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連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第115回第23週『ゴブサタ、ニシコオリサン。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


久しぶりに松江の朝を迎えたヘブン(トミー・バストウ)。しかし、かつて感じたはずの感情が、音を聞いても、風景を見ても、なにも感じられない。自分の変化に動揺するヘブンに声をかけたのは、錦織(吉沢亮)だった。声をかけられたヘブンは、自分は八雲だ、日本人だと告げる。そんなヘブンに、錦織は日本人になる意味、錦織が反対する理由、ヘブンの現実を淡々と突き付ける。そんな二人の様子をトキ(髙石あかり)は目撃する。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7,13,14,19,23
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9,12,15,18
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10,16
   小島東洋(過去作/『ばけばけ』助監督) 第11,21
   小林直毅(過去作/『ばけばけ』助監督) 第17,20,22
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
副音声日本語吹替:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、川野秀昭、田中陽児|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘、和田岳秋|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田直矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲、武井美晴|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな、日野維乃|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規、眞弓敬司|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉、大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子、厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華、澤井洸、平松康、吉田隆広、布川紗生、大島櫻子|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之、高浪隆史、三好勇作、石井千尋、三村つかさ、田中美紅|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛本美佐子、横山智和、石川カンナ|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子、高屋友里|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦、栗野洋子|特殊メイク:江川悦子、権田日和、山埼佳子|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜、大野陽平、小峰陸矢、上野香織、佐伯木乃実、畝岡歩未、増田愛海、野曾原明香、中元芽生、佐々木俊、石名遥、木村修|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治、斎藤明日香、竹本航、徳岡美紀、奥山温子|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録:木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉、松島彩|熊本ことば指導:梅原勇輝|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章、ネイサン・ベリー、米倉リエナ|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人、川村肇|医事指導:矢木崇善|助産指導:前田利子|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳|書道指導:今口鷲外
※敬称略




日本人になる夢が揺らぐヘブンの葛藤と、錦織が示した現実

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メインタイトル映像明けに印象的な映像的な演出が見られた。

「日本人になる」を具現化させるように動いてきたヘブン(トミー・バストウ)が、久しぶりに松江の朝を迎えた。

が、しかし、彼は、以前に “日本らしいと感じる万象” に感じていたはずの感情が、風景を見ても、音を聞いても、感じられないことに困惑する。

そんな自身に動揺するヘブンに声を変えたのが錦織(吉沢亮)だ。

ヘブンは、必死に、「自分は雨清水八雲だ」「私は日本人だ」と主張する。

そんなヘブンに、錦織が「ヘブンの帰化に反対する理由」と「外国人が日本人になる意味」、そして、「それらに伴う厳しい現実」を突き付ける。

錦織の強い姿勢、及び腰のヘブンを目撃したトキ(高石あかり※高=はしごだか)はヘブンに寄り添おうと必死になるが。


錦織「だが… もう その夢から覚めてしまった」

と、外国人が国籍を含めたある種の自身のアイデンティティーを捨てた瞬間に覆いかぶさる悲劇を、切々と語る。

そんな場面で、それまでブルーグレー色でコントラストが低い映像だったショットが、数秒間だけ色濃く、明るくなる演出があった。


朝ドラ ばけばけ
©NHK


朝ドラ ばけばけ
©NHK

そこを少し読み解いてみる。


全編を貫く「カラーグレーディング」が生む独自の映像世界

そもそも、本作では、最近の朝ドラとしては「強めのカラーグレーディング」が全編に施されている。

「カラーグレーディング」とは、撮った映像の「色や明るさ」をあとから調整して、見た目の雰囲気を作る作業のことだ。

例えば、「空をもっと青くして爽やかに見せる」「暗いシーンを少し明るくして人物の表情を見やすくする」「全体を少し茶色っぽくして昔の写真みたいにする」など。

こうした色の「味付け」をすることで、同じ映像でも「温かい」「冷たい」「ドキドキ」を後付けで観る人が感じる印象を大きく変えることができる技術だ。

この「カラーグレーディング」をドラマや映画の制作の現場では「ルック」と呼ぶことが多い。

「ルック」とは、色調・コントラスト・明るさなどで映像の雰囲気を決める重要な要素である。

技術担当はカメラの性能(ダイナミックレンジ、色再現性、感度など)を測定し、演出担当とイメージを共有した上で、コントラストや色味を細かく調整して仕上げる。

編集ソフトやワークフロー(作業工程)選び、カメラテストで限界値を確認することも重要で、方法は無限にあり、挑戦するだけ新しい価値観が創造できる面白い技術だ。

本作では、全体的に「ブルーグレー(青灰色)系」の青さび風の色調と、明るい部分と暗い部分の明度の差を小さくすることで、意図的に立体感が少なめで平たんな水墨画風の画面を創出している。


映像技法が紡ぐ『ばけばけ』特有の幻想性と色彩演出

似たような映像処理に、水谷豊主演の映画『幸福』(1981、市川崑監督)における「銀残し(ブリーチバイパス)」 と呼ばれる「銀色がかった独特のトーンが強く出す」技法がある。

フィルム現像時に「漂白工程(ブリーチ)」を省略または弱める技法で、フィルム上に「銀」が残る。

このために、「コントラストが強くなる」「彩度が落ちる(色がくすむ)」「金属的・冷たいトーンになる」の効果が生まれる。



また、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』(1993)では、特定の色だけ残す技法「セレクティブカラー」技法が使われている。

『シンドラーのリスト』では、「赤いコートの少女」が有名だし、最近では多くの映画やドラマ、CMでも見かけるのでご存じの方も多いと思う。



この他にも、色を分離して強調する総称「カラーアイソレーション」には、「マスク+カラーグレーディング」と手法がある。

映像の一部をマスク(切り抜き、覆い)で切り出して、その部分のみを色調整する。

例えば、人物だけをカラー、背景はモノクロ… ように、だ。

ちなみに、今回の『ばけばけ』は、元の映像に二種類のカラーグレーディングを施して、錦織のセリフに合わせて、「明るい処理」をした映像だけクロスフェード(重ねて入れ替え)していると思われる。

いずれにしても、さりげない映像効果だが、《ファンタジーと幻想的》、《非現実と夢幻的》という「ばけばけ』らしい意味付けができていたと思う。


錦織の“確かな存在感”を示し物語の地平を開いたアバン

さて、ここからは「本編」の内容について掘り下げてみる。

アバンタイトルでの錦織が言葉を発する場面から、彼の存在がはっきりと心に響いてくる映像だ。

前回では、「橋の上」が幻想なのか、夢なのか、現実なのか曖昧な描写になっていたのが気になったが。

今回の描写によって、錦織が、ただの幻や幽霊のような頼りないものではないことが強調された。

そして、物語の始まりから《彼が確かにそこに生きているという強い実感を抱かせる表現》である。

若干は「前回も同様でもよかったのでは?」とは思う部分もある。

しかし、「週の最終日の金曜日に期待を持たせる」の意味では、効果があったと言わざるを得ない


「橋の上」がつなぐ必然とヘブンの越えられない壁

ヘブンが日本人になろうとする中で直面する壁について、メインタイトル映像明けから非常に分かりやすく解き明かされている。

これまでの物語の流れや、登場人物であるヘブンの行動も、全てが必然性を持ってつながっている。

ヒロインのトキが差し伸べる手助けも、確かに多少は唐突な印象がないわけではない。

しかし、それでも、ぎりぎりで「橋の上」という本作で超印象的な「トキとヘブンの場所」が共通していることで、唐突感は薄まったと思う。

そして、「橋の上」であるからこそ、これまでの描写が積み重なって見え、とても自然で温かい場面として受け取ることができるのである。


最終盤へ向けて深まるトキとヘブンの揺るぎない絆

物語はいよいよ最終盤に向かっているが、話の筋道は非常に明快である。

トキとヘブンの夫婦としての絆や、お互いを支え合う姿が、作品の揺るぎない中心として描かれるであろうことは確かだろう。

異なる文化を持つ夫婦が共に歩む物語は、「第1回」に帰着するであろう連続ドラマとしてのまとまりを強く感じさせる。

細かな物語の構成や映像的な演出の一つひとつが、二人の深い関係性を象徴する大切な要素となっており、最後まで目が離せない構成である。


あとがき

上記のように、称賛する気持ちに偽りはない一方で、“もやもや” も多少はありますよ。

それこそ、前回での「八雲」の名前が古典「古事記」に由来するなら、もっと当初から勘右衛門(小日向文世)とヘブンは日本の古典に造詣が深いと描くべきでしたし。

「熊本移住」してからの “ぐだぐだ” を、今回一回だけの “ヘブンの苦悩からの解放” に押し付けて、終わり良ければ総て良しのように強引の収めたのも合点はしにくいです。

何としてでも「第23週で錦織の死」「第24週で怪談」と区切りたかったのは理解しますが、もう少し “流れ” に注力してほしかったです。

それでも、結果的には強引だろうが「終わり良ければ総て良し」になったのは認めますし、悪くなかったと思います。

【追記】是非とも、下記の投稿も参考になさってください!
 ※参考:拍手コメント返信(2026/3/13):朝ドラ「ばけばけ」(第115回) ※ヘブンとトキが錦織の病状を気にする描写がなかった理由を《徹底》深掘り!|ディレクターの目線blog 新窓で開きます


厳選『ばけばけ』で描かれない秘話の解説リンク集
●八雲×セツ「万物に霊が宿るアニミズム思想」 → こちら 新窓で開きます
●八雲先生が"英語"で伝えた日本の文化 → こちら 新窓で開きます
●八雲先生が"英語"で伝えた日本の文化 → こちら 新窓で開きます
●超裕福生活でも"熊本生活は3年間"のワケ → こちら 新窓で開きます
●八雲の"息子の名前の由来"と"英才教育" → こちら 新窓で開きます
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プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮

フジテレビ系・木曜劇場『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』
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第10話『凛の乗ったバスが バスジャックの標的に!』の感想。



凛(岡崎紗絵)は、親友・千尋(齊藤京子)を犯罪へと追い込んだ【黒幕】に会えると氷室貴羽(長谷川京子)から告げられ、『辰巳湖ファミリーランド』行きツアーバスに乗り込む。だが走行中、乗客の男(岩﨑大昇)がナイフと爆弾でバスを乗っ取り、1年前の鷹見峠バス横転事故の真相を公表しなければ爆破すると宣言する。警察が動く中、深山リサーチでも事態を察知し、佐久間(渡部篤郎)は天音(玉木宏)に協力を要請。さらに過去の事故を追っていたフリーライターの存在も浮上し、事件の裏にある真相が次第に…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---


原作:なし
脚本:大石哲也(過去作/遺留捜査シリーズ) 第1~3,6,9,10
   小島聡一郎(過去作/青のSP,遺留捜査(第7シーズン)) 第7,8
   守下敏行〈本作演出担当〉(過去作/脚本不明) 第9
演出:星野和成(過去作/未来への10カウント,シッコウ!!~犬と私と執行官~) 第1~3,6,10
   守下敏行(過去作/相棒,元科捜研の主婦) 第4,5,9
   岸川正史(過去作/じゃない方の彼女,ギルガメッシュFIGHT) 第7
   日高貴士(過去作/「アンメット ある脳外科医の日記」第9話のみ) 第8
音楽:得田真裕(過去作/俺の話は長い,家売るオンナシリーズ,アンナチュラル)
主題歌:東京スカパラダイスオーケストラ「崖っぷちルビー (VS. アイナ・ジ・エンド)」
※敬称略


保険調査は? 制作側の自己満足に終始したドラマの限界!

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今回の感想をひと言でいえば次のようになる。

保険調査員のドラマなんだから、保険調査しようよ!

ホント、最終回直前回でこんなことは書きたくないが。

本作は「保険調査」という独自のテーマを掲げながら、その実態は「ありふれた刑事ものや探偵もの」と大差がない。

過去の事件や事故を追うばかりで、本来のタイトルが示す目的が見失われている。

さらに困るのは、制作側が物語を複雑にしようとする意図が、視聴者が楽しめる要素になっていないことだ。

大量のゲスト俳優を投入し、あれこれとこねくり回したところで、「楽しくなければ意味がない」のだ。


細部の不備が、作品全体の説得力を著しく損なっている

ただ、唯一の救いは、「氷室貴羽」というキャラクターの存在である

赤色下線マーカー太字(強調・刺激・興奮・警告)だったと思う。

また、演出面のリアリティにも疑問が残る。

最後の最後で、他の車が一台も走らない交通量の少ない道で、しかも法定速度で走っている知人の車とすれ違いながら、運転手に気づかないという描写はあまりに不自然である。

こうした細部の不備が、作品全体の説得力を著しく損なっているのだ。


「保険調査」の原点へ立ち返れ!有終の美を飾るための秘策

苦言ばかり書いてきたので、最後は少し前向きに書いてみる。
とはいえ、もう、最終回しか残っていないので「今さら」ではあるが。

本作が、最後の最後で有終の美を飾れるのは《保険調査ものとして成立させる》しかない。

そのためには、以下の三点の改善が必要である。

【1】「保険調査」という原点への回帰
 ・刑事や探偵の真似事ではなく、保険金詐欺の立証や損害査定のプロセスを物語の核に据えるべきだ。
 ・事件の真相を追うだけでなく、「なぜ保険調査員が動くのか」という必然性を明確にする必要がある。

【2】複雑さよりも「納得感」のある脚本
 ・設定を捻りすぎて視聴者を混乱させるのは、《物語で魅了する》の完全な放棄である。
 ・まずは情報の整理を行い、中学生が見ても論理の破綻を感じない、筋の通ったストーリー構成を優先すべきだ。

【3】細部のリアリティの追求
 ・「閑散とした道ですれ違った知人に気づかない」といった、人間の自然な反応を無視した映像づくりは避けるべきである。
 ・些細な違和感の積み重ねが、作品への没入感を削いでいる事実に制作陣は気づかなければならない。

そして、最後に「次回への期待」を書いて終える。

最終回では、迷走している「刑事もの」のような展開を脱し、タイトル通りの「保険調査」としての醍醐味を見せてほしい。

視聴者は、制作側の自己満足なトリックではなく、鮮やかなロジックによる解決を求めているのだ。

そのためにも、唯一の光である「氷室貴羽」というキャラクターを、物語の「装置」として消費するのではなく、彼の能力が最大限に活きる脚本を強く期待する。



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知事(佐野史郎)に、ヘブン(トミー・バストウ)が日本人になる許可をもらいに訪れたトキ(髙石あかり)とヘブン。しかし、取り付く島もなく一蹴されてしまう。錦織(吉沢亮)に協力を頼もうと中学校を訪れたトキは、そこでサワ(円井わん)と再会する。やはり、錦織に断られてしまうトキ。失意の中、トキとヘブンの元に勘右衛門(小日向文世)が訪ねてくる。日本人になるヘブンに、勘右衛門は名前を考えてきたと告げる。
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   小島東洋(過去作/『ばけばけ』助監督) 第11,21
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トキの一言が示した“錦織の変化への気づき”

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まず、今回でホッとしたこと。

それは、トキ(高石あかり※高=はしごだか)が数年ぶりに再会した錦織(吉沢亮)に言った次のセリフだ。


トキ「お達者ですか…?」

以前に書いたが、現在の錦織は吉沢亮さんの15キロの減量による役作りの結果の「死期が近い錦織」だ。

しかし、本作は、トキが松本を離れてから錦織と連絡を取り合っていないと描いた。

そのことは、メインタイトル映像明けに登場した、親友であるはずのサワ(円井わん)とも手紙のやり取りすらしない人でなしと描いたのだ。

だから、私は心の隅っこで「トキは錦織の外見の変化に気づかない」まま進めたら困るなぁと思って見ていた。

しかし、前述のように「お達者ですか…?」と気づく素振りを描いた。

もちろん、映像として、物語として、トキが今の錦織を見て心配するのは当然だ。

しかし、脚本担当のふじきみつ彦氏がこの場面を「書いた時」には、「15キロも痩せた錦織」がいるのか分からなかった可能性がある。

そう考えれば、脚本として、よくぞトキに「お達者ですか…?」と言わせるように書いたと思うのだ。


勘右衛門が“松野”を捨てた意味と、物語に生まれた良心

今回で驚いたのは、勘右衛門(小日向文世)が「松野」姓を捨て「上野勘右衛門」になっていたという真実だ。

敢えて[史実]を解く必要はないが、小泉八雲の妻セツの養祖父・稲垣万右衛門は、再婚して苗字が変わったという[史実]はないのだ。

それどころか、再婚の記録も、最初の妻の名前の記録もほぼないのだ。

ということで、以前も書いたとおり、上野タツ(朝加真由美)なる人物にまつわるエピソード全てが本作の創作(フィクション)である。

でも、私はこの創作は意外とよかったと、今回で思ったのだ。

やはり、いくら超好意的に解釈しているとはいえ、ここ数回にわたるヘブン(トミー・バストウ)の入籍騒動に関わる人物に対するときの態度は、あまりに一方的であり、高給取りのヘブンに依存しまくっているパラサイト家族としての図々しさが前面に押し出ていたのは間違いないのだ。

もちろん、超好意的に「必死になっている」と受け取ってはいるが、これ以上度が過ぎれば、松江での「ラシャメン疑惑騒動」ですら「自業自得でしょ?」となりかねないのでは? と。

そんなときに、勘右衛門がたった一人ではあるが「武士魂を持った人格者」として、「パラサイト松野」から離脱して「オネスティ(honesty=正直)上野」になったのは、一種の “本作の良心” であると思うし。

「ラストサムライ」から「ラストジジサマ」への昇格をコミカル風に収めたのは、チーフ監督・村橋直樹氏らしいコミカル強めの演出が功を奏して、いい感じのメリハリがついたとも思う。


「八雲」の名に込められた出雲の誇り、新しい家族への祈り

またまた、ちなみに…ではあるが。

勘右衛門が「雨清水八雲」と、ヘブンの名前を「八雲」にするのも[史実]どおりだ。

ただ、私はここまであっさりと「八雲」に決まってしまったのを、少し残念に思っている。

少し解説してみる。

そもそも、勘右衛門も言っていた「八雲立つ 出雲八重垣…」は、勘右衛門のモデルである万右衛門が好んだ『古事記』の有名な一節だ。

そして、当時の松江の人びとにとっては、ふるさとの息づかいそのものと言えるほど身近なことばであり、武士の教養としても必ず触れる “基本の古典” だったのだ。

万右衛門は、この歌の「八雲」という言葉に、《出雲の土地に生まれた新しい家族の始まり、ハーンが日本で根を張って生きていく願い》を重ねたのである。

古い歌の世界と、新たに日本を選んだ一人の外国人、その両方をつなぐ “ ” になる名として、「八雲」はこれ以上なくふさわしかったし。

万右衛門にとっては、教養と土地の誇りをそっと託した、静かだが力のある贈り物であったのだ。

このことまでもが「本編」に盛り込まれ、しっかりと描かれた瞬間でしか、次のヘブンのセリフが最大限に昇華されることなないと思うのだ。


ヘブン「ワタシ… ニホンジンニ ナッタノ キモチ。
 ヤクモ! ワタシ… ヤクモ デス!」

ヘブンの感動、勘右衛門の納得感、家族の安堵、これらを鑑みれば「あと一歩及ばず」だったことは否めないのである。


日本的原風景が揺さぶるヘブンの"日本人になる"決意の揺らぎ

今回で、私が「映像的に」も、「物語、ドラマ的に」も秀逸だと感じたのは、終盤の3分間だ。

「ニホンジンになる」を心に決めたヘブンが寝ている耳に入ってくる、階下で米をつく音に始まり。

遠くのニワトリの鳴き声、近くを通る物売りの売り声、山の上の鐘の音が、ヘブンの頭の中、心の中で渦巻くようなイメージ映像だ。

と同時に、日本人が日本人であることを自然と認知させられるような音や言葉によって、一種の「日本の原風景」や「二ホンならではの喧騒」を幻想的に描いた。

これこそが、村橋氏がお得意の《雰囲気重視・ムードや映え優先》の演出法が光る映像だ。

そして、橋の上でヘブンが錦織と出会う。

きっと、「日本人になること」は「外国人でなくなること」であり。

《外国人が見た異国文化》で本を書き、飯を食ってきたヘブンにとって、「日本人になること」は「外国人で飯が食えなくなること(家族を支えられないこと)」なのだ。

そう、今回の映像から受け取れるのは、身の回りに存在していた「あらゆる日本的なもの」を見聞きして感じてきた… かつての感情が、同じ音を聞いても同じ風景を見ても《もはや感じられない》という現実だ。

どうやら明日(次回)は、錦織が本当の意味での「ヘブンが日本人になる意味」と「それに反対する意味」を描くだろう。

このことが、きちんと描かれ説得力があれば、次週で数年の時間経過しても大丈夫だと思う。


あとがき

本作の最初のころ(2か月ほど)は、今回の終盤のような「日本の原風景」や「日本ならではの雰囲気や風情」を用いて、登場人物の心情の描写をやっていましたよね。

トキがヘブンとの関係を一気に進めた「橋の上のシーン」を最後になくなったような気がします。

それにしても、やはりチーフ監督らしい演出が光りますね。

唯一、もったいないなと思ったのは、これまで「ヘブンが日本の古典に造詣がある」という描写が弱かったこと。

それがあれば、ぎりぎりで、今回の「雨清水八雲」も説得力があったでしょうに。

それでも、若手演出家の練習台より、ずっと良いですけど。


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拍手[43回]

相棒 season24

テレビ朝日系・『相棒 season24』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)InstagramLINE

第19話/最終回10分拡大スペシャル『暗闇の鬼』の感想。


警視庁で「新しい警視総監が内定」との噂が広がり、警備局長の叶恭次(堀部圭亮)が有力視される中、高級住宅街で同時多発の空き巣事件が発生する。暴力団関与の窃盗団とみられるが、右京(水谷豊)は一軒だけ未遂に終わった家に着目。その家の主が旧知の岩橋虔矢(石黒賢)と判明する。岩橋は被害を受けつつも何かを隠し、やがて右京の“元相棒”として27年前の因縁を示唆する…。さらに総理秘書官の意を受けた馬場立裕(渡辺大)が水面下で動き、再び事件が動き出すのであった…。
---上記のあらすじは、当ブロブのオリジナル---

●脚本:輿水泰弘/演出:橋本一(敬称略)



物語の構造と分かりにくさ

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―――ここまで、ごあいさつ―――

今回の物語は、構成が過剰に複雑化されていた。

多くの情報が隠されたまま話が進み、事件の全貌が見えない状態で物語の終盤を迎えている。

そのため、制作者がこのエピソードを通じて何を伝えようとしていたのか、その意図を読み取ることが難しかった。


過去の相棒の登場シーン

かつての相棒を再登場させるのであれば、もっと自然な形での参加が望ましかった。

また、劇中では、主人公である杉下右京(水谷豊)の想像であるかのような描写が目立ったのも、岩橋虔矢(石黒賢)の登場の必然性を乏しくさせたと思う。

それらのことから、結果として、長年の本作のファンなら当然に期待しいた再会の場面が、話の筋を強引につなげるための道具のように見えたのは間違いないし。

最大の見どころが発揮されなかったことで、作品全体の魅力も損なわれたのは言うまでもないと思う。


キャラクター設定の活用

岩橋虔矢を始めとして、本作にはいわゆる「特別編」に登場する特別な背景を持つキャラクターが数名存在する。

それらのキャラクターを登場するのであれば、その設定を素直に活かした物語を展開すべきでないのか?

わざわざ「どうだ!」と言わんばかりの大げさな脚本上の過剰な装飾的設定を加えたところで、不自然な展開が続くことは視聴者の混乱を招く要因となるだけなのでは?


作品の良さと装飾過多のズレ

但し、長期シリーズだからこその「相当な期間、登場しないサブキャラクター」を生かすという試み自体は、評価できる

しかし、物語を必要以上に複数名を、しかも複雑にしようとする装飾過多が、その良さを打ち消してしまったと思う。


事件の詰め込みすぎによる混乱

物語全体を俯瞰で見てみる。

すると、物語の見せ方が整理されておらず、多くの要素を詰め込みすぎたために、内容の強弱が不明確になっていることが分かる。

例えば、空き巣事件などのサブプロットを排除し、内部調査や週刊誌への情報漏洩といった本筋に焦点を絞るだけでも、物語は十分に成立したはずである。

結局、不必要な要素をあれやこれやと外側に張り付けまくるから、物語の芯(中心・メイン)が見えなくなるのだ。

ちなみに、このように「要素を絞り込めない傾向」は、最近のドラマ全般に見られる課題でもある。

登場人物の行動や情報の漏洩プロセスをもっとシンプルに描けば、視聴者は物語の筋道を容易に理解できたはずだ。

複雑にすることと、深みのある物語にすることは別物であることを理解すべきだと思う。


制作者が意識すべき視点

ドラマ『相棒』の主な視聴者は長年のファンであり、私を含めて年齢層も比較的高いはずである。

となれば、物語を意図的に分かりにくくすることは、視聴者が作品から離れる、理解するのが面倒になる原因になりかねないのだ。

制作者側は、自己満足に陥ることなく、ドラマという媒体が本来どうあるべきかを再確認する必要があるのでは?



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拍手[15回]

連続テレビ小説「ばけばけ」

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『ばけばけ』
公式リンク:WebsiteX(旧Twitter)Instagram

第113回第23週『ゴブサタ、ニシコオリサン。』の感想。


 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。


ヘブン(トミー・バストウ)が日本人になるためには、知事(佐野史郎)に認めてもらわなければならない。知事を説得するために、錦織(吉沢亮)の助力を得ようと訪ねたヘブンは、錦織と再会するが、協力を断られてしまう。失意の中、錦織の真意もわからず困惑するトキとヘブン。そんな中、司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)からタエ(北川景子)に会ってきたと知らされる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------


原作:なし
脚本:ふじきみつ彦(過去作/バイプレイヤーズ,きょうの猫村さん,一橋桐子の犯罪日記)
演出:村橋直樹(過去作/まれ,透明なゆりかご,サギデカ) 第1,2,5,7,13,14,19,23
   泉並敬眞(過去作/スカーレット,カムカムエブリバディ,ブギウギ) 第3,6,9,12,15,18
   松岡一史(過去作/まんぷく,心の傷を癒すということ,カムカムエブリバディ) 第4,8,10,16
   小島東洋(過去作/『ばけばけ』助監督) 第11,21
   小林直毅(過去作/『ばけばけ』助監督) 第17,20,22
制作統括:橋爪國臣(過去作/青天を衝け,あなたのブツが、ここに,ブギウギ)
音楽:牛尾憲輔(過去作/チェンソーマン,僕の心のヤバイやつ,ダンダダン)
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
土曜日版ナレーション:北郷美穂子(NHK大阪アナウンサー)
副音声解説:山崎健太郎(過去作/舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ,虎に翼,おむすび)
副音声日本語吹替:西地修哉(ヘブン担当)、木村はるか(リヨ担当)
タイトル写真:川島小鳥(過去作/未来ちゃん,SHISHAMOアートワーク)
タイトルロゴ:西沢和樹(instagram.com/nishizawa_k/)
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、川野秀昭、田中陽児|美術:山内浩幹、淀裕矢、向理沙、有本弘、和田岳秋|技術:増田徹、備中正幸、酒井俊史|音響効果:松本有加、巽浩悦、吉田直矢|撮影:岩崎亮、関照男|照明:根来伴承、大西弘憲、武井美晴|音声:吉竹淳樹、稲垣雄二、大成友二、安河内裕斗|映像技術:前田惇徳、原幸介、山下健、若嶋なな、日野維乃|カラーグレーディング:原幸介、前田惇徳、山下健、日野維乃、若嶋なな|VFX:西垣友貴、神戸大樹、山田茂人、北島規、北島規、眞弓敬司|CG:大西智子、空閑卓海、古市百人、佐藤望、田邊亮哉、大関聡|美術進行:澤幸樹、嶋原広起、大塚良子、厚朴美沙子、毛尾喜泰|装置:佐藤千織、坂口大吾、山中宏華、澤井洸、平松康、吉田隆広、布川紗生、大島櫻子|装飾:津村政幸、横田浩之、長洲史、横田浩之、高浪隆史、三好勇作、石井千尋、三村つかさ、田中美紅|特殊効果:奥村陵、宮崎真有|衣装:横山智和、中村みのり、鍛本美佐子、横山智和、石川カンナ|メイク:堀洋子、正田早百合、秋山直美、櫻井安里紗|持道具:楠正由貴、森上陽子、高屋友里|かつら:松本誠也、丹波峯子、山崎浩彦、栗野洋子|特殊メイク:江川悦子、権田日和、山埼佳子|特殊メイク協力:荒井律子、大谷美咲、山埼佳子|助監督:小林直毅、小島東洋、田中陽児、早川俊介、岡本拓大、後藤怜亜、大野陽平、小峰陸矢、上野香織、佐伯木乃実、畝岡歩未、増田愛海、野曾原明香、中元芽生、佐々木俊、石名遥、木村修|制作担当:木村晴治、長岡しのぶ、本田良太、森岡あゆみ、片山哲治、斎藤明日香、竹本航、徳岡美紀、奥山温子|取材:川野秀昭、鈴木航|編集:藤澤加奈子|記録:木本裕美|時代・風俗考証:刑部芳則|松江風俗考証:藤岡大拙|出雲ことば指導:多々納斉、松島彩|熊本ことば指導:梅原勇輝|所作指導:藤間豊宏|料理指導:広里貴子|英語指導:塩屋孔章、ネイサン・ベリー、米倉リエナ|英字指導:前田祐加|眼科指導:大路正人、川村肇|医事指導:矢木崇善|助産指導:前田利子|怪談ばなし指導:玉田玉秀斎|茶道指導:有澤一男|三味線指導(タエ):菊央雄司|三味線指導(遊郭):長江浩子|アクション指導:中村健人|日本画指導:諫山恵実|絵画指導:苅谷昌江|華道指導:神前光園|造園:堤正和、宮崎昭徳|書道指導:今口鷲外
※敬称略




映像演出を支える“光”と“美術”の力

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前回を見た複数の読者様から「映画みたいだった」とのコメントをいただいた。

私も同様に「映画風の演出だなぁ」と感じた部分がいくつもある。

その一つが、前回と同じだった《アバンタイトルに劇伴がない》である。

と、もう一つが《無駄に照明で明るく照らしすぎない》だ。

40年以上前、私が映画学校に通っていた際、演出担当の先生に「演出をやりたいなら‘美術’と‘照明’を徹底的に勉強しろ」とよく言われたものだ。

‘美術’は観客(視聴者)の目に入るもの全て(視覚情報)を司る重要なパートであり、‘照明’は目に入る情報量を司るパートで、その二つをコントロールできないと、映像で魅了することはおろか、見せることすら不可能だ… と叩き込まれたのだ。


?? 光の配置が語る「再会の緊張」と二人の立場差

前回の第112回(2026年3月10日放送)の感想に、今週の演出担当で本作のチーフ監督でもある村橋直樹氏の照明演出に「天窓からの斜めの光線」があると書いた。

でもって、今回の「錦織の屋根裏部屋」では「天窓からの斜めの光線」がない。 よって、錦織(吉沢亮)とヘブン(トミー・バストウ)の顔に当たっている光(照明)は大きな窓からの一方向の光源だけだ。

しかし、この「一方向の光源」によって、錦織とヘブンの顔に「強い明部と暗部」ができる。

非常に左右のコントラストが強い照明によって、特に錦織の痩せこけた表情が印象的に映し出され、《錦織の心に強く明部と暗部がある》という内面が描き出された。

このシーン、よく見るとわかるが、ハイライト(最も明るい)部分の明るさは錦織とヘブンで大きな差はない。

しかし、シャドウ(濃い影)部分の明るさは、ヘブンのほうが明るくなっている。

しかも、下図のカットでは、錦織のシャドウ部を強調するために背景に明るい障子を用いて、ヘブンの背景には暗い部分を持ってきてヘブンの左側の表情まで見える照明になっている。


朝ドラ ばけばけ
©NHK

これによって、「現状では錦織とヘブンの立場はかなり違う」が表現できている。

ここ、安易に演出するなら、少し不安げな、もしくは暗めな劇伴を張り付けて、進めれば「導入部=アバン」としては完成できる。

しかし、それでは「初めて屋根裏部屋で」と「久しぶりの再会」としての緊張感や緊迫感が出ない。

よって、今回のアバンとしての演出としては最適解であったと思う。


史実とフィクションが交差する「雨清水トキ」誕生の妙

メインタイトル映像明けは、当ブログでは予想通りの展開だ。

というか、[史実]そのままの展開である。

要するに、トキのモデルである小泉八雲の妻・セツさんは「小泉家」で生まれて「稲垣家」に育てられたのだ。

で、[史実]を知っている人は、私のように「なぜ、‘小泉家’を‘雨清水家’にしたの?」の疑問があったと思う。

「大泉家」「和泉家」「今泉家」なんてのもできたはずなのに…だ。

しかし今回で、「雨清水トキ(うしみずとき)」になれば「丑三つ時(うしみつどき)」に重ねることができることが分かった。

これ、相当に粋な脚本上の遊び心であり、「モデルはいても基本はフィクション」だからこそ書ける設定だと思う。

あとは、ドラマとして、ヘブンが「八雲」を名乗るのかどうかだけである。


“大騒ぎ”と“しみじみ”で浮かび上がる雨清水家の軌跡

さて、新生「雨清水トキ」にガッテン!ガッテン!と心の中の「ガッテン台」のボタンを叩いているうちに、本作の大のお得意事であるよい意味での “大騒ぎ&バカ騒ぎ” だ。

前半の約7分間が “どんより” していたので、いい感じのメリハリだ。

そして、“大騒ぎ&バカ騒ぎ” のあとは一気に、また “しみじみ” だ。

でも、この “しみじみ” は単なるバカ騒ぎの後の静けさという緩急付けの役割以上の効果と役目があったと思う。

それは、こと「朝ドラ」において大きな見どころである「ヒロインの結婚秘話」が本作はほぼなかったことに由来する。

一般的な朝ドラなら、見合いや交際期間の紆余曲折を経て結婚、そして妊娠出産と進んで、それなりの尺を割いて描く。

でも、本作は「女中から妻、妻から母親」の過程が、あまり描かれず、時間経過もやったので、とても印象が薄いのだ。

そう考えれば、時代背景を伴って「女性が結婚で苗字が変わる」を、ラスト2.5週で盛り込んだのは、朝ドラらしさの意味でギリギリで間に合ったと思う。

しかも、超久しぶりに雨清水タエ(北川景子)と三之丞(板垣李光人)を組み込んで、《雨清水家の波乱万丈な軌跡》を描いたのは、とてもよかったと思うし。


雨清水家がたどり着いた“静かな奇跡”と本作テーマの結晶


三之丞「母上の料理が このごろ… おいしいです」

もちろん、料理が苦手だったタエの精進もあるだろうし、三之丞の仕事の安定もあるように感じるし。

《雨清水家の波乱万丈な軌跡》と呼応するかのような《雨清水家が辿り着いた、静かに輝く奇跡》なメリハリある展開もお見事だ。

まさに、前段の「雨清水トキ誕生秘話」と《雨清水家が辿り着いた、静かに輝く奇跡》こそ、本作らしい《見せ方(way of showing)と魅せ方(how to captivate)》であると主張したい。

さらに、私が注目、傾聴した三之丞のセリフが、談笑が終わって味噌汁を一口飲んだ際に言ったひと言だ。


三之丞「あ~!」

きっと、カットの切り替え寸前だから、板垣李光人さんのアドリブなのだろう。

今回で描かれた「雨清水家の終着点」こそ、本作のテーマである『この世はうらめしい。けど、すばらしい。』の具現化であると大いに評価したい。


あとがき

こうして、チーフ監督の3日間を見ただけで、第20~22週にわたる「若手演出家の練習週」が足を引っ張っていることが悔やまれます。

練習週をやるなら、せめて隔週にするなどの工夫や、視聴者への配慮はするべきだと思いますよ。

でないと、「あの3週で諦めた」という人もいると思いますし、当ブログへの読者様の反応が減った時期と重なりますしね。

残りの放送回は、チーフとセカンドで演出すればよいと思います… というか、そうしてください!お願いします。

昨日、小泉八雲が入籍をためらったリアルな事情に関する「補足記事」を投稿したので、ドラマとは違う史実に触れてみてください。

朝ドラ「ばけばけ」小泉八雲が入籍をためらった「お金と家族」のリアルな悩み|ディレクターの目線blog 新窓で開きます


ひとこと

きょう3月11日は、東日本大震災から15年。
犠牲となられた方々のご冥福をお祈りし、御遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
行方不明の方々が一日も早く見つかり、身元不明の方々がご家族の元へ戻られることを願っています。

日々を大切に生きる思いを新たにし、今年も微力ながら参加させていただきました。


3.11 検索は、チカラになる。
©「3.11 検索は、チカラになる。」https://bosai.yahoo.co.jp/search311/


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【自己紹介】
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