加瀬とナースが加わる。やはり、救命医の加瀬が登場すると、ドラマの緊張感が倍増する。今後も出番が増えると良いのだが…

ドラマに戻ろう。恐らく救急車で搬送される妊婦を受け入れるためにサクラたちが待機していた間に、患者が救急車内でアレスト(心停止を意味する業界用語)したため、加瀬が走ってやって来たと言う訳だ。

予告編によれば、下屋はピンチヒッターとして行ったこはる産婦人科で、切迫早産で入院している神谷カエと出会う。下屋はカエの様子に違和感を覚えそのことを、こはる産婦人科の院長に告げるが、「週明けに検査する」とだけ返されて、結果的に救急搬送中に心肺停止したらしい。次回も緊張と感動の1時間になるに違いない。

あとがき

いやぁ、今回は昨日の仕事の帰路から書き始めて、細切れで何時間かかったか分からくなりました。私自身が書きながら「あれっ?何のために書いているんだっけ?」と何度も思いましたから、さぞ読者の皆さんも最後まで読むのはご苦労だったでしょうね。

でも、最後まで下さりありがとうございました。今回も名シーン、名セリフの数々に感動しましたね。特に、明暗を分けた切迫流産の描写はお見事でした。また、妊娠27週の妊婦・瑞希を好演した篠原ゆき子さんには拍手喝采を送りたいです。

また、篠原さんには、産まれてすぐに亡くなったお兄ちゃんがいて、そのお兄ちゃんが天国から見守ってくれたから、今回の演技が出来たと公式ブログに書かれています。篠原さんと本作の「ご縁」も見事です。

最後に。先日の第5話のほぼ濃厚版の予告だけの感想に 98回ものWeb拍手を頂きありがとうございました。また、第4話も濃厚版の感想にも、138回ものWeb拍手を頂きありがとうございます。今回も、第5話の感動が蘇ったり、ドラマとしての面白さが分かったりして頂けると良いのですが。
引き続き当blogは、『コウノドリ』を全力で応援します。

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【シーズン1の感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 最終回


【第2シーズンのこれまでの感想】
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  • やっと、でした
さきこ 2017/11/15(Wed)08:39:23 編集
期待値の高さ故なのか、非常に高い水準の作品であるとは思いつつも、
前回までは正直ちょっとモヤモヤすることもあったのですが、
第5話では、そのかなりの部分が払拭されました。
そうそう、こういう「コウノドリ」が見たかったの!と。
脚本の問題なのか、演出の問題なのか、俳優さんの問題なのか…

例えば、演出的な意図をみっきーさんが考察し解説してくださった第4話のゴローちゃん覚醒シーンも、
へ~、そうなんだ、と思って見返しても、ふ~ん、なるほどね、としか。
ただの一視聴者である素人にはそうと伝わらなかった、非常に残念なシーンです。

ところが、今回の光の演出については、素人ながら何かを感じずにはいられない。
個人的にはみっきーさんの解釈と違って、あれは西日の射す部屋で、
つまり、再生を期待させながらも、太陽が沈みゆき曙光は遠い、いまだ暗澹たる思い抱える二人を象徴的に描き、
祈りの部屋の、白く射し込む淡く柔らかく紗がかった光は、まさしく祈りと、そして希望を描いていると感じました。

余談ですが、あのシーンでつい、フランダースの犬の最終回を思い浮かべたりも…ああ、年がバレる(笑)
霊安室は仏教的な設えなのに、祈りの部屋はキリスト教的な設えなのも興味深いです。
仏教にも輪廻転生って思想はあるんですが、まあ、餓鬼道とか畜生道とかに落とされたりもしますしねぇ…
無宗教的な側面が多分にある多宗教国である日本だからこそ生まれた名シーンかもしれないですね。

長々とすいませんでした。
いい作品を見ると、つい語りたくなって困ります(笑)
願わくば、次回もっみっきーさんが熱く語りたくなるような「コウノドリ」でありますように…
  • Re:やっと、でした
みっきー 2017/11/15 09:16
☆さきこさん
コメントありがとうございます。

これまでと第5話の違いは、脚本家の違いだと思います。
吉田康弘さんな、映画の現場で長きにわたり助監督をされているので、
これまでの人物設定や状況設定を忠実に守ろうとされていたように思います。

ありますよね。たまに、「そう言う設定だっけ?」みたいなことが。
それが本シリーズ初監督なのに、ありませんでした。
また、映像的にもとてもオーソドックスで、
無駄のない演出をされていました。

以前の4話は、少しドラマチック要素を入れていましたが、
第5話はガチガチに演出せず、
俳優さんの演技を優先して、
あとは視聴者の心に委ねるみたいな演出。

だから、これだけ放送後に女優さんが話題になったのだと思います。

いつもなら、私もここまで演出の解説はしませんから。
  • 感想にも号泣です(T_T)
えりりん 2017/11/15(Wed)19:26:48 編集
いつも拝読させていただいています。5話素晴らしかったですね。「濃厚な感想」読んで、また号泣してしまいました。詳細な解説もありがとうございます。
人手不足で食事もジャンキーな医師たち。前作からのファンとしては、バーンアウトしてしまった新井先生(山口さやかさん?)にもどってほしいと期待しています。
  • Re:感想にも号泣です(T_T)
みっきー 2017/11/15 19:45
☆えりりんさん
コメントありがとうございます。

死産なんて、とても難しいテーマを
今回は、本作らしくまとめてくれたと思います。

第1シーズンでは、
新生児科医の新井恵美役で山口紗弥加さん、
下屋と仲の良かった助産師・角田真弓役で清野菜名さんらが
出演されていましたね。

ゲストでちょこっとでも出演してくれたらいいですね。
  • はじめまして
手毬 2017/11/21(Tue)13:58:31 編集
考察が多く、とても読み応えの有るレビューですね。
私が気づかなかった所や知らなかったことなど書いてあって濃厚なひとときでした。
死産だと24時間火葬できないんですね。
篠原ゆき子さんに拍手喝采ですよね!
今、6話まで見ているけどやっぱり5話が好きです。
死産を終えた後の、何も知らないひかると瑞希の会話と瑞希の表情が特に好きです。
瑞希は嘘ついてるようで実は嘘は言ってないところが女性同士あるあるで例えば
「出産終わって明日退院か~」に、うなずく。
死産だとしても出産が終わったことに変わりない
「あかりちゃん元気?」「かわいいよ」も、亡くなってるけど可愛いことには変わりない。
こんな感じに肝心な部分を隠し紙一重で嘘は言っていない会話を女性はよくする気がします。
私もはじめは、ひかるのメンタルにも悪いし知られたくないし嘘つくよねと思ったけど、よく聞いたら嘘付いてないなと思ったんです。よくできた脚本ですね。

  • Re:はじめまして
みっきー 2017/11/21 21:14
☆手毬さん
初めまして。
そして、初コメントありがとうございます。

台詞がね…
嘘が無いと言うか、心からの言葉として届いているんです、きっと。

だから、すんなりと虚構の中の真実を見ることが出来る。
そして、感動出来る。

もちろん、脚本、演出、俳優の三位一体があればこその為せる技だと思います
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