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連続テレビ小説「カーネーション」

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』公式
第11週『切なる願い』の 『第64,65回』感想。

 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


【第64回】
善作(小林薫)は木之元(甲本雅裕)たちの助けを借りて病院通いを続けていたが、恥ずかしさのあまり、周囲には“人助けをしようとしてのやけど”だと偽っていた。一方、戦地の勝(駿河太郎)からハガキが届き、糸子(尾野真千子)はやはり無事を祈らずにはいられない。ある日、モンペ教室に八重子(田丸麻紀)が現れる。戸惑う糸子の前で、八重子は黙々とモンペを作る。帰る前に八重子は、泰蔵の出征が間もなくであると告げる。

【第65回】
泰蔵(須賀貴匡)の出征の日。八重子(田丸麻紀)に頼まれた糸子(尾野真千子)が見送りに向かう傍ら、善作(小林薫)は自ら歩いて行くと言い張る。やけどに驚く泰蔵に、善作は偽ることなく、自分で出した火事だと告げる。万歳を叫んだ善作が倒れ、介抱しようとする糸子。そこで糸子は、物陰にたたずむ奈津(栗山千明)の姿を目にする。見送り以来、善作は一層弱ってしまう。糸子は絶対に治すと誓い、仕事と子育てにまい進する。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---

まえがき

大阪北部地方を中心に発生した地震により、被害に遭われた被災地域の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。被災地においては一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

【第64回】今回も称賛に値する15分間だった

第11週の木曜日で、劇中は昭和18年(1943)3月だ。これまでも「神回だ」とか「秀作と言わざるを得ない」などと本作の1話を称賛して来たが、またそんな1話が増えたと感想の冒頭で書いておく。今回が称賛に値する点は幾つもある。

善作の描き方が良かった

1つは、序盤での善作の描き方。病気療養中で前回のような “バリハラ的” な少々シュールな使い方にも驚いたが、今回では、混雑して座れない病院の待合室で座るための作り話で、善作らしい小心者の癖に見栄っ張りな性分を描いた。

善作「周りの みんな若い奴が お国のために戦うて
   大ケガして 帰って来てよ
   このわしだけが『ボヤで やけどた』て
   そんなお前 大の男が 恥ずかしくてよう言わんでえ」

前回まで、満足に言葉を発せない善作が、ずる賢い考えと戦地に行った若者たちへの気持ちをきちんと台詞で言ったことで、心身共に快方に向かっていることが見ても聞いても分かる仕掛けになっていたのは、なかなか巧みだ。その上、この戦地に行った若者の話の繋がりで、勝からの手紙に話が流れて行くのも、とても自然で良かった。

糸子のモノローグと「語り」がとても少なかった

良かったと言えば、2つ目の称賛すべき点は、糸子のモノローグ、「語り」がとても少なかったことだ。今回は、この後も、いつもならバンバンとナレーションで感情説明が入りそうな展開なのに、珍しく夫・勝から葉書への思いに集中させたのが、とても良かった。

更に、私が本作で気に入っている、モノローグから台詞にそのまま感情を繋げる表現が、“思わず力が入って生地を破いてしまう” と言う糸子の行動原理にしっかりとなっていたから。

糸子(M)「うちにとっては腹立つ浮気旦那でも
     子どもらにとっては恋しい父ちゃんです。
     無事で帰って来てくれんと困まります。
     どうか無事で… いや…どんだけ変わり果てた姿になったかて
     帰ってさえきてくれたら
     どっさり食べさして ゆっくり寝さして 元気にさせて
糸  子「ほんでから こってり 油 絞っちゃるんや!」

その時その時の感情を喋り過ぎる傾向がある主人公には、正直少々困る時がある。困る理由は、視聴者に対して感情を映像化すると言うのは、本来は台詞で聴覚から訴えかけるのでなく、俳優の演技や芝居や存在感によって創出される登場人物が描く視覚情報であるべきだと思うから。

視覚情報を最大限に活用するのがテレビドラマであり、聴覚情報に頼るならラジオドラマで良いだけの話だ。

だから、今回のように、「もしも夫の勝が帰って来たら…」と言う想像を「モノローグ」で表現するのは正しいし、そのモノローグの直後に浮気疑惑夫へのお仕置きと言う現実は「台詞」にして、生地を破く動作に繋げたのはお見事だし、こう言う “モノローグと台詞の正しい棲み分け” は、いろいろな脚本家にも学んで欲しい。

「ドラマの方向性」が明示された糸子の台詞が良かった

さて、場面は大繁盛している「モンペ教室」へ。まず、驚いたのが久し振りに長谷ヤス子が登場したことだ。糸子が修行のため以前に働いた生地屋「末松商店」を大繁盛させるきっかけを作った客で、糸子が独立直後にもやって来て、糸子に立体裁断のみの依頼をごり押しした、大阪のおばちゃんらしいちょっと厚かましいキャラだ。

で、今回は自分は定員オーバーなのにゴリ押しして入ったのに、八重子に対して冷たく接する役で登場。ヤス子を演じる中村美律子さん(大阪出身の演歌歌手でもある)の演技がハマり過ぎて、八重子が不憫で不憫で堪らない…。そんな展開の中で、発せられた糸子のこの台詞↓が良かった。

糸子「皆さんには つつましい暮らしの中でも
   是非 おしゃれを楽しんでもらいたい。
   入学式や結婚式 はたまた
   息子さんへや旦那さんを戦地に送り出す日ぃに
   少しでも明るくパリッとした気持ちになれる
   そういうモンペを着てもらいたい。ほんな訳で
   この『着物に戻せるモンペ』ちゅうのを考えました」

今で言うプレゼンの冒頭のあいさつのようなものだが、「モンペ教室」の客の心を最初に掴むコメントとしても優れているし、「一話完結」の本作らしい作り込みの視点から見れば、この1回だけを見ただけで、糸子がどんなことを考えて、どんなことをしようとする人間なのか一目瞭然。

この類の「ドラマの方向性の確認」みたいなことはとっても大事。毎日見ている視聴者にとっても、作り手の側にとっても、本作のテーマを再確認出来るから。今放送中の『半分、青い。』なんて、極端に言えば主人公から一度も発せられたことはない。だから、同じ2か月半を過ぎる両作品が比較にならない訳だ。

糸子と八重子の関係を、よそよそしい敬語で見事に描いた

そして、「モンペ教室」に “あの八重子” がやって来る。ご存知の通り、糸子と八重子には深い因縁のようなものが存在する。だから、いつもの本作ならモノローグで八重子に対しての気持ちを大量に入れ込んできそうなものだが、今回は違った。

まず、「モンペ教室」中は、女優たちの演技と存在感で糸子と八重子のぎくしゃくした関係を視覚的に描いた。そして、教室終了後は、遠くのカラスの鳴き声が切なく響く中、こんな会話劇が繰り広げられた。

八重子「今日は おおきに」
糸 子「こっちこそ おおきに」
八重子「泰蔵さんが….。あさって 出征する事になりました。
    せやから 見送っちゃるためのモンペを
    ここで 糸ちゃんに教わって作りたかってん」
糸 子「そうでしたか…」

今度は、糸子と八重子のぎくしゃくした関係を、糸子と八重子の座る微妙な距離感と、よそよそしい敬語のやり取りで視覚と聴覚に訴えた。モノローグも入らないから、尾野真千子さんと田丸麻紀さんの芝居に、こちらも集中出来るし、たっぷりと堪能も出来た。

尾野真千子さんが、糸子の感情を演技で魅せた

この会話劇の終盤では、先に取り上げた糸子の台詞「少しでも明るく」が引用され、八重子が糸子の志に共感、共鳴したから、教室に来たし、依頼にも来たこと効果的に強調された。それがこのやりとりだ。

八重子「今どき 見送りは
    そない派手にしたら あかんやろけど
    せめて 戦地で思い出した時に
    ちょっとは明るい気持ちになれるような
    ええ思い出 作っちゃりたいなあと思て…
    糸ちゃん 一緒に 見送っちゃって もらわれへんやろか?」
糸 子「ええの?」

糸子の目から頬に一筋の涙が伝う。まず、下手(向かって右側)から。そして、上手の目からも。これが芝居だ。これが登場人物の感情を演技で魅せると言うことだ。

糸子のアイデアで、箪笥の肥やしになっている豪華な着物を、実用品に変身させると言うエピソードだけでも面白いのに、戦争と言う時代背景を、その時代の夫や子供を戦地に送り出す母親の気持ちと言う切り口から描いた第64回。見応え十分な15分間だった。



【第65回】全体的には意外に平坦な回だったが…

さて、大盛り上がりの回と意外と平坦な回が、交互にやって来る印象の強い本作とすれば、当然に今回は意外に平坦な回と言うことになる。しかし、序盤で描かれた泰蔵の出征の日のくだりは、平坦とは言えなかった。ハンディカメラを駆使して、狭苦しい路地での別れのシーンを、須賀貴匡さんの演技を中心に切々と描いた。

さりげなく見送る奈津のカットも入り、まだまだ戦争は続くと言う表現だろうか。戦争と言う時代を描いた朝ドラはたくさんあろうが、本作ほど物語にちゃんと組み込んで描くのは共感出来る。やもすると、時代の1ページ的な表現で済ませる作品もあるから。

しかし、あまり戦争時代を長く描くのもどうかと思う。やはり、物語は前進すべきであるから。終戦はいつになるのか。今後の展開が気になった出征の日だった…

問題山積の糸子を描けば、平坦にならざるを得ない

前回では快方に向かっていたように見えた善作の病状が、実はかなり悪化していたようだ。今回の15分間は、13分過ぎのこの糸子のモノローグに集約されていた。

糸子(M)「看病 子供 火事 商売。
     どれもこれも この先 どないしたもんか」

この「語り」の通りに、ラストの2分まで、「語り」通りに問題山積の糸子が描かれた。それも、前回とは打って変わって数多くのモノローグが入って。

しかし、今回はそれ程の大きな違和感は無かった。その理由は、今の糸子の置かれた立場を全てきちんと描こうとすれば、今回のような描写になるのが当然だから。むしろ、前回のように「糸子と八重子の劇的な再会」に絞り込んだのが特例のようなものだ。だから、平坦な15分間ではあるが、満足度は高い。

問題山積の糸子に訪れた束の間の "平和な" ひと時にホッ…

そう思わせたのは、最後の2分間だ。

糸子(M)「人が こんな洋服を着れてた頃が確かにあったのに
     今では もう どっか よその国の話のようでした」

数年間に亘る “わだかまり” がほぐれた八重子がもたらした、問題山積の糸子に訪れた束の間の “平和な” ひと時。人生、辛い事ばかりでないことを、ラスト2分でさらっと描いた。決して涙や感動を押し付けることなく、あっさりと平坦に。だから、良いのだ。奇を衒わずとも、登場人物に共感出来るのだ。

あとがき

第64回と第65回での糸子は、台詞やモノローグの使い方こそ大きく違いましたが、糸子の日常をきちんと描き、糸子の喜怒哀楽を丁寧に描く点では同じでした。だから、今回も満足度が高かったです。さて、明日に放送予定の第66回が土曜日分ですから、サブタイトルの『切なる願い』が何なのか、とても気になります。八重子のことでは無いのは、今回で予想がつきましたので…

最後に。前回の感想に 127回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。濃厚とあっさり系の組合せでしたね。それでも、しっかりと登場人物を描き、連ドラとしての面白さも加味されていて良かったです。

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第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
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