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連続テレビ小説「カーネーション」

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』公式
第13週『生きる』の 『第73,74回』感想。


 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


【第73回】
昭和20年正月。糸子(尾野真千子)は娘たちを連れて清三郎(宝田明)と貞子(十朱幸代)を訪ねる。清三郎が口にした「亡くなった善作に冷たく当たってすまない」という言葉に、糸子は驚く。貞子は、生き延びるようにと糸子を励ます。バケツリレーなど消火訓練をして空襲に備える毎日だったが、3月14日の夜、ついに大阪への空襲が始まる。警戒警報のサイレンに、糸子は家族や縫い子らをしったし、懸命に防空ごうを目指す。

【第74回】
大阪の空襲は岸和田までは来なかった。糸子(尾野真千子)は、近所の女性たちと消火訓練をする日々に戻る。ハル(正司照枝)や子どもたちのことを考え、糸子は郊外の空き家への疎開を思いつく。嫌がるハルや千代(麻生祐未)、子どもたちを移し、糸子は仕事の傍ら自転車で食料を運ぶ。疲れきっている糸子だが、朗らかな千代に一瞬気持ちをほぐされる。一方、奈津(栗山千明)は、無一文となり日々の食料にも困る暮らしをしていた。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---

【第73回】メリハリの付け方の上手さには、いつも脱帽だ

本放送時は、2011年12月26日(月)で、サブタイトル『生きる』の第13週は全3回だけだった。

劇中は、いよいよ昭和20年(1645)1月3日で、前回から3か月後の正月である。久し振りに糸子が神戸へ。糸子の祖父・清三郎や清三郎の妻・貞子や叔父の正一らが登場した場面が…面白かった。ん? おもしろかったと言って良いのだろうか? それは、清三郎が不思議そうな顔で糸子に質問することから始まった。

清三郎「糸子! 何や 一人で来てんか?
    お父ちゃんらは どないした?」
糸 子「え お父ちゃん?」
貞 子「アハハ! かなわんやろ?
    おじいちゃん このごろ めっきり この調子なんよ フフッ」
糸 子「そうなん」
貞 子「うん。そら トンチンカンな事 言うから
    今も あんたの事な まだ 女学生やと思とうで なあ」
正 一「うん。まだ 14~15の娘やと思とんと違うか」
糸 子「え~? おじいちゃん」
清三郎「うん?」
糸 子「うち 年 なんぼや?」
清三郎「うん? 30ぐらいか」
糸 子「分かってるで」
貞 子「時々 我に返るんよ。返らんで ええときに。なあ」

劇伴の演出も含めて、笑って良いシーンだと思うが、認知症の初期の「まだら認知症」の家族を持った経験がある人は、“介護あるある” 的なワンシーンにほっこりするかも知れない。

私事で恐縮だが、私の亡くなった父も「まだら」の時があって、要介護認定の聞き取り調査の際に、そう、時期は12月の始めだった。調査員の「今の季節は何ですか?」の問いに「う~ん?」と悩んだ。調査員は私に「かなり重症ですね」と言った直後、「晩秋と初冬の間だと思います」と答えて、ケアマネージャーさんらその場全員で大笑いしたのを思い出した。

やりようで、幾らでも寂しい場面にも描けるが、ここは全体的には明るく描き、後半では “清三郎の善作への涙” と “貞子の糸子への涙” で締めた。ホント、こう言うメリハリの付け方の上手さには、いつも脱帽させられる。

"人は恐怖を感じた時につい笑ってしまう" を巧みに使う

また、縫い子のトメが、ちょっと面白い台詞を言って、緊張をほぐす場面もあった。

場面は、昭和20年(1945)1月4日の小原家。大阪の町にも焼夷弾が落ちた新聞を見ている糸子たち。敵のえげつない攻撃に立ち向かうために、防火訓練が盛んに行わるようになる。

そして、場面は昭和20年(1945)3月13日に時間経過。その3日前の3月10日の東京大空襲、3月12日の名古屋大空襲を新聞で知る糸子。そう言えば、糸子は若い頃から新聞をよく読んだ。糸子も子供たちも縫い子たちも、次は大阪かと夜も眠れない。

「来るか、来るか」と思っていると、夜、本当に空襲警報が鳴り響く。怖がる家族たちを防空壕に逃げるように誘導する糸子。糸子は、背中に祖母のハルを背負ってる。ところが、縫い子のトメが怖がって家から出ようとしない。必死にトメを布団から引き離そうとする糸子だが、とんと動かない。すると、ハルがこんな事を言い出す。

ハル「うちが (トメと)一緒に いといちゃる」
糸子「『いといちゃる』て…
   いちゃあったかて しゃあないやろ 逃げな 焼かれんやで!」
ハル「泣きな 泣きな。何も心配する事ないて」
糸子「ああ もう あかん!
   昌ちゃん 先 防空壕 行っといて! 早う行け!」

ここの緊迫感の描き方と、ハルの今生の座った描き方も良く出来ているが、その後いよいよ戦況が厳しくなってきて、ついに動かなかったトメがハルをおぶって家の外へ出て来る時の泣きながらのトメの台詞が面白い。

トメ「おばあちゃん 燃やす訳にはいきません!」

普通なら、糸子がモノローグで言って、大所帯全員が一気に防空壕に逃げても良いのに、ここでトメで物語に急ブレーキをかけて、視聴者を焦らして緊張させ、直後にちょっとコミカルなトメの台詞で息抜きをさせた。やはり、緩急の付け方が絶妙だ。

前半での清三郎の「まだら認知症」の表現や、後半の糸子とハルとトメのやり取りなど、戦時中と言う設定だからこそ、笑って良いのか難しいところだが、決して強引に笑わせようとしている訳では無い。

あくまでも、人は極限状態の恐怖の中では、「恐怖の認知」と「恐怖の否定」と言うのを同時に行う。だから、人は恐怖を感じた時につい笑ってしまうのだ。それをドラマに巧みに持ち込んで、視聴者を劇中に引き摺り込んでいるのだ。だから、ドラマとして面白いに違いない。

明るく逞しく生きる糸子で、"ところがどっこい!" を描く

そして、終盤。防空壕に逃げる途中で、糸子が善作の遺影と位牌を持って来るのを忘れたシーンで、そこで糸子がこんなモノローグを言う。

糸子(M)「あ せや。お父ちゃんの位牌と写真 持って来くんの 忘れた!
     けど しゃあない。堪忍や お父ちゃん。
     縁があったら また会おうな」

ここで注目したいのが、家に置いて来られた笑顔の善作の写真と、「縁があったら また会おうな」と言うモノローグだ。糸子は大切な父親の遺影と位牌が手元に無くなったとしても、縁があればまた会えると、意外とあっけらかんとしている。きっと糸子は、運命的なものも感じているに違いない。

そして、脚本家を始め作り手たちは、戦争末期の混乱の状況下での暗さや辛さを描きつつも、明るく逞しく生きる糸子を通して、“ところがどっこい!” と言う部分を視聴者に伝えようとしているのではないだろうか。

そのように映像を捉えれば、序盤の清三郎の「お父ちゃんらは どないした?」も、トメの「おばあちゃん 燃やす訳にはいきません!」も笑って良いに違いない。

どんな時代を描いても「朝ドラは明るく楽しく」をモットーに、本作のスタッフたちは作っているのだ。それを貫く脚本や演出の技術力と、俳優陣の演技力の安定感こそ、本作の面白さを支えているに違いない。



【第74回】一致団結する姿が愛おしく可愛らしくも見える

劇中は、昭和20年(1645)3月14日の明け方。結局、岸和田には焼夷弾は落ちなかった。前回の「縁があったら また会おうな」と言う糸子のモノローグを受けての、遺影を手にする糸子の「お父ちゃん また会えたな」で始まった “戦中の小原家の日常” の描写。

糸子が父・善作の位牌と写真を丁寧に包んで非常袋に入れたり、バケツリレーの無力さをぼやいたり、家族の安全と食糧確保のために大所帯の棲家を店と別に分けたり。

当時としては普通のことを普通に描いているのだが、とにかく前回に続いて、明るく逞しく生きる糸子を通して、“ところがどっこい!” と言う部分を視聴者に伝えようとしているから、本当にドラマとして楽しい(時代が時代だけに語弊があるかも知れないが)。

特に、家族や従業員が糸子を先頭にして、みんなが一致団結する姿が愛おしく見えし、それが可愛らしくも見えるのは、本作ならではの良さだと思う。

奈津はどうした? 復員兵は一体誰なのか?

そして、10分過ぎ。昭和20年(1945)6月のとある夜。町民に「泥棒!」と追いかけられる人として奈津が登場。道端に座っている杖をついた男に助けられた。化粧もせず、見知らぬ男の手に誘われるような変わり果てた姿の奈津は、どうやら「パンパン」になってしまった様子(確かなことは分からないが)。

「パンパン」は映画『肉体の門』で描かれたように戦後のイメージが強いが、日本海軍内では戦中から使用していたと言うし…。そして、暗闇で良く見えなかった奈津を助けた復員兵は一体誰なのか? 今後の展開に絡んでくるなら、それも気になる…



セミの鳴き声と共に『小原糸子殿』の宛名の1通の茶封筒が…

時は、昭和20年(1945)7月で戦況は益々悪化の一途。梅雨が明け、糸子がこぐ自転車は砂ぼこりを立てる感じで、セミの鳴き声が聞こえる。食糧を確保するのに必死な糸子が、千代たちの疎開先である郊外の元空き家に寄り、空腹と過労で店の奥で横になっている。

するとそこへ、一人の男がやって来て、「公報が届いてます。ご愁傷さまです」の言葉と一緒に、『小原糸子殿』と書かれた一通の茶封筒が届く。セミの鳴き声が、ひと際大きくなる。ついに、勝まで…。もっともっと主人公の夫であるから描いていれば、ドラマに厚みが出たと思えてしまうのが、悔やまれるところだ。

しかし、本作は “人の死” を描くのがとても上手い。故人の個性を最大限に引き出しつつも、しっかりと糸子の心情も重ねて描く。善作も、勘助も、そうやって描かれた。本放送時では、年内最後であり前半戦の最後の次回で、勝がどう描かれるのか大いに期待したい!

あとがき

糸子の千代の、いや、尾野真千子さんの麻生祐未さんのモノマネも楽しかったです。で、前回と今回と次回が、本作の戦争描写のハイライトであり山場でしょうね。明るく逞しく生きる糸子で「それでも頑張る!」を描きつつ、家族愛も描き、暗く辛くなり過ぎない程度に “不幸” を盛り込んで、あくまでも「朝ドラは明るく楽しく」はブレない。お見事です。

最後に。前回の感想に 176回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。勝が戦死してしまいました。次回が本放送時は年内最後の放送。勝の死をどう描くのか、期待が高まります。

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第1週『あこがれ』
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第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
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第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41 42
第8週『果報者』
43 44,45 46,47 48
第9週『いつも想う』
 49 50,51 52,53 54
第10週『秘密』
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第11週『切なる願い』
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第12週『薄れゆく希望』
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第13週『生きる』


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